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焚き火を囲みながら『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』感想戦。嗚呼、メビウスの輪から抜け出せなくて。

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケ―の魔女』オリジナル・サウンドトラック (通常盤) (CD) - 澤野弘之 (特典なし)

はじめに

  • 映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』を見てきました。
  • このアニメについて思うことは前回、一作目に際して書きました。
  • 前回書いたこと。見た目と内実のズレが面白い。それは人間のどうしようもなさを描いてきた富野ガンダムの深堀りと言える。理想を掲げても、性欲のような卑近な欲望に引き摺られるのが人間の常だから、といった内容でした。
  • 今回は鑑賞直後のもうちょっとざっくばらんな感想戦のようなものです。前回は面白がっていた映像と情緒のズレ、今回は何だか辛くなってしまった、という話を書いています。ネタバレあるのでご注意を。

映画を見てウヒヒを反省すること

  • ネット断ちして映画館へ。見せてもらおうか、ガンダムの肉欲とやらを。という訳で新宿ピカデリーにて見てきました。
  • 「乗り越えてみせる、世俗も肉欲も!」と言いながらやっぱり乗り越えられない……人間だもの、という内容でした。今回、公式もかなりこのハサウェイ君の煩悶、性欲問題にぐっとフォーカスした宣伝、売り出しをしてますよね。
  • 自分もそれを面白がってしまう、ウヒヒ的な心性あり。例えば、前回は小さな接触でコーヒーカップにさざ波立つ程度だったリビドーが増大し、今回は悶絶のあまり床にブチ撒けてしまう。
  • こういう安直な見立てに喜んでしまう、しょーもないゲスっぷり。ただ見終わって反省もありました。ハサウェイ君もギギも、手垢の着いた呼称ですが「可哀想な子どもたち」なんですよね。特にギギは「運命の女」と言うよりも、彼女もまた煉獄にいる人物と思いました。最終的な結末は知っていることもあり、映画鑑賞後は些かしんどくなってしまいましたよ……。

籠の中の鳥が救われ……ない

  • 宮崎あおい主演の映画『害虫』を「美少女という煉獄」と評した文章がありました。美、外見の麗しさが望まぬと望まぬに関わらず、本人の生き方を拘束している、という視点です。
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  • お話は違いますが、ギギも同様の存在と思います。並外れた美少女なので、ありとあらゆる性的な眼差し、好奇に晒されます。そしてギギ自身もその恩恵に預かり、利用もしています。伯爵の愛人故の贅沢な暮らし。しかしそれは決して本意ではない。醒めた仕事としてこなしている。そんな生き方に飽いているようにも見えます。
  • 言わば籠の中の鳥で、よくある英雄譚だとヒーローが助けにやってきて、ヒロインは自由意志を取り戻す。『ガンダムUC』はそういうパターンとも言えます。公的な役割を背負うミネバ様を、別ペルソナのオードリーとして出会ったバナージ君が手を取り、救い出してくれる。
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  • 劇場版『Zガンダム』でのフォウ・ムラサメのことも想起しました。強化人間として戦闘モードに入り込んでしまった彼女を、主人公のカミーユが人間として向き合い、コックピットに乗り込むことで心を溶かす。
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  • 今回の映画にてギギはハサウェイ君に「パイロット・スーツなんかで心を隠して!」という旨を言います。公的なマフティとしての殻に篭ってないで、素顔のハサウェイを見せてと頼む。上述のヒーロー、ヒロインが反転していますが、普通ならこれは救出、解放の場面となるはず。しかしそうはならないんですよね……。
  • 何故ならハサウェイ君も籠の中の鳥(のまま)だから。過去に運命の(と思った)相手を救えなかったこと、その時に錯乱してひとを殺めたこと。内罰感情に囚われていて、それが解消出来ていないから。
  • クライマックスでは、とある有名HR曲がかかって、ヒロインと主人公がキスをする。主役機のモビルスーツが天高く上昇していく。普通なら多幸感ある瞬間です。でもそれが「あー、とうとうやっちまった」と感じられてしまう。祝福、救出ではなく同じ籠の中の鳥が鎖で結ばれてしまう、呪いの場面に見えるのです。
  • ヒロイックな欲望に酔う話ではなく悲劇だから、破滅は避けられない。これからが地獄だぞ、という示唆と受け取りました。一作目同様に表現された映像と情緒がズレる演出で、前回はこのアンチヒロイズム、浪漫否定を面白いと書きながら、今回は行く末を思うと、しんどくなってしまった訳ですね。うーん、勝手な視聴者です。
  • きちんとキャラクターの実存を積み重ねてきた、それが自分のようなウヒヒな観客にもボディブロウのように効いてきた、ということかもしれません。

