最近はとんとフィギュアースケートネタを書いていません。
ヴィカ様の引退で自分の新たな「推し」を決めかねて今に至るのですが、今シーズンは樋口新葉(ひぐちわかば)選手の復活を喜び、現役を続行してくれた青木祐奈(あおきゆな)選手に期待しています。青木さんは特に今シーズンのショートプログラムの素晴らしさを強調しておきます。
曲はアストル・ピアソラの Adios Nonino。コレオ(振り付け)はミーシャ・ジーさんです。
今週末開催のグランプリシリーズのNHK杯では3位、銅メダルを獲得しています。
いつまで見られるか私にも分かりませんが、ミーシャのインスタグラムで動画もアップされているので、私が2万回くらい見たいと思うほどの青木さんのSPを是非。
さて、今日は「気になる語法」というよりは、より「指導法」に近い話しを。
出講先の高校の授業で「比較」を扱っています。
明示的な文法指導は時代に逆行するような扱いを受ける昨今で「文法を授業で説明している」というと批判を受けがちです。また、同じ「明示的」という括りであっても、解説を長々とするよりも、「論より証拠」の実例ありきで、簡潔明快な説明が好まれるのもイマドキの英語教育の流れに限った話しでは無さそうで、「文法説明という旧態然とした指導法を用いる年寄りが時代についていけずに愚痴っているのだな」と思う方は、以下、スルーされて結構です。
近年、私が授業で重視しているのは「語義と生息域」ということは、ソーシャルメディアでも繰り返し発言してきました。「比較」ということで、形容詞/副詞にスポットライトが当たることが多いわけですが、動詞も名詞も含めて、「比較」に関わる、日英語の異同は整理しておくに越したことはないと思って、高校段階の指導でも、まず「語義」の話しをしています。
教材としては既にnoteで公開している、
比較の基礎基本から発展まで (2023年12月改訂版修正)
note.com
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の記事を読んでもらうのが一番です。というのも、この記事は、これまで私が高校の授業でおしえてきたことをまとめたものだから。
今日の記事は、その補足というか、更なる前提となるものです。
授業ではいつものように、
- How old is your dog? とHow old is your sister?
- She is six months old. と She is thirty years old.
を示して、それぞれの比較と対応で、oldの持つ意味を実感してもらっています。
また、物差し/目盛りの用法で用いられているoldであっても、
- Our school is ten years old. とThis apartment house is thirty years old.
の二つを、上述の犬や姉妹の例と比較することで、新しさ/古さの実感は変わってくることも示しています。
原級を用いた比較の表現形式では、どの教科書、教材でも、所謂「同等比較」が取り上げられると思いますが、長年、高校生のライティングを指導していて、この同等比較が適切かつ効果的に使われている例に出会う機会は少ないです。
市販の問題集などは「入試過去問の精選」を謳うわけですが、そこで示される同等比較の用例は、
The crowd was surprised to see a seven-year-old boy was able to swim as fast as the teenagers.
I haven’t got as much money as I need to help you.
This movie is not so interesting as people say it is.
のようなものが多いでしょう。
英米のELT用教材なら何でも優れているわけではなく、大規模コーパスから得られたreal English で定評のあるCOBUILD English Usage (2019)でも、最初に示される用例が
The ponds were as big as tennis courts.
という、一文だけでは何を伝えたいのか判然としないものです。
それでも、その他の用例の中には、
I could see almost as well at night as I could in sunlight.
They aren’t as clever as they seem to be.
I don’t notice things as well as I used to.
You’ve never been as late as this before.
のように情景が目に浮かぶものもあり、参考になります。
注目すべき記述としては
So is sometimes used instead of the first as, but this use is not common.
Strikers are not so important as a good defence.
という、「否定の文脈でのsoは一般的ではない」という説明があります。重要ですね。
この「同等比較」では、二つ目のasに続く情報が重要です。
その情報は、聞き手・読み手にとって既知の情報であるか、十分な実感を持てるものであることが好ましいから。
私が最初に引いた
The crowd was surprised to see a seven-year-old boy was able to swim as fast as the teenagers.
であれば、十代の泳者の平均的な速さ、タイムが聞き手・読み手に実感できなければ、その7歳児の速さを伝えることは難しいわけです。
COBUILD Usageには一般的ではないと言われてしまう、否定文脈でのsoを用いた
This movie is not so interesting as people say it is.
