私にとっては、心身ともに鬼門の6月、このブログの更新もようやくできました。
今日は「気になる語法」を2つ。
一つ目は、
- 動詞のlook
普段、ツイッターで学ばせていただいている
- 「コロケ先生」 (https://x.com/super_level)
の引用RTでこの項目で『ジーニアス英和』(第6版;G6)で用例が追加されていることを知りました。
ちなみに G6 には新たに look like it が2例追加されており矛盾が発生しています。
— 史上最強の英語コロケーション (@super_level) 2025年6月4日
☞ 英和の itは「先行文脈」の記述も不適切です(むしろ後方照応の方が多い気がします)し、×like it の注記は和英の用例(2例)と矛盾。
次回の改訂案件ですかね。 https://t.co/9z0DxWgNPI pic.twitter.com/7wUWOukb6y
私の元ツイも、そもそもコロケ先生の4年前のクイズに端を発するものでした。
この辺りを遡って見て下さい。
【明日の英語クイズ No.978】
— 史上最強の英語コロケーション (@super_level) 2021年12月4日
(文法編)英文中の空所に適語を埋めなさい。
She said she was sorry, although she didn’t look ( ).
個人的には、may not look it, but で使う表現で、最初のツイで条件をつけたのは、この同じ意味でlook itなくlook like itを使う人もいるから(スピーチレベルが異なるとも言われる)。
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2021年12月4日
オンラインコーパスでは
not look like it V
の接続詞的likeも含まれてしまうので、それを篩にかけて確認。 pic.twitter.com/DUBzXyr1hF英和だと、WisdomとO-LEXは実態を反映した記述または用例。
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2021年12月4日
G5ではlike は不可としているけどどうかね?このG5の解説だとbutやalthoughの流れで先行文脈を受けるのではなく、itが先行する例を説明できないし…。 pic.twitter.com/DuqYY8FRa7Wisdomでも和英だとlike it を不可にしてますね。
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2021年12月5日
その一方で注意すべきは、seem/appearはsoが可能だというところ。 pic.twitter.com/iQcmtLjTK8
「物書堂」のアプリ辞書では結構な数の用例がヒットするので、この機会にブックマークも更新しました。私のブックマークフォルダー内の25例全ては流石に見せられませんが、先にitが来るパターンと、先行文脈を受けるパターンとを比べると、先にitが来る方が多い印象です。
何にせよ、この項目は用例も解説も要加筆修正の辞書が多いと思います。
yarnから動画を。
先行文脈を受けないitを含むlook like itの例。
https://getyarn.io/yarn-clip/9570e8e0-caa6-4c8b-a216-c8a589855558
このコマの次のコマも確認。
こちらがitの表す主題。
https://getyarn.io/yarn-clip/87d6ba90-c40c-4491-8759-4948609a39e3
先行文脈を受けないlook itを含む例。 一文を一コマで。
https://getyarn.io/yarn-clip/b222d8fe-41ef-4486-b72d-9948e7e7a9f9
このlook it/look like it は恐らく「入試に出ない」「英検に出ない」ので、「教材にも出てこない」のだろうと推測します。勢い「知識」として整理される機会が稀ということに。
一方、「入試に出る」ので「教材にも出てくる」ものが、現実の英語使用でそれほど高い頻度ではない、というものもまだまだたくさんある印象です。
二つ目の「気になる語法」は、
- 否定の文脈での so much as とeven
これもツイッターのTLで目にしたのですが、
- without so much as …
を「成句」扱いして、重視しすぎではないのか?
という疑問を持っています。
英和辞書では殆どが成句扱いです。
Wisdom英和(三省堂)から
She left without so much as glancing [a glance] at my face.
彼女は私の顔をちらっとさえ見ることなく立ち去った.
He walked past without so much as a nod.
彼は1度もうなずきもせず通り過ぎて歩いて行った
ジーニアス (大修館書店)から
She came into my room without so much as knocking the door.
彼女はノックもしないで私の部屋に入ってきた. (G6)
彼は振り向きもしないでつっけんどんに返事をした
He replied bluntly [gruffly, curtly] without so much as turning around to face me. (G和英)
コンパスローズ英和(研究社)から
He left without so much as saying goodbye [a nod].
あの人は 「さよなら」 も言わず[会釈もせず]に行ってしまった.
O-LEXは成句扱いせず、用例を示すのみ。
宿の予約もとらずに気ままな旅をしてみたい
I'd like to take a freewheeling trip without so much as making hotel reservations. (O-LEX和英)
一方で、次のような表現が成句扱いされることは稀です。
彼はノックもしないでいきなり中へ入ってきた
He burst in without even knocking. / He didn't even knock as he burst in. (W和英)
They left in haste, without even saying goodbye.
