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野生の知 臨床の知

ダイアン・キートン・ロスを引き摺っての一週間。
気がつけばフィギュアスケートもGPSの仏杯が開幕。
女子シングルだと、私は住吉選手推し。
派遣された2戦の成績も重要ですが、GPFの6枠は厳しいので、全日本にピークを合わせてほしいと願っています。

生業では、出講先の作問祭りも終了!
あとは試験後の採点天国ですね。

私の担当する「表現」系の英語科目も、「英語II C」「ライティング」「英語表現」と移り変わり、今は「論理表現」という、「いったいどの教科の中の科目なんだよ!」という名称のコマを教えています。

私自身は高校時代、「グラコン」がまだ正式に教えられている教育課程で育った人間なので、「明示的に」文法を教わることにも、自分が教えることにも抵抗はまったくありません。また、一昔前の「オーラルコミュニケーション」という科目名で設置されていながら、実際には文法を教えるコマが「オーラルG」などと揶揄されていた時代も通過しています。その流れでいくと、イマドキの「論理表現」で文法を教えるコマは「何G」と呼ばれるんでしょうかね?

このブログも「授業日誌」として20年以上書き続けているので、私の学習英文法観も指導法もオープンにしてきたつもりですが、2018年以降の「はてな」の仕様変更で、pdf等の資料がダイレクトに貼れなくなったので、現代では note で記事やマガジンとして公開したり、対面やオンラインのセミナーでお伝えしています。

noteの頁はこちら。

note.com

今も昔も、「高校を卒業する多くの日本語母語話者の英語の運用力が低いこと」を批判する材料として、大学入試で問われる「英語学力」を持ち出したり、高校現場での「指導内容」や「教師の指導力」を取り上げたりしている印象なんですが、もはや大学入学のために、英語の学力試験を受けることが必須だという人はそれほど多くない、ということを知ってほしいものです。

巷でよく聞かれる「批判ワード」が、

  • 文法訳読

ですが、「文法」はもちろん「訳読」という用語で何を指すか、という部分で、英語の指導者間でさえコンセンサスがないので、議論が深まらないことが多い印象です。

対面でのシンポジウムを経て、登壇者と有識者が共著者となって執筆した

  • 『学習英文法を見直したい』(研究社、2012年)

www.kenkyusha.co.jp

には私も著者の1人として加わっているのですが、干支も一回りして、そこでの問いかけも殆ど届かなかった、届いた人にも忘れられたなぁ、というのが正直な実感です。

ここでも再録はしておきます。

  • 英文法を完成された「体系」と見る時,その体系に不備がある
  • 英文法の体系の説明・記述で用いられる個々の具体例が英語の実態と一致していない
  • 言語事実の記述,運用に当たっての取り扱い説明で用いられる言語情報が不正確,不適切である

学校の英語教員向けの概説書って、「啓蒙的」なものが多いんですよね。
書名はあげませんが、書影は既にツイッターで示していましたのでそちらをご覧下さい。

必然的に中高現場の英語教員は、英語そのものに関して、英語の教え方に関して、常に

  • (斜めであっても)上から色々言われ
  • あなたの教えている英語は通用しないのではと「?」を突きつけられ
  • 一歩遅れているから授業がうまくいかないんですよとダメ出しされ

ている感じがするのでは?

いやいや、中高現場を預かっているのは現場教員なのですから、ノイズを気にしすぎることなく、まず始めること、始めたら続けることですよ。

昔話で申し訳ないけど、私が若い頃の語法書の類って、現場教員としてそんなに「ダメ出し」されている感じはしなかったし、自分の指導にも有益だったと思います。読んで得るものは多くて大きかったけど、「これまで知らなくて、できなくてごめんなさい」なんて感じは全くなかったもの。

先日も大型書店の店頭でいくつか本を眺めてきました。

  • 『学習英文法研究の新展開 教員が知っておくべき文法』

  • 『教員が知っておくべき英文法』

は同じような著者陣。10年前くらいの学会セミナーの再編?前者は論文再録という印象。後者は最後の第3部で、例によって「一歩進んだ知識を解説」になっています。
一歩遅れてたっていいじゃない、その分長く歩き続ければ。

  • 『学習英文法を見直す』

という書名も気になったので、各章の参考文献を確認したが『学習英文法を見直したい』(研究社、2012年) の十数名の著者のどの記述も参照すらされていませんでした。

開拓社は次々と英文法関連の書を出しているけれど、「また教師向けのものが出るの? 教師は授業に専念させてやって…」と思います。

今読んでいるのは

  • 藤森・吉村・中山 『なぜこの英語がむずしいのか 考え方・教え方』(くろしお出版・2025)

