訃報にめげず、体調も回復傾向。
「作問祭り」も盛況のうちに終了。
今日は、「現代英語での気になる語法」というよりは、「日本の英語教育界隈での気になる物言い」です。
1980年代後半に都立高教諭として教壇に立ち、80年代末期から高等学校段階での英語のライティングに関わり続け、今でも公教育での英語教育の「授業」に「非常勤講師」として関わり続けている人間の1人として、次のような物言いには強烈な違和感を覚えます。
今、AIの普及を受け、多くの生徒や教師が英語ライティングを学ぶ・教える意義を失いかけています。「AIに任せればいいじゃない」というのがその理由です。
国立情報学研究所・教育機関DXシンポの第2回目の登壇の動画とスライド、およびその後の社会の変化を踏まえての長期的視野の必要性
— Yosuke YANASE (柳瀬陽介) (@yosukeyanase) 2025年5月18日
AIの言語生成と人間の言語使用の違いを重視するAI活用:大学英語ライティング授業の教育学的考察
概要ページhttps://t.co/JHH4aU6jb8
資料ダウンロードページ…
これは、京都大学の柳瀬陽介先生の発表資料を紹介するソーシャルメディアの投稿にあった文言です。
発表の概要はこちらから。
edx.nii.ac.jp
私の違和感はツイッターとFBで表明していました。
こちらがツイッターのもの。
これってどこの現場のことなんですかね?もしそうだとするなら、その程度のライティングしかやってこなかったってだけのことでは?
これってどこの現場のことなんですかね?もしそうだとするなら、その程度のライティングしかやってこなかったってだけのことでは?
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2025年5月20日
↓
今、AIの普及を受け、多くの生徒や教師が英語ライティングを学ぶ・教える意義を失いかけています。「AIに任せればいいじゃない」というのがその理由です。 https://t.co/rAP6JWag9T
柳瀬氏は、英語教育・言語教育における生成系AIの利・活用に関する発言を多くされているのですが、最近でも、このような「論」を目にしました。
栄光学園中学高等学校の林 真理子先生による素晴らしい授業。こういった授業を普及させるために重要なのが、学習者一人ひとりが制限なくAIにアクセスできること。少し暴論を述べるなら、学習者が自由にAIを使い始めたら英語教育は変わる。というより変わらざるを得ない。
栄光学園中学高等学校の林 真理子先生による素晴らしい授業。こういった授業を普及させるために重要なのが、学習者一人ひとりが制限なくAIにアクセスできること。少し暴論を述べるなら、学習者が自由にAIを使い始めたら英語教育は変わる。というより変わらざるを得ない。 https://t.co/iKk1nghzeC
— Yosuke YANASE (柳瀬陽介) (@yosukeyanase) 2025年4月21日
私の違和感はこちら。
確かに暴論だな。
確かに暴論だな。 https://t.co/bqfFyb8s4g
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2025年4月21日
素晴らしい実践を持ち上げるために、その他大勢の教壇に立つ方たちを脅したり貶めたりする必要は全くないんですよ。
柳瀬氏の公開している「高校生の英文ライティングに対するフィードバックを生成系AIに求めるプロンプト」は、私も使ってみたことがありますが、私の求めているものとは内容・水準とも異なるものでしたので、今は使っていません。
柳瀬氏のブログの当該頁には次の文言があります。
似たようなプロンプトはすでに多くあるでしょうが、私としては文体改訂の重要性を訴えかけたくてこのプロンプト/カスタムGPTを公開しました。原文の綴りや文法の「間違い」だけを添削してもらうだけでは、どうしても原文の発想内に閉じこもってしまい、自然な英語を書けるようになりません。マルかバツの語法添削を受けるだけではなく、「こうも書ける」「ああも書ける」という創造的な文体改訂から学ぶことがライティング力向上のためには重要だと私は実感しています。
yanase-yosuke.blogspot.com
高校での英文ライティング指導って、本当に次のようなところで止まっているんでしょうか?
・原文の綴りや文法の「間違い」だけを添削
・原文の発想内に閉じこもり不自然な英語のまま
・○か×の語法添削だけで「こうも書ける」「ああも書ける」という創造的な文体改訂を学べない
もし、いまだにそのレベルで止まっているとか、もっと、後退しているのだとするなら、その原因は指導法・評価法が普及していないからなのでしょうか?
