前回の「ムダ」界隈の英語表現の記事は殆ど読まれていないようで残念です。
2026-04-01 ムダ ムダ ムダ ムダ〜ッ!
tmrowing.hatenablog.com
私が指摘したような差異を無視して、指導や評価を行うのはあまりに乱暴だと思っています。
大学入試の出題でも「?」なものがまだまだあります。
「良問」を出題することで定評がある、とされる学習院大でも次のような設問があり、英語力の何を測りたいのか理解に苦しみます。
空所に最適な語句を補充して英文を完成させるものです。
There’s no point in arguing about that, ( )?
- (イ) is it (ロ) isn’t it (ハ) is there (ニ) isn’t there
“that” が何を指すのかが全く不明で、しかも、“there’s no point in -ing” の定型表現としての意味の理解も全く問われないという…。
2000年代後半ではまだ、こんな出題も見られました。
a. とb. が同意となるように空所を補充させるもの。
a. There’s no point asking him about that.
b. (① I don’t know how to ask ② I don’t want to ask ③ I have a good reason to ask ④ It’s no use asking) him about that.
ここでは、
- there’s no point -ing
を
- it’s no use -ing
で書き換えさせています。
使用頻度から言えば「読めば分かる」表現を、「書いたり話したりできる」表現に書き換える、逆方向の処理を求めてしかるべきでしょう?
こんな出題もありました。
下線部を同意表現で言い換える(書き換える)もの。
It is no use trying to persuade him.
(ア) matter (イ) longer (ウ) worth (エ) good
useをgoodに換えさせています。
現代英語での使用頻度そのものと文化圏の偏りが気になります。
COHAで通時的概観
GLOWBEで地域差・文化差
台本のある話し言葉でMovie
「諺」で考えても、使用頻度には相当な差があるでしょう。
辞書の注記とは裏腹に、there is でもuseが用いられるようになってきていることがうかがえます。
ただ、オンラインコーパスの検索でも、辞書にしても教材にしても、「縮約形」の扱い一つで生息域が変わりますので、悩ましいところだというのは分かります。
ということで、今日は、あらためて「生成AI」二者(GaminiとClaude)に、以下の英語表現で考えてもらいました。
- She doesn’t listen to anyone’s advice, not even her closest aides, so
この書き出しに続けて、
- 「今更彼女を説得しようとしても無駄だ」
という意味の英語表現を続けるときに、
次の1から7までの表現の現代英語の実態から見た適否と、使用場面、使用頻度の差について解説してください。
- 1. there is no point in trying to persuade her now.
- 2. there’s no point in trying to persuade her now.
- 3. there’s no point trying to persuade her now.
- 4. it is no use trying to persuade her now.
- 5. it is of no use trying to persuade her now.
- 6. it is of no use to try to persuade her now.
- 7. what’s the point of trying to persuade her now?
私は普段遣いでは、ChatGPT 5.4も使っているのですが、今回の回答はあまりに冗長でしたので割愛しました。
Gemini Pro 3.1
提示された書き出し “She doesn’t listen to anyone’s advice, not even her closest aides, so...” は、短縮形(doesn't)が含まれている点、そして「側近の言うことすら聞かない」という文脈から、諦めや苛立ちといった感情的なニュアンスを伴うインフォーマル〜セミフォーマルなトーンを持っています。
この前提と現代英語のコーパス(言語データベース)における実態を踏まえ、7つの表現を構造と意味論の観点から3つのグループに分類して解説します。
I. "there is no point" 構造(選択肢 1, 2, 3)
「〜しても意味がない、目的をなさない」という状況の無意味さに焦点を当てる、現代英語で極めて標準的かつ高頻度な表現群です。選択肢2. there’s no point in trying...
- 適否と頻度: 非常に適切。現代英語において最も標準的かつ自然な選択肢の一つです。
- 使用場面: 日常会話から一般的なビジネス文書まで幅広く使用されます。前半の “doesn't” という短縮形とのトーンの連続性も完璧です。
選択肢3. there’s no point trying...
- 適否と頻度: 非常に適切。現代の口語において最も使用頻度が高い形です。
- 使用場面: 主に会話やカジュアルなテキスト。前置詞「in」を脱落させることで発話スピードが上がり、より感情的で直接的な響きを持ちます。現代英語の口語化の潮流を最もよく表しています。
選択肢1. there is no point in trying...
