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“if I’d only seen that …”

前回の記事で、出講先で使っているテキストの解説を補足/修正するという話しをしました。
ちょうど、この夏の課題から新学期にかけて「副詞」「副詞句」「副詞を中心とした慣用表現」を扱うのと、noteで公開しているある記事の改訂に取り掛かっていて、ある「語」の扱いに腐心していたのですが、ツイッターのTLに流れてきた次の表現形式を見て、これはブログの「気になる語法」で扱っておくのがいいだろうと思った次第。

例えば、次のような表現形式です。

Little did she dream that she would marry him.
彼と結婚しようなどと彼女は夢にも思わなかった (G6のデジタル+の用例;紙版には未収録)

意味内容に制限を加える副詞 littleが文頭に出て、主語との倒置が生じるものとして、高校段階でも、それなりの習熟度の生徒には「倒置」の項目で教えているかなと思います。
ツイッターでも次のように書いていました。

私がnoteで2年前に公開している教材でも、この「倒置」に関しては取り上げていますが、そこでの用例で使っている動詞はexpectです。
※今日の記事に基づいて、近日中に改訂版を公開する予定です。

英和辞典や学参、文法書では、認識・思考・理解・期待を表すknow, realize, suspect, expect, think, understand, imagine などと用いられると、littleは 「殆ど…ではない」という準否定の意味ではなく、little = not at allの全否定の意味となる、とされているが、実際にはto only a very limited extent; hardly at allのような意味(=「殆ど…ではない」)で用いられている場合もあり、前後の文脈は勿論、話者の意図・目論見と切り離して断言することは難しい。
英和の扱いで、学習用辞書。

Wisdom vs. G6

O-LEX vs CR

W, G6, O-LEXの3つは「全否定」で語義を立てているのに対して、CRでは一つの語義区分の中で、全否定の解釈を含め、用例も入れているところが違いを際立たせています。

英和の一般用でも、「全否定」を独立させているものが一般的という印象です。

研究社英和大 vs ランダムハウス英和

『フェイバリット英和』(2021年、第4版、東京書籍)では、

副詞
3 (無冠詞) 全く…ない((同) never, not at all)
語法
3の意味では、次のように用いることが多い。
a. dream, expect, guess, imagine, know, think などの動詞の前に用いる。
I little dreamt he would be so successful. 彼が成功するとは夢にも思わなかった。
b. 文頭では「Little + 助動詞 + 主語 + 動詞」の形に倒置される。
Little did I expect that he would help me. 彼が助けてくれるとは、私は全く期待していなかった。

『プログレッシブ英和』(2012年、第5版、小学館)では、語義の細分化をせず一括で扱っているので、語義と用例の対応が難しくなっています。個人的には、こういった情報の提示方法とは決別したいです。


(程度が)少なくて; (little …) (否定的に)ある程度(しかなくて)、ほとんど…なくて; (a little) (肯定的に)ある程度(はあって)、少し[多少は] …で
move very little ほとんど動かない / He is little known around here. この辺りではほとんど知られていない / Little did I expect [realize, think] …. …だとはつゆとも想像し [気づか、思わ] なかった。

語義区分の冒頭で示された訳語に「全否定」に対応する表現は見られませんが、文用例の2例目で文頭の倒置になるものでは、訳文が「全否定」的になっています。

一方の英英辞典ではどうなっているか?
現行版のCOBUILDとOALDを見てみましょう。

COBUILDでは全否定の語義も立てていませんし、全否定に対応する用例も、程度を表す副詞の語義では一切収録していません。
辞書全体の用例検索で唯一ヒットするのは、

  • Little did I know that I would actually wind up being on the staff.

ですが、この例は動詞windの項に収録されています。

OALDでは用例こそ、 “Little did I know that節” を語義区分の中に配していますが、語義自体は「全否定」には対応していません。
但し、COBUILDと違って、OALD全体では、この倒置のパターンの用例はこの他にも若干見られます。
上述の例は英英和にも入っていますが、その日本語訳は「否定の強調」=「全否定」になっているようです。

Little did I know that this spelled the end of my career.
これが私の経歴の終わりの予兆だとは少しも知らなかった.

OALDでは他には次の用例がヒットします。動詞はknowで典型例ですが、パラフレーズなどはありません。

Little did she know what fate had in store for her.

