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文化は衰退しました?あるいはスコアではない、音響だよ、という話。ハンス・ジマーさん編。

Live in Prague

はじめに

  • 文化は衰退している、音楽も然りという論説について。素人なりにいやー全体は知りませんが、個々には面白いものがあると思いますよぼかーという話を書いてみました。
  • この項では主にハンス・ジマーさんについて書いています。
  • 後日別エントリにて、音景と言うより触感的音響が強調されるのが今の音楽かも、という話を書いています。今回のエントリの要約にもなっているので、読んで頂けると幸いです。

話のきっかけとして

  • 2020年以降、コロナ禍で家にいる時間が必然的に増え、改めて音楽を聞くようになりました。手持ちの音源突っ込んだままのiTunesを掘り返したり、ジャンルやタグを再整理したり。Spotifyにも随分とお世話になりました。また在宅引きこもりだった自分が、後にライブエンタメ現場へ行くようにもなりました。
  • その過程で感じた快/不快、自分は何が好きで何が嫌いなのか、という感覚がボンヤリと輪郭を持ち始め、最近になってある補助線を提示されたことからエウレカ!セブン!急速に「理解る(わかるのルビ)」となった気がしたのです。
  • いや独自研究/要出典であり単なる妄想の可能性大きいのだけど、点と線が繋がって犯人?が分かった!という高揚感がありましてですね。自分的には「発見」でめちゃくちゃ興奮した話なんですよ。もしかしてQアノンとか陰謀論にハマってしまう人もこんな感じだったのかしら……。「世界は吸血鬼が牛耳っていて、各地に点在する巨石、メガリス信仰はヴァンパイアが眠る揺り籠だったんだよ」な、なんだってー!
  • 以下は同テーマについて、喫茶店トークで延々話し込んだ内容を再整理したものです。最初は喫茶店で始めたのですが、音源聞かせた方が早いという話になり、カラオケ館に飛び込んで、一曲も歌わずに携帯から音楽流して遣り取りしてました。気付いたら延長につぐ延長で、結構な金額を払う羽目になったという……。

文化は衰退している?(森or木の話)

  • きっかけはまず読んでみてと言われた記事、ノア・スミスのポップカルチャーは停滞している論。
  • 大まかには以下のような主張と理解しています。
    • 文化の停滞が起きている。つまりあらかたやりつくし、創造性のペースが鈍化している。現在のリバイバルブームで奏でられる音は昔と明らかにそっくり。
  • 文中で引用されているテッド・ジョイアも同意で、以下のようなことを述べていると。
    • 過去の焼き直しやトレンドの繰り返し、新しいアイデアの枯渇。テクノロジーの進化が音楽制作を容易にした一方で、イノベーションには繋がっていない。
  • まずこれはどれぐらい妥当性あるのか、海外の掲示板(Redditのr/LetsTalkMusic)等での反論は主に以下。
    • 歴史的視点の必要性。
      • 後世から見れば「停滞期」にも重要な変化や新しい動きが生まれている。
    • 「新しい音楽」や「イノベーション」の定義が曖昧。
      • 過去のリスナーにとっては革新的であったとしても、現在から見れば「焼き直し」のように聞こえる可能性がある、その逆もしかり。
      • イノベーションは必ずしも大転換だけでなく、既存の要素の組み合わせや微細な変化の中にも見出すことができる。
    • 多様性の見落とし。
      • 主にメインストリームのポピュラー音楽に焦点を当てている傾向があり、ニッチなジャンルやアンダーグラウンドのシーンで起きている革新を見落としている。
  • これはわたくしの言葉で言うとあれですよ、ゲームで言うところのソウルライク(高難易度の死に戻りゲーム)ですよ。
  • 2009年に発売されたゲーム『デモンズソウル』は当時、久夛良木健氏が試遊して「これクソゲーじゃん、売れへんよ」(大意)的なこと言うたそうじゃないですか。でも今やソウルライはジャンルとして定着し、ジャストガードやパリィといったアクションはあらゆるゲームで採用されている。こう書いている自分自身、『Elden Ring』をクリアするまで、本当の意味で凄さを理解していなかったんですけどね……。
  • 何が言いたいかと言うと、登場時は微細な違い、焼き直しに見えたものが大発明だったことが後で分かる、こともあるわけですよね。
  • そもそもノア・スミスは経済学者なので人口動態や「経済・社会状況が文化を規定する」みたいな立場に立っているんですよ、と言われまして。
  • しかしおいらからするとそれは森を見て木を語らず、という態度に見えるんだよなー。いや実際に背景としての影響は大いにあるんでしょうけど、それよか個々の樹木の枝ぶりの独自性や共通項の話をしたいねんけど……。
  • あとテッド・ジョイアの場合、嗜好性の問題があるのではないでしょうか。
  • ジャズの専門家で生演奏・即興性を重視し、リアルな音楽体験に価値を置く立場から、DAW(音楽制作ソフト)やサンプリングなどの非楽譜的・非演奏的な手法を冷遇する傾向がある。
  • これって「最近のレスラーは受け身が出来ていない」と主張する前田日明に似たありようじゃーないかな……。
  • あー勿論、彼等が二人とも自分のような素人には及びもつかない巨人であることは間違いない。しかし巨人だから、であるからこそ見落としているミクロな変化があるのではないか。それを確認していきたいという前置きです。