- 適否と頻度: 適切ですが、短縮形 “there's” を用いないことで、やや客観的で淡々とした事実の陳述という響きを持ちます。
- 使用場面: 書き言葉や、少し距離を置いたフォーマルな発話。前半のやや感情的な文脈と繋げた場合、後半で急に冷静になったような微妙な温度差が生じる可能性があります。
II. "it is (of) no use" 構造(選択肢 4, 5, 6)
「〜しても役に立たない、効果がない」という徒労感に焦点を当てる表現です。選択肢4. it is no use trying...
- 適否と頻度: 適切。文法的に標準的で、使用頻度も中〜高程度です。
- 使用場面: 一般的な書き言葉・話し言葉。ただし、口語の文脈に合わせるなら “It's no use trying...” と短縮する方が自然です。 “it is” と略さずに発音すると、 “is” に強調が置かれ「どうしても無駄だ」という説教じみた響きを帯びることがあります。
選択肢5. it is of no use trying...
- 適否と頻度: 現代英語の実態においては不適切(awkward)であり、使用頻度は極めて低いです。
- 解説: “be of no use” は “be useless” のフォーマルな等価表現であり、通常は名詞(例: This tool is of no use)に対して用います。形式主語の “It” を用いて後ろに動名詞(trying...)を置く構造は、文法的破綻とまでは言えませんが、ネイティブスピーカーの直観としては非常に冗長で座りの悪い表現と見なされます。
選択肢6. it is of no use to try...
適否と頻度: 文法的には成立しますが、文脈に対して不適切です。
解説: 19世紀の文学作品などで散見される古い構造であり、現代英語では極めて堅苦しく、大げさな響きを持ちます。前半の “doesn't listen” という日常的なトーンと著しい文体レベルの不協和音(Register clash)を引き起こします。
III. 修辞疑問文(選択肢 7)
選択肢7. what’s the point of trying...
- 適否と頻度: 最も効果的かつ適切。現代口語において極めて高い頻度で使用されます。
- 解説: 構造上は疑問文ですが、実態は「説得しようとして何の意味がある?(いや、何もない)」という反語(Rhetorical question)です。他の平叙文の選択肢に比べ、「側近の助言すら聞かないのだから」という前提に対する「諦め」や「苛立ち」の感情を最もダイレクトかつ論理的に引き継ぐことができます。
結論と推奨
提示された書き出しに続ける場合、トーンの連続性、感情的文脈との適合性、および現代英語の自然さの観点から、以下の順序で推奨されます。1. 選択肢 7 (What's the point of...):感情的な文脈との論理的結びつきが最も強い。
2. 選択肢 3 / 2 (There's no point [in]...):現代口語の最適解であり、自然な接続。
3. 選択肢 4 / 1:文法的には正しいが、やや硬さや温度差が生じる(短縮形にすれば解決可能)。
4. 選択肢 5 / 6:現代英語の会話的文脈においては避けるべき表現。
Claude 4.6 Opus
各表現の適否・使用場面・使用頻度の分析
まず前提として、7つの表現はいずれも文法的に非文(ungrammatical)ではなく、意味的にも「今更彼女を説得しようとしても無駄だ」を伝達できます。ただし、**現代英語の実態**において、自然さ・頻度・文体的位置づけに明確な差があります。
1. there is no point in trying to persuade her now.
- 適否: 文法的に完全に正しく、意味も正確。
- 使用場面: フォーマルな書き言葉、論説文、報道記事、公式な場でのスピーチなど。there is を縮約しないことで、やや格式ばった響きを持つ。
- 使用頻度: 書き言葉ではごく普通に出現するが、日常会話では縮約形(2番)のほうが圧倒的に優勢。口語でこの形を使うと、意識的に強調している、あるいはやや堅い印象を与える。
2. there's no point in trying to persuade her now.
- 適否: 完全に自然。現代英語で最も「安全牌」と言える形の一つ。
- 使用場面: 口語・文語を問わず幅広く使用可能。カジュアルな会話からセミフォーマルな文書まで対応する汎用性の高い表現。
- 使用頻度: 最も高頻度の部類。there's no point in doing は現代英語において定着したコロケーションであり、コーパス上でも極めて多くのヒットが確認される。
3. there's no point trying to persuade her now.
