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「笑いと涙の意味」

そろそろ春の訪れが…などという3月初旬なのに、私の住む千葉でもまさかの雪。そして寒さ。年寄りにはこたえます。

「こたえる」といえば、今春の入試問題批評では、まだこの大学に言及していませんでした。

  • 京都大学

私の興味関心の在り処としてはやはり英文ライティングなので、「第3問 和文英訳」を取り上げます。

人間の心と顔の表情の関係は,一般的なイメージ以上に込み入っている。 顔は心を映す鏡だと言われるが, 「ポーカーフェイス」 という言葉もあるように, いつもそうであるとは限らない。 実際、顔の表情を変えることが心を動かすこともあると示唆する研究もある。 もしそうならば, 口角を少し上げるだけで, 前向きな気持ちになれるかもしれない。

試訳を示しておきます。
出題文の日本語で「鏡」の比喩を用いているところと、「口角を少し上げる」という、感情を排した表現を選択しているところは英語でも活かしたいと思います。

The relationship between the human mind and facial expressions is more complex than commonly assumed. While the face is often said to be a mirror of the mind, as the saying "poker face" suggests, people can consciously control their facial expressions to conceal their true feelings. Furthermore, studies suggest that altering facial expressions can influence one's emotional state. Therefore, given this interplay, simply raising the corners of your mouth may help you feel more positive.

出題文の和文を見せずに、この試訳の英文に基づいてClaudeにreviseしてもらったのが、次の英文。

The connection between human emotions and facial expressions is more complex than commonly understood. Facial expressions can both reflect and influence our emotional state. The concept of a "poker face" demonstrates our ability to conceal inner feelings. Research suggests that deliberately changing facial expressions can actually modulate our emotional experience. Simply lifting the corners of your mouth might potentially boost your mood.

英語だけを見れば、こちらの方が通りがいいですね。
京都大のような超メジャー級の入試問題は、大手予備校の解答速報や、英語強者がそこかしこで解答例をアップしてくれているので、そちらを比較検討するのもまた一興。

私としては、“face” がテーマとして取り上げられたのは良かったと思うのですが、昔の英語のライティングの試験のように「顔そのもの」「表情そのもの」を描写する課題だったらもっと良かったのに、という感じです。

昔はこんな本があったんですよ。

J.B. Heaton.1986. Writing through pictures, Longman (p.5) より

例によって絶版です。古き良き時代の、Heaton 三部作。

顔そのものについての考察・研究成果に関してもこんな本がありました。私が英文修業でテキストとしたものです。

John Liggett (1974) The human face, Stein and Day, New York

内容は多岐にわたります。

目次

掻い摘んだ内容紹介はこちら。

索引から抜粋。Emotion/ Emotional expressionなんていう項目も見つかりますね。

この本の中から、 “judgment” に関わる記述を引いておきます。
今回の京都大の出題文で説かれている「心理と表情のinterplay」という「しくみ」の説明ではなく、「その表情は他者の目にどう映るか」という記述ですから、「表情をどう描写するか」の参考になるのでは?

For example, a slight increase in the distance between the eyes causes a person to be judged more honest and reliable. Especially important seems to be the distance of the brows from the eyes: too close and they create a falsely ‘malevolent' impression, too high, and they suggest open-mindedness and accessibility. And remarkably small changes in eyebrow height profoundly affect our conclusions about intelligence. Thickness of the brows, too, can be misleadingly impressive: heavy bushy brows often lead to a judgement of 'firmness and gravity'. The angle of the brows, again, seems much too influential. The person with steeply slanting brows which are high in the middle is all too often seen as 'menacing'-however gentle and benign his true personality. The shape of the mouth can easily lead to false conclusions, a narrow slit often creating a misleading impression of 'introversion'. Downward-drooping corners or even a droopy moustache, may easily lead to a quite false attribution of maliciousness. Sometimes a small detail of a person's appearance can prompt us to endow him with a 'halo'. Something about his face, his manner, or his speech instantly pleases us. And all the research shows that every subsequent judgement we make about him will be excessively coloured by this favourable first impression. Each decision we make about his abilities, his social skills, his personality or his leadership will be much more favourable than it should have been. The converse also occurs: a poor first impression may unjustifiably depress all our subsequent judgements of a man's merits. (pp.271-272)

