今日も告知から。
4/4開催の辞書関連のオンラインセミナー。
英文ライティングの個別指導の講座もオンラインで開いています。
講座の概要は過去ログをご覧下さい。
生成AIの性能が日進月歩の昨今では、
- 有料講座で、教師から何を教わるんだ?
と訝る人もいるかも知れませんが、生成AIは適切な入力がなければ、適切な出力になりません。生成AIに「課題」を作成させるにも、入力が必要なのですから。
お題の作成から、経験豊富な教師には、生成AIには出せないフィードバックを返せることも多いのですよ。
目利き腕利きの教師と1対1で学ぶことの意味は、「AI時代」などといわれる今だからこそ、以前にも増して重い、深いものになっていると思っています。
「フィードバック」といえば、先日、ソーシャルメディアの英語教育、英語研究関係者の投稿で、こんなやり取りが目に留まりました。
フィードバックは一部(文法等)は除いて英語で出力するようにしているけど、これを日本語にするかどうか迷う。英語の方が勉強になると思うけど、英語だと読まないという心配があるw
— Ken Urano (@uranoken) 2026年3月18日
LexiTrackerは、英語でプロンプト書いてたら英語で回答、日本語だったら日本語、ってやってます。だいたい読まないので「短く回答」って入れたほうがいいですね。
— MizumotoAtsushi (@MizumotoAtsushi) 2026年3月18日
「だいたい読まない」つらいw
— Ken Urano (@uranoken) 2026年3月18日
我々もスピーキングのフィードバックですが、読まないだろうということで、言い換えの表だけにしました。笑
— Shungo Suzuki (@shungosuzuki) 2026年3月18日
(手元にあるものがこれですが、文字が小さくてすみません!)
設計思想の元論文:https://t.co/qSPJvcdJ7U pic.twitter.com/vSOhCrCyJq
やっぱり読まない前提なんですよねw 日本語だったら読んでくれるなら、英語の短いフィードバックよりは日本語にした方がぼくの信条に合うかなぁ。
— Ken Urano (@uranoken) 2026年3月18日
ご自身の学生のニーズに合わせるのが1番だと思います!
— Shungo Suzuki (@shungosuzuki) 2026年3月18日
弱みを指摘されるのはやはり辛いので。笑
私が少なからず驚いたのは、英語であれ日本語であれ、
- 読まれないなら(多くを)書かない。
というようなmindsetでした。
このブログも同じですが、読む人が多いか少ないか、とか、全部を読んでもらえるか、とか以前に
- 書かずんばなるまい (inspired by 大村はま)
というmindsetで書いていますから。
ここでこういうことを書くと、
- 建設的な批判を直接伝えよ
というような声も耳に入ってはきますが、私は今ではもう、英語教育関係の学会や研究会にも頻繁には出ていませんから、第一線の研究者と意見を交わすなどということも殆どありませんので、こうして「自分の庭」で呟いています。
現在、私が所属している英語教育系の学会は
- 英語教育UD学会
のみになりましたし、定期購読している有料の「英語の」報道メディアも
- New York Times
のみになりました。
そのNYTを定期購読している要因の何%かを、次のメディアが占めています。
- TastingTable.
なんのことはない、レストラン情報や料理・調理など飲食に特化したメディアです。
日常の話題で
- 衣食住に関わるテーマ語彙
というのは生活圏にないとなかなか実感がわかないものですが、それを補う付加価値も込みで、このメディアは楽しく読んでいます。
そんなTastingTable.で最近取り上げられた、スイーツを解説した英文が次の一文です。
With 7 layers of airy, orange-syrup-soaked cake and a rich velvety chocolate mousse, our chocolate orange layer cake is a showstopping Passover dessert.
With 7 layers of airy, orange-syrup-soaked cake and a rich velvety chocolate mousse, our chocolate orange layer cake is a showstopping Passover dessert. https://t.co/mz3m1SmCZ7
— Tasting Table (@TastingTable) 2026年3月20日
スイーツの名称が
- chocolate orange layer cake
なのは全然構わないのですが、それを描写するwithの付帯状況で、名称にあるlayerとorangeをただ繰り返す使い方があまりに稚拙だと感じます。
スイーツだからといって、甘すぎるのはちょっと…。
ライターの方の名誉のために言っておきますが、上記表現がこの記事の本文の解説に出てくるわけではないのです。記事本編は丁寧に書かれています。
ライターはKsenia Printsさん。
出てくるのは最後の「レシピ動画」の見出しのようなまとめの部分のみ。そこだけでした。
抜粋。
折角、美味しいものを伝えるべく書かれた文章を、無理に圧縮することで拙いものになるという例ではないでしょうか?
某検定で「要約」が課されて以来、日本の英語教室でも「要約」に躍起になっている印象がありますが、「置き換えられないことば」を大事にする姿勢をもっと養って欲しいと願わずにはいられません。
ということで、
同じ語の繰り返しで説明が深まってもいない、視覚や聴覚や味覚、噛んだときのテクスチャーなどの五感にも、直観や情緒にも訴えかける要素が薄い部分を改善した修正案をほぼ同じくらいの語数で作成
しようと思います。
- そんなの料理評論家でもなければ無理でしょ?
と思ったそこのあなた。
こういうときこそ
- 生成AIに丸投げ!
