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甘えとその不成立による衝突、Zガンダムは面白いよという話

機動戦士Ζガンダム

はじめに

  • ジークアクスが放送中で、その流れでZガンダムが話題になり、「いやーZは面白くないから別に見なくても……」みたいに言われていて、そんなことないって!面白いって!確かに初代ガンダムのようには面白くはないけれど(ないんかい)。また違う味わいがありますよ……と思い、自分の過去数年前の感想を引っ張り出してまとめておきます。

Zガンダム再視聴による発見

  • 偶には新しいフィクションを摂取した方が良い、ということで最近はZガンダムを見返していました。初見時は付いていけず序盤で脱落し、高校生ぐらいの時に再放送で見たものの、なんかもーやたらと人間関係がギスギスしていて、すぐに暴力がふるわれる陰惨なお話という印象のままでした。あとは百式とかキュベレイとか、モビルスーツのデザインはカッコイイなーぐらいのぼんやりとした解像度。
  • 今回見返して、こんな話やったんか……と思わされることが多々あり。やたらとギスギスしているのはまーその通りなのですけれど、衝突の原因となるのはほとんど「甘え」の不成立によるものなのです。はなから喧嘩がしたいわけではなく、信頼関係がないのに甘えようとするから問題が巻き起きる。
  • カミーユは甘えたい、ファは甘えたい、レコアも甘えたい。びびってたじろぐことにシャアさんも本当は甘えたい。という甘えの矢印が一方通行で互いを受け止めることがない。しょっぱい話で恐縮ですが、これ身につまされるものがありました。自分の人間関係のトラブルだって、こういう甘えの不成立に起因すること間々あったよな……という。まさかZ見てこんな感情を抱くことになるとは思わなんだです。

甘えと性欲の狭間で彷徨うカミーユ

  • あとカミーユの印象もだいぶ変わりました。とにかくキレる若者、エキセントリック少年と思っていて、いや実際に序盤はキレキレなのですけれど、紆余曲折あって彼なりに成長していく。また甘えたい君であるのも、両親が彼を顧みず、おまけに途中で酷い退場をするのだから、これ無理はないとも思わされます。ただZが凄いのは、この甘えがぼんやりとした性欲でもある、と描いていることです。
  • 顕著なのが第6話『地球圏へ』です。この回にて、カミーユはエマやレコアをフラフラと追いかけ甘えようとして拒絶され、何も言えなくなって女体をただぼんやりと眺める、といった行動に出ます(誇張ではなく本当にそういうシーンがあるのです)。
  • 作り手は斯様な描写を通して、甘えこそ性欲の起点である、と喝破しているのです。確かに、性欲ってこういう側面もある……。〇〇さんが好き!〇〇さんとエロいことしたい!とか具体性なくただなんとなく甘えたい、相手は誰でも良い、みたいな漠然とした衝動のこともある……。うーん、この思想は凄い、凄いけどSFロボットアニメという体裁でなんの話をしてはるんですか……とも思います。
  • (6話は他にもジェリドがライラに暴力で寄りかかろうとして逆襲され、ドロップキックを食らって轟沈、弟子入りを決意する等の面白展開が満載。甘えと衝突が描かれるZガンダム屈指の傑作回と思います)

性欲が暴走する純粋でどうしようもないカツ、コントロールの行き届いた邪悪なシロッコ

  • カミーユのこうした若さ故の明日なき暴走は、フォウやロザミアとの関わりの中で変化、軟化していくのですが、代わってトップ選手に躍り出るのがカツです。カツは終始ぼんやりとした性欲に突き動かされて勝手な出撃と失敗を繰り返します。初代で「はい、そこでまっすぐー」と高らかに歌い、未来を祝福されたスターリングチャイルドが、こんなクソガキとなって視聴者を殺しにくるのです。しんど過ぎるって……。
  • 対照的にこの甘え問題を完全に制御しているのがシロッコです。男にも女にも心にもないことを言って操ろうとする、鈴木Pみたいな人物。ハマーンでさえ本当は(シャアさんへ)甘えたい側であることを思うと、甘えをコントロール出来るシロッコこそ最強であり、また一番に邪悪なキャラクターで、ジャミトフやバスクでもなく彼こそが最終的に倒されるべき敵と設定されているのも分かります。

