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音楽も衰退しました?音の触り心地、あるいは車輪の再発明

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はじめに

  • いまの音楽はテクスチャ重視、言うなれば肌触りこそ重要になっているんじゃないかなー、という感覚を素人リスナーなりに書いてみました。

前回までの記述と補足

  • 以前のエントリにて。最近の商業音楽は同じことの繰り返しといった批判に対して、いや森全体はそうかもしれませんが、個々の樹木では面白い変化が起きていると思いますよ、という個人的な見解を長々と書いてみました。
  • 特に言いたかったのは
    • ハンス・ジマーさん、トレント・レズナーさん、澤野弘之さんのような映画/アニメ劇伴
    • オープンワールドやイマーシブシムのゲームBGM
    • モダンメタルやブラックメタル
    • フィニアス&ビリー兄妹、テグラユウキ
  • いずれもメロディ以上に音響で観客の情動を操作している、それは短尺勝負や没入体験を優先させるための収斂進化なのでは、という話をしてみました。

ジマーさんからの直接影響の例示

  • ジマーさん→澤野弘之とメタルの間柄のように、直接の関係はなくても同じように響きあうのが面白いですよね、という提起なわけですが、間接ではなく影響を明言しているバンドもありました。Septicfleshです。以下、WEBインタビューにて言及あり。
  • 『バットマン』の音楽は、他のどのサウンドトラックよりもSepticfleshに影響を与えました。バロック的な色彩や、シンプルなメインテーマが、私たちの音楽に大きな役割を果たしています。そこにはすべてが詰まっているんです──ダークさ、電子的な質感、優雅さ、そして悲劇的なテーマが、威厳ある雰囲気を生み出している。ジマーによるチェロの書法は唯一無二で、『バットマン』というキャラクターの人間的な側面を示唆しています。そして、このサウンドトラックには強い“動機づけ”の要素もあり、それが私たちにとって非常に大きな影響となりました。

  • 彼等はゴシック、シンフォニック・デスに分類されるバンド。再結成以降は特に大幅なオケ導入しているのですが、ジマー的なドローン抑圧/爆発/圧殺型で使用している曲が見受けられます。
  • メンバーのクリストス・アントニウさんはクラシック作曲の修士号取得者。現代音楽理論、映画音楽の構造分析が専門で、自ら指揮・編曲してオーケストラのお仕事もされているとのこと。
  • BRING ME THE HORIZONのメンバーだったジョーダン・フィッシュさんと同様にプロデューサー、サウンドエンジニア的観点を持ち、自覚的に音像を作り出している方と思います。

メタル発~ポップミュージックへの再利用

  • Djent的ギターやグロウル等、メタル発の技術が他ポップミュージックへの再利用される流れがあるという話も書きました。
  • 例えば日本の楽曲系アイドルには多々あると思います。PassCodeのようなEDMとメタルコアを融合したタイプ。彼女たちの場合、BMTHのカバーもしているので、方向性としてモダンメタル勢を明確な参照元としているのではないでしょうか。
  • もちろん、海外勢以外にも先行する国内の存在としてFear and Loathing in Las VegasやCrossfaithもあると思います。後者CrossfaithはBMTHとツアーしていて、対談にて大ファンであることを語っていたりします。
  • 俺はBMTHの大ファンなんだ。「Chelsea Smile」を聴いたときから。2009年とかかな?2008年かな?その曲がきっかけでBMTHにハマッたんだ。彼らと一緒にツアーをできるのは本当に光栄だよ。素晴らしい経験だよ。

  • (余談ですが、こういうリスペクトが繋がる話ってほっこりしますよね)
  • 日本のアニソンにもこの流れありますよね。RAISE A SUILENはモロにその系譜と思います。以下はそもそもFear and Loathing in Las Vegas提供曲なので、ちょっと反則かもしれませんが。

触感、音の触り心地について

  • 前出のエントリ書いた時はサウンドスケープ論を持ちだし、風景や空間を喚起させる音響へ変化していると書きました。ただ、あとから思ったのは、サウンドスケープ、音景というよりむしろ「身体の感覚を直に揺らす音響」へのシフトでは、という思いもがあり。音が「見える」より「触れる」という変化。ここら辺、感覚の話に過ぎないのですが、敢えて脳内整理も兼ねて書いてみます。
  • 自分の語り、音色=シンセのプリセットみたいな話として捉えられたことあったのですが。そうではなく、音像そのものの距離・質感・包み方、テクスチャの話です。そんな大した話ではなくて、音から受け取るこういう感覚ありますよね。
    • モコモコした低域 → 安心
    • ぼんやりとしたドローン音 → 緊張、恐怖
    • 痛みを伴うようなざらっとしたギター → 不安
    • 柔らかなディレイ → まどろみ、幻想
  • こういうの、ぼんやり感じながら音楽って聞いていますよね。ジマーさん等の現代アーティストはこれをかなり意識的に行っているのでは、という推測です。つまり音響操作による触感、メロディではなく、圧・濁り・反響でも情動を動かしていると。
  • (ヘンテコな例えすると、任天堂のゲームって触感重視なところありますよね。毛糸のカービィとかぬいぐるみのようなヨッシーとか。上で書いたテクスチャはつまり、カービィのモコモコ感だったりトゲトゲ変身時に受け取る感覚だと思って頂ければ)

