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摩擦係数とは何だったのか?現代のハンバーガーとしてのJourney、その魅力。

ライヴ・イン・コンサート・アット・ロラパルーザ - ジャーニー

はじめに

  • 渋谷陽一氏の話を枕に、ハンバーガーと評された産業ロックバンド、Journeyについて書いてみました。かつて酷評されたファストフードのようなものという立ち位置、しかしハンバーガーの何が悪いとね、という話を書いています。

渋谷陽一氏に思うこと

  • 亡くなった直後なので悼む文章を多く見かけ、そんなもん個人の人間としては当たり前だとは思います。しかし音楽評論家としてはどうなんでしょう……。おいらのような人間からすると愛憎半ばする思いあります。
  • 実は氏の書籍やラジオ番組はそれなりに摂取していて、影響を受けた部分も少なからずあります。確か図書館で借りて『ロックミュージック進化論』とか、当時はマジメな顔して読んでいた記憶。
    • ロックミュージック進化論 (新潮文庫 し 26-3)
  • しかしぼかー育ちの悪いメタル、プログレ、産業ロック大好きっ子でもあったので、氏による特定ジャンル、バンドへの軽蔑を隠さない文章(中傷とさえ言える)には辟易したものです。曰く「情動が軽薄」「時代性を持たない」「反逆性がない」云々。
  • 「ロックとは現実との摩擦が生み出すノイズである」とか「ロックには同時代的アクチュアリティが必要である」とか。今思えば特定の史観に過ぎないことを普遍として語るって無理ありますよ……。当たり前ですが別にノイズや衝突なきレイドバックしたロックだって、傾聴に値するものは幾らでもあります(一応フォローすると、当時は幻想もあって、ロックとは線形に進化するものだという思い込みもあったのだとは思いますが)。
  • 一方で後年、長戸大幸とは付き合いあるからビーイングは貶さない、みたいな風見鶏っぷりも凄い。業界バランスや個人的関係性を優先しただけなのだとは思いますが、それってさあ……。
  • 「反乱軍かのように振る舞っているけれど、今や僕らは帝国だ」という有名な文章ありますが、反体制の徒として振る舞いながら、いつの間にか権力化して抑圧側に回っていたという意味では氏もまさにそうではないかと。
  • 同世代の伊藤政則氏や、大貫憲章氏がいち評論家という枠からハミ出ないのに比べると、やはり渋谷氏は破格のスケールと商才があったんだなという思いはあり。凄い人であったことは間違いない、しかし、という(無限ループ)。

Journey再評価の流れについて

  • 上気の話を枕に、わたくしが語りたいのはJourneyのことだったりします。そう、渋谷氏が「音楽と言うよりハンバーガーに近い」と評した、あの産業ロックのJourney。
  • (当時は渋谷氏のこのような物言いに「うぐぅ」となりましたが、今となればむしろハンバーガーで産業ロックの何が悪いん、毎日キャビア食うてるわけでなし、という気持ちです)
  • 重ねて言うと、ダサすぎるPVがレキシのネタにされたJourneyです。
    • www.youtube.com
    • www.youtube.com
      • 曲自体はダリル・ホール&ジョン・オーツの”Private Eyes”へのオマージュという手の込んだギャグ……。
  • Journeyの再起のきっかけとなったのはやはりドラマ『glee』の影響が大きかったのだろうなと思います。一話で"Don't Stop Believin'"が大々的に使われたことで、再注目されるようになった、という認識です。
  • "Don't Stop Believin'"は都会のどこか、夜の街で市井のひとの夢と希望が泡のように生まれ消えていくという歌です。
    • "彼らの影は夜に居場所を探しているんだ 街灯の下で彷徨う人々は 生きている意味を探してる 夜のどこかに隠れていると信じて"

