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なぜ今、ドメイン駆動設計(DDD)なのか――AI時代の競争力を左右する“データ構造改革”の現在地

AIを前提としたプロダクト開発が急速に進む今、企業が直面する大きな壁の一つが「分断されたデータ構造」です。パーソルキャリアでは今、長年の課題であった「事業ごとのデータ分断」を打破し、次世代の基盤を築くための大規模プロジェクトが進行しています。

その中核に据えられたのが、ドメイン駆動設計(DDD)。単なる技術刷新に留まらず、プロダクトづくりの思想そのものを変革するこの取り組みについて、推進メンバーであるITコンサルタントの鳥居、新井、前原の3名に話を聞きました。

「DDD」を起点に事業分断を超え、AI時代を支える次世代データ基盤へと再構築する

 

――今回の取り組みは、どのような課題意識から始まったのでしょうか? 

鳥居:パーソルキャリアは、各事業が自律的に意思決定し、スピード感を持って成長してきた組織です。しかしその反面、業務フローやデータ構造が事業単位で最適化され、全社で見ると「本来つながっているはずの情報」が分断されていました。どのデータを信頼すべきか判断が難しい状況が生まれていたのです。  

クライアントプロダクト本部 横断DX統括部 シニアコンサルタント  鳥居 旭洋

この問題は以前から認識されていましたが、改善には業務プロセスの根幹に踏み込む必要があり、影響範囲の大きさから抜本的な変革には至っていませんでした。

 

――なぜ「今」、全社のデータ構造を再設計する必要があったのですか?

鳥居:近年のテクノロジーの進化によってAIの実用化が一気に進み、データ構造を根本から見直す必要性が急速に高まったからです。また、AIを価値創出につなげるためには、信頼できるデータを機械処理に適した構造で整えておくことが欠かせません。

そこで、データ構造を再設計する手段としてマイクロサービス化を推進することにしました。ただし、単にシステムを分割するだけでは複雑性が増すだけです。適切な境界や責務を定めるための設計思想として、DDDを採用しました。業務領域を「ドメイン」という単位で捉え、その枠組みの中でデータを整理することで、構造的な分断を解消しようとしています。

 

――プロジェクトにおける、みなさんの役割を教えてください。

鳥居:私は全体のマイクロサービス化を設計する立場として、システムをどの単位で再編するか、どの境界が将来的な柔軟性を担保できるかといった前提条件を整理しています。そのうえでロードマップを描き、事業部や本部との調整を重ねながら、プロジェクト全体の推進を担っています。

新井:鳥居さんが全体設計を担っているのに対し、私は個別領域の一つである「個人顧客ドメイン」を担当しています。個人顧客情報は多くのサービスと連携しており構造が複雑です。ステークホルダーとの対話を通じて、このドメインが担うべき責務と境界を整理しています。

クライアントプロダクト本部 横断DX統括部  リードコンサルタント  新井 慎也 

前原:私は、求人事業に関わる「求人ドメイン」を担当しています。これまで事業ごとに分断されてきた求人データを整理し、一貫性のある構造へ再設計することが主な役割です。今後の拡張性を前提に、求人データを集約・蓄積できる基盤整備を進めています。

クライアントプロダクト本部 横断DX統括部 シニアコンサルタント 前原 匠 

境界定義と段階的アプローチで、横断的データ活用を実装へ導く

 

――個人顧客ドメインでは、現在どのような取り組みを進めているのでしょうか?

新井:氏名などの基本情報から、職務経歴書、スカウトメールのブロック設定など、膨大な要素を体系化し、「ドメインとしてどこまで担うべきか」という境界を定義しています。

ただ、現時点で将来のサービス像がすべて確定しているわけではありません。そのため、将来的なAI活用や新サービスを見据え、あえて特定の形に固定しすぎない柔軟な設計を重視しています。変化を前提とした「進化の余白」を残しながら、必要な項目を仮説立てて進めています。

 

――求人ドメインにおける取り組みについても教えてください。

前原:求人ドメインを共通化するには、業務とシステムの構造を整える必要がありますが、扱う範囲を広げすぎると議論が収束しません。そこでまずは、ドメイン内の「求人制作(法人からの情報収集〜求人原稿の作成・確定までの一連の業務プロセス)」といったコンテキスト(文脈)ごとに境界と責務を定義することから始めました。

「何をこの領域で扱い、何を外に委ねるか」というガードレールを先に決めたことで、「今は対象外とするもの」と「将来のために今整備すべきもの」の判断が格段にしやすくなりました。不確実性が高い中でも、着実に前へ進める手応えを感じています。  

 

――全体の戦略として、基盤構築をどのように進めていますか?

鳥居:従来のプロジェクトは、決まった目的に対して「どう実行するか(How)」を重視してきました。しかし今回は、「将来のサービス開発を加速させる」という上位目的から逆算した設計を行っています。

ただ、現時点では未来像の抽象度が高いため、作り込みすぎると逆に柔軟性を失うリスクがあります。そのため、まずは最小限の構造だけを整え、構想が具体化した段階で要素を足していく「段階的なアプローチ」を取っています。

 

――具体的に、何を基準に「最小限の要素」を決めているのですか?