COBUILDは、初版 (1987年)には次のような記述がありました。

10の語義とは独立して11で「全否定」に対応する語義を立てていて、そこに「倒置」の用例も含めています。
これは現在に至るその後の改訂版には受け継がれていないものです。ここでknowとともに挙げられているcare aboutがこの「倒置」の環境で用いられる例は、現代英語のコーパスではかなり稀ですので、COBUILDのコーパスから得られた情報を活かしているとも考えられます。

英英の学習用ということで、CambridgeとLDOCEを見ておきましょう。

どちらも語義として「全否定」の項を立ててはいません。Cambridgeでは、倒置の用例を配していますが、語義はただ単に “not much” とあるだけです。Cambridgeのオンライン版では、Cambridgeコーパスにある用例を知ることが出来ますが、そこには倒置の用例は見られませんでした。(https://dictionary.cambridge.org/example/english/little

Cambridgeのオンライン版では、文法の解説も読むことができますが、その「否定の意味を持つ副詞」の項で取り上げられたlittleには「倒置」で用いられる旨の注記と用例はありますが、この次の項目で扱われる「否定の強調」(not at allやnot in the elastが取り上げられている)との関連は何も書かれていません。

Negative adverbs: hardly, seldom, etc.
Some adverbs (e.g. hardly, little, never, only, scarcely and seldom) have a negative meaning. When we use these at the beginning of the clause, we invert the subject and verb:
Hardly had we left the hotel when it started to pour with rain.
Not: Hardly we had left the hotel …
Little did we know that we would never meet again.
Only in spring do we see these lovely little flowers.
https://dictionary.cambridge.org/grammar/british-grammar/negation_2

一方、LDOCEではnot much/slightlyという語義とは別立てで、よくある言い回しとして、“little did somebody know/realize/think” の項を立てて用例を配しています。定義文を見る限りでは「殆ど」の意味ではなく、「否定」が前面に出るものと考えられます。

学習用の英英辞典はとにかく限られたものしか「商品」になりませんから、それだけを根拠とするのは難しいのですが、MW’sの学習者用では、次のような扱いです。この項に関しては上級者版も全く同じ記述&用例です。

adverb
1a: in a very small amount or degree

  • She works very little and sleeps even less.
  • Please speak as little as possible.

b: hardly at all: not very much

  • We had little more than we need.
  • She cared little (about) what he thought.
  • His art is little known in this country.
  • a little-known fact
  • She little knew what fate had in store for her. = Little did she know what fate had in store for her.

最後の例で、倒置のバリエーションが示されますが、語義はhardly at allで not at allとの関連などは示されていません。

米国の辞書で「学習者用」としてThe World Book Dictionaryを思いつく人は、もう随分と少数派になったでしょう。
私が初任高でお世話になった同僚のY先生から譲り受けた1988/89年版から。

  • adv.

1 in a small amount or degree; slightly: The teacher read from an interesting book that was little known to us. A zeal little tempered by humanity (Macaulay). They live in a little-known town. Little-known metals are now coming into use (Science News Letter).
2 not at all: A coward is little liked. He little knows what will happen.

語義区分の2で「全否定」の not at allを立てていましたが、倒置の用例は、この項にはありません。

MW’s の辞書も一般用ではまた違った扱いです。

ODE vs MW’s

ODEでは、hardly or not at all という語義の下位区分を立てているのですが、その用例として、倒置文を挙げていて、語義はどっちともとれるものとなっています。この記述&用例はNODEも同じです。
一方、MW’sでは1bでnot at all の語義を立てていますが、文用例はありません。MW’sのオンライン版には、独自に収集した補充用例が豊富に見られるのですが、そこには、倒置の用例はゼロでした。

www.merriam-webster.com

一般用ということで、次の比較も。

AOD (Oxfordのオーストラリア版) vs AHD

AODは語義の2に幅あり。AHDは語義の2は「全否定」で、not in the leastという表現が使われています。
ただし、どちらも倒置の用例は無し。

Oxford系の一般用としてはODEとは別に、Shorter Oxfordがあります。通時的な変遷を推測するヒントにもなるので、私はMac版のアプリ辞書でよく引いています。

