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止めたいのは時間か世界か?

私の英語の文法指導実践の核に「助動詞の番付表」があります。
80年代の終わりくらいからずっとやっているので30数年は続けているものです。

先日の、薬袋善郎先生とのツイッターでのやり取りをこちらにも。

こちらのマガジンでは「番付表」の組み合わせと並べ方、形合わせも含め、豊富な実例で助動詞の世界の全体像が掴めることと思います。

note.com

この番付表の「大関のhave」が時制を持って S+ have (has) + -ed/en形で使われる場合は「現在完了形」と呼ばれるのですが、その「単純形」には、ポジティブな内容なら「達成・成果」、ネガティブな内容なら「被害・損失」という、典型的な「生息域」があります。

最近の英語ニュースからポジティブな例を。

現在完了形の生息域。
単純形はプラスなら成果・達成、マイナスなら損失・被害。
時の上流からイマココに至る余波を確認。
次の展開は、寄せる波にがこれから先どこへ行くのか、または来し方を具体的に振り返るか。
ここでは懸念される「国からの補助金」に関してputtingで結果の分詞構文的に言及。

元ツイ。

Harvard University has rejected the Trump administration's demands for policy changes, putting nearly $9 billion in federal funding at risk

ということで、本日の「気になる語法」は、その「達成」「成果」の話し。

大学入試問題や、某英語検定試験では、同意語・類義語での言い換えが求められることが多いので、受験生は対策を余儀なくされます。

教材で使用している某問題集に次のような問題がありました。

When he was a manager, his first accomplishment was to create better working conditions.
彼が支配人だったとき,彼が最初に達成したことは,より良い労働環境をつくり出すことだった。

下線が引かれたaccomplishment をほぼ同意の表現で言い換えるものです。選択肢が与えられていて、どう考えても正解はachievementしかありません。この問題集では囲みの形で、「同意語問題に頻出」という注意喚起でもこのaccomplishmentとachievementを挙げています。
もし、この問題でこの2語を覚えた学習者は、
achievement 達成・業績・偉業≒accomplishment
というような知識のネットワークができ上がる可能性があります。
私が「気になる」のは、この言い換えの適否です。

確かに、随分昔の入試問題では、このような 下手な ベタな出題が見られました。

下線部の意味・内容にもっとも近いものを次の1~4の中からそれぞれ一つ選び,その番号を記入しなさい。
Learning about this distant period of time was one of the great scientific achievements of the 20th century.
achievements
1. publications 2. enjoyments 3. accomplishments 4. descriptions

10年ほど前の入試問題の読解系素材文でも、次のように、同じ段落にaccomplishmentとachievementが出てきます。

In 1952, Emil Zatopek recorded one of the greatest Olympic accomplishments of all time ― something that will probably never be reproduced. He won gold in the 5 km, 10 km, and then at the last moment decided to run his first ever marathon, winning it by over two minutes. This triple gold remains an unprecedented achievement.

Kagi Translateだと次のような和訳となります。

1952年、エミール・ザトペックはオリンピック史上最も偉大な功績の一つを達成しました。おそらく二度と再現されることのない偉業です。5kmと10kmで金メダルを獲得した後、最後の瞬間に初めてのマラソンに出場することを決意し、2分以上の差で優勝しました。この3種目制覇は未だに前人未到の偉業として残っています。

比較的新しい入試問題でも、次のように同じ文脈の中で、先にachievementが、その後でaccomplishmentが使われています。

Grammy Award-winning musician and Oscar-nominated actor Will Smith has thought a lot about talent, effort, skill, and achievement. “I’ve never really viewed myself as particularly talented,” he once observed. “Where I excel is in having a ridiculous and sickening work ethic.”
Accomplishment, in Will’s eyes, is very much about going the distance.

Kagi訳ではこうなります。

グラミー賞受賞ミュージシャンであり、アカデミー賞にもノミネートされた俵優のウィル・スミスは、才能と努力、技術、そして達成について深く考えてきた。「自分を特に才能があるとは思ったことがない」と彼は語った。「私の強みは、ばかげているほど病的なまでの仕事への情熱にある」
ウィルにとって、成功とはとことんやり抜くことなのだ。

もう少し長いディスコースで眺めてみましょうか。これも比較的新しめの大学入試問題からです。
冒頭の “describe” の使い方など、学びたい表現は他にもあるのですが、achievementからaccompishmentへの流れを見て下さい。

