※この記事は、「文学フリマ東京40」で頒布された、中矢さんの4th比嘉公演レポ本に寄稿したものです。
■ドリライ2024は最高、という話。
Dream Live 2024は、最高のライブだった。そこには、僕がテニミュに望むもの「すべて」があった。
初期校にも少ないながらちゃんと見せ場があり、氷帝や立海のビッグマッチは試合を再現した演出があり、そして何より緑山がいた(オキラクちゃんだけではあったけど…過去のシーズンではそもそも緑山の実体がなかったりナレ死したりしていたことを思えば、全然「ある」うちに入るのだ)。
副部長コーナーもあり、浴衣DE夏祭りのコーナーもあり、定番のダブルス集合タイムもあった。黄金ペアのターンがダブルス集合で終わらず、「黄金フォーメーション」では11代目黄金ペア、2人だけの時間が用意されていたのも、嬉しい。
そして、ありとあらゆる組み合わせへの需要にも応えてくれた。ブン太とジローの絡みなんて、氷帝と立海が共演するドリライにおいて「俺の見たいものランキング」圧倒的第一位だったし、ちゃんと手塚と不二のデュエット、幸村と真田のデュエットも押さえている最高のセトリ。ウェットなデュエットが続いたあとに、不動峰の「Raise」が入るのも心憎い。あれこそ、全国大会出場を決めた「今」の不動峰が歌うべき曲だ。36ダブルスは楽曲こそなかったものの、六角に菊丸先輩がお邪魔するMCの中で、その需要に充分以上、応えてくれた。乾・海堂ダブルスの当て馬として使われる桃ちゃんも、愛おしかった。ささやかではあったが、リョーマくんと壇くんの触れ合い(通称:浴衣デート)もあった。
セトリでいえば唯一、六角の持ち曲が少ない、という不満はあった。だが4th比嘉公演を終えた今となっては、「それも仕方なかった」と思える。不動峰から立海まで全8校が出演している中、このドリライでやらねばならぬ・やっておきたい曲は山ほどある。涙をのんでセトリから落とした曲も数多あったのだろう。そんな中、六角の持ち曲が「夕焼けサイン~Make Waves」のメドレー1曲のみだったことは、ある意味バランスが悪いようには思えた。だが、六角の持ち曲を泣く泣く削ったその背景には、「六角はもう一度揃う機会があるから」という事実があるんじゃないか、とドリライ当時の僕は推測していた。不動峰、ルドルフ、山吹の初期校はおそらく今回が最後のドリライ。でも、六角は次のドリライにも出る予定があるから、持ち曲を削ったんじゃないか、そのときに樹ちゃんも揃った全員で改めて六角曲を沢山披露してほしい!と思っていた。そして、その推測は概ね当たっていた。いや、当たっていたというか、思ってた以上に何倍も早く、六角全員が揃う機会がやってきた。4th比嘉公演で、六角全員が揃うとは……!! しかもあんなにドリライ向きの学校曲を携えて。これはもう、次回ドリライで六角が揃うことはほぼ確定事項だと言っていい。はず。
11代目の卒業演出も、言わずもがな、最高だった。有明アリーナで撮影されたオープニング映像からして、最高。最強の青学がそこにあった。「Memorial Match」の名に相応しく、これまでの試合を丁寧に辿ったあと、改めて青学の卒業演出。M1では青学レギュラージャージで登場した迫り上がりから、純白の卒業衣装に身を包んで現れる11代目青学メンバー。キャラクターとしての物語とキャストとしての物語を重ね合わせて楽しむ、というのテニミュの醍醐味の一つではあるが、「ここからはキャストの物語だよ」とかっちり線を引いてくれるのが、4thシーズン流。千秋楽だけの特別演出として、最後の「HOWDY」が終わったあと、11代目が扉の向こうへと帰っていく演出も「儀式」を重視する4thシーズンらしい最高のラストだった。
■11代目に贈られた「Do Your Best!」と、伝統の「間」
もう一つ、今回のドリライで11代目に「特別演出」として贈られたものをあげるなら、それは「Do Your Best!」だろう。ドリライ2024は「テニミュ20周年記念」とは銘打たれているものの、4thシーズンは基本的にすべてが新曲。必然、セトリには4thシーズンの楽曲が並ぶ中、唯一、過去シーズンの曲で披露されたのが「Do Your Best!」だった。1stシーズンから継承され、過去のドリライで歴代青学が歌っているこの曲を、11代目が歌うことの意味。4th不動峰公演の青学曲「The FORCE of gravity」にもその一節が使われている、という文脈もありつつ、テニミュの青学といえばこの曲、というイメージも強い曲だ。