むしろ、もっと構造的な「その先の指導を取り入れる時間的余裕がない」という理由とか、その「理由」のもっと前段階で「そもそも教える人がいない・足りないから、そのカバー・埋め合わせをする方が先決」といったことがあるのではないかと思っています。
私も文字指導・handwriting指導法から、チャンク、そして和文英訳や英文ライティングの指導・評価・フィードバックの方法まで、指導者対象のセミナーなどを開いています。
教える人が足りない、というところをカバーしてあげることはできませんが、「自分の目の前の児童・生徒の英語力伸長」に尽力している人の一助になれば、と思って「方法論」の提供と、その「方法論」を支える「視座」を伝える努力は、受講者が少なくとも細々と続けています。
私自身の実践での生成系AIの「利・活用」に関しては、過去ログでも取り上げていますので、お時間のある方はお目通し下さい。
まずは視座を整えるところから
tmrowing.hatenablog.com
生成系AIや機械翻訳/自動翻訳の利活用で最近個人的にやっていることは、
- 巨匠の技の凄みを味わう
というもの。
某検定で「要約」が入ってきたことに対する危機感から、「置き換えられないことば」の重みとか立ち位置、立ち振る舞い、運動性能などを感じ取りたいと思ってやっています。
たとえば、Stephen King の “On Writing” の一節を取り出して、それをKagi Translateに和訳してもらいます。
翻訳の精度はまちまちですが、一般的な日本の高校生の英語力と比べれば、十分に優れているように感じています。
ただ、それほど個性的な言葉遣いでは翻訳しませんので、その日本語の文章を、複数の生成系AIに入力し、英訳してもらいます。
それぞれのAIがそれなりの英訳を出してきますので、それらを比較検討し、イイトコドリしてベストな英訳案を作るように求めます。ときには、他のAIの英訳をより高く評価し譲歩するし、ときには自分の英訳がベストだと言い張ります。
そうしてでき上がったファイナルアンサーの英訳を巨匠のオリジナルと比べて、巨匠ならではの言葉遣い、リズムを味わう、というものです。
その後、日本の英語学習者が、巨匠のような英文を書こう、などと思ってしまったときのハードル、障壁、課題についても考察してもらっています。
ここではその最後の考察のみ紹介。
Gemini 2.0
CEFR B1レベルの日本語母語話者がこのエッセイを翻訳・作成しようとすると、下記のような点で苦労する可能性が高いと考えられます。1. 表現形式:**
**比喩表現の理解と適切な翻訳:** エッセイには比喩表現が多用されています。例えば、「perky as a rat in liverwurst」(レバーヴルストの中のネズミのように元気)や、「story begins to take on an odd foreign feel, like a dispatch from the Romanian Department of Public Affairs, or something broadcast on high-band shortwave during a period of severe sunspot activity」(物語が奇妙な異国情緒を帯びてくる、ルーマニア広報部の報告書や、太陽黒点活動が活発な時期に短波で放送される何かのように)。B1レベルでは、これらの比喩表現を正確に理解し、日本語で自然かつ適切な比喩表現に置き換えることが難しいでしょう。直訳してしまうと不自然な日本語になる可能性があります。
**ユーモアの理解と再現:** エッセイにはユーモラスな表現が散りばめられています。B1レベルでは、著者の意図するユーモアを理解し、それを日本語で効果的に表現することが難しいでしょう。ユーモアは文化に依存する部分も大きいため、翻訳時に工夫が必要です。
**文体の模倣:** エッセイ全体を通して、著者の独特な文体(やや皮肉っぽく、自虐的なユーモアを含む)が感じられます。B1レベルでは、この文体を理解し、日本語で模倣することは非常に難しいでしょう。
2. 語彙や構文の選択:**
**特定の語彙:**
* "synapse enhancer"(シナプス増強剤)のような専門的な単語の知識不足。
* "goodish length"(まずまずの長さ)のような、口語的なニュアンスを持つ単語の理解と適切な訳語の選択。
* "dire circumstances"(切迫した状況)のような、ややフォーマルな単語の理解。
* "fiddling around"(だらだらと時間を潰す)のような、イディオムの理解と適切な訳語の選択。**複雑な構文:**
* 倒置構文の使用(例: "Any longer and – for me, at least – the story begins to take on an odd foreign feel...")。B1レベルでは、倒置構文の意図を理解し、自然な日本語に変換することが難しい可能性があります。
* 関係代名詞節が複雑に絡み合った文の使用(例: "That’s 180,000 words over a three-month span, a goodish length for a book – something in which the reader can get happily lost, if the tale is done well and stays fresh.")。
