以下の内容はhttps://tobetakoyaki.hatenablog.com/entry/2020/06/26/133000より取得しました。


【紹介】a divides b

 \newcommand{\defines}{\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow}}
今回は,Mathwillsというサイトに記事を書きましたので,そのリンクと,記事の内容を紹介します.


Mathwills:
www.mathwills.com


今回の記事:
www.mathwills.com


この記事では,「約元である」という関係について考察しました.通常,「 a bの約元である」という関係性を「 a \mathrel{|} b」で表します*1.見ての通り,使用されている記号は左右対称な形をしています.


左右対称な記号は「対称律*2」 という条件を満たす関係性に対してしばしば使われます.例えば「 a = b」や「 P \Longleftrightarrow Q」がその例です.


一方,「約元である」という関係は普通は対称律を満たしません*3.もちろん「対称な形状の記号は対称律を満たすものにしか使ってはならない」という法はどこにもないので,「約元である」を対称な記号で表記してもなんら問題はありません.しかし,その表記を使う面から考えると「どちらがどちらの約元であるのか」を直観的に示さない表記法はあまり優れていないと少なくとも私は思います.


そこで,今回の記事ではこの「約元である」という関係を左右非対称な記号で表そうとしています.その際,どの記号を用いてこの関係を表すのがよいかを「二項関係」という観点から考え,最終的に本文では「 \trianglelefteq」という記号を用いました*4*5.そして,この記号を使う妥当性を自分なりに記述しました.


表記方法は議論の本質には関係のない瑣末なものです.しかし,表記の分かりやすさは理解のしやすさに関連します.英語に慣れていない人が英語の論文を読んで苦戦しているのに似たものがあるでしょう.瑣末な内容だと吐き捨てることなく,少しでも伝わりやすい記法を使うように心がけることは非常に重要でしょう.


最後に,記事の一貫性を保証するための「予備知識」の項を掲載します.

予備知識

二項関係

定義 1.1 Sを集合とする. Sの元の対についての条件を S上の二項関係 (binary relation) という.対 (x,y)二項関係 Rを満たすとき,これを xRyと表す.

定義 1.2 Rを集合 S上の二項関係とする.
反射律 :  \forall a \in S,  a R a
推移律 :  \forall a, b, c \in S,  a R bかつ b R cならば a R c
反対称律:  \forall a, b \in S,  a R bかつ b R aならば a = b
対称律 :  \forall a, b \in S,  a R bならば b R a

定義 1.3 R擬順序 (quasiorder) または前順序 (preorder) である
   \defines  Rが反射律と推移律を満たす
 R半順序 (partial order) である
   \defines  Rが反射律と推移律と反対称律を満たす
 R同値関係 (equivalence relation) である
   \defines  Rが反射律と推移律と対称律を満たす

表で上記3つの関係を整理すると次のようになります.

反射律 推移律 反対称律 対称律
擬順序
半順序
同値関係




整域

定義 1.4集合 Aに二つの演算 + \timesが定まっているとする. (A, + ,\times)が次の1. - 4.の条件を満たすとき, A環 (ring) という.

  1.  (A, +)は可換群.
  2.  \forall a, b, c \in A,  (a \times b) \times c = a \times (b \times c)
  3.  \forall a, b, c \in A,  (a + b) \times c = a \times c + b \times c,  a \times (b + c) = a \times b + a \times c.
  4.  \exists 1 \in A,  \forall a \in A,  1 \times a = a \times 1 = a

 +を和, \timesを積と呼びます. \times \cdotと書かれることもありますが,いっそ省略して書かれることも多いです. (A, +)単位元を0と書き,零元 (zero element) と呼び,4. で登場した1を単位元 (identity element) と呼びます.また,2. の性質を結合法則,3. の性質を分配法則と呼びます.

例 1.5
1.  \mathbb{Z} \mathbb{Z}^{n \times n}はそれぞれ通常の和と積によって環をなします.
2. 集合 Sの冪集合上に \cap \cupを考えた (2^{S}, \cap, \cup)は環をなしません*6

定義 1.6 (A, + ,\times)が積に関して可換なとき,これを可換環 (commutative ring) という.

以下,環 (A, +, \times)を省略して Aとだけ書きます.

定義 1.7 A可換環とする.
任意の a, b \in A \setminus \{0\}に対し, a b \neq 0となるとき, A整域 (integer domain) という.

例 1.8
1.  \mathbb{Z}は整域である.
2.  \mathbb{Z}^{n \times n}は整域でない.

定義 1.9 Aを環とする.
任意の a \in A \setminus \{0\} Aに逆元をもつとき, A可除環 (division ring) という.
 Aが可換な可除環であるとき,これを体 (field) という.
また, Aが可換でない可除環であるとき,これを斜体 (skew field) という.

例 1.10
1.  \mathbb{Z}は2に整数の逆元がないので可除環でない.
2.  \mathbb{Q} \mathbb{R} \mathbb{C}は体である.
3. 四元数全体の集合 \mathbb{H}は斜体である.

定義 1.11 Aを整域とし, a, b \in Aとする.
ある cが存在して b = acとなるとき, b a倍元 (multiple) といい, a b約元 (divisor) という.

 A = \mathbb{Z}のときは倍元や約元は倍数約数と呼ぶのが一般的です.また, A = \mathbb{N}に対しても同じようにして倍元 (倍数) や約元 (約数) は定義できます.これは小学校のときから慣れ親しんできた事実でしょう.

*1:これは多くの場合「a divides b」と読まれます.今回の記事のタイトルにもなっていますね.

*2:対称律とは「 a bがその関係にあるとき, b aもその関係にある」という条件を意味します.数学的にはこの後に例示する等号や同型などがこの有名です.現実の世界には対称律を満たさない関係も多く,卑近な例に当てはめると,「AさんはBさんの親友である」という関係性は対称律を満たさない例だとしばしば諧謔的に取り上げられます.

*3:体の上でこの関係を考えると対称律を満たすといえなくはないのですが,そもそも体の上で割り切るという考え方はナンセンスです.

*4:この記号は稀に「擬順序」という関係を表すときに使われます.群論では正規部分群を表すときにも用いられます.単純な大小を表すわけではないものの,大小に関連しているとも言える関係なので,似た記号を使うことにはそれなりに道理が通るように思います.

*5:この記法を私に提示したのは友人です.我が物顔の書き方をしているところがありますがお許しください.

*6:ちなみにこれは束 (lattice) という代数構造をなします.ソクラテスみたい.




以上の内容はhttps://tobetakoyaki.hatenablog.com/entry/2020/06/26/133000より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14