先々週のセミナーに続いてまたもや立教大学へ。
最終日に滑り込みでした。
細野さんと 晴臣くん
Little Haruomi and Mr. Hosono
入場は無料。要事前予約でした。
立教大学の池袋キャンパス内にある、「ライフスナイダー館」という古い建物が展示会場。
この「館」自体の詳しい情報は立教大公式サイトで。
www.rikkyo.ac.jp
少年時代の直筆のノートも公開されていて胸熱。
展示作品の殆どは、こちらのブックレット(別売り)に掲載されているのですが、大きさが違いますから。こちらはポストカードより一回り大きいくらいのサイズ。
入場時にもらう案内のリーフレットにもこんな注意書きがありました。
動詞askに続いてのthat節ですから「要請」です。
ところが多くの方が、控えない控えない…。あちこちでシャッター音が響いておりましたとさ。
確か、大津由紀雄先生って、細野さんと高校時代同期生だったとうかがった記憶があるけど、当時のノートを見たことがあったのかなぁ…。
ともあれ、いいものを目と心に焼き付けて帰ってきました。暑かったけど。
さて、
昨日の「気になる語法」では、
- 形式主語と不定詞の意味上の主語と形容詞と生息域
の話しをしたのですが、一部を除いて相変わらず反響はないですね。
高校段階の指導者だと、恐らくは「テストで必ず問う」文法項目ではないかと思うのですが、その評価する側の持つ基盤が危ういかもしれないという「畏れ」は持っていて欲しいものです。
何も、「形式主語での不定詞を教える必要がない」などと言っているわけではありません。
- 教えるならちゃんと教えましょうよ!
ってことです。
旧来の学参でも、形式主語のパターンと名詞句を主語とするパターンとの適否を解説したものはあるんですよ。
私が持っているのは初版ですが『コーパス・クラウン』(三省堂、2022年)では、
- Grammar in Writing
というコラムがあり、pp.213-214には短いながらも「主語の設定は文脈の中でー形式主語it編」で情報構造を踏まえた解説があります。
改訂版ではどうなっているか、機会があれば確認してみます。
私が気にしているのは、そもそものその形式主語を用いる際の表現の選択です。
例えば、形式主語で形容詞importantとその類語を用いる場合に、不定詞として使われる動詞の典型例ってどんなものでしょう?
均衡コーパスであるCOCAでざっくり検索すると、その上位20は以下の通り。
その中から上位の動詞を選んで、文頭縛りで再検索。
上位に来る動詞は
- note
- remember
- understand
- recognize
- know
- consider
などの他動詞です。thatなどの名詞節を取る、私の実践では「ワニ使い動詞」と呼んでいる、「ことがら」を目的語に取るものです。
アカデミックな生息域ではbe動詞の縮約形は稀で、話し言葉に多く見られることも見て取れます。
前回の記事で、二人称主語での助動詞的な表現や命令文を用いた直接的/直截的な表現とのコントラストを考え、生成系AIの回答を比較しましたが、このnoteやrememberなどの「知覚・認識・理解」に関わる動詞を二人称主語で用いると、やはりダイレクトすぎる嫌いがあるでしょう。
通時的な変化があるかどうか、COHAで。
比較的若い構文といえるかも知れませんが上位の傾向は同じですね。
ところが、その上位の動詞であっても、このパターンを用例として示している辞書は少ないのです。
最頻度のnoteを収録しているのは
It is important [interesting] to note that…
…ということに注目してみることは大切である[興味深いことだ]. (研究社英和大)
のみ。
rememberも
It is important to remember the moral factor in assessing their actions.
彼らの行動を査定するさい道徳的な要因[面]を忘れないことが大切だ (研究社英和活用大)
のみ。
recognizeでようやく、O-LEXに1例です。
1 It is impòrtant to sée [OR récognize] that nóne of the mèmbers sáw her thàt dày.
その日はメンバーのだれも彼女を見かけていない事実に注目することが大切です(♥ 重要な事実に注意を向けるよう促す) (O-LEX)
上述の他動詞以外で気になる動詞がありますよね?