サンプルを思いつく範囲であげてみる

  • EDM勢は顕著ですが、別にエレクトロだけでなく、スリーピースのシンプルなバンドでもやっていることだと思います。例えば轟音系ポストロック。以下のmonoの曲は正にそれで、最初はふわっとしたカーテンのような音。だんだん奥から塊が膨らんできて、最終的には巨大な壁が聳り立つ。
  • 自分が主食とするメタルでもあります。例えば近年のDark tranquilityとか顕著だと思います。シンセパッドでギターの攻撃的な音を包み込んでいる。
  • メタルコア系バンドもこれやってると思います、ブレイクダウンでギターの質感が一気に剥き出しになる。これは古のベイエリアクランチとは似てるようで違うもの(あの頃はテクスチャ変化とかそんな手の込んだことしなかったので)。クワイエットラウドの進化、という話を書きましたが、90年代のそれと現代の違いはこのテクスチャに拠るところが大きいのでは。90年代は静音/轟音の切り替え、今は音の「肌触り」そのものが変化する、という印象です。
  • 何度も引き合いに出しますが、ハンス・ジマーさんもこういうのやってます。有名な"Why So Serous?"
  • この曲、メロディはないも同然、進行も曖昧。しかしドローン音による抑圧。時計音による緊迫、切迫しているという時間感覚の改竄。位相を変えながら引っ張るベース、突如切り込むギター爆音!という音響と触感芸がテンコモリの楽曲です。
  • (改めて聞いたけど爆発的ギターの使い方はDjent的とも言えて、この抑圧→爆発が自分からするとSleep Tokenとかモダンメタルに近しく聞こえるのだと思います。)
  • 実際ライブで聞いた時にもこの触感で圧倒する感じありました。ジマーさん含めトリプルベースで中間部のバキバキとリフ奏でる展開を延々繰り返す。弦を弾く低音の塊が一つずつ体にぶつかってくるような体験。大袈裟に言うとゴッサムシティという架空の都市を触感で表現しているわけです。
  • 『インターステラー』のオルガンの柔らかい音造りなんかもそうだと思います。本来は非SF的な響きがむしろ無限に広がる宇宙、虚無感、浮遊感の表現になっとるわけですね。 皮膚で感じる空間感と言いましょうか。低めの音域+アタック弱め+長い残響、これが身体が包まれるような浮遊感に繋がっています。

ぜんぜんわからない。俺は雰囲気で音楽を聞いている

  • この話にはオチがあってですね、散々それっぽく書いておきながら、自分は近年の音はでんでん分かってない。たとえば今、話題になってるQuadecaさんの新譜。ここだけの話ほかー聞いてポカーンなりまして……。あーいや、"Born Yestarday"とか過去の分かりやすく叙情的な曲はまだ分かる、つもり。Sigur RósさんとかBon Iverさんみたいな感じやなーと。
  • でもこの新譜とかになると、正直ついてゆけない……。これもう上で書いた触感、テクスチャ音楽の極北という気はしますが。
  • ぜんぜんわからない。俺は雰囲気で音楽を聞いている。
  • ま、まあ、あくまで素人なりの感覚の話ですので、はい。

補足、あるいは車輪の再発明

  • 上の説明やっぱり要領を得ないと言われてしまい、うーんダメですか……と後付けで調べてみたところ、以下のような研究に当たりました。
  • 抽象的な音素材に対して「smooth」「rough」「bright」「dark」などの質感表現が国際的に共通して用いられ、しかも音のスペクトル構造や周波数成分と有意な相関を持つことが示されているとのこと。つまり、聴き手は実際に音の「肌触り」を感じ取り、それを触覚・視覚的な言葉で語っている。
  • 以下、該当しそうな箇所を引用します
    • 本研究は、聴取者がクロスモーダル言語連想を用いて抽象的な音をどのように直感的に記述するかを調査することにより、聴覚知覚の分野に貢献するものである。この研究結果は、被験者が聴覚の質を表現するために、視覚や触覚といった他の感覚様式に根ざした記述子に頼っていることを裏付け、音知覚が厳密に聴覚的なパラメータを超えているという考えを補強するものである。

    • 結果は、聴取者が音波の物理的特性を表現するために主観的な記述子を用いるという考えを支持し、音響分析における学際的な枠組みの有効性を浮き彫りにしている。言語的記述子とスペクトル特性、特に明るさ、粗さ、粒状性との間に強い相関が見られることは、非指示的文脈における聴覚的解釈を形作る認知メカニズムを浮き彫りにしている。