C adverb.
1 To only a small extent or degree; not much. Also, infrequently, rarely. OE.
W. S. Maugham She cared little what he spoke of. J. Buchan He is old and can go about very little. S. Bedford They entertained their neighbours as little as possible. G. Greene It is awful how little we change. E. Blishen We thought little of the concert hall, a university lecture room. Cornwall Review St. Just-in-Penwith…seems to have been little influenced by the outside world. V. S. Naipaul I walked…down little-used lateral lanes on the hillsides.
2 Not at all; hardly. Only with verbs of knowing, thinking, or caring, etc. Freq. preceding the verb modified, with periphrastic do. ME.
M. Edgeworth He little imagined of how much consequence it might be. T. Hardy You only knew me as a governess; you little think what my beginnings were. G. Greene Little did they know that the story…had already reached the ears of the drinkers. New Yorker ‘Little did they imagine,’ she said.

こちらでは2の項目に「全否定」に対応する not at allの語義を立てていますが、併記されている語義にはhardlyがあります。共起する動詞や倒置にも言及があり、さらには巨匠の筆になる用例がちりばめられていて、倒置の用例もあります。

ここまで見てきた辞書では、明確に not at all の語義を立てているものが優勢、という印象ですが、それでも、語義に幅を持たせた記述をしているものがあるということは、やはり実際の語義にも幅があるということなのではないでしょうか?

例えば、

  • Little did I expect she would marry Takashi.

という単独の文だけでは、実際に

  • (a)「全く予期していなかった」という強い驚き

を表すのか、それとも

  • (b)「ほとんど予期していなかった」というやや弱い驚き

を表すのかを断定することは難しいでしょう。

以下、それぞれが自然に伝わる場面設定と英文例を生成系AIに拵えてもらいました。多くのAIが (a) の方が自然とは言うのですが、それでも、(b) の意味になることがある、と答えています。お手並み拝見です。

ChatGPT 4.1

a) Little = 全く = not in the least の場合(強い驚き、「まったく思いもしなかった」)

  • 状況: 彼女とタカシは全く接点がなかった、または犬猿の仲だった。周囲の誰も予想していなかった。
  • 英文: I always thought she wasn't interested in Takashi at all. They never seemed to have anything in common, and they hardly ever spoke to each other. Little did I expect she would marry Takashi. I was absolutely shocked when I heard the news.

(b) Little = ほとんど = hardly at all の場合(やや弱い驚き、「ほとんど思っていなかった」)

  • 状況: 仲良くしているのは知っていて、もしかしたらと思わなくもなかったが、現実になるとはほぼ考えていなかった。
  • 英文: I knew she and Takashi were good friends, but I assumed it was nothing more than that. Maybe the thought crossed my mind once or twice, but little did I expect she would actually marry Takashi. It really took me by surprise when they announced their engagement.

解説

  • 基本的にLittle did I expect...は「まったく予期しなかった」という意味合いが強いですが、文脈によって「ほとんど予期していなかった(=想像すらあまりしなかった)」のようなニュアンスも出せます。
  • 前後文で驚きの度合い(全くか、ほとんどか)をより具体的に示すと、受け手にもその違いが伝わりやすくなります。

Gemini 2.5

`Little did I expect/think/know...` という倒置構文は、非常に強い驚きや予想外の気持ちを表す文学的・強調的な表現です。`little` のニュアンスは文脈によって微妙に変わりますが、基本的には「(その可能性を考えることが)ほとんど、あるいは全くなかった」という強い否定を表します。
(a) 「全く予期していなかった (not in the least)」場面
このニュアンスは、結婚の可能性がゼロ、あるいはマイナスだと思われていた状況で最も自然に響きます。
例えば、二人が犬猿の仲だった、ライバル関係にあったなど、「あり得ない」と思っていた場合です。
【場面設定】
話し手のAとB。二人は、Yumi(彼女)とTakashiが職場でいつも激しく対立していたことを知っている。
【会話例】
A: "You won't believe this. I just got a wedding invitation from Yumi. She's marrying Takashi!"
B: "What? You must be joking. They were always at each other's throats during the project. I thought they couldn't stand each other.
A: "I know, right? But it's true. The wedding is next month."
B: "Little did I expect she would marry Takashi. I would've sooner believed they'd end up in a lawsuit than at the altar. That’s truly unbelievable."
【解説】
`at each other's throats` (のどに掴みかからんばかり)や `couldn't stand each other` (お互いに我慢ならなかった)という過去の状況から、二人の結婚は「全くの想定外」「天地がひっくり返ってもあり得ない」というニュアンスが生まれます。この文脈では、`little` は `not at all` や `not in the least` に極めて近い意味になります。