そのどうしようもなさに呆れつつ、でもそれこそが人間らしさかもね

  • 一作目のタクシー運転手との会話も、ブーメランのように戻ってきて。環境問題なんか知らんというあの運転手の言葉は、別に正解という訳ではないと思っています。日々の暮らし、現実に押し流されて、理想など考えること出来ない台詞と捉えることもできる筈。アニメ版のハサウェイ君は、相手を断固否定も出来ず、自分の行為は夢想なのかと悩んでしまう。真面目なんですよね……。
  • その中間点にあって、消極的能力を持って保留し考え続けることが出来れば、とも思うのです。そこを「乗り越えてみせる、世俗も肉欲も!」というのが危ういのではないかしら。
  • 「革命の大義か!肉欲か!」どげんかせんといかんという極端思考。遊びか本気かはっきりさせろ、という骨法のテーマソングのような発想。あるいはガンダムに乗ることが出来ぬならボールに乗って死ぬ、ガンダム/ボール理論。
  • 前回のハサウェイ関連エントリでこんなことを書きました。
    • 二次的な判断(思想やルール)に従って行動出来れば理想だけど、それって実は思考方法として負荷のかかることで、結局はやっぱり一次的判断(個人的な審美、リビドー)に引っ張られてしまう。そのどうしようもなさに呆れつつ、でもそれこそが人間らしさかもね。

  • 原作者の富野御大は、そのどうしようもなさを「こんなものだと分かって欲しい」と書いたのではないかなあ、と改めて思いました。

三部作の終わりは"BEYOND THE TIME"でええんじゃないか

  • 『ハサウェイ』の前日譚である『逆襲のシャア』のEDに流れる"BEYOND THE TIME"って、当時はピンと来ない歌でした。というのも自己中心的、セカイ系とも言える恋愛ソングで、視点がアムロでもシャアでもしっくり来ないんですよね。あの時代のタイアップ歌曲ってそういうもの、現代アニソンのように作品とシンクロしないのも当たり前なんですが。
    • ああ メビウスの輪から抜け出せなくて いくつもの罪を繰り返す 平和より自由より正しさより きみだけが望むすべてだから 離れても変わっても見失っても 輝きを消さないで

  • これハサウェイ君の観点と思えば腑に落ちるよなーとか今更に思いました。三部作の最後に流して欲しいです。既に澤野弘之/SennaRinさんのカバーバージョンあるから、これでいきましょう(勝手に決める)。
  • 今回の映画を題材にした『THE SOUND OF U.C.0105』というコンサートあり、申し込んでみたところ当選して喜んでいたのですが。映画見た今、これどんな顔して望めば良いのか。例えばギギが妾宅を伯爵のため整えるシーンで澤野弘之/SennaRinさんの歌曲流れていたけど、生で披露された場合、どんな感情で受け止めればいいんですか……。
  • このシーン、初見時はゴージャスな映像が次々と押し寄せてくるので、翻弄されてしまったのですが。後で「ギギがエレベーターに言及するのは(車椅子の)伯爵の生活のため」と言われて、初めて理解できた次第です。プロの愛人として「仕事」している、そこに前述のシャレげな歌曲流すという。いけずですね……。
  • 完全にこれも確信犯で、外側(映像や音楽)の快感と内側(物語、情緒)のエグ味が一致しない、させないってのを一作目以上に徹底してきているわけですよね。
  • また対比として、ブライトさんミライさんは地に足のついた生活をしていて、内見とか宇宙世紀とは思えない単語が飛び出します。未来を考えると、このほのぼの家庭感もエグい描写ですよ……。
  • 全局面に作り手の意識が張り詰めていて、こんなの形にするの、そりゃ5年もかかるよなと思います。しかし次また数年待つかと思うと気が遠くもなります……うぐぅ。

余談:小説との比較、上田麗奈サマに何言わせとんねん

  • ギギがメイスに耳元で何やら卑猥なこと囁き、激昂してビンタされる件、なんて言うてるのか知りたく小説を確かめました。うーん、これは確かにビンタされるわなーという内容であり、富野先生らしいと言えばらしい……。上田麗奈サマに何言わせとんねん。ありがとうございます。
  • あと小説読んだら「肉欲」なんて台詞ないじゃないですか、やだー。いや、地の文として「肉欲の触手が欲望している」なんて表現はあるんですが。独語したりはないんですね。映画はだいぶハサウェイ君を追い詰めている、そしてそれを明示してる、とも言えます。
    • 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(中) 機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ (角川スニーカー文庫)

さいごに

  • 映画観た後、隅田公園に移動して焚き火フェスというイベントに参加しました。火を眺めて酒飲んでボーッとするだけ。こういうので良いんだよという催しです。
  • 揺れる炎を眺めながら、ハサウェイ君はどうすれば良かったんでしょう、という話に。
    • どこか学生サークル的ノリのマフティの連中、人間的には愛敬あるいい奴らじゃんという感もあり。ハサウェイ君は突き詰め過ぎず、Switch持ち寄ってみんなでマリカーやって、勝った負けたとかユルくやってけば良かったのでは。
    • 初日にギギとホテルで同室になった時に、いたしていれば……。いたしていないから、互いに幻想の金額が釣り上がり、拗らせた呪いとなってしまう。
    • ハサウェイのみならず、カミーユもカツもそうだし、だいたいはシャアに運命を狂わされてる。高すぎる理想と、低すぎる私怨を抱えた危険人物。シャアが全部悪い。
  • うーん、ひどい結論にて、この項おしまい。



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