非常勤で出講している高校の成績提出を済ませて一段落。
高校3年生はレギュラーの授業は終了。お疲れさまでした。
高3の期末試験では、大学入試レベル、と言えなくもない、2文以上の初見の和文英訳を課しています。
今回は、
1. 山本冴里 (『世界中で言葉のかけらを』筑摩書房、2023年)
2. 北村紗衣 (『英語の路地裏』アルク、2023年)
3. 谷川俊太郎 (谷川俊太郎他、『Words in Transit』 大修館書店、1985年)
の文章から授業での学びと関連するところを選び、3題を拵え、そのうちの2題を生徒が選んで解答を求めるもの。まあ、3に関しては追悼出題ですね。
生徒個々の解答に関しては詳らかにできませんが、年末年始の私のセミナーでは、お題の背景や評価の観点などはお話できると思います。
成績処理に追われる中、専任の先生との情報交換もしっかり行っていますが、ケンブリッジのWrite & Improveに関して、昨年&今年の私の活用事例をお伝えしておきました。
W&Iは公開からかなり経ちますが、今なお「ここをこう直したら?」などという直接的な指摘をしないのが良いですよね。ハイライターと網掛けで改善の余地ありと示されたところを見て、自分で加筆修正を施し、再提出・再評価をすると、上手くいけば評価が上がるし、ヘタをすれば、却って評価が下がります。自己責任です。恐らく、この部分が、日本の学習者や指導者に今一つ人気が出ない要因なのでしょう。しらんけど。
ということで本日の気になる語法は
- blame周辺
です。
テストで問われるblameは動詞としての語法で、前置詞、または不定詞との絡みが多いでしょう。
前置詞ではforとonの適材適所。
He blamed his friend for the accident [breaking the window].
彼は事故の[窓を割った]責任を友人のせいにした (W)
He blamed himself for her suicide.
彼は彼女が自殺したのは自分の責任だとした (O-LEX)
Police blamed the disaster on the weather.
警察はその災害は天候のせいだとした(≒ Police blamed the weather for the disaster.). (W)
It's unreasonable (of you) to blame everything on him.
すべて彼のせいにするのは理不尽だ (O-LEX)
不定詞との絡みでは、受け身ではなく原形のままのblame。
She is (partly) to blame for the mistake.
その失敗の責任(の一部)は彼女にある(!日常英語ではThe mistake is (partly) her fault.が普通). (W)
Who is to blame for this failure?
この失敗はだれの責任か. (コンパスローズ)
受け身 (to be blamed) と併記し、同意で扱っているものも多い模様。
He is to blame for [×about] this loss. (=He is to be blamed for this loss.)
この損失は彼に責任がある (O-LEX)
それは事故だったのだから, 誰にも罪はない
It was an accident, so no one is to blame [is to be blamed, is responsible] (for it). (W和英)
しかしながら現代英語の使用頻度を勘案するに、受け身の方を覚えておく重要度は使用頻度に比例しないでしょうか?
Ngram viewerで、to blame for とto be blamed forとを比較。
![]()
雲泥の差、とはこのことか、というくらいの頻度の差です。
Michael SwanのPractical English Usage (第4版、2016年、OUP)では、不定詞と受け身の絡む慣用的な表現の中で、この
- be to blame
をわざわざ取り上げ、受け身にはなっていないことを示していました。
2 to be seen/found/congratulated, etc
Note the expressions anywhere/nowhere to be seen/found.
- He wasn’t anywhere to be seen. (not … anywhere to see.)
- Susan was nowhere to be found. (not … nowhere to find.)
We also use passive infinitives to express value judgements with verbs like congratulate, encourage, avoid.
- You are to be congratulated. (not … to congratulate.)
- This behaviour is to be encouraged.
But note the common expression to blame, meaning ‘responsible’ (for some unfortunate event).
- Nobody was to blame for the accident.
現代英語の大規模コーパスに基づく語法書である Collins COBUILD English Usage (2019年)でも、受け身の例は示していません。(同書、p.87)
If someone is to blame for something bad that has happened, they caused it.
- I knew I was partly blame for the failure of the project.
- The study found that schools are not to blame for the laziness of their pupils.
入試問題では、この受け身の表現を時折見かけますが、感心しない出題が多いです。
同意文選択で結果的に誤りとなる選択肢の英文として、
- You are to be blamed for this problem, but not I.
が使われていたりするのですが、この英語表現自体を「?」と感じた人は、この英文を選ばないと思うのですね。
対話文での空所補充完成も出くわすことがあったりしますが、次の例でも結果的に誤りの選択肢です。
Sarah: Jim didn’t say a word to me at the party.