便宜上Kagi訳をつけておきます。

例えば、両目の間の距離がわずかに広がるだけで、その人はより正直で信頼できると判断されるようになる。特に重要なのは眉と目の距離のようだ。近すぎると誤って「悪意のある」印象を与え、高すぎると心の広さや親しみやすさを感じさせる。そして驚くべきことに、眉の高さのわずかな変化が、知性についての結論に大きな影響を与える。眉の太さもまた、誤解を招くほど印象的なことがある。太くてぼさぼさの眉は、「確固たる重み」という判断につながることが多い。眉の角度もまた、影響が大きすぎるようだ。中央が高く、急な傾斜の眉を持つ人は、たとえその人の本当の性格が穏やかで善良であっても、「脅威的」と見なされがちである。口の形もまた、誤った結論を導きやすい。細いスリットは、「内向性」という誤解を招きやすい印象を与えることが多い。口角が下がっていたり、口ひげが垂れ下がっていたりすると、悪意があるという全くの誤った認識につながりやすい。時には、人の外見の小さなディテールが、私たちにその人に「後光」を与えるきっかけになることがある。顔、態度、話し方など、何かが私たちを瞬時に喜ばせるのだ。そして、すべての研究が示しているように、その人について下すすべての判断は、この好意的な第一印象によって過度に色づけられる。その人の能力、ソーシャルスキル、性格、リーダーシップについて下す一つ一つの判断は、本来あるべき姿よりもはるかに好意的になるだろう。その逆もまた起こる。最初の印象が悪ければ、その人の長所に対するその後のすべての判断が不当に低下する可能性がある。

そうそう、京都大の今春の出題では、所謂「お題型英作文」も課されていましたね。
第4問

「人間の想像力は人工知能の普及によって豊かになる」 あるいは 「人間の想像力は人工知能の普及によって乏しくなる」 のどちらかの主張を選択し,その主張を論証する英文を書きなさい。なお, 解答に際しては,以下の条件をまもること。

1. 英文には,選択した主張を提示する文, 理由や例などを述べて主張の妥当性を論証する文,それまでの主張と論証を総括する文を必ず含めること。
2. 語数は80以上100語以内とすること。

もうひとつ、3. で解答用紙の使い方の条件が示されていますが、それは省略。

京都大が条件の1. を課して解答を絞るとはちょっと驚きです。
私としては、最近は「テンプレ(=テンプレート;template)」に頼らない論証文の書き方が求められているという理解でしたが、このような条件を設定しないと、論証文の構成が英語的ではなくなる受験生が多いという大学側の配慮(憂慮?)なのでしょうか?

単純に考えると

主題文: どちらの主張を選択したのかがその文だけでわかるように書く。
論証文: その主張の理由付け・裏付けの文で事実をベース。
結論文: 主題文・論証文をまとめる文。

で、最低でも3文構成。
主題文で15語から20語、結論文で20語から25語、と考えると、論証部分には、55〜65語くらいを割くことが可能でしょうか。
もし論証部分が長くなれば、そこを2文、3文…と分けて書くこともあるでしょう。
ただこれを裏返せば、主題文の中に理由付けも含めた長い一文を書いてしまう、論証文と総括の文をひとつにまとめた長い一文を書いてしまうと、条件の1に反したことになってしまうという、英語がそこそこ書ける人にとっては、自縄自縛となりかねない悩ましさがあります。
和文英訳と違って、意外と「泣き笑い」の分かれた設問となったのではないでしょうか?

この問題の問題点や、解答でのアプローチなどは、セミナーで詳しくお話しします。

指導者対象 3月29日(土)
英文ライティング指導法セミナー:
表現と論理〜今春の和文英訳と英文ライティングの入試問題を診る
passmarket.yahoo.co.jp

こんな内容です。

・今春の入試問題の和文英訳、英文ライティングの出題を診る
・出題そのものの適否を考察する必要性
・和文英訳での英文の「つながり」と「まとまり」
・「効果的な過去問」の利用法、「過去問」日本文の修正法
・高校生が書いた英文へのフィードバックの実例検証
・DeepLやChatGPTなど生成系AIの使用例
・オンラインコーパスとアプリ辞書の活用

同僚の方をお誘い合わせの上、ご検討よろしくお願いします。

本日はこの辺で。

本日のBGM: Swallow Song (渡辺シュンスケ)

open.spotify.com




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