では、「世評ではどの程度の面白さなのか」がはっきりしないと、この文を発している人が、この映画をどのように評価しているのかは伝え切れません。
発表ではなく、理解の段階でさえ、運用を考えれば、単一の文での学習や指導の限界といえるでしょう。
所謂「同等比較」が表す意味での注意点は、できる限り最初の方の授業で確認するようにしています。今は亡き若林俊輔氏は次のように言っています。1990年のことでした。以下、引用。
「従来、as... as を用いた表現は『同等比較』と呼ばれてきました。『程度が同じだ』ということですね。しかし、以上の説明からわかるように、『同等比較』という文法用語は適切ではないことになりました。≧は英語では is equal to or greater than と読みます。日本語では『以上』です。したがって『以上比較』とでも呼ぶことにしましょうか。いや、用語などどうでもいいのです。as 〜 as の意味をきちんと教えればよいのです。」(『英語の素朴な疑問に答える36章』 (ジャパンタイムズ、1990年))
この若林の『…36章』は研究社から2018年に復刊もされていますから、指導する立場の方は特に、できれば学習者も、as / as の持つ意味をきちんと確認して欲しいと思います。
こんな例も授業では取り上げています。
これは見かけほど大きな問題ではない。
This is not as big a problem as it might appear.
不定冠詞の位置ばかりが強調されますが、ここでは、印象と実際での問題の大きさの比較となっています。
授業で強調しているのは、やはり語義のことで、
「問題の大きさ」を取り上げる際に、話者の主観的形容でbig以外の様々な形容詞を選択することが可能である。
ということです。
例えば、「問題が『大きい』」ということを伝える場合にも、How big? という想定に対して、
のように、big/huge/massive/greatなどのドロップダウンリストから、クリックして選べば済むわけです。
観点を少し変えて、「事の『深刻さ』」で問題を形容するのであれば、
のように、serious / critical / severe / grave などのリストから選ぶことで対応することになるでしょう。
多言を要さず、ビシッと一語で決める効果があります。
また、"huge and grave" など足し算をすることで語義を深めることもできます。
では、振り出しに戻って「同等比較」の as 形容詞 as の生息域とは?
How big? に対して、上述の二つの検索結果のような、ある形容詞を選択しただけでは表現できない語義の奥行きを、
- as big as ...
と聞き手・読み手に実感できる比較の対象を持ち出すことによって見せるわけです。
Germany’s Economy Is As Big As 22 Of Its Neighbours
Germany’s Economy Is As Big As 22 Of Its Neighbourshttps://t.co/X9nktNDAnM pic.twitter.com/xJWfLaFVgz
— Brilliant Maps (@BrilliantMaps) 2024年11月4日
ドイツの経済規模は近隣22カ国(の合計)と同程度
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これは地図がないと比較の対象たる「22カ国」の実感は難しいと思いますが、地図を見ている人にとっては「!」となるでしょう。写真の中の英語表現では、地図上で色分けされた欧州諸国を示して
- Germany’s economy equals all of these countries combined.
という文となっています。他動詞のequal、後置のcombinedも含めて覚えておくに値する例でしょう。
フィギュアスケートのグランプリシリーズ、フランス大会の金メダリストに言及したこちらのツイートにも同等比較でのas big as が使われていました。
Home crowd magic!
Lopareva/Brissaud shine on home ice, capturing their very first #GPFigure gold!
Their joy was as big as the cheers from the fans – a truly unforgettable moment!Home crowd magic! 🇫🇷✨ Lopareva/Brissaud shine on home ice, capturing their very first #GPFigure gold! 🥇 Their joy was as big as the cheers from the fans – a truly unforgettable moment!
— ISU Figure Skating (@ISU_Figure) 2024年11月3日
Watch the full interview 👉 https://t.co/TUzAELjd4h#FigureSkating #GPFigure pic.twitter.com/WpeoJ9h5Vi
ホーム観客の魔法!
ロパレワ/ブリソードがホームリンクで輝き、初の#GPFigure金メダルを獲得しました!
彼らの喜びはファンの歓声と同じくらい大きく、本当に忘れられない瞬間でした!
これは動画が貼られているツイートですので、その動画でのファンの歓声を確認することで、実感も完成することでしょう。
NBAネタからひとつ。MSGとはニューヨークにある、マジソン・スクエア・ガーデン (Madison Square Garden) のこと。
“It’s not as big as I expected, but still the vibe is here.”
Cool Victor Wembanyama on his 1st time at MSG“It’s not as big as I expected, but still the vibe is here.”
— Eurohoops (@Eurohoopsnet) 2023年11月8日
Cool Victor Wembanyama on his 1st time at MSG (📽️ by @AdamZagoria) pic.twitter.com/XXVgiBzwDH
「思っていたほど大きくはないけど、雰囲気はあります。」
クールなビクター・ウェンバニャマ、MSG初参戦
MSGは、約2万人収容可能なアリーナで、コンサートやスポーツイベントが開催されることで有名です。
別記事から参考写真を。ボクシングの試合で観客が入るとこんな感じです。
ということで、英語表現という観点では、「同等比較という表現形式を使ってまで表したい何があるのか?」を自問自答することが大事だということを授業では強調しているわけです。
本日はこの辺で。
本日のBGM: Adios Nonino (2024年11月8日 代々木第一体育館で流れた約2分50秒のバージョン)