  • こちらも関連する論文だそうなのですが、残念ながら概要のみ。いっそ有料全文読んでみようか!と意気込みましたが、35$ぐらいするので引き返しました(セコい)。
  • こちらはポピュラー音楽における音色とテクスチャが楽曲構造やジャンル認識とどう関連するか、という研究プロジェクトだそうで、めちゃくちゃ面白そうなのですが、まだ進行中で結果の話には至っていないみたい。
  • もひとつ。グリッチやエレクトロニカなど、音そのものが重要なジャンル音楽に焦点を当て、リスナーが聴く際の認知メカニズムを研究したものだそう。
  • 以下、該当しそうな箇所を引用します
    • 「サウンドベースの音楽は、長期的な概念的連想を形成するというよりも、現象的かつ感覚的なレベルで私たちをより直接的に惹きつける音のパターンの連なりとして知覚される。

    • これらの音のパターンは、動きの中にある幾何学的な形態――線、平面、層、立体――を想起させる。

    • 聴き手はこの音楽の音のパターンを、刺激として――緊張、軌道、振幅、投影――として体験する。

  • どうでしょう。これは自分の話法と説明のある程度の裏付けになるのではないでしょうか。長々と書きながら結局、車輪の再発明している感が沸いてきましたが、この話、続くかも。

余談、ゲームにおける触感的音響の試み

  • NHKゲームゲノム、音楽特集の回を見ていました。水口哲也さんが登場されて、音楽と映像と触感を連動するゲームを目指しているという話をされていて。シナスタジア(共感覚)を引き合いに、音のテクスチャをゲーム体験と一体化させたいという言あり。我田引水すれば最近書いている触感音響と繋がってくる話やーと思いました。
  • RezのVR版、最終ステージはまさにこの共感覚を疑似体験させる水口さんゲームの到達点と思います。
  • 現時点の最新作『テトリスエフェクト』、PS4で発売時に遊んでいるのですが、PS5ならハプティック・フィードバック(振動を伝えることでユーザーに触覚的な情報を与える技術)あるから、より触感連動あって面白いのかも。
  • ただ問題はテトリスってテトリスというゲームそのものが面白過ぎるから、やっていくうちに他のこと(音楽とか)を考える、体感できなくなるんですよね。いかにテトリミノを処理するかどうかで手一杯になる、という……hahaha。

さらなる余談、TOKYO M.A.A.D SPINにて山田尚子監督ゲスト回からの連想ゲーム

  • ラジオ番組、TOKYO M.A.A.D SPINで山田尚子監督ゲスト回を聞いていました。映像面の話はよく掘られるだろうけど、音楽面に注力したインタビューということで色々面白かったです。
  • 映画『聲の形』について。耳が聞こえない方も音楽を楽しんでいる、という冒頭談から、例えば低音の響く環境では狭い部屋に閉じ込められている感覚になるという話あり。
  • 以下、ネタバレあり。『聲の形』にて、かつてイジメ側だった主人公は加害者として孤立し、それ以降に世界=他者を正しく認識できなくなる。最後、救済された主人公は世界を再び認識できるようになる。牛尾憲輔さんによる、泡が弾けて、心象が再び形を取り戻すようなサウンド。
  • これこそ牽強付会かもですが、自分がこれまで書いた音の触感で情動を操作する、という話を山田監督は意識的に作ってきたと言えるのではないかしら。
  • 続く映画『きみの色』は共感覚の話なんですよね。これも示唆的と思う……と書きながら未だにちゃんと見てない不勉強なわたくしhahaha。
  • 『きみの色』について。司会のSEKITOVAさんは劇中音楽に映画『シング・ストリート 未来へのうた』との共通性をあげていて。特に歌曲"Drive It Like You Stole It"が喚起するエモーションと似たものあると語っていました。
  • (『はじまりのうた』にしろ『シング・ストリート』にしろ、超大ヒット映画というわけではないけれど、言及される機会多い気がして、作り手に好きな人多いのかも……)
  • と適当に書いていたら、SEKITOVAさん本人から反応頂いていました。ひょえー。
    • SEKITOVAのポスト
    • 沢山ありがとうございます!はてなの記事内容は広範な話ですが、聲の形の音楽に限って言えば当時のNils Frahmとその周縁のポストクラシカルとも部分的にリンクする気がします。内側からの音とは少し違うのですが彼らもまた音響的なアプローチの為に雑音を感触的なものとして積極的に取り入れていました

  • まさかご本人に言及頂けるとは思わず。自分は超絶ニワカですが、アンビエント系を掘る一環でNils FrahmはHidden Orchestra等と並んで聞いていて。『聲の形』の音楽への類似性というのはナルホド!となりました。
    • 『聲の形』→牛尾憲輔さんによる心象を形にするような「内側からの音」
    • Nils Frahm→外側の「雑音を感触的に取り入れている」
  • アプローチは少し違うけど、ってことですかね。雑に類似性と書いてしまったので、念のため書かせて頂きました。
  • いずれにしろ素人の思い付き文章に、こんな風に反応頂いて恐縮しきり。こういうこと偶にあるから、インターネッツも悪くない、と思いますね。



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