Fred: Don’t worry, Sarah. ( ).
Sarah: Do you mean he doesn’t like me?
Fred: No, not at all. He is just shy and quiet naturally.
① It’s up to him ② I’m not to be blamed ③ That’s beyond description ④ That’s the way he is
佐久間治 『ネイティブが使う英語 避ける英語』(研究社、2013年)では、p.37で
ただし、「理由」が追加されると、受動構造をとる:
You are to be blamed for high unemployment rate.
「失業率が高いのはあなたの責任だ」
としているのですが、現代英語のコーパスの検索結果を見る限りでは、せいぜいが「受動構造も使われている」とか「認められている」というものだろうと思います。
佐久間氏の当該書が2013年ですのでGLOWBEの2012-2013年データから。
be to blame for
![]()
be to be blamed for
均衡コーパスではないので、単純な数字の比較はできませんが、ほぼほぼ「ケタ違い」という印象。
COCAで。
be to blame for
be to be blamed for
均衡コーパスのCOCAでは、ケタ違い以上の開きです。
最新の状況としてNOWも見ておきますか?
be to blame for
![]()
be to be blamed for
その差は開きに開いた感じですね。
では、受け身ではない、 (be) to blameは、類義の表現と比べてどの程度使われる表現なのか?
先ほどのNgramの検索結果からベンチマークの設定に使って、responsible for と比較してみました。
清々しいくらいにresponsibleの圧勝ですね。
blameが不定詞で現れる用法では受け身の表現を気にするものではなく、「責任の所在;度合い」示す表現で、responsibleの下位互換の表現として、さらにはその「責任」を実感する副詞との共起を丁寧に扱うべき英語表現と言えるでしょう。
NOWコーパスから副詞の共起の上位。
![]()
partly /partially
largely / mostly
equally / solely
などが上位ですが、GLOWBEで見てみると、使用頻度にはバラつきが見て取れます。
再度、Ngram Viewerで。
テストでの出題には充分配慮してほしいと思います。
一方で、テストではあまり問われることがなく、学習用の英和辞典では扱いが薄く、「成句」としては見做されていないblameを使った表現があります。
しかも、先ほどの語法を踏まえた用法です。
学習用英和の成句にはあまり載っていない
have oneself to blame
「自業自得」「自分の蒔いた種」の文脈で副詞onlyやno one butなどと使われることも多い。
ここでは
he has himself largely to blame
と副詞largelyで修飾。
キャプションのwithの付帯状況の例ではmostlyを使っていることを確認。学習用英和の成句にはあまり載っていない
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2024年12月12日
have oneself to blame
「自業自得」「自分の蒔いた種」の文脈で副詞onlyやno one butなどと使われることも多い。
ここでは
he has himself largely to blame
と副詞largelyで修飾。
キャプションのwithの付帯状況の例ではmostlyを使っていることを確認。 https://t.co/YvNzfxr9Y1
元ツイの記事はこちら。
Mayor Brandon Johnson is in danger of losing an executive budget vote for the first time in recent memory or being forced to cast the tie-breaking vote to save it — and he has himself largely to blame.
Mayor Brandon Johnson is in danger of losing an executive budget vote for the first time in recent memory or being forced to cast the tie-breaking vote to save it — and he has himself largely to blame.https://t.co/GnZZtYQMEe
— Chicago Sun-Times (@Suntimes) 2024年12月12日
ブランドン・ジョンソン市長は、近年で初めて執行予算の採決で敗北するか、あるいはそれを救うために決選投票を強いられるかの危機に瀕しており、その責任は主に市長自身にある。
辞書の記述を横断的に見比べた結果もツイートしていますので、リンク先の画像ファイルで辞書の記述を是非読み比べて下さい。
O-LEXの和英には用例が見つかるけどblameの日本語訳から辿れる?
COBUILDは旧版でも米語版でもno one butを成句扱い。
OALDは10版からno one/butを追加収録。
Oxfordの学習者用類語ではOALDと同じ用例に=でパラフレーズもあり。
意外にもコンパスローズ英和に用例があるけれど、in the endの項目。O-LEXの和英には用例が見つかるけどblameの日本語訳から辿れる?