そう、“keep” です。これだけを見ると異質。
でも、この中でも比較的高頻度に位置づけられるのですから、類似の環境・生息域で用いられていると推測できるでしょう。
もうお分かりですね。
アカデミックな生息域での
- It is important to keep in mind
WEBでの
- It’s important to keep in mind
が上位です。
- keep in mind
は単体の名詞句を目的語にして、”keep A in mind” としても使いますが、名詞節を目的語にして
- keep in mind that [how/ wh-]
というパターンで使うことも多いのです。
実際の大学入試の読解素材文から実例を。
In fact, stereotypes would suggest many differences between males and females, but often these stereotypes have no basis in real behavior. So it is important to keep in mind that what we believe about gender differences may or may not be true. Still, culturally described stereotypes do express those characteristics that are considered socially desirable for women and men to possess. Gender stereotypes define our culturally agreed-upon notions of gender-appropriate (and gender-inappropriate) behaviors and characteristics.
実際、固定観念によれば男性と女性の間には多くの違いがあるとされますが、これらのステレオタイプは実際の行動に基づいていないことがよくあります。そのため、性差について私たちが信じていることが真実であるかどうかは分からないということを心に留めておくことが重要です。とはいえ、文化的に形成されたステレオタイプは、社会的に望ましいとされる男性像・女性像の特徴を表しています。性別に関する固定観念は、文化的に合意された「適切な」または「不適切な」性別役割行動や特性を定義するものです。
残念ながらこのit is important のパターンでkeep in mindの用例を収録している英和辞典は無し。
O-LEXの和英ではbear in mind を先に示す形で取り上げられていました。
戦争の悲惨さを心に銘記する必要がある
It is necessary to bear [OR keep] in mind how cruel war is.
英文化圏ではbear in mindの方が優勢とはよく言われている印象です。
GLOWBEで見る限りではGBとIEで顕著。AU,NZやINなどのアジア圏では明らかにkeep優勢。
TVでも似た傾向でUK/IEでbear優勢。
Ngram Viewerでザックリ。
全体
1980年代以降、差は大きく開いていますね。
米
米では1970年代から差がつき始め、全体よりも大きな差となっている印象。
英
bearが優勢だった英でも、2000年代以降keepが激増し、2015年過ぎからついには逆転の勢いです。書き言葉だけとはいえ、これは随分大きな「様変わり」だと思いますよ。
- 今を生きる学習者に教えるべき英語の姿とは?
日本の高校もさまざまです。
大学受験対策が生命線のところもまだまだ多いことでしょう。
でも、その場合であっても、入試問題のみをデータベースにして、ある表現や文法項目が「頻出」であるか否かを気にして、指導の重点、優先順位を決める、というものでいいんですかね?
最後に、先日、私が出講している私学の高校1年生の授業でのエピソードを。
ハンドアウトにはメモを書いたり、印をつけたりするように言っています。
これは私のハンドアウトの写し。
前時の復習を兼ねて、こんな問いをしていました。
- この「好悪」の類型での3つの動詞で、なぜhateにだけグリグリの印をつけたんだったか?
1人の生徒が(恐らくはメモを確認し)、次のように答えてくれました。
- hateは過去形で使った場合は、目的語は不定詞よりも動名詞となることが多い。
流石です。
これは、その前の時間に、Ngram Viewerのグラフを見せていたものでした。
同じ「類型」というのが憚られるくらい、時制が異なれば異なる様相を呈しています。
- 優しい嘘
が
- 過度の単純化
になっては後々のunlearn to relearnが難しく、苦しいものになりかねません。
身も蓋もない言い方になりますが、テストに出せるものなんて、英語全体のほんの一部です。
- テスト対策にあくせくしている時間を英語そのものを「やる」のに使いたい。
16歳当時も、18歳当時も、高校生の頃の私はそう思っていました。
それをサポートしてくれる先生と高校時代に出会えたことはただただ幸運なことだったと今でも思います。
本日はこの辺で。
本日のBGM: 僕は一寸(細野晴臣)