The third category of creativity, and what Bartok considers the most appropriate use of the term, describes the activities of individuals like da Vinci, Edison, Picasso, or Einstein, who have changed our culture in some important way. This kind of creativity is not seen as simply a more developed form of the first two. The three types are actually different ways of being creative, each to a large degree unrelated to the others. It happens very often, for example, that some persons who are filled with brilliance, whom everyone thinks of as being exceptionally creative, never leave any lasting achievements, any trace of their existence ― except, perhaps, in the memories of those who have known them.
On the other hand, some of the people who have had the greatest impact on history did not show any brilliance in their behavior, and yet they left impressive accomplishments behind. Leonardo da Vinci, for example, certainly one of the most creative persons in Bartok’s third sense of the term, was apparently a loner, and lived his life in a routine way. If you had met someone like him at a party, you would have thought that he was a bore and would have left him standing in a corner. It is perfectly possible to make a creative contribution without being “personally creative” or brilliant, just as it is possible ― even likely ― that someone personally creative will never contribute a thing to the culture. Bartok believed that all three kinds of “creativity” had the potential to enrich life by making it more fulfilling, but he felt that the third type was the one that had the most genuine claim to being truly creative because recognition by society of the value of the output is a key component.

以下、Kagi訳です。

創造性の第三のカテゴリー、そしてバルトークがこの言葉の最も適切な使用法と考えるものは、ダ・ヴィンチ、エジソン、ピカソ、アインシュタインのような、私たちの文化を重要な方法で変えた個人の活動を指します。この種の創造性は、単に最初の二つのより発展した形態とは見なされません。三つのタイプは実際にはそれぞれ大きく異なる創造的な在り方であり、互いに関連性がほとんどありません。例えば、非常にしばしば、誰もが非常に創造的だと考える輝かしい才能に満ちた人々が、自分を知る人々の記憶の中に残る以外、何の永続的な業績も存在の痕跡も残さないことがあります。

一方、歴史に最大の影響を与えた人々の中には、その行動に何の輝きも示さなかったにもかかわらず、印象的な業績を残した人々もいます。例えば、バルトークの第三の意味で間違いなく最も創造的な人物の一人であるレオナルド・ダ・ヴィンチは、明らかに孤独な人物で、日常的な方法で人生を送っていました。もしパーティーで彼のような人物に会ったら、退屈な人物だと思って隅に立たせたままにしたでしょう。「個人的に創造的」であることや輝かしい才能がなくても創造的な貢献をすることは完全に可能であり、個人的に創造的な人物が文化に何も貢献しない可能性さえあります(むしろその可能性が高いです)。バルトークは、三種類すべての「創造性」が人生をより充実させることで豊かにする可能性があると信じていましたが、第三のタイプが真に創造的であると主張する最も正当な権利を持つと考えました。なぜなら、社会がその成果の価値を認めることが重要な要素だからです。

こうして見てくると「同意語」「類義語」の扱いで「言い換え」ればいいじゃないか、と思う人も多いでしょう。
まあ、多くの場合はそれでもいいのかもしれません。

最近改訂された某単語集では、ある頁にaccomplishment が出てきて、その訳語として

  • 業績、成果、達成、成就

が示されているのですが、
achievementの訳語には、

  • 業績、偉業、達成、成就

が示されています。その違いは

  • 成果

  • 偉業

だけで、解説などはありません。

以前、このブログでも取り上げたことがある、速読への対応を謳った某単語集では、英文読解素材では、

  • a sense of pride and accomplishment

を示していて、解説の頁では、その類語として、achievementとattainmentを載せています。この単語集の基本的姿勢として、読解素材では既に文脈が示されているので、類語の扱いで用例を示す場合は、読解素材とは関係のないあらたな文脈を示すことに拘っているようです。ということで、achievementを含む文用例が示されているだけで、解説等は一切ありません。

私が気にしているのは、「文化差」「地域差」と「コロケーション」になるでしょうか。
次のような例での、accomplishmentとachievementは本当にinterchangeableと捉えて「いいのだろうか?というところです。

Some of the best gifts for 7-year-olds foster a sense of accomplishment and challenge them to think strategically.


7 歳の子どもに最適な贈り物の中には、達成感を育み、戦略的に考える力を養うものがあります。

National Volunteers Week - @ChesterCath
The oldest serving voluntary choir in the UK ...
“Volunteering in the Nave Choir gives me a sense of achievement ..."


全国ボランティア週間 - @ChesterCath
英国で最も古くから活動しているボランティア合唱団です。
「聖歌隊でのボランティア活動は私に達成感を与えてくれます..."

上記、2例の背景が分かったでしょうか?
上の例が米、下の例が英になります。

(aなど) sense ofに続く場合accomplishmentは主として北米文化圏で優勢で、achievementは英文化圏で優勢というのが私が持っている印象でした。
良い機会なので調べてみます。

Glowbeは2012/13年のデータなので、ちょっと古いのですが、地域差・文化差をみてみます。
全体では、achievementとaccomplishmentが同じくらいの数値ですが、所謂「英/米」の文化圏でこのくらいのコントラストが見て取れます。

このくらい濃淡の差があるものを「イコール」として大丈夫でしょうか?