(b) 「ほとんど予期していなかった (hardly at all)」場面
このニュアンスは、可能性がゼロではないものの、現実的ではない、あるいは全く別の未来を予想していた状況で使われます。仲が悪いわけではないが、恋愛関係に発展する兆候が皆無だった場合などです。
【場面設定】
話し手のAとB。二人は、Yumi(彼女)とTakashiが長年の親友であることは知っているが、Yumiには他に本命の相手(Kenji)がいるとずっと思っていた。
【会話例】
A: "Hey, did you hear? Yumi and Takashi are engaged!"
B: "Wow, seriously? I knew they were best friends, but I never saw any romantic spark. She always talked about him like he was a brother."
A: "Apparently, things changed a few months ago. They kept it quiet."
B: "Little did I expect she would marry Takashi. I was so sure she and Kenji were going to be the ones to get married. I guess you never know."
【解説】
`best friends` や `like a brother` という関係性から、恋愛や結婚に発展するとは「ほとんど誰も思っていなかった」という状況です。さらに、`I was so sure she and Kenji were going to...` というセリフが、「別の未来を固く信じていた」ことを示し、Takashiとの結婚が予想の範囲外(=ほとんど予期していなかった)であったことを強調しています。この文脈での `little` は、可能性を完全に否定するわけではないものの、「まさかそうなるとは」という `hardly at all` のニュアンスが強くなります。

まとめ
このように、`Little did I expect...` はどちらの文脈でも使えますが、その前後の状況説明によって `little` の否定の度合いが微妙に変化します。聞き手としては、どちらのケースでも「話し手が非常に強く驚いている」という点は共通して伝わります。

この最後の部分の指摘が重要かと。

Claude 4 Sonnet

良い観点ですね。「Little did I expect」の意味の違いを文脈で示します。
(a) "not in the least"(全く予期していなかった)の場合
Context: 完全に意外だった状況

  • "Takashi was always the quiet, introverted type who seemed uninterested in dating anyone. He spent most of his time reading books and avoided social gatherings. Sarah, on the other hand, was the life of the party—outgoing, adventurous, and always surrounded by friends. They moved in completely different circles and barely knew each other. Little did I expect she would marry Takashi. When I heard the news, I was absolutely stunned. It was the last thing I would have predicted."

(b) "hardly at all"(ほとんど予期していなかった)の場合
Context: 可能性は低いと思っていたが、全くあり得ないわけではない状況

  • "I knew Sarah and Takashi were friends from college, and I'd occasionally seen them chatting at parties. They seemed to get along well, but I always thought of them as just good friends. Sarah had mentioned a few times that she enjoyed talking with him, and Takashi did seem more relaxed around her than with others. Still, little did I expect she would marry Takashi. I thought she was more likely to end up with someone from her usual dating circle. But looking back now, I can see there were some signs I missed."

違いのポイント:

  • (a) 完全に異なる性格・環境で、結びつきが全く想像できない
  • (b) 接点はあったが、恋愛関係に発展するとは思わなかった程度

OpenAI o4

(a) “not in the least” (完全に予期していなかった場合)
We’d been chatting about her new job every week—there was never a word about her personal life.
Little did I expect she would marry Takashi.
When the wedding invitation arrived, I was utterly stunned.

(b) “hardly at all” (ほとんど予期していなかった場合)
I’d seen her and Takashi together at group dinners for months, so I knew they were dating.
Little did I expect she would marry Takashi.
Looking back, you could tell they were serious, but I never imagined they’d actually tie the knot.

最低限の前後のつながりで、意味の違いを感じさせられる例になっているようですね。

2025年8月4日追記:
上級者向けの文法学参&問題集である、Martin Hewingsの Advanced Grammar in Use (4th edition, Cambridge Univ. Press, 2023年)では「倒置」の項 (p.200) に次のようなlittleの用例を配し、2通りのパラフレーズしているのでご参考までに。特に、二つ目の not/sufficiently のパラフレーズに注目。
little with a negative meaning:
Little do they know how lucky they are to live in such a wonderful house. (= 'they don't know' or 'they don't know sufficiently')

この "Little did ..." のような全否定と準否定の意味の幅が感じられる表現としては、他に、

  • not very

が思いつきます。

O-LEX英和(第3版)の「プラネットボード」の90番が

  • not very は「あまり…ない」か「全然…ない」か.