鳥居: 判断基準は「将来にわたって価値を持つ要素かどうか」です。法令上必要な項目や、個人顧客の属性、職務経歴書などは共通項目として扱います。一方で、サービス固有の要素については、共通基盤に集約すべきかを慎重に検討しています。

多様な視点を束ね、前例なき変革を動かす。現場が直面するリアル

――今回の取り組みにおいて、苦労されている点を教えてください。 

前原:最も難しいのは、多様な価値観を持つステークホルダーを同じ方向に導くことです。DDDの理想像を追う人もいれば、実装による業務影響を懸念する人もいます。上位レイヤーとの合意形成も必要で、常に複数の視点が交錯します。

また、DDDの基本概念も人によって解釈が異なるため、議論の前提を揃えるための丁寧な対話が不可欠です。どこまでをプロジェクトの対象とするか、ガードレールを設けながら進めることが大きな挑戦になっています。

 

――この変革を加速させるために、組織として必要な要素は何でしょうか。

鳥居:今回の取り組みは、組織全体に影響を及ぼすスケールの大きな変革です。そのため、経営層と現場が密に連携し、全社一丸となった旗振りが必要不可欠だと感じています。

パーソルキャリアは、これまで事業ごとの自律性を重んじてきた組織です。一方で、今は市場変化が加速し、AIを前提としたサービス開発が求められています。こうした背景から、従来の文化と矛盾しない形で、横断的な変革を後押しする新しい推進力を組織として持つ必要があります。トップダウンの意思決定と、現場からのボトムアップの働きかけを掛け合わせることが重要だと感じています。

前原:マイクロサービス化は中長期的な取り組みであり、一定の時間を要します。しかし、事業側は、売上拡大や業務効率化など、AIの具体的な成果も期待しています。 
そのため、こうした期待にしっかりと応えながら、同時にマイクロサービス化の基盤構築も進める。この両輪をバランスよく推進することが、現実的な突破口になると考えています。

新井:現在は、各部署や組織によってマイクロサービス化への理解度や優先順位が異なるのも事実です。まずは既存業務への影響を抑えながら成果を積み上げ、「取り組む価値がある」と実感してもらうことが、現場としての重要な役割だと思っています。 

構造的課題の解消が、組織の未来を創る 

――難易度の高い挑戦を続けられる、その原動力はどこにありますか? 

新井:従来のプロジェクトでは、システムをリリースすることが明確なゴールでした。しかし今回の取り組みは、より大きな構想を形にしていくプロセスそのものが中心で、そこに価値を感じています。
加えて、個人顧客情報はビジネスの根幹です。長期にわたって価値を生み続ける土台をチームでつくれることに、大きなやりがいを感じています。 

前原:私は、現在のデータ基盤整備が将来の事業価値に直結するという確信を持って取り組んでいます。
具体的には、リクルーティングアドバイザーと法人担当者様の対話から求人票を自動生成し、その因果関係をデータとして蓄積することで、マッチング精度の向上や求人ニーズ予測を高度化させる。この将来像を見据え、足元の基盤を着実に積み上げることが私の原動力です。

鳥居:長年抱えてきた構造的課題を解消した先には、今よりずっと良い世界がつくれているはずです。組織に新たな選択肢をもたらし、未来を左右する変革に中心メンバーとして関われていることが、最大の原動力です。  

 

――最後に、この取り組みを、これからどのように深化・発展させていきたいか、みなさんの展望をお聞かせください。 
 
新井:次は「doda」における共通ID領域の整備に取り組みます。複数サービスで横断利用されるため、高い一貫性と堅牢性を担保しながら、将来の拡張に耐えうる構造を整えていきたいです。 

前原:今後はドメインの整備とあわせて、それぞれのドメインに専任の管理者が立ち、継続的に整備し続けられる状態をつくることも重要だと考えています。ドメイン同士が組み合わさって新しい価値を生む、真のマイクロサービス化を実現したいと考えています。

鳥居:まだ足元には課題が多いですが、対話を重ねることで共通の方向性が見えてきました。現実的な一歩を確実に積み重ね、組織全体を理想の姿へ近づけていきたいと思います。 
 
 

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鳥居 旭洋 Torii Teruhiro

クライアントプロダクト本部 横断DX統括部 システム再構築プログラム推進部

大学で情報システム工学を専攻後、新卒で客先常駐エンジニアとして設計からリリースまで経験。 その後、ITディレクターやPMとして、企画・要件定義からマーケティング施策まで包括的に従事する。 一貫して事業に携わる環境を求め2017年にパーソルキャリアへ入社。現在は長崎からフルリモートで、マイクロサービス化の基盤構築プロジェクト推進を担当。

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新井 慎也 Arai Shinya

クライアントプロダクト本部 横断DX統括部 システム再構築プログラム推進部

新卒でIT業界に入り、開発・運用の実務をプログラマーとして経験。その後、要件定義や業務設計、プロジェクト推進へと領域を拡大。2022年5月にパーソルキャリアへ入社。現在はPMとして、法人プロダクト領域の運用及びマイクロサービス化の基盤構築プロジェクトを担当。

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前原 匠 Maehara Takumi

クライアントプロダクト本部 横断DX統括部 システム再構築プログラム推進部

大手ハウスメーカー向けSIerにて、プログラマーとしてキャリアをスタート。その後、SE、PM、ITコンサルタントとして、要件定義から設計・開発・運用まで一連のプロセスに従事。現場DXの推進に関わるプロジェクトにおいて、複数案件の推進を担当。 2023年5月にパーソルキャリアへ入社。現在はPMとして、法人向けプロダクトおよびデータ基盤領域のプロジェクトを担当。

※2026年4月現在の情報です。




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