今日の「気になる語法」は、ちょっとどころではない気になり方で、ここ3年くらい悶々としていたもの。
先日出版された語法のガイド本
- 柏野健次 『英語教師のための語法ガイド』(大修館書店、2025年)
にも出ているのですが、2022年の冬にWebの語法連載で同じ著者による記事が出ていて、その時から典拠が気になっていました。
[069] a lot of, lots ofとplenty of 【使い分け】 2022.12.19
www.taishukan.co.jp
この記事には次のような記述があります。
lots ofは数量の点でa lot ofよりも多く、また、よりくだけた感じを伴います。
記事で示されている用例と和訳を引いておきます。
(3) There were lots of people in the theater.
(劇場にはかなり多くの人がいた)
(4) There were a lot of people in the theater.
(劇場には多くの人がいた)
この記述に基づけば、劇場にいた人数は (劇場3の人数) > (劇場4の人数) となるようです。
書籍版の語法ガイドではさらに踏み込んだ用例と解説をしています。 (p.126)
「多くの」を表す最も一般的な表現は a lot of で、lots of はa lot of よりも多いことを表す。(中略)
上で見た意味の違いを以下の各例から読み取って下さい。
(3) a lot of books (多くの本) / lots of books (非常に多くの本)
この断定が気になるのですね。
学習用の英和辞典でも、似たような注記を与えているものが無いわけではないです。
以下、左が『Wisdom英和』、右が『G6』です。
ただし、少なくとも、Wisdomでは「傾向」、G6では「一般的に」「暗示する」という表現になっています。
Swan のPEU(第4版、2016年)では次のような記述。
172
(中略)
2 a lot of and lots of
These are rather informal. In a more formal style, we prefer a great deal of, a large number of, much or many. There is not much difference between a lot of and lots of: they are both used mainly before singular uncountable and plural nouns, and before pronouns. It is the subject, and not the form lot/lots, that makes a following verb singular or plural. So when a lot of is used before a plural subject, the verb is plural; when lots of is used before a singular subject, the verb is singular.
- A lot of time is needed to learn a language.
- Lots of patience is needed, too. (not Lots of patience are needed, too.)
- A lot of my friends want to emigrate. (not A lot of my friends wants …)
- Lots of us think it’s time for an election.
意味の強さとか、数量の差に言及はありません。
Collins COBUILD English Usage (第4版、2019年)にも a lot of とlots of を取り上げた項目があります(pp.299-300)。
しかしながら、ここでも意味の強さや数量の差への言及はありません。
まあ、この版の貴重な注記としては、次の記述と用例に注目しておきたいものです。(p.300)
You can use a lot with more to emphasize the difference between two quantities or amounts.
- She earns a lot more money than he does.
In conversation, you can use lots with the same meaning.
- She meets lots more people than I do.
少し古い資料にはなりますが、『英語表現辞典』(第二版、研究社、1985年)では、次のような記述があるだけで、やはり数量の差、意味の強さへの言及はありません。(pp.675-676)
lot
(1) A lot of が複数名詞とともに主語として用いられるときは動詞も複数形をとり、不可算名詞に伴われるときは単数扱いになる。lots of についても同様である。
(中略)
(4) A lot of と同じ環境でlots も使えるが、a lot of とlotsでは後者のほうがくだけており、形式ばった文語体では避けられる。
COBUILDのGrammar (第4版、2017年)では、文体への言及がありますが、意味の強さや数量の差には注記はありません。
Usually, though, much is not used in affirmative statements. Instead, people generally use a lot of and, in less formal texts, lots of. For example, people would not usually say I have much work to do; instead, they would say I have a lot of work to do. For more information on a lot of, see 2.176.
Collins UK. COBUILD English Grammar (Collins COBUILD Grammar) (English Edition) (p.209). HarperCollins Publishers. Kindle 版.
このような文体に関する注記(= lots of はフォーマル度が低い;インフォーマルな文体という記述)は、内外の辞書や英語本、Web上のフォーラムに多いのですが、Columbia Guide (1993)では次のような記述です。 (p.276)
lots of, a lot of
many commentators label these locutions Colloquial, but it is clear that they are both Standard and acceptable at all levels of use, although some conservatives may think lots of unsuited to formal contexts:
- We had lots of comment on the proposal.
- There was a lot of good-natured dissent expressed.
比較的新しいと思われるMcCarthyの文法フィールドガイド (2021年)でも、文体と頻度への言及はあれども、数量の差や意味の強さには触れていません。
LOTS OF Lots of is less formal than many of or a lot of. Many of these problems go unnoticed for years. (more formal) A lot of these problems go unnoticed for years. (less formal) Lots of these problems go unnoticed for years. (least formal) In written texts, a lot of is three times more common than lots of, in both British and American English.