きっかけはハンス・ジマーさん

  • ジマーさんとは?一般的には派手な映画音楽を作るひと、料理の鉄人でおなじみの『バックドラフト』『クリムゾン・タイド』『ザ・ロック』『パイレーツ・オブ・カリビアン』などなど。
  • 初期はオーケストラ+シンセで叙情的メロディが奏でられ、あとブラスが鳴りまくるというイメージ。あの「デンデンデン……ババンッ!」というやつです(これ伝わってます?)
  • 『ピースメーカー』とか、当時CD屋さんで「ジマー史上最大に鳴ってます!」とか売り文句ついていた記憶。ジマーさん言うとこの時代の印象が未だにデカいんではないか。かく言う自分もそうでした。
  • あと近年、作業中にTwo Step From Hellをよく聞いてまして。彼等は元は映画予告向けに音楽を作る集団で、長じて架空のサントラ風アルバムを出すようになった人たち。
  • 2~3分で劇的に盛り上がる曲ばかりで、ゲーム、それこそエースコンバットのPVみたいな感じもある。これを聞きながら作業していると、何やら世界の命運を賭けて戦っているかのようなエエ感じの誤謬が生まれる。エピック系つまり「崇高かつ爆上げ」と呼ばれるジャンル。
  • 身も蓋もないことを言ってしまうとジェネリック・ジマーという趣。
  • ぼかーこういう作業中に映画サントラをかけて強制的にテンションを上げる、というのをよくやります。
  • ジマーさん来日すると聞き、Two Step From Hellが気持ち良いんだから、本家も楽しいに決まっているやんと。以前、2017のコーチェラのライブを配信で見て、こりゃ楽しそうと思ったのもあり。
  • 実際のライブは足運んで良かった、最高でしたね……。ライブエンタメって生モノだから、行くまでワクワクしても、体調だったり期待値のギアのかけ違いとか、現場のマナー悪い客とか、些細なことで楽しめなかったりもするのですが。これはもうめちゃめちゃ満喫してきました。
  • 休憩込みとは言え3時間半近くの長丁場。映画音楽作曲家のコンサートと言うよりはヒット曲満載のアリーナ・ロックバンドのライブという趣。素人丸出しの感想で言うと、とにかくゴージャス!金かかってそう!
  • ちなみに後で知ったのだけれど、ジマーさんライブでチェリストを務めたMarikoさんはTwo Step From Hellのライブに帯同していて、Wackenでもステージに立っているとのこと。うーん、繋がってきたぜ。
  • ついでにライブで大活躍だったガスリー・ゴーヴァンさん(Asia、Aristocrats、Steven Wilson等いっぱい)は現代ロック界でもトップ中のトップギタリストですが、ぼっちちゃんのモデル説ありますhahaha。
    • x.com
  • しかしはっきり言ってこの時の自分はまだよく分かっていなかった!予習向けにライブアルバム聴いて、あれー最近はあまりデンデン言わないんですね、とか呑気に思っていたぐらい。ジマーさんの変遷をちゃんと理解するのはライブ後だったりします

ジマーさんの変遷、デンデンバンバン→BRAAAM→サウンドスケープへ。

  • 昔はデンデンバンバン鳴らす派手なサントラでお馴染みだったけど、近年は全く違う。
  • BRAAAMがシグネチャ的によく引用されるけど、それも一面に過ぎない。
  • BRAAAM=ブラーム音のこと、ブオオーンと唸る地鳴りのような重低音で観客の注意を引き付ける。一時期、映画の予告編でみんな使っていましたね。
  • アタックが強いから映画予告に最適なんですな。『鬼滅の刃 無限城編』でも使っていた。ちゅうか、夢幻城のルックって今更ながらインセプションが元ネタ感ありますね。
  • なお起源については諸説あり、トレイラー音楽界隈では他の作家の名前も挙がったりするそうですが、そこまで深掘りできていないので本記事では割愛しますhahaha。
  • ノーラン監督との仕事でミニマルミュージックへ接近、更に『ダンケルク』等では環境音を利用する作家になっています。より正確には『シン・レッド・ライン』が契機と思われます。
  • 最大の違いはメロディではなく音響で観客の情動を操作するようになっていること。ジマーさんの有名な時計音による緊迫感の醸成は以下。
  • 音響が空間と風景を想起させ、観客の情動を左右する。こういった手法の根底にはサウンドスケープ論の影響があると推測される。
    • ja.wikipedia.org
    • 「音風景」「音景」などと訳される。風景には音が欠かせない。転じて自然音、都市生活の音には文化的コードがあり、それは人の快/不快に大きな影響を与える、という説。
  • それっぽく書いてますけど[独自研究][要出典]なんですけど!
  • いやジマーさんはBMWの電気自動車のサウンドデザインとかもしていて、こういう発想があったとしてもおかしくないと思うんですよね……。
    • www.bmw.com
    • "このプロジェクトに参加する歓びについて、ジマーは次のように語ります。「産業革命以降初めて、都市の音を再設計し、再定義できるまたとないチャンスです。しかも、機械的な制限に縛られることはありません。感情を揺さぶる体験につながるものを創造できるのです」"