私の関心は名詞句の限定表現なので、次の写真の辺りを念入りに。

所謂「接触節」「短縮関係節」の扱いで、教科書だけでなく中高現場での指導事例をどの程度精査したのか疑問に思った次第。
参考文献はほとんどが英語で書かれたもの。
章の分担執筆の事情はあるかと思うのですが、この本の「不定詞」のところには、所謂「不定詞の形容詞的用法」の実例や指導法の解説がなく、後置修飾を含む「分詞」自体の項目がないのです。
名詞句の限定表現として「関係詞節」を教える際には、これらとの異同をより丁寧に扱う必要があると思っています。

拙著

  • 『チャンクで積み上げ英作文』(三省堂)

tb.sanseido-publ.co.jp

tb.sanseido-publ.co.jp

では、不定詞の後置修飾も、分詞の後置修飾も、関係詞も同格節も、全て名詞句の限定表現としてチャンクで取り扱っています。

学校の前で停車中のバス a bus waiting in front of our school
難民をたくさん乗せている船 a ship carrying a lot of refugees
海に面した窓 a window facing the ocean
青系統の色 a color belonging to the blue group
ロシア語で自由という意味の語 a Russian word meaning freedom

関係詞の縮約と考えるにしても、進行形不可の動詞が -ing形になっているところの扱いが考慮されていない指導法はダメでしょう?

点字で印刷された小説 a novel printed in braille
映画化された漫画 a comic book made into a movie
祖父に因んでケンと名付けられた少年 a boy named Ken after his grandfather
潔白が証明された人たち people found to be innocent
家を離れざるを得なかった人たち people forced to leave their homes

この -ed/en形にしても、「態」を前面に出すことで、「時制」が隠れることになりますから、関係詞を用いてパラフレーズする際に、受け身のbe動詞の時制に無頓着・無神経な指導法や教材は勘弁してくれ、と思います。

頼りになる人 someone to turn to
彼のことを思い出す歌 the song to remember him by
月面を最初に歩いた人 the first person to walk on the moon
助言を求めるのに最適な人 the best person to ask for advice
住むのに最適な場所 the best place to live
簡単な減量法 an easy way to lose weight
多様性を認識できないこと failure to recognize the diversity
他者にとってのお手本 a good example for others to follow
生徒が他の生徒から学ぶ機会 chances for students to learn from their peers

最近の指導法も教材も、とかく「不定詞は未来志向」で乗り切ろうとしがちな印象ですが、過度の単純化は、そのあとのツケを払うのが大変ですので、一つ一つ丁寧に指導するのが吉。

あなたがよく知っている人 the person you know very well
あなたのことをよく知っている人 someone who knows you very well
忘れることのないだろう先生 the teacher I will never forget
開けてみたら空っぽだった箱 the box I found empty
彼らが解放すると約束した人質 the hostages they promised to set free
以前隣に住んでいたその家族 the family who used to live next door
手付かずのまま残る自然環境 natural environment that is left untouched
あなたが一番だと思う名医 the doctor who you believe is the best
選んでおけば良かったと思う選択肢 the option I wish I had chosen
第二言語学習に伴う苦労 the difficulty with which you learn a second language

そして「関係詞」の扱い。一歩先になど行かなくて良いので、形容詞節中での(助)動詞と時制が肝だということにもっと意を砕くべきでしょう。

『チャンクで積み上げ英作文』では、また、文からチャンクを括り出すドリルもBasic/Standardともに配置しています。

I like the musician best. → the musician I like best
I am sick and tired of her tendency to exaggerate. → her tendency to exaggerate I am sick and tired of
The police officer helped the old lady. → the police officer who helped the old lady
The world has seen countless examples of war advancing technology. → the world that has seen countless examples of war advancing technology

元になる「文」は大文字で始まり、句読点(ここではピリオド)で終わりますが、括り出されたチャンクは小文字で始まり、最後に句読点は付けません。
この部分が、上掲の『…考え方・教え方』ではチャンクなのに、大文字で始まり、チャンクの終わりにはピリオドがついているところに大きな違和感を覚えました。最近の学術的な作法なのか、私にはよく分かりませんが、そもそもの指導法に関しては、海外の英語文献を読んで業績を積み上げるだけでなく、国内の市井の教員の実践にも目配りをしてほしいものです。

以下自作教材の宣伝。

英文法の基礎・基本:動詞から拡げるか、名詞から拡げるか
note.com

今日は「気になる語法」というよりは、関係詞の用法での注意点を。
NYTは定期購読しているので、Breakingはメールで配信されてくるのですが、昨日布団の中で見て衝撃的だったニュースがこれ。

www.nytimes.com

その中から、次の一節を。

But one of the U.S. officials, all of whom spoke on the condition of anonymity to discuss personnel matters, said that Admiral Holsey had raised concerns about the mission and the attacks on the alleged drug boats.