* 挿入句の多用。B1レベルでは、挿入句を正しく理解し、文全体の意味を把握することが難しい場合があります。**接続詞:** 文と文とのつながりをスムーズにするために、適切な接続詞を選択することが重要です。このエッセイでは、対比(Still, of course)、理由(because, since)、条件(if)など、様々な種類の接続詞が使われています。B1レベルでは、これらの接続詞のニュアンスを理解し、適切に使い分けることが難しいかもしれません。
3. 特定の文法項目の過剰使用、または過少使用:**
**受身形:** 日本語は受身形を多用すると不自然になる傾向があります。原文の能動態の文を受身形に過剰に翻訳してしまう可能性があります。
**指示語:** 日本語では指示語(これ、それ、あれ、どれ)を多用すると、文章が不明瞭になることがあります。原文の指示語を安易に翻訳してしまう可能性があります。
**敬体/常体の混同:** エッセイ全体を通して、筆者は読者に対して親しみやすい口調で語りかけています。B1レベルでは、このニュアンスを理解し、日本語で適切な文体(常体)を選択することが難しいかもしれません。敬体と常体の混同が見られる可能性があります。
4. 論理の隙間や飛躍:**
**喫煙と執筆速度の関連性:** 著者は喫煙をやめたことが執筆速度の低下につながったと述べていますが、その根拠は「ニコチンはシナプス増強剤だから」というものです。B1レベルでは、この主張の論理的な飛躍に気づき、それを日本語で適切に表現することが難しいかもしれません。
**季節と物語の異質さの関連性:** 著者は、執筆期間が3ヶ月(1シーズン)を超えると物語が異質なものになると述べています。B1レベルでは、この主張の根拠を理解し、それを日本語で分かりやすく説明することが難しいかもしれません。
**著者の個人的な経験に基づいた主張:** エッセイ全体を通して、著者の個人的な経験に基づいた主張が展開されています。B1レベルでは、これらの主張の主観性を理解し、客観的な視点から評価することが難しいかもしれません。
総括:**
B1レベルの日本語母語話者がこのエッセイを翻訳・作成するには、語彙力、文法力だけでなく、比喩表現の理解、ユーモアの解釈、文体の模倣、論理的な思考力など、高度な言語能力が求められます。そのため、上記の点を中心に、様々な困難に直面する可能性が高いと考えられます。翻訳する場合は、辞書や翻訳ツールを活用するだけでなく、日本語ネイティブスピーカーの添削を受けることが望ましいでしょう。
Claude 3.7
# CEFRレベルB1の日本語母語話者がこのエッセイを英語で書く際の難点
このモデルエッセイは、Stephen Kingのような経験豊富な作家による、文学的で複雑な英語表現が含まれています。B1レベルの日本語母語話者が苦労すると思われる点を具体的に分析します。
## 1. 語彙の複雑さ
B1レベルでは以下の語彙が難しいでしょう:
- "synapse enhancer"(シナプス増強剤)
- "accomplishment"(功績)
- "dispatch"(通信)
- "severe sunspot activity"(激しい太陽黒点活動)
- "perky as a rat in liverwurst"(独特な比喩表現)
- "fiddling around"(もたもたする)
## 2. 構文の複雑さ
- 長く複雑な文構造(例:「I think it was quitting smoking...」から始まる文)
- 挿入句の多用(括弧内の説明や「for me, at least」のような副詞句)
- 条件節と結果節を含む複雑な構造
## 3. イディオムと文化的表現
- "get happily lost [in a book]"(本の世界に楽しく没頭する)
- "perky as a rat in liverwurst"(非常に元気である、という独特な比喩)
- "the words come hard"(言葉が出てこない)
- "under dire circumstances"(切羽詰まった状況でのみ)
## 4. 論理展開
- 作家としての執筆習慣について、タバコの影響から日々の執筆目標まで話題が展開する流れをまとめるのが難しい
- 主観的な経験と客観的な執筆アドバイスの混在
## 5. 日本語母語話者の典型的な問題
- 冠詞(a/an/the)の正確な使用
- "I used to be"のような過去の習慣を表す表現
- 仮定法や条件表現("if the tale is done well")
- 自然な接続表現の選択(however, still, either way など)
## 6. 過剰使用の可能性がある要素
- シンプルな接続詞(and, but)への依存
- 基本的な時制(単純現在形・過去形)への偏り
- 日本語的な論理展開(結論を最後に持ってくる傾向)
B1レベルの学習者は、基本的なコミュニケーションは可能ですが、このような個人的見解を織り交ぜた複雑な文章の産出は難しく、より簡素な表現や構文に頼りがちになるでしょう。
OpenAi o1 mini
CEFR B1レベルの日本語母語話者が、提示された英語のモデルエッセイを日本語で執筆しようとする際に直面する可能性のある主な困難点は以下の通りです。
### 1. **表現形式の複雑さ**
- **複合文の使用**: モデルエッセイではセミコロンや括弧を用いた複雑な文構造が多用されています。B1レベルでは単純な主語+述語の文が中心となるため、これらの複雑な構造を自然に使いこなすのは難しいでしょう。