彼らはさようならさえ言わずにそそくさと出て行った (G6)
彼女はろくに考えもしないで答えた
She answered without even giving the matter any real thought. (G和英)
さよならも言わずに立ち去るのは失礼だ
It's rude to leave without even saying goodbye.
彼は振り向きもせず,すたすた歩いて行った
He walked away in a hurry without even looking back. (O-LEX和英)
Bill drove away without even saying goodbye.
ビルはさようならも言わずに車で走り去った.
They walked away from each other without even saying goodbye.
彼らはお互いにさよならとも言わずに別れて行ってしまった. (コンパスローズ英和)
COBUILDにもこのパターンの用例は収録されています。
Many people add salt to their food out of habit, without even tasting it first.
味見もせずに習慣で食べ物に塩をふりかける人が多い。
We wash our cars and hose our gardens without even thinking of the water that uses.
我々は使用する水のことを考えもせず、車を洗い、庭に水をやる。
Alice had been so deep in thought that she had walked past her car without even seeing it.
アリスはあまりに深く考えごとをしていたため、自分の車に気付かずに通り過ぎてしまった。
(米語英英和)
OALDにもあります。
She beat me without even breaking (a) sweat.
She completed the routine without even working up a sweat.
彼女はひと汗かくことさえなくその日課をやり終えた. (OALD英英和)
そして、辞書でも、教材でも、この without so much as とwithout even の比較対照をしているものは稀。
個人的な観測範囲で言えば、動名詞が続くのは even に多い印象なので、むしろそちらを-「教材」
で示し、
- 「テスト」
で問うべきではないかと思います。
SKELLで “without so much as” の100万語当たりの生起頻度は、0.23です。
without even
100万語当たりの生起頻度は1.99ですから、ケタ違いに近い差ですね。
Ngram Viewerで見てみると…。
without so much as の頻度が高いのは、後続が名詞句で a/anが続くもの。-ing形(=動名詞)が続くものは、最下層に密集しています。一方、without evenに-ing形が続くものはそこそこの頻度で、かもbe動詞以外の動詞も複数見られます。
私がnoteで公開している「比較」の記事では、次の用例を示して、こんな解説をしています。
- How did they manage such remarkable journeys without so much as a compass?
関連事項も含めて詳しくは記事をお求め下さい。
比較の基礎基本から発展まで (2023年12月改訂版修正)
note.com
evenに触れないわけには行かないと思うのですよね。因に私は高校生対象の英文ライティングの指導であっても、evenを使った簡潔な表現の方を薦めています。
関連表現で次のようなものも、教材では取り上げられ、テストでも問われている印象です。
He cannot so much as write his own name.
彼は自分の名前さえ書けない. (コンパスローズ英和)
彼は電話一つまともにかけられない
He can't so much as make a phone call. (O-LEX和英)
大昔には大学入試の和訳問題でも問われていました。
He didn’t so much as take his eyes off the book to look at me; you’d have thought he didn’t hear me.
彼は私を見るために本を読んでいる目線を外すことさえしなかった。傍から見ればまるで私の声を聞いていないかのようだったでしょう。
近年の入試出題では、次のようなものがありました。
Betty hates spiders. She can’t so much as touch a small one.
1. can no other
2. can no more
3. can’t too
4. can’t even
正解は勿論4.の can’t evenでしょう。逆を求めるよりはまだマシかな、という印象です。
一方で、Wisdom和英(三省堂)では、次のような貴重な注記をしてくれています。
彼は自分の名前一つ書けない
He can't even [so much as] write his own name. (!前の方が普通)
本当にevenの方が普通でしょう。
これは、上述の without の差どころではないくらい、現代英語ではevenが優勢だと思います。
教材は勿論、辞書でも殆ど反映されていないので、まだまだ改善が求められるところです。
「定評がある」とされる語法書でも、こんな注記があるのですから。
4. special structures with so much
We can use not so much … as or not so much … but to make corrections and clarifications.
- It wasn’t so much his appearance I liked as his personality.
- It’s not so much that I don’t want to go, but I just haven’t got time.
In negative and if-clauses, so much as can be used to mean ‘even’.
- He didn’t so much as say thank you, after all we’d done for him.
- If he so much as looks at another woman, I’ll kill him.
SwanのPEU (第4版;2016年)の 587. so much and so manyの項目から引いています。
最後の、
- can be used to mean ‘even’
のcanが効いていますね。
本日はこの辺で。
本日のBGM: I don’t even try (John Hiatt)