です。

Q 次の文はどのような意味ですか.His talk was not very interesting.
(a) His talk was only slightly interesting.(彼の話はあまり面白くなかった)
(b) His talk was not interesting at all.(彼の話は全然面白くなかった)
(c) 両方
(d) どちらでもない

結果詳細は、是非、O-LEXを読んで欲しいのですが、(c) の「両方の意味で使う」と回答した人が最も多かったというのが、ちょっと意外でした。
ことばは生き物、当然、それを使う人も生き物。「意味」というものも柔軟性があるということなのでしょう。

では、今日の本題の littel は?特定の動詞との共起で意味は限定されるのか?

以下オンラインコーパスで使用概況を確認。
文頭縛りにしています。どんな動詞と共起するかも比較して見てください。dreamの頻度は?
COCAで米語

COHA

GLOWBE

TV

映画

ちょっと変わったところで、「コロナコーパス」から。
未曾有のパンデミックですから、何もかもが想定外だと思われる世界でのことばの使われ方も読み取れるのではないかと。

Ngram Viewerでざっくりと。拡大して確認願います。

know の一人勝ちで、かろうじてrealizeがそれなりの頻度、という感じです。

どんぐりの背比べもしておきましょう。

全体





こうして使用頻度やその環境/生息域は推測ができるのですが、悩ましいのは「語義」です。
not at allやnot in the leastの意味で用いているのか、それともhardly at allなのかは、やはり一つ一つの例を、その生息域で確かめるしかないということでしょう。

個人的には、Little did S V(=原形)…の部分だけを取り上げて、訳の正誤や適否を論じてもあまりご利益はないと思っています。それよりも、先行文脈の何に乗っかって、その文と、その続きで何に焦点を当てたいのか、が書いている(言っている)当人にはっきりとわかっていること、そしてそれを適切かつ効果的に伝えられているか、の方が大事でしょう。

少し長めの実例を補充しておきます。

A woman went to the police this week after receiving violent threats from fans of online lad's mag "Unilad". Like many, I was shocked and disturbed by the vitriolic attacks on women by the website and its supporters. Little did I expect that a few days later I would also be on the phone to the police, reporting online threats and harassment.
www.theguardian.com
ある女性が、今週、オンラインの男性向け雑誌「Unilad」のファンから暴力的な脅迫を受けたと警察に届け出ました。多くの人がそうであるように、私もそのウェブサイトとその支持者による女性への激しい攻撃に衝撃を受け、動揺しました。しかし、数日後、私も警察に電話をかけ、オンラインでの脅迫とハラスメントを報告することになるとは、全く予想していませんでした。

ここでは、「まさかの明日は我が身が現実に」という流れが重要。それなりの分量がないと、文脈は辿れません。

想定外のギャップが埋まる過程も、それこそ予想以上に長い展開になることもあります。

After a long illness, I'd attempted to start spring garden cleanup. It quickly became apparent I wasn't ready. The next morning, I grabbed my journal, went to the garden and planted myself in a chair by the birch tree. Little did I realize that from spring to fall of that year, the garden would become my place of rest and healing. Admittedly, the first morning was more irritating than restful. I couldn't bear looking at the brown mess of leaves not raked, plants not cut back, shrubs not pruned. I eyed the evergreen euonymus shrub and grumbled. Nothing about it was beautiful -- neither its inconspicuous flowers nor its few fall berries. My complaints were interrupted by the sounds of a robin flapping his wings in the birdbath across from me. He flew onto the lawn. I sat still. We exchanged sideways glances. The robin resumed his work. This single encounter would change the rhythm of my days. Being early risers, the robin and I met almost daily. Bob gave me a reason to get dressed and get outside.
www.theglobeandmail.com
長い病気の後、私は春の庭の片付けを始めようとした。しかし、すぐに準備不足だとわかった。次の朝、私は日記を手に取り、庭へ行き、白樺の木の下の椅子に腰を下ろした。その年の春から秋にかけては、庭が私の休息と癒しの場所になるなんて、まだ気づきもしなかった。正直なところ、最初の朝は休まるというよりもイライラするものであった。落ち葉が掃かれていない茶色いごみ、剪定されていない植物、手入れされていない低木を見るのが耐えられなかったから。常緑のユーノミウス低木を睨みつけ、ぶつぶつと文句を言いました。その低木には美しいところは何もありませんでした——目立たない花も、秋の小さな実も。私の文句は、向かいの鳥の浴槽で羽ばたくロビン(ヒヨドリ)の鳴き声で中断されました。彼は芝生に飛んでいきました。私は座ったまま動かなかった。私たちはお互いを横目で見合った。ロビンは作業を再開した。このたった一つの出会いが、私の日々のリズムを変えることになった。早起きなロビンと私は、ほぼ毎日顔を合わせた。ボブは私にちゃんと服を着て外に出る理由を与えてくれた。