ですよ。
たとえ丸投げであっても、上記の「この英文に関する個別の着眼点」を入れれば、冗長なプロンプトを用意する必要はないでしょう。
以下、私がいつもやり取りする三者の回答を。
ChatGPT 5.4
修正案
- With seven featherlight tiers of sponge steeped in fragrant citrus syrup and a deep, silken chocolate mousse, our chocolate orange layer cake is a showstopping Passover dessert.
狙い
- layers → featherlight tiers
“layer cake” と “layers” の重複を避けつつ、見た目の高さと軽やかさを出しています。
- orange-syrup-soaked cake → sponge steeped in fragrant citrus syrup
“orange” の反復を避け、 “fragrant” で香り、 “steeped” でしっとり感を補っています。
- rich velvety chocolate mousse → deep, silken chocolate mousse
濃厚さと舌触りをより簡潔に、少し洗練して表現しています。
ほぼ同語数で、もう少し感覚的に振った別案も挙げます。
- With seven airy tiers of tender sponge brushed with bright citrus syrup and a lush, velvety chocolate mousse, our chocolate orange layer cake is a showstopping Passover dessert.
- With seven delicate tiers of syrup-kissed sponge and a dark, satin-smooth chocolate mousse, our chocolate orange layer cake is a showstopping Passover dessert.
必要なら次に、
- もっと “高級パティスリー風”
- もっと “アメリカのフードメディア風”
- もっと “文学的・官能的”
- 逆に “平明で上品”
の4方向でそれぞれ数案ずつ出せます。
Gemini 3.1 Pro
【修正案1:食感と香りのコントラストを際立たせる表現】
- Featuring seven tiers of featherlight sponge drenched in fragrant citrus nectar and melt-in-your-mouth cocoa mousse, our chocolate orange layer cake is a showstopping Passover dessert. (25語)
解説:
`layer`を`tiers`(段、層)に、`orange`を`citrus nectar`(芳醇な柑橘の蜜)に言い換え、語の重複を解消しました。また、`airy`を`featherlight`(羽のように軽い)、`velvety`を`melt-in-your-mouth`(口の中でとろける)へと解像度を上げることで、噛んだ瞬間の軽やかさと、舌の上で溶ける濃厚なムースの対比(テクスチャーと味覚)を強調しています。【修正案2:情緒とリッチな質感を強調する表現】
- Boasting seven tiers of cloud-like sponge kissed with zesty citrus syrup and a luscious cocoa mousse, our chocolate orange layer cake is a showstopping Passover dessert. (26語)
解説:
`kissed with zesty citrus syrup`(爽やかな柑橘のシロップをまとわせた/キスをしたような)という情緒的なアプローチを採用しました。`cloud-like`(雲のような)で視覚と触覚に訴えかけ、`luscious`(甘美な、官能的な)という単語で、チョコレートムースのうっとりするような濃厚さを直観的に伝えています。【修正案3:素材の一体感と果汁感を表現する表現】
- Uniting seven tiers of featherlight, citrus-drenched sponge with a luxuriously melting cocoa mousse, our chocolate orange layer cake is a showstopping Passover dessert. (24語)
解説:
文頭を`With`という静的な前置詞から`Uniting`(融合させる、結びつける)という動詞の分詞構文に変えることで、スポンジとムースが口の中で混ざり合う体験を暗示しています。`citrus-drenched`(柑橘がたっぷり染み込んだ)とすることで、噛んだときにジュワッと溢れるシロップの聴覚的・触覚的なシズル感を強めました。
Claude 4.6 Opus
おっしゃる通り、元の文では「layer」が with句と固有名詞で二重に現れ、「orange」も syrup と名称で重複しています。名称は固有名詞なので変えられない以上、with句の側で語彙を差し替え、五感に訴える描写を厚くすべきですね。
以下が修正案です。
- With 7 tiers of cloud-light, citrus-syrup-soaked sponge and a lush, silk-dark chocolate mousse, our chocolate orange layer cake is a showstopping Passover dessert.
変更点と意図
元の表現 修正後 狙い --- --- --- “layers” “tiers” 名称の “layer” との重複を回避しつつ、段々に積み上がった視覚的な高さ・構造を喚起 “airy” “cloud-light” 「空気のような」という抽象から、雲を噛むような軽さという触覚・口溶けの比喩へ “orange-syrup” “citrus-syrup” 名称の “orange” との重複を避けつつ、柑橘の酸味と芳香を広く包含する語に置換 “cake” “sponge” 名称末尾の “cake” との重複を回避し、弾力ある食感(テクスチャー)を暗示 “rich velvety” “lush, silk-dark” “rich” はやや手垢のついた修飾語。 “lush” で濃密な味わい、 “silk-dark” でムースの滑らかさ(触覚)と深いダークチョコレートの色合い(視覚)を一語に圧縮 語数は元文(30語)とほぼ同じ 29語 です。名称 "chocolate orange layer cake" には一切手を加えていないので、with句と名称の間で同一語が繰り返される箇所がなくなり、描写の解像度も上がっています。
さあ、この三者からの修正案を読んだ上で、オリジナルの記事本文の方を読み直してみる意欲は生まれたでしょうか?
レシピ動画はこちらに。
腕に自信のある方はご自身でもつくってみてはいかが?
本日はこの辺で。
本日のBGM: Chocolate Panic (フジファブリック)