非制限用法での関係代名詞whomの典型的生息域。現代英語では、単純な疑問文や疑問詞節では代名詞のwhomの出番は殆どないのですが、この形容詞「節」のように、先行文脈から、その部分や、全体を取り出して補足する環境では、whomを使わないと言いたいことを言い切るのは難しいです。過去形のspokeが肝ですね。SVを構成する以上、接続詞相当の語がないと「つなぐ」ことができないので、関係代名詞にすることでルール違反を防いでいます。日本語にはこの関係詞の用法に対応する構造を持つ表現形式がないので

しかし、米当局の一人、その当局の者は皆人事問題についは匿名を条件で口を開いたのだが、その一人は、ホルシー提督が任務と麻薬密輸船とされる船舶への攻撃について懸念を表明したと述べた。

のように、saidの主語に当たる名詞を繰り返すなどの工夫が必要となります。

私の過去ツイートでもこのパターンは取り上げています。
カンマ+both of whom を確認。

合掌。私の授業の今年のobituary課題でもKobeを選んだ生徒がいました。
記事本文から、関係代名詞の whomの生息域を。
Vanessa is also mom to late daughter Gianna, whom she shares with Kobe, both of whom died in a tragic helicopter crash in January 2020, alongside seven others.

次の例では、カンマ+some of whom を取り上げています。

時制のコントロールの練習として。イマココから今後の展開で現在形とwillが使われているけれど、had servedと「過去完了」が使われている時系列を確認。隠れている「過去の事実」は何?関係詞whomの生息域は典型例。挿入の背景説明でカンマsome of whom Vの流れでは今でも現役の表現と言えるでしょう。

当該のNYTの記事に戻ると、次の英文は、一見同じような情報の流れ、意味のつながりに感じられますが、全く違う環境です。

Admiral Holsey, who is Black, becomes the latest in a line of more than a dozen military leaders, many of them people of color and women, who have left their jobs this year.

ここでの “…, many of them + 名詞句,” を先ほどの英文と比べてみてください。
挿入句、という点では同じですが、動詞無しで独立分詞構文的の付帯状況で補足となっています。
「彼らの多くが非白人や女性なのですが」という意味内容です。ここでは挿入のチャンクの中に時制を持った(助)動詞がないので、関係詞である必要はないというよりも、ここを関係詞のwhomにするのは誤りであることを確認。
DeepLの和訳はこの挿入句を(  )で処理していました。

ホルシー提督(黒人)は、今年辞任した十数名以上の軍指導者(その多くは有色人種や女性)の最新の例となった。

同記事から類例を追加しておきます。

There are now about 10,000 U.S. troops, most of them at bases in Puerto Rico, but also some 2,200 Marines on amphibious assault ships. In all, the Navy has eight warships and a submarine in the Caribbean.

先行詞は US troopsですが、挿入句の “most of them + at + 名詞句(= 場所句)” では、beingもlocatedも無しでOKであり、themを関係詞にするのは誤りだということを確認。

現在、米軍は約1万人がおり、その大半はプエルトリコの基地に駐留していますが、強襲揚陸艦には約2,200人の海兵隊員も乗艦しています。合わせて、海軍はカリブ海に8隻の軍艦と1隻の潜水艦を展開しています。

この挿入句での動詞成分を使わない、<部分/全体 of 代名詞>の類例も過去のツイートで言及していました。
その元記事。ロイターでした。

Close to 250 Ecuadoreans, many of them university students, arrived in the country after fleeing Ukraine following Russia's invasion, joining hundreds of other Latin Americans who have evacuated

  • many of them university students

のチャンクの中に動詞成分が無いことを確認。
Kagi訳はこちら。

ロシアの侵攻を受けてウクライナから逃れた後、約250人のエクアドル人(多くは大学生)がこの国に到着し、すでに避難している数百人の他の中南米出身者に加わりました。

挿入句を (   )で処理ですね。

「体系的な文法」の重要性を訴えている指導者、学参や問題集では、このような項目を「関係詞」や「独立分詞構文」の項目でどのように扱っているんでしょうか?

私は、虫の目で一つ一つを丁寧に扱い、自分の足場を拡げていくことを大事にするだけです。

本日はこの辺で。

本日のBGM: 灯を護る (スピッツ)

youtu.be




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