  • 実際のジマーさんのライブでもDark Phoenix Suite~Dunkirk: Supermarineというメドレーがあったのですが、よく分からないママやたら緊張感ある曲だなーとか思っていました。
  • この曲で使われるシェパード効果について知ったのも事後の話。「1オクターブごとに周波数が異なる複数の音を同時に鳴らすと、音が永遠に上昇(または下降)し続けているように聞こえる錯聴現象」と聞くとなんじゃそれとなるのですが、64マリオの階段シーンで採用されている、と聞くとなるほど!となりません?無限ループ感。
  • 素人には分からん技術が色々あるんですな……。まーそれぐらいボンヤリ勢として聞いていたのですが、最後に演奏された"Time"がめちゃんこ気持ち良くてですね。
  • 『インセプション』は好きだけど、フェイバリットという程の思い入れはないし、この曲もメロディとしては単純な繰り返しなのに、ライブで聞くと心揺さぶられまして。
  • まるで、長い旅からようやく帰還したような安堵と一抹の寂寥感……。勿論、それは映画の記憶から想起されるもの、もっと言えば誤謬や感傷かもしれませんが、音楽単体にそれ以上のエモーションがあるように感じて。これ何なんでしょうね、と調べて辿り着いたのが、サウンドスケープ論、音響操作なのでは、という仮説。
  • これライブで聞かせる順番も上手いんですよね、『ライオンキング』『007』とお祭りのような曲で盛り上げて、最後にワンモア、と演奏するのが静謐な"Time"。カットオフで締める演出も決まっていてウットリとなりました。
  • ちょうど『ミステリマガジン』にて下積み時代のジマーさんに関する記事あり。
  • ジマーさんがタンジェリン・ドリームと交流あり、ごく初期から電子楽器の導入に積極的だった、という話が読めます。思えばタンジェリン・ドリームって現代サウンドスケープ的音響の嚆矢って感じがします(テクスチャ感ある音響、ドローン音による悪夢演出など)

トレント・レズナーさんの功績も大

  • シグネチャとなる音像を更新し続けるジマーさんまじ偉いですが、トレント・レズナーさんの功績も大と思われます。
  • 言わずと知れたNINのリーダにして、近年はアッティカス・ロスさんと組んで劇伴作家として活躍。レードマークは低音ドローン、グリッチノイズによる観客心理の抑圧コントロール。
  • 日本のドラマやアニメでも普通にこういう手法ありますよね。男女が普通に会話している、映像としてはなんてことないのだけれど、背景に薄らチリチリというノイズが聞こえる。鑑賞してるこっちはヤベえこと起きるでぇという嫌な予感が高まっていく。
  • 『ソーシャルネットワーク』の"Hand Covers Bruise"は象徴的な一曲。
  • 単調なピアノの旋律に被さるグリッチノイズが不穏なムードを演出する。
  • ジマーさんが空間/時間操作の名手なら、レズナーさんは心理演出の達人と呼ぶべきかも。
  • ジマーさんはノーラン、レズナーさんはフィンチャーと仕事しているの面白いですよね、現代の代表的な映画作家と関わり、時代の音を作っている。
  • 『TENET』『オッペンハイマー』と最近のノーラン作品で音楽担当するルドウィグ・ゴランソンさんも、どちらかと言えばレズナーさんよりと言えるかもしれない。

言いたかったこと(顧客が本当に必要だったもの)

  • ジマーさんやレズナーさんはメロディだけではなく音響で、空間や映像の喚起、時間感覚を変容することで観客の感情を揺り動かしている。
  • こういう手法は映画音楽に限らず、オープンワールドゲームのBGMからモダンメタルやブラックメタルのようなニッチジャンル、ビリー・アイリッシュ/フィニアス・オコネルのようなポップミュージックにまで通底している。
  • つまりスコアでは表現し難い、音響に表現の力点が移っているのではないか。
  • それこそが冒頭で書いたノア・スミスはんやテッド・ジョイアはんが見落としている、あるいは評価に値しないと思っている、けれど意味ある現代音楽の変化ではないか、というお話。
  • なんかこう、分かった風に書いているのですが、繰り返しますが全部後付けですけどねhahaha。

続き

  • この考え、ジマーさんに続き、澤野弘之さんのライブに参加して考えたことが基盤になっています。その話は次の項目から。
  • 以下に続きます。



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