- 適否: 完全に自然。文法的にも問題ない。
- 使用場面: 主に口語・インフォーマルな書き言葉 (メール、SNS、小説の会話文など)。前置詞 in の脱落は、話し言葉における自然な省略(ellipsis)として広く容認されている。
- 使用頻度: 口語では2番と同等かそれ以上に頻繁。実際の会話では in を入れない話者のほうが多い可能性すらある。ただし、フォーマルな文章では in を明示するほうが好まれるため、文体による棲み分けがある。2番と3番の選択は、発話のフォーマリティの微調整として機能している。
4. it is no use trying to persuade her now.
- 適否: 文法的に正しいが、現代英語ではやや古風(dated / literary)な響きを帯びる。
- 使用場面: 文学作品、格言的な表現、年配の話者の口語、翻訳調の文体。現代のカジュアルな会話で突然これを使うと、やや不自然に聞こえる可能性がある。
- 使用頻度: 低下傾向にある。it is no use doing という構文自体が、20世紀半ば以降、特に口語において there's no point (in) doing に領域を譲りつつある。Google Ngram でも下降カーブが確認できる構文の一つ。なお、it's no use と縮約すれば口語的な色合いは多少増すが、それでも there's no point 系に比べると使用頻度は低い。
5. it is of no use trying to persuade her now.
- 適否: 文法的には成立するが、現代口語ではほぼ使われない。
- 構造上の問題: of no use は本来、補語として名詞・代名詞を取る形(This tool is of no use)が自然であり、動名詞句(trying to...)を主語的に従える用法は統語的に不安定と感じる母語話者が多い。つまり、of no use の後に動名詞を続ける結合そのものが、現代英語では周辺的(marginal)な位置にある。
- 使用場面: 19世紀的な文語体、文学的・修辞的な文脈でなら見かける可能性があるが、現代の実用文・口語ではまず選ばれない。
- 使用頻度: 極めて低い。事実上、アーカイブ的な表現。
6. it is of no use to try to persuade her now.
- 適否: 5番とほぼ同様の問題を共有するが、to不定詞を使っている分、構文的な据わりはわずかに良いと感じる話者もいる(of no use + to不定詞のほうが、of no use + 動名詞よりも古い英語では頻出)。
- 使用場面: 5番と同じく、古風・文語的な文脈に限定される。法律文書の旧い定型表現、聖書的・説教調の文体など。
- 使用頻度: 極めて低い。5番と同等かそれ以下。現代の一般的な英語使用者が自発的にこの形を産出することはほとんど期待できない。
7. what's the point of trying to persuade her now?
- 適否: 完全に自然。修辞疑問文(rhetorical question)の形をとることで、話者の苛立ち・諦め・呆れといった感情的ニュアンスが平叙文より強く前景化される。
- 使用場面: 主に口語、対話場面。相手(聞き手)に向かって語りかけるような場面で特に効果的。書き言葉でも、コラムや論評など、読者への語りかけを意識した文体で使われる。
- 使用頻度: 高い。what's the point of doing...? は日常会話で非常によく使われる定型パターン。ただし、先行文脈(She doesn't listen to anyone's advice..., so)との接続を考えると、so の後に疑問文が来る流れはやや唐突になりうる点に注意が必要。soは通常、結論・帰結を導く接続詞であり、平叙文との親和性のほうが高い。修辞疑問文を使うなら、so を外して独立文にするか、あるいは so I mean, what's the point of...? のように口語的な挿入句を介したほうが自然な場合がある。
総合比較表
# 自然さ(現代口語) 自然さ(現代文語) 頻度 文体的位置 1 ○ ◎ 高 フォーマル寄り 2 ◎ ◎ 最高 汎用 3 ◎ ○ 高 インフォーマル寄り 4 △〜○ ○ 中〜低(低下中) やや古風 5 × △ 極低 古風・文語的 6 × △ 極低 古風・文語的 7 ◎ ○ 高 口語的・感情的
皆さんの語感、実感との重なり具合、違和感などお知らせ下さると喜びます。
本日は以上です。
本日のBGM: The Like Song (Virna Lindt)