  • 出自は違うけれど、ちょっとストリートロック的な歌詞とも思います。例えば、佐野元春さんの"ロックンロール・ナイト"でモンタージュのようにカットが切り替わりながら歌われる都会の夜の孤独と哀惜(それを言うなら"Jungleland"だろ、と言われたらそれはまあ、はい)。
  • こう書くと、あーはいはい、懐メロバンドですね。と言われそうなんですが、違うんですよ。彼等は再結成以降、2000年代以降も優れた曲を書き、現代的な音作りを行っているバンドなんです。
  • スカートの澤部渡さんがラジオで「Jorneyみたいな大味のサウンド」と発言していてガッカリしたことあり。いやプロのミュージシャン、ポップマイスターの澤部さんみたいな方に、自分のような素人があれこれ言うのも天唾だとは思いますが(本当のところは澤部さんのようなポップの作り込みと、バンドサウンド基調では求めるところ違うのだとは思います)。

"Together We Run"について

  • 再結成以降で一番好きなのはこれ、2022年のアルバムからの"Together We Run"。"Message Of Love"が"Separate Ways"パート2と言われることありますが、こちらは"Don't Stop Believin'"の変奏と言えるかもしれません。
  • "Together We Run"は、蔑ろにされた君に語りかけ、可能性を信じて小さな町よりも大きな世界へ旅立とう、という内容。「3枚のシャツのパックと、古いギター、空想にふけった詩を持って、きみの天使の声を聴かせてほしい」と聞く人の背中を押す歌です。それはリスナーに向けた詩でありながら、何処かバンド自体のキャリアが重ねられている、浮沈ありながらでもやるんだよ、という宣言にも聞こえます。
  • 特筆したいのは曲展開に合わせた音響設計です。
    • 隙間の多い、広い空間を思わせる始まり
      • うっすらと聞こえるアンビエントパッド、まるでカーテンが揺らぐような感触
    • 進行のエモーションに合わせて徐々に音密度があがっていく
      • ギターの層・シンセのレイヤーが段階的に厚くなる
    • サビ手前では叫ぶのではなく、あえて語るように「Come with me」
      • リスナーのプライベート空間への接近、情動の喚起
    • 一瞬の静寂→サビの爆発
    • 再び静寂へ
  • "Don't Stop Believin'"パート2でありながら、あの頃には出来なかった演出技法です。これ、何度か書いていますが、澤野弘之さんがやるような感情と音設計の連動であり、アニメOP的であるとすら思います。
  • つまり、ちゃんと美味しい肉と野菜が詰まった現代のハンバーガーになっているということです。ハンバーガーを舐めたらアカンでえと。

本当は触れたくないが、書いておくべき事項

  • ただここまで書いておきながら、彼らの場合、メンバーの人間関係は崩壊していて、訴訟合戦まで繰り広げているんですよね……。2024年の来日ライブでは直前でもメンバー間の対立騒動が持ち上がり、どうなることかと思ったものです。
  • 実際のライブは素晴らしく、当時のモヤモヤが吹き飛ぶ多幸感ある体験でした。これ当日のライブより。
  • 不調により脱退説まで持ち上がったボーカルのアーネルさんも絶好調。アーネルさんって、小柄で痩せてて白髪で眼鏡と、およそロックスタア然から遠いのだけれど、歌のうまさだけでめちゃくちゃカッコ良く見えてくるから不思議です。
  • 斜め前にやたらガタイのよい外国人のお客さんがいて、途中まで意外な程に大人しかったのだけれど、ラスト周辺の名曲連発では立ち上がってワオワオ手拍子していて、思わずニッコリ。
  • 武道館の帰り道、前を歩いていた女性二人組が「ほんと来てよかったわー」と盛り上がっていて、それは喜ばしい話なのですが、「きっとメンバーの人間関係も上手くいってるんだろうね!」と語っていて、うん、それはまあ、違うかもだ……。
  • これほどの多幸感あるライブを披露、完遂してみせたバンドの内実がボロボロという不思議よ……。そういう意味では、渋谷氏が言うところの「摩擦係数」が極めて高いロックバンドということが出来はしませんか、しませんか……。おしまい。



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