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native or naive ?

明日(3月14日) に重大発表がありますので、本日は簡単に。

近年「気になる語法」のひとつに、名詞fearsと結びつく前置詞onがあります。
こんな実例を、私の日課の英語ニュース引用RTで紹介していました。

写真の中の見出し
Dow plunges on fears … を丁寧に。ここではthatのない同格節。
増減などの変化を表す語句と共起するon fears of名詞句/(that) SV
は「…となることを危惧して;…の不安に起因して」。
fearsは通例複数形で。類似の表現では近年on worries about/(that) SVも見聞きします。

元ツイの写真はこのようなものです。


関連ツイートも紹介。

元ツイで取り上げた
on fears that SV
は同じ副詞的表現でもbased on fearsとは成り立ちが違うことを確認。
当然、
touch on fears 「不安・懸念に言及する」
batten on fears「不安・懸念につけ込む」
のような句動詞での結びつきとも異なります。
一つ一つ生息域を実感しましょう。

一度で覚えて使いこなせることは稀ですが、一度見えた人は、次に出会ったときに「お、あの時の…」と気付く可能性が高まりますから。
stocks drop sharply on recession fears

類例で変化のslideとon fears ofの共起。

オンラインコーパスの検索結果を貼っておきます。

COCA

GLOWBE

NOW

Ngram Viewer

for fear of / for fear thatでは表せないどんな意味をどんな場面で伝えているのか、このon を伴う表現は要観察ですね。

onの話しのついでに、句動詞を扱う某辞典の話しを。
ツイッターの方で新刊の案内(販促)の投稿に紙面の画像がついていたのですが、その1枚でちょっと気になったので、こちらで皆さんの感想を聞きたいなと。
画像はこちらにリンクを。

"https://pbs.twimg.com/media/GlvjkD6aYAA7JKO?format=jpg&name=large"

皆さんもよく見てみてください。

まずは私見を。
particle (前置詞や不変化詞) の意味の類型に基づいて句動詞を整理しようという心意気は良いのですが、この写真で見出しになっているところ、

  • on 「増大する・増化する」

というのは、onそのものの意味と捉えるのは拙い(まずい)のではないかと思います。

例えば、enlargeを他動詞で用いる場合には、物理的な拡大・引き伸ばしの意味が基本で、句動詞としてenlarge onを捉えるにしても、その場合は「言葉使い」に関してenlargeの持つ「拡大」の意味を比喩的に用いて、類語でいえばelaborateのような意味を表すものでしょう。そして、onはその拡大する対象を示すもの、というのが私の理解を言語化したものです。onそのものに拡大という意味を見いだす根拠はどういうものでしょうか?

step on it に関してはenlarge以上に、onに増加や増大の意味を見いだすのは無理筋ではないかと思います。もともとは「車のアクセルペダルを踏み込む」という即物的/身体知的な表現です。

  • アクセルを踏み込む → より多くのガソリンを燃やして出力を上げる → 運転の速度を上げる

という展開ですね。
このitのところは、米語法ではthe gasになるなどと辞書では注記されたりしますが、上記の意味の成り立ちは同じです。そこから比喩的に「急ぐ= hurry」の意味で使われるのは、あくまでもstep on it が「車のアクセルを踏み速度を上げること」の比喩であって、このonを取り出して、そこに「増加・増大」の意味を感じるのはちょっと…。

だって、車の運転に関していえば、

  • 「ブレーキを踏む」 = step on the brake(s)

ですから(近年は複数形が優勢?)。では、こちらの表現では、いったい何が「増大・増加する」のでしょう? ブレーキの摩擦抵抗?

先の写真で写っていた

  • enlarge / expand / improve / add / embroider

などの、私の実践でいえば、「比較級含意の動詞」と共起するonなどという類型化ならいけるとは思うんですよ。でも、これらの比較級含意の動詞と動詞のstepって全然共通点がないじゃないですか。

出版社や編集部は「ネイティブ発想」などといった売り文句を想定しているようですが、

  • native intuition

って、

  • naïve intuition

と紛らわしいですよね。

この前置詞・不変化詞の捉え方は英語のネイティブスピーカーであれば皆同じ、とは限りません。
私もかつてTTを組んだALTsとやり取りをしたことがありますが、

  • 言語化して下さい (言語化された候補から選んで下さい)
  • 絵に描いて見て下さい (描かれた絵の候補から選んで下さい)

というリクエストに対しての回答が異なることなどザラでしょう。

ツイッターではこんな呟きをしていました。

句動詞は確かに面倒です。私も90年代に前置詞(不変化詞)の原義・基本義のアプローチで教材化していました。単純化が典型例をまとめられているなら良いのですが、我田引水、無理筋の類型化には気をつけたいものです。
句の意味の成り立ちの多くは事程左様に交互作用。

写真も再録。

afterの語義と生息域

withの語義と生息域

さらにこんなツイート。こちらはツイッターで写真をクリックして確認して下さい。

1枚目:一番長くお世話になっているMeyerのハンドブックが1975年。絶版。
2枚目:COBUILD が1991年、マケーレブ本が2006年。どちらも改訂なし。
3枚目:2007年でその後の改訂なし。一応持っています。
4枚目:どーんと飛んで2021年。凄いね。pp. 137-140のコラムと、p.261の注だけでも頗る有益です。

この写真の⒋枚目、平沢慎也 『実例が語る前置詞』 (くろしお出版、2021年)の中に面白い記述があるので、そこだけ引用して紹介します。

on … listという言い回しを用いる話者の中には、本節で想定しているのとは違って、listを「線」的なものではなく「面」的なものと見なしている人もいると思います。「on … listのon はon the floorやon the ceilingのようなonと似ている」と感じるような話者です。ここで重要なのは、どちらの捉え方をしている話者でもon … listの使い方は変わらないということです。結局のところ、発話の現場で利用される知識は、on … listのonは何者なのかなどという知識ではなく、on … listはどういう文脈で、どんな意味を伝達するのかというディティールの知識だと思われます。 (p. 261)

通快ですね。
大事なのは、「語義と生息域」。
このポイントをより具体的に書いたコラムが、pp.137-140にありますので、是非お読み下さい。

私のツイートも駄目押し。

近年は「語義と生息域」とずっと言ってます。
もう一つ加えるとしたら「発達段階」ですかね。

本日はこの辺で。
明日は重大発表ですので。

本日のBGM: On & On & ON (Maggie Rogers)

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