McCarthy, Michael. McCarthy's Field Guide to Grammar: Natural English Usage and Style (English Edition) (p.134). John Murray Press. Kindle 版.
ということで、私の手元の資料では、Wisdomでの「傾向」、G6での「暗示」と重なるような記述、用例は見い出せずじまいでした。柏野 Web連載、柏野本新刊の典拠も気になるところです。
生成AIにも訊ねて見ました。
典拠として論文や書籍を挙げてくれるのはいいのですが、存在しない架空の著者や文献を挙げることもあったり、固有名詞は存在しても、その著作は存在しなかったりと、確認するのは一苦労です。以下、そこまでの確認はしていませんので、悪しからず。
Claude 4
この興味深い語法の問題について調べてみましたが、実際のところ、many, a lot of, lots of の間に量的な差があることを実証した学術研究は見つけることができませんでした。
学術研究の現状
コーパス研究の限界
ご指摘の通り、コーパス研究では以下の理由で意味の微細な差を捉えるのが困難です:文脈によって指示する数量が大きく異なる
話者の主観的判断に依存する
比較可能な同一条件での使用例を大量に収集するのが困難
文体差に関する研究
一方で、文体・レジスターの違いについては多くの研究があります:many: よりフォーマル、学術的文章で多用
a lot of: 中間的なフォーマル度
lots of: よりインフォーマル、話し言葉的
辞書の記述について
一部の辞書に見られる「lots of > a lot of > many」という量的序列の記述は、おそらく以下に基づいている可能性があります:編集者の直感的判断
限定的な観察
インフォーマル度と量的表現の強さの混同結論
現時点では、この3つの表現間に客観的・定量的な差があることを示す信頼性の高い学術研究は確認できません。むしろ、これらは同じ量的概念を異なる文体レベルで表現する同義的な表現として扱われているのが学術的コンセンサスのようです。
Gemini 2.5 pro
ご質問ありがとうございます。英語の数量詞 many, a lot of, lots of の表す「量」の差について、学術的な裏付けがあるかという大変興味深いご指摘ですね。
結論から申し上げますと、「many < a lot of < lots of」という明確な量の階層を示す、広く認知された学術研究や論文は、私の知る限り存在しません。 多くの言語学者や英語語法の専門家は、これらの表現の主な違いを「文体(フォーマリティ)」と「文法的な使用域」にあるとしており、量の大小で区別することは一般的ではありません。
以下に、ご質問のポイントに沿って詳しく解説します。1. 学術研究・文献における見解
ご指摘の通り、主要な文法書や語法書(例:Quirk et al. "A Comprehensive Grammar of the English Language", Biber et al. "Longman Grammar of Spoken and Written English")では、これらの数量詞の違いは主に以下のように説明されます。a. フォーマリティ(文体)の差
これが最も広く合意されている区別です。
many: よりフォーマル(formal)。書き言葉や、改まったスピーチで好まれる。
例: Many researchers have investigated this phenomenon.
a lot of: 中間的(neutral)/非公式(informal)。書き言葉・話し言葉の両方で非常に広く使われる。
例: A lot of people came to the party.
lots of: より非公式(more informal)。特に親しい間柄での話し言葉で頻繁に使われる。
例: Don't worry, we have lots of time.
このフォーマリティの階層は、言語学的なコンセンサスと言ってよいでしょう。b. 文法的な使用域の差
肯定文、否定文、疑問文での使われやすさにも差があります。
肯定文: 現代英語の肯定文、特に話し言葉では many の使用が避けられ、a lot of / lots of が好まれる傾向が強いです。
△ I have many friends. (やや古風または堅い響き)
○ I have a lot of friends. / I have lots of friends.
否定文・疑問文: many は否定文や疑問文では自然に使われます。
I don't have many friends.
Do you have many friends?2. 「量の差」に関する見解はどこから来たのか?