「準備不足のイライラ」から「ヒヨドリとの出会いによって日々のリズムが変わっていく」ところまでで、これだけの分量が割かれています。読み手は、当然、この後に「庭での私の休息と癒やし」の描写が来るのを待ちながら読み続けるわけです。ここで、この筆者が「気づきもしなかった度合」が50%とか60%だと思って読んでいる人はまずいないでしょう。でも、その「まずいない」というところを取り上げて、「その『まず』っていうのは、『全然いない=0%』なのか、それとも『殆どいない=5%』なのか?」を問うことにどれほどの意味があるでしょう?

上述のコロナコーパスでも拾える用例から。

After three years of uncertainty due to Brexit, the black cloud had lifted in January. I had hoped that downturns and unpredictable times would be in the past; at least for now anyway! But sadly not. Little did I expect that a few months later, we would be experiencing a worldwide pandemic and my days would be spent reminding people to self-distance and that washing your hands can save lives. It is all so surreal.
https://www.khl.com/1143357.article
ブレグジットによる3年間の不確実性の後、1月には暗い雲が晴れました。景気後退や予測不可能な時代は過去のものになると期待していました。少なくともその時は!しかし、残念ながらそうはなりませんでした。数か月後に世界的なパンデミックが起こり、人々にソーシャルディスタンスを呼びかけ、手洗いが命を救うことを伝える日々を過ごすとは思いもしませんでした。本当に現実とは思えません。

2020年4月の記事ですので、コロナ禍突入直後くらいでしょうか。ここでは「いかに明るい未来への期待と裏腹な想定外のことが現実となっているか」を伝えることが主眼ですので、 “Little did I expect” のlittleをnot at allで解釈するのが一般的でしょう。

It was 678 days ago that the prime minister and I stood in this courtyard and announced a $17.6bn stimulus package for Australian households and businesses at the start of the pandemic. Little did we know then what we know now. Two years of hardship. Australians subject to curfews and lockdowns. And family and friends separated for extended periods of time. But what we do know is that over the last two years, Australians have pulled together.
www.theguardian.com
678日前、首相と私はこの中庭に立ち、パンデミックの初めにオーストラリアの家庭や企業向けに176億ドルの景気刺激策を発表しました。その時は今のような状況を知る由もありませんでした。2年にわたる困難。オーストラリア人は外出禁止令やロックダウンに耐え、家族や友人とも長期間離れ離れになりました。しかし、この2年間でオーストラリア人が一丸となって乗り越えてきたことは確かです。

過去と現在のコントラストが主眼で、その前には「景気刺激策」の話しで、明るい未来への期待感に言及があり、その後いかに想定外の事態となり、逆境を経験することになるのか、を強調する文脈です。ここでの “little did we know” を「全否定」で解釈するのが一般的だとは思いますが、もしこの部分を hardly at allで解釈したからといって、話者の意図するコントラストが浮かび上がらない、とか逆境の描写が生ぬるく映る、ということもないでしょう。

日常のやり取りで、

  • I hardly slept at all last night. 夕べはほとんど寝られなかった。

とこぼす相手に、

  • You really haven't slept a single minute or second, have you?  1分1秒も寝てないってか?

と事情を聞く前に食ってかかろうという人はいないでしょうから。
まずは気遣いですよね?

今日書いてきたようなことが、私が高校生の頃にわかっていたらなあ、と思います。結構本気で。

本日はこの辺で。

本日のBGM: I started a joke (Paul Weller)

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