シャアさん面白過ぎ問題、見た目と内実が伴わないギャップ

  • そしてやっぱりZで一番面白いのはシャアさんです。当たり前ですが、アニメって人工的な産物なので、ルックがかっこいいキャラクターには相応しい内実が伴っている(と造形される)のが大半だと思うのです。ところがシャアさんは見た目は秀麗で、戦闘となるとイキイキとするのに、とにかく責任ある立場に登板したくない。上流の調整作業とか遣りたくない、現場の最前線で好きなコードだけ書いていたい、みたいなノラリクラリ君として設定されているのです。
  • だから初めて頭領として立ったかに見えたダカールの演説の後でも、「これで私は自由を失った」とか嘆じたりする。しかもそのことを年少のカミーユに見抜かれ「戦闘をしたいだけの人じゃないのか!」とか糾弾されたりする。
  • あとシャアさん面倒見が悪い。後輩指導とかやらない。前述のカツとかシンタ、クムも自分が連れてきておきながら全然構ってあげない。感じの悪いTVアニメスポンサーのウォンだって子供を前にするとジュース奢ったり大人ムーブするのに、シャアさんはそういうことしない。ウォンが遅刻するカミーユをしばき倒す場面でも、任せようとか言って自分の手は汚さない。「あんたちょっとセコいよ」とは後にクェスからアムロへ投げかけられた台詞ですが、本当にセコいのはシャアさんだって……。
  • やりたくないことから逃げたい、でもやらざるをえないかつての英雄というのは、ガンダムの続編なんて作りたくないものを作らざるをえなかった描き手の屈折が投影されているのだろう、と今になれば思い至ります。しかし前作の主人公のライバルにして、今回は若き少年を導くメンターでもある二枚目キャラクター、その内実をこんな風に提供してくるのは本当に凄い、凄いけどどうかしている……。

さいごに

  • 最初に書いた通り、じゃあZガンダムが初代と同じように面白いかと問われたら、正直心許ない。ヒロイックな展開とか、それによるカタルシスとか全くないですし。でも稀有な人物造形と一筋縄ではいかない人間ドラマとしては相当に面白いと思います。これ本当に。
  • そんなわけで、実は面白いZガンダム、未見の方は是非見て頂きたいです。新訳と謳われる劇場版はこういった要素をノイズになると判断したのか削ってしまい、旨味が落ちているので、最初に見るなら是非TVシリーズでお願いします。全50話、バァーって見られるから……。

余談

以下、他シリーズを含めたまとまりのない余談。

  • バスクはへり下ってみせるシロッコのことを「貴公の許せんところは自分以上に能力の高い人間はいないと思っているところだ」と言っていて、ちゃんと相手の内面を把握しているンですよね。悪役で暴力三昧だけど決して愚鈍ではない。
  • シャアさんより、地味に自分の仕事をやり通しているハヤトやカイの方が今となると立派な大人に見えます。でもシャアさん外見はスマートだから……百式もゴールドでピカピカしてるから……子供の自分が幻惑されたのは仕方ないんじゃよ……。
  • 基本的にええかっこしいのシャアさんが本気になって怒るのがミネバに面会した時で、珍しく真っ当な振る舞いとも言えるのだけれど、そのせいで会談がおじゃんになり、仲間の皆からは不興を買うという展開も面白すごいです。
  • 逆シャアでのシャアさんは代表に祭り上げられ、部下や愛人を掌握しようと策を弄して、成功せず反発される。失敗したシロッコみたいとも言えます。なにしろやりたくもないリーダ仕草をしないといけないので、「私はお前と違ってコードだけを書いているわけにはいかん」とかアムロに愚痴る。可愛いね(スパナを投げる)
  • ハサウェイはぼんやり性欲で勝手に出撃した上に、取り返しのつかないことをやらかすという意味で正当的なカツの後継者と言えましょう。
  • ガンダムUCやNTはヒロイズムの物語なので、Zや逆シャアと違い、見た目カッコいいやつは内実も立派に設定されています。フルフロンタルはシャアさんのだらしなさを滅却した綺麗な器として規定されている。



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