では、なぜ一部の辞書で「量の差」が示唆されるのでしょうか。これにはいくつかの可能性が考えられます。a. 主観的なニュアンスの記述
lots of は a lot of よりも口語的で、しばしば感情的な強調を伴います。話者が「うわ、たくさん!」という気持ちを込めて使う場合、聞き手はその言葉から主観的に「より多い」という印象を受ける可能性があります。 辞書の編纂者が、この語用論的(pragmatic)な効果や心理的な印象を「量の差の傾向」として記述したのかもしれません。しかし、これは話者の意図や文脈に依存するものであり、lots of が客観的に a lot of より多い量を指すという意味論的(semantic)な規則ではありません。b. 過度の一般化
学習者向け辞書などでは、微妙なニュアンスを分かりやすく伝えようとするあまり、本来は固定されていない傾向を「ルール」のように記述してしまうことがあります。3. コーパス研究やインフォーマント調査について
ご推察の通り、この問題はコーパス研究で実証するのが非常に困難です。コーパス研究の限界: コーパスは「どの表現がどの文脈で使われたか」の頻度を示すことはできますが、話者がその時点で心に思い描いていた「具体的な量」を測定することはできません。例えば、"a lot of people" が100人を指す文脈もあれば、1万人を指す文脈もあります。その文脈で lots of people と言われていたとしても、それが a lot of よりも多い量を意図していたという証拠にはなりません。コーパス研究の大家である Biber らの研究も、主にフォーマリティや文体の違いに焦点を当てています。
インフォーマント調査: この特定のテーマ(many/a lot of/lots ofの量の比較)に絞った大規模なインフォーマント調査の学術論文は、広く知られたものとしては見当たりません。もし存在したとしても、それは非常に小規模な心理言語学的実験の報告である可能性が高いです。
仮に調査を行ったとしても、結果は文脈に大きく左右されるでしょう。例えば、「箱の中にリンゴがたくさんある」という状況を見せて "How many apples are there?" と尋ねた場合、被験者が many, a lot of, lots of のどれを選ぶかは、その人の個人的な語感や会話スタイルに依存する可能性が高く、リンゴの個数と明確な相関関係を見出すのは難しいと予想されます。
言語学では、このような微妙な意味の差よりも、よりシステマティックな文法規則や文体の差が研究の主対象となる傾向があります。結論として、
many, a lot of, lots of の間に量の階層関係があるという説は、学術的な裏付けに乏しいと言えます。これらの表現の選択は、話者がいる状況のフォーマルさ、文の種類(肯定・否定・疑問)、そして話者の個人的なスタイルによって決まるものであり、客観的な「量の差」を示すためのものではない、と理解するのが最も正確です。
辞書に見られる注記は、lots of が持つ口語的な強調のニュアンスを捉えようとした結果かもしれませんが、それを固定的な量の差として解釈するのは避けた方がよいでしょう。
ChatGPT 5
結論(先に要点)
many / a lot of / lots of のあいだに「表す量の大小(many < a lot of < lots of)」という順序を体系的に実証した学術研究は、主要な文法書・語用論・コーパス研究・実験意味論のいずれでも確認されていません。
研究で繰り返し示されるのは、量そのものの差ではなく、主にレジスター(フォーマル度)・談話機能(評価性・感情性)・語法上の分布差です。概ね many はよりフォーマル、a lot of は中立〜口語、lots of はより口語的・表情的(emphatic/expressive)という整理が妥当です。実験・インフォーマント調査で「lots of のほうが a lot of より数量的に大きい」という判断が一貫して得られたとする報告も、少なくとも査読研究では見当たりません。多くの研究は many などの量的形容詞の「あいまいさ(文脈依存の閾値)」を扱いますが、three-way の数量スカラー差を仮定しません。
拠り所になる代表的文献(中核的見解)
Biber, Johansson, Leech, Conrad, Finegan (1999) Longman Grammar of Spoken and Written English
コーパス分布から、many は学術レジスターで高頻度、a lot of は会話・フィクションで多く、lots of は会話に偏る、といったレジスター差を示します。量の大小差は主張しません。Huddleston & Pullum (2002) The Cambridge Grammar of the English Language
a lot of / lots of を many/much の口語的対応物として扱い、スタイル差を述べるのみで、数量差を与えません。Quirk, Greenbaum, Leech, Svartvik (1985) A Comprehensive Grammar of the English Language
many/much と a lot of/lots of の置換可能性とレジスター差を記述。数量の序列化は示しません。Brems, Lieselotte(一連の研究。特に 2011 のモノグラフ)
a lot (of)/lots of の文法化・主観化(subjectification)・評価性の強化をコーパスで分析。lots of は a lot of より口語的・感情的で、誇張的に用いられやすいことを示唆しますが、「常により大きい量を意味する」とは結論しません。数量値そのものの差というより、談話的な強調・評価ニュアンスの差。Solt, Stephanie(例:2015 など、量的形容詞の意味論)
many/few などの「Q形容詞」は文脈依存の閾値をもつ曖昧表現で、固定的な数値を符号化しないことを理論・実験的に示します。a lot of も同様に量を表すが、表現間で数値スケールが固定的に順位づけられるという前提は置きません。Van Tiel, van Miltenburg, Zevakhina, Geurts (2016) Scalar diversity(含意計算の実験研究)