- **句読点の使い方**: セミコロン(;)やカンマ(,)の適切な使い分け、括弧内の情報挿入など、英語特有の句読点の使い方に慣れていないと、同様の表現を日本語で再現するのが困難です。
### 2. **語彙の選択**
- **高度な語彙**: 「synapse enhancer(シナプス強化剤)」、「dispatch from the Romanian Department of Public Affairs(ルーマニア公共事務局からの通信)」など、専門的かつ抽象的な語彙が含まれています。B1レベルではこれらの語彙は習得が不十分なため、適切な日本語の対応語を見つけるのが難しいです。
- **イディオムや比喩表現**: 「perky as a rat in liverwurst(レバーウォルストにいるネズミのように元気)」のような英語特有のイディオムや比喩表現は、直訳では意味が通じず、適切な日本語表現を考える必要があります。B1ではイディオムの理解と使用が限定的です。
### 3. **構文の選択**
- **条件文や比較の表現**: 「I think it was quitting smoking that slowed me down(禁煙が私を遅くしたと思う)」や「Any longer and – for me, at least – the story begins to take on an odd foreign feel(もう少し長くなると - 少なくとも私にとって - 物語が奇妙な外国的な感触を帯び始める)」など、複雑な条件文や比較表現が使用されています。B1レベルではこれらの構文を正確に使いこなすのが難しいです。
- **接続詞の多用**: 「although(~だけれども)」、「still(それでも)」など、多様な接続詞を用いて文と文をつなぐ必要があります。適切な接続詞の選択と使用が求められるため、流暢な文章構築が難しくなります。
### 4. **特定の文法項目の扱い**
- **冠詞の使用**: 英語特有の冠詞(a, an, the)の使い分けは、日本語には存在しないため、B1レベルの学習者にとっては理解と適切な使用が難しいです。
- **時制の一致**: 過去形や現在完了形など、時制を適切に使い分ける必要があります。エッセイでは時間の流れに応じて時制を変化させるため、時制の一致が求められます。
- **助動詞のニュアンス**: 「would perhaps have appreciated」など、助動詞を用いた仮定や推量の表現は、B1レベルではまだ習得が不十分です。
### 5. **論理の展開と一貫性**
- **情報の整理と展開**: エッセイは個人の執筆プロセスや過去の経験について論理的に展開されています。B1レベルでは、情報を論理的に整理し、一貫した流れで展開することが難しい場合があります。
- **論理の飛躍**: 例えば、「nicotine is a great synapse enhancer. The problem, of course, is that it’s killing you at the same time it’s helping you compose.」のように、原因と結果が密接に結びついていますが、この因果関係を明確に説明する能力が求められます。
### 6. **文章の流れとつながり**
- **スムーズなつながり**: 文と文の間を自然につなげるための接続表現やトランジションが多用されています。B1レベルでは、こうしたスムーズなつながりを意識的に作るのが難しいです。
- **段落構成**: 各段落で異なるテーマやポイントを展開しています。適切に段落を分け、それぞれに主題を持たせる能力が必要です。
### 7. **文化的・背景知識の理解**
- **特定の文脈や背景知識**: 「The Running Man」や「John Creasey」など、特定の書籍や作家に関する知識が前提となっています。B1レベルでは、こうした文化的背景を十分に理解していない場合、文章の意図や内容を正確に再現するのが難しいです。
以上の点を踏まえると、CEFR B1レベルの学習者がこのモデルエッセイを日本語で執筆しようとすると、語彙力、文法知識、文章構成能力など、多方面での課題に直面することが予想されます。ただし、これらの困難を克服することで、より高度な表現力や論理的な文章構築能力の向上につながるでしょう。
- 学習者が自由にAIを使い始めたら英語教育は変わる。というより変わらざるを得ない。
っていう前に、指導者が自由にAIを使いこなせるように、インフラを整備して、指導者側の費用負担をなくす/減らすような補助・支援をするのが先決では?
正直な話し、こんなことを決まった教科書を扱う日々の授業中にできるわけがないし、非常勤講師だったら、授業の前後でそんな準備をしたり、自分の研鑽を積んだとしても、その分のペイはないわけです。
それでも、「教える意義を見失」っている場合なんかではなく、自分にできることだけをただ続けていくだけなんですよ。
・原文の綴りや文法の「間違い」だけを添削
・原文の発想内に閉じこもり不自然な英語のまま
・○か×の語法添削だけで「こうも書ける」「ああも書ける」という創造的な文体改訂を学べない
それぞれの現場で、この先の地平を進んでいる実践者がたくさんいるはずです。
そんな皆さんは、フィルソン社じゃありませんが、
- Might as well have the best
といいたい気分でしょ?
本日はこんなところで。
本日のBGM: ある平凡な男の一日 (JAGATARA)