4thシーズンのテニミュは、表面的に見ると1st~3rdのテニミュと違うもののように見えるかもしれない。演出も脚本も一新されている。ラリーの作り方が違うし、舞台セットも違う。だが、その根っこにはこれまでのテニミュが重要視してきたものが流れているのは間違いない。「Do Your Best!」が披露された瞬間、僕はその事実を改めて実感した。テニミュ4thは、過去と分断されたものではない。当たり前のことだが、今までのテニミュがあって、今のテニミュがあるのだ。
特に僕が今回の「Do Your Best!」の演出で唸ったのは、その曲が始まる前の「間」の作り方だ。そこには、過去へのリスペクトがある、と思った。4thの演出を担当している三浦さんは、とにかく「間」を詰めていくタイプの演出家だ(少なくともテニミュにおいては)。それは今回のドリライでも一緒で、曲間に間を開けることなく怒涛のように進んでいくし、あまり「拍手待ち」をせず、次から次へと展開がやってくる。
だが、「Do Your Best!」だけは違っていた。ガチャガチャとした派手な演出てんこもりの「フェイクパレードメドレー」が終わったあと、舞台上にはキャストが不在となり、一瞬の「素」が出来る。「ん…? 次はなんだ?」と観客の我々が少し考えたところで、たっぷりと間をおいて「Do Your Best!」の前奏が始まる。僕は、この「間」に、テニミュの伝統を感じたし、過去のテニミュへのリスペクトを込めた演出だと思った。
「Do Your Best!」の前のあの「間」は、上島さんのつくる間だ。それを、三浦さんが敢えてトレースした、ということだと思う。いや、三浦さんが実際に意識してそうしたのかは分からない。だが、「Do Your Best!」をあのドリライのセトリに組み込むにあたって、あの「間」が必要だと、三浦さんが判断したのだ。その判断は、過去のテニミュへの理解とリスペクトがなくては成立しえないものだと思う。深読みのしすぎかもしれないが、少なくとも、僕にはそんな演出家の思いが、あの「間」から伝わってきた。
■テニミュ4thシーズンと、テニミュの「王道」
三浦さんは「テニスの王子様」への理解度だけでなく、「テニミュ」への理解度も高い。と僕はかねてから思っている。理解度が高くなくては、3rdシーズン後半のあのTEAM Partyシリーズを作れない。そして、テニミュへの理解度が高いのに、従来のテニミュの脚本・演出のオリジナル部分を一度すべて捨てて、ある種の「思い込み」を排除して、改めてイチから原作をテニミュにするという営みを続けている。その姿勢には、本当にリスペクトしかない。
従来のテニミュの最大の特徴であった「カウントに合わせるラリー」を捨て、「殺陣としてのラリー」を演出の主軸に据えた4thシーズンの初期。その試みは、関東氷帝公演で花開いたと言っていいだろう。特に、シングルス1。手塚部長と跡部様のアカペラでのラリー、音楽のない環境でのラリーがもたらした迫力とリアリティは、4thが模索した「新しいテニミュ」の一つの到達点だ。
そして迎えた次なる六角公演。「殺陣としてのラリー」の演出は継続しつつ、その文法の中で、従来のテニミュが持っていた「ケレン味」や「スピード感」をどう取り込むか、ということに取り組んだ公演だったと思う。原作ではさらっと描かれている部分に新たに曲を充てることで、試合展開をふくらませつつ、両チームの立場を際立たせるという試みもこの頃から顕著になった。
続く、関東立海公演。そしてドリライ2024。この2つの公演を通して三浦さんは、4thは「テニミュの王道」を歩む決意を決めたのだ、と僕は思った。あえての逆張りはしない。王道は王道として、しっかりと歩む。求められるものを「すべて」やる。それでもなお溢れ出る4thシーズンの個性。というか、「演出家・三浦香」の個性。その決意の宣言が、ドリライ2024の王道セトリであり、「Do Your Best!」の前の「間」である、と。
だが、青学が12代目に代わっての4th比嘉公演。この公演は「王道」のさらなる先を行くものだった。ほぼすべての試合展開、感情の動きに曲をつけるという、意欲的な「ミュージカル」づくり。なるべく原作どおりの位置に過去回想を入れつつ、舞台として成立させるためのあの手、この手の演出。端から端まで「新しいテニミュをつくる」という気概に溢れた作品だった。
三浦さんは、4thシーズンは、テニミュの「王道をなぞる」だけには飽き足らず、その先の道を作ろうとしているのだ。テニミュがこの先も「ミュージカル『テニスの王子様』」であり続けるため、「2.5次元ミュージカルの金字塔」であり続けるため、「もっと上へ」と高みをずっと目指し続けている。三浦さん自身が「道を追うな 道を選ぶな 道を創る者こそが勝者」と書いているように。
これからのテニミュ4thシーズンが創る、「まだ誰も通っていない道」。その道を一緒にたどることの出来る未来が、僕は楽しみでならない。