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2024年12月13日
COBUILDは旧版でも米語版でもno one butを成句扱い。
OALDは10版からno one/butを追加収録。
Oxfordの学習者用類語ではOALDと同じ用例に=でパラフレーズもあり。
意外にもコンパスローズ英和に用例があるけれど、in the endの項目。 https://t.co/fda7t0T1S3 pic.twitter.com/ZTrLSvAZnh
研究社英和大は句用例1 英和活用大には文用例1 しかないけれど 研究社和英大には文用例が3つ見つかる。 成句の専門辞書の三省堂クラウンイディオムには文用例1 学習者用のLDOCEにも MW’sの学習者版にも 項目が立ててあり、文用例がありますね。
研究社英和大は句用例1
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2024年12月13日
英和活用大には文用例1
しかないけれど
研究社和英大には文用例が3つ見つかる。
成句の専門辞書の三省堂クラウンイディオムには文用例1
学習者用のLDOCEにも
MW’sの学習者版にも
項目が立ててあり、文用例がありますね。 pic.twitter.com/pkRzXdSttT
※2024年12月15日追記
表現のバリエーションとしては
have no one but onself to blame の部分が、have no one to blame but oneselfになることもあります。
例えば次のようなもの。✍️ 'If we do not use our freedom to speak, we will lose it,' writes @SuellaBraverman
— The Telegraph (@Telegraph) 2024年12月5日
'And when that happens, we will have no one to blame but ourselves'
Read the column ⬇️https://t.co/NuFk0gFVkH pic.twitter.com/vrObkvkmKX次の yarn の動画クリップ集でそれぞれの例を確認してみてください。
https://getyarn.io/yarn-find?text=no%20one%20but%20yourself%20to%20blame
先ほど、
- テストで問われることがあまりない
と書きましたが、無いわけではないようです。
文脈から意味の最もよく通るように空所を補充し複数文から成る文章を完成させる問題。
That evening, the manager continually cast her mind back to the stormy board meeting that had taken place in the afternoon. A few board members had been in favor of giving the assistant manager a second chance, but his complete failure to meet their agreed-upon sales target had persuaded a majority to fire him. As his colleague, she felt sorry for him, yet he had ( ).
a.considered ongoing contracts b.only himself to blame c.never committed a crime d.avoided the consequences
e.demonstrated his skills
ここでは、正解の選択肢として使われているようです。Kagi Translateの日本語訳はこんな感じ。
その晩、マネージャーは午後に行われた荒れた取締役会議を何度も思い返していた。数人の取締役はアシスタントマネージャーに二度目のチャンスを与えることに賛成していたが、彼が合意した売上目標を完全に達成できなかったことが大多数を彼を解雇する方向に説得した。彼女は同僚として彼を気の毒に思ったが、結局彼自身に責任があった。
複数文から成る文章を読み、質問の答えに相応しい一文を選ぶ問題。
Though self-handicapping can be an effective way of coping with performance anxiety now and then, in the end, researchers say, it is a Faustian bargain. Over the long run, excuse makers fail to live up to their true potential, interfere with the achievement of their own goals and lose the status they care so much about. And despite their protests to the contrary, they have only themselves to blame.
What does “a Faustian bargain” probably mean?
① In the end, people have to pay prices for what they have done.
② After all, people waste money and time.
③ As a result, people will realize that they are successful.
④ On the whole, people are happy as they are.
Kagi訳はこちら。
自己障害は、パフォーマンス不安に対処する効果的な方法であることもありますが、最終的には研究者たちが言うように、それはファウスト的な取引です。長期的には、言い訳をする人々は自分の真の潜在能力を発揮できず、自分の目標の達成を妨げ、自分が大切にしている地位を失います。そして、彼らの反対の主張にもかかわらず、彼らが責めるべきは自分自身だけです。
「ファウスト的な取引」とはおそらく何を意味するのでしょうか?
① 結局、人々は自分のしたことに対して代償を払わなければならない。
② 結局、人々はお金と時間を無駄にする。
③ その結果、人々は自分が成功していることに気づく。
④ 全体として、人々は自分のままで幸せである。
こちらも、 “they have only themselves to blame.” の理解が正答を選ぶことに大きく影響しますので、この成句が「問われている」出題と言えるでしょう。
でも、この問題、20年くらい前のものなんですよ。
公教育現場での英語教育はとかく批判を受けがちなんですが、テスト依存体質を脱しないと、旧態然とした試験問題とその形式に縛られ、現代英語の語法に照らして不適切な選択を迫られたりし続けることになりかねません。
授業でせっかく、“real English” を扱って、豊かな地平を開き、土壌を豊かにしても、テスト対策でその先の実りが矮小化したり、歪んだりするのを見るのはもうたくさんです。
「タスク」を達成するにしても、「スキル」を身につけて磨くにしても、それをいったいどのような「ことば」で行っているのか、もっと英語表現そのものを気にした方が良いと、今日も今日とて老婆心です。
本日はこの辺で。
本日のBGM: そして誰のせいでもない (伊藤銀次)