many のような語は上限・閾値解釈が語彙ごとに多様で文脈依存であることを示すが、a lot of / lots of との数量差を序列化する結果は報告していません。補足的な実証知見(数量差ではなく分布・語用差)
極性・構文環境の違い
「not many」は極めて自然で頻度も高い一方、「not a lot of」「not lots of」は相対的に起こりにくい/口語寄り。downward-entailing 環境では many が選好されやすいという分布差が報告されています(大規模コーパスの記述・文法書の用法解説)。これは数量差ではなく、語用・構文上の適合性の差。語用的・評価的ニュアンス
lots of は会話で感情価(positive affect)や誇張的用法に寄りやすく、評価的・感動詞的文脈(感嘆文など)に好まれる傾向がコーパスで観察されます(Brems ほか)。しかしこれは「数がより多い」と直結する命題内容の差ではありません。共起と名詞タイプ
many は可算複数で形式ばったトピック(抽象名詞、学術語彙)と共起しやすく、a lot of / lots of は口語的・具体語彙、質量名詞とも広く共起、という傾向が報告されます(Biber 1999 ほか)。これも数量差の主張ではありません。インフォーマント調査・実験について
many の閾値(何割くらいから many と感じるか)をたずねる評定課題や、文脈操作による解釈実験は複数ありますが、a lot of / lots of を含めて三者の「感じる数の大小」を直接比較し、lots of > a lot of > many という一貫した序列を示した査読研究は見当たりません。一部のコーパス・歴史変化研究は、lots of のほうが表現的強度(emphatic force)が高い可能性を示唆しますが、それは談話的強調(語用的強度)であり、数値的強度(実際の数量レンジ)の固定化ではない、という立場が主流です。
学習辞書の注意書きとの関係
学習辞書・用法辞典が「lots of のほうがより多さを暗示」と注記するのは、口語での誇張・強調の傾向を要領よくまとめた実用的指針と考えられます。学術的には、それを数量的真偽条件の差として一般化する根拠は現在のところ乏しい、というのが安全なまとめです。実務上の指針
数量そのものに差はないと考え、選択は文体・レジスター・談話目的で決めるのが無難。
フォーマル/書き言葉/否定・比較など精密さが要る場面: many/much を優先。
中立〜口語: a lot of。
くだけた会話・感情をこめたい/誇張気味に言いたい: lots of(ただしフォーマルな文書では避ける)。
学習・指導では「lots of のほうが“より大きい数を意味する”」という断定は避け、「より口語的で強調的に響くことがある」と説明するのが妥当です。参考になる文献(入門〜専門)
Biber, D., Johansson, S., Leech, G., Conrad, S., & Finegan, E. 1999. Longman Grammar of Spoken and Written English. Longman.
Huddleston, R. & Pullum, G. K. 2002. The Cambridge Grammar of the English Language. Cambridge University Press.
Quirk, R., Greenbaum, S., Leech, G., & Svartvik, J. 1985. A Comprehensive Grammar of the English Language. Longman.
Brems, L. 2011. Grammaticalization and the English Noun Phrase: The Case of a lot of. De Gruyter Mouton.(関連論文多数。a lot of / lots of の文法化・コーパス分析)
Solt, S. 2015. Q-adjectives and the semantics of quantity(量的形容詞の総説。Annual Review of Linguistics などの総説・関連論文)。
Van Tiel, B., van Miltenburg, E., Zevakhina, N., & Geurts, B. 2016. Scalar diversity. Cognition, 155, 48–67.(many を含むスカラー語の多様性・文脈依存性)
もし追加で、実験的に three-way の数量感の違いを検証した最新研究(プレプリント含む)を特定したい場合は、以下の語句で学術検索(Google Scholar など)をかけると効率的です。
“a lot of” “lots of” corpus study / grammaticalization / subjectification
“many” threshold / experimental semantics / vagueness
“quantifier” “a lot of” “lots of” register / informality / polarity
“perceived numerosity” “many” “a lot of” judgment task
必要であれば、該当コーパス(BNC, COCA, NOW など)で「not many / not a lot of / not lots of」の分布、発話ジャンル別の共起、感嘆文での偏りなど、具体的な統計をこちらで掘り下げて提示します。
この最新のAIは、これでもか、と情報を寄せてくれるのですが、それを確かめる側の身にもなって下さいよ、と言いたいくらいです。
さて、教室現場で英語表現を扱う教師はどうしたものでしょうかね?
WisdomやG6のように「傾向」や「暗示」を支持しますか?さらには柏野本のように、表す数量の差を断定的、明示的に扱いますか?
私は個人的には今の私の知識と実感でお腹いっぱいですから、現時点で、そっちまで踏み込まないと思います。
本日はこの辺で。
本日のBGM: 愛はたくさん (矢野顕子)
