私は学生時代、合唱祭が嫌いだった。
歌うのは好きだが練習が嫌だ。放課後全部歌ってるとか正気の沙汰ではない。しかも何ヶ月も。寝てた方がマシだ。
しかし私は女子校にいた。そして女子というのはなぜか合唱祭で張り切る生態がある。
私など年じゅうサボっていたので、合唱祭をやりたい連中の餌食であった。なぜサボるのか、どうしてみんな頑張ってるのにお前はやらんのか、などと暴言罵詈雑言を受けた。
ファシズムというのはこうやって始まるのであるなあ、と若い私はぼーっとかんがえていた。たかが合唱祭である。
が、あの連中には自分が正しいと思って相手を批判するくらい面白いことがないのであろう。実に哀れな連中だ。
一度とっ捕まってイヤイヤ練習に参加させられたことがある。指揮者が眉吊り上げて叫んだ。
「ちょっと!音程があってない!練習サボるからそんななのよ!」
そんなはずはない。私はヤマハのエレクトーングレード7か6くらいだ。具体的に言えば一回聞いた曲をそれなりに再生するくらいはできる。
ましてや売るほど聞いてる合唱なんて歌えない方がどうかしてる。歌えなかったら、ヤマハの音楽教育はどうなるのか。
絶対に、なにがあろうと、音程を外してるなんてことはない。
私は口パクしてたんだから。
気の毒に、合唱の電波にやられて幻聴が聞こえるようになったらしい。私は吐息をついて言った。
「だいたい合唱やって私に何のメリットがあるのさ。
そりゃ、指揮者とピアノと合唱委員は内申点稼げるだろうけどさ。
なんで私があんたらの内申点稼ぎに付き合わなきゃならないの」
次の瞬間。
大人しく練習してた他のやつが、一斉に帰り出した。
なお、これはあくまでフィクションであると申し添えておく。