NOWコーパスだと、achievementもaccomplishmentも10000越えヒットで、他とは段違いだけれども近年ではaccomplishmentが2倍近くのヒット数で優勢であることがわかります。

地域差が少しは反映するであろうTVコーパスで台本のある話しことばの実態を推測。

このTVコーパスの結果のように、米語では、sense of achievementとは言わないのでしょうか?

COCAで話しことばも含めた米語の状況を。

全体では、accomplishment : achievement = 565 : 109 でaccomplishmentが5倍強。
spoken では 34 : 7 で5倍弱となっています。

COHAで歴史的な推移を眺めて見ましょう。昔は米語でも achievementが優勢でしたが、近年でaccomplishmentに傾いていることが見てとれます。

英文化圏の情報がもう少しほしいところなのですが、COCAで検索できるBNCは1994年版なので-1993年までの古いデータ。

sense of achievementが優勢だということはわかりますが、そもそものspokenのヒット数が少ないのが悩ましいところ。

SKELLでも見てみました。
まずはsense of achievement

続いて sense of accomplishment

0.19 vs 0.23で若干ながら sense of accomplishmentの方が多い。NOWコーパスに近い印象。でも、これだけだと文化差、地域差は不明なんですね。

ツイッターのタイムラインで、藤原先生がBNC Labがリニューアルしているとの投稿をしていたのを見て、早速調べてみました。

まずは

  • sense of achievement

で検索。

2014年版ではsense of achievementは若干ながら増えているようです。

もう一方のsense of accomplishmentは?

  • ゼロ

一例もヒットしませんでした。
しかも、単語のaccomplishmentで検索してもヒットせず。
accomplishmentがヒットしないというのは、コーパスのサイズの問題なのか、文化差がさらに顕著になったのか?悩ましさがさらに募りました。

2025年5月26日追記:
BNC Lab でaccomplishmentがヒットしなかったのは、Spokenの枠組みだったからのようです。

Writtenではトータルで4例ヒットしていましたが、それでも “sense of” に続く例はありませんでした。

仕方がないので、NOWに戻って、コンコーダンスラインから、英文化圏でのsense of accomplishmentの例を見ておきましょう。






2025年のGB & IE だけで85/617例がヒット。
約13.8%ですから、英文化圏でもsense of accomplishmentは結構使われている印象。

もう一方で、米文化圏での “sense of achievement” の例 (2025年)。
US & CAで39/377例が見つかりました。約10.3%ですので、英文化圏でのaccomplishmentの使用に比べると少ない印象。




「米では sense of achivementとは言わない」「英ではsense of accomplishmentとは言わない」とまでは言い切れませんが、傾向というのは見て取れるかと思います。
これだけ調べても、明確な結論が出ず「達成感」「爽快感」はあまりありませんが、過度の単純化で「ドヤ顔」するよりはいいでしょう。
個人的に気になっている「ネタ」の大元にはかなり迫れたと思うので不満はありません。

ついでといってはなんですが、「達成」の関連語としての名詞 "feat (=偉業)" もみておきましょう。
英和辞典の多くが、

  • no mean feat

で成句扱いして、「至難の業」などとしていると思いますが、meanのところには他の形容詞がくることも多いでしょう。
因に、『Wisdom英和』には次の例があります。

no mean [small, easy] feat  至難の業

流石です。

さらに因に、山﨑竜成先生の『Idiomatic』(アルク)には、この3つとも取り上げられています。
流石です。

こんなところにも文化差が出るかどうか?
ざっくり見ていきます。

NOW コーパスだとヒット数はそれほど変わらず。

これだけヒット数のある、 no easy featや no small featを載せていない辞書はその基準を再考すべきでは?

GLOWBEでざっくりと。

これを見る限りでは、文化差・地域差がありそうですよね?

TVコーパスで見ると、英文化圏ではno mean featが優勢という印象。

でも、COCAで見ると、米語でも no mean featは使われていることがわかります。

BNC Labのフレーズでの検索では何もヒットしませんでしたが、Spoken と Writtenの比較から、コンコーダンスラインを見ると、no mean feat/ no easy feat/ no small featの例がそれぞれ見つかりました。





確かに、英文脈では “mean” の割合が高そうとは言えると思います。
BNC Labでのフレーズ検索でヒットしなかった原因がわからないのがもどかしい限りですが、もう少し継続して使い、機能を使いこなして、英文脈の英語の世界の解像度も上げたいと思います。

2250526 追記:
こちらも新たに検索してみてSpokenのカテゴリーではゼロでしたが、Writtenのカテゴリーでは3例ヒットしました。


この実例は、上述のコンコーダンスラインから採取したものとは異なるようで、悩ましさは残ります。

本日はこの辺で。
本日のBGM: 時間よ止まれ(矢沢永吉)

open.spotify.com




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