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「リーガルテック業法」の可能性について

第6回 デジタル・AIワーキング・グループ 資料を見て思ったことを書いていきます。

 

  • 弁護士法上、報酬を得る目的での法律事件に関する法律事務の取り扱いは、弁護士又は弁護士法人でなければ行うことができない(同法72条)。ところが、弁護士法人は、所有と経営の一致した無限責任法人なので(同法30条の4第1項、30条の12、30条の15)、弁護士法人は、リーガルテックサービス(=高度な情報処理技術を用いた法律事務処理サービス。多義的なので、このように読み替えることとしたい。)の提供主体としてはおよそ不適格である。
  • 一方で、「法律事務取扱業」としての弁護士の業務独占の範囲を定めた弁護士法72条の解釈のみによってリーガルテックサービスの品質や適切なサービス提供体制を担保することは、もとより無理があり、適切ではない。厚労省は医師法17条に関してそれを試みてきたとも言えるが、著しく法的安定性を欠いており、真似するべきではない。
  • この問題に関して、解決の糸口を提供しうるのは、ソフトウェア医療機器の提供行為が医業に該当するかという問題がどのように解決されているかであると思われる。
    • 医師法は、医業について免許制を定め、免許要件として、医師国家試験(臨床上必要な医学・公衆衛生に関する知識・技能を試験するものとされている。)への合格、成年であること、欠格事由(心身の障害、薬物中毒、罰金以上の刑に処せられたこと、医事に関する犯罪・不正行為)を定め、医師について、研修や行政処分(実質は懲戒処分であるが、そのようには呼ばれない。)などの、知識・技能と職業倫理を担保するための制度を定めている。当然ながら、医師は自然人である。
      • なお、医療法上、医療法人制度があるが、医療法人は、医師が医業を行う場所である病院・診療所の開設を目的とする法人であり、医療法人の医業というものは観念されない。
    • 一方、薬機法は、疾病の診断・治療・予防に使用されることが目的とされている機械器具等(ソフトウェアを含む)(極めて簡略化したので注意)である医療機器について、製造販売業者の許可制、(個別の)医療機器の製造販売の承認・認証制(届出制もあるが、ソフトウェアには適用されない。)を定め、各種の体制整備義務(GCP/GQP/GVP/GPSP等)、副作用等の報告義務、広告規制(ただし「何人も」規制として。なお、厚労省通達である医薬品等適正広告基準が実務上の基準となっている。)を課している。医療機器の製造販売業者は、通常、株式会社である。
    • 薬機法がない世界では、医学的なアドバイスをするスマホアプリの提供は、通常、医業に該当するはずであるが、医療機器として薬機法の規制を遵守して提供されている限りは、通常は、医業とはみなされない。
  • 仮にリーガルテックサービスについて法制度を整備するのであれば、薬機法の医療機器規制のような制度を設けることが考えられる。この場合、リーガルテックサービスについては、①医療機器のような承認・認証基準が確立されていないこと、②医療機器と異なり生命・身体への被害が生じる蓋然性は高くないこと、③法務省が高度な情報処理技術を用いた法律事務処理サービスたるリーガルテックサービスに対し、日常的に適時かつ適切なエンゲージメントを行うことは期待し難く、イノベーション阻害を回避するためには、現実に権利侵害が多発したような場合に限って権限を行使すべきと考えられることからすれば、法制度を整備する場合でも、業規制は最低限のものとすべきである。具体的には、例えば、届出制、包括的な体制整備義務、包括的な情報提供義務、調査権限(報告徴求命令、立入検査)、是正権限(業務改善命令、業務禁止命令等)のみを定めることが考えられる。
    • なお、医療機器規制は、事実上、医家向けと家庭用で異なる扱いがなされている(他の例として、金商法も、機関投資家と一般投資家を区別している。)。リーガルテックサービスについても、そのような区別は有用であるが、それを法律自体に書き込み、義務規定を分けると、イノベーションを阻害する可能性が高く、あくまで事業者が体制整備義務を履行する上で自主的に考慮しうる要素と位置づけておくのがよいのではないか。
  • なお、以上に対し、(本記事で定義したような)リーガルテックサービスではないAIサービスが法律について回答する事態をどうするかは、別の問題として、併せて考える必要がある。例えば、ChatGPTに具体的な紛争について専門性に基づく回答を期待する人は少ないであろうし、仮にいたとしても、政府のリソースによって保護する必要まではなく、自己責任としてよい(事業者の立場から見れば、自らリーガルテックサービスとして訴求する者は、相応の責任を果たすべきであるが、ChatGPTのような売り方をするに過ぎないのであればそうとは言えない)、と考えるのであれば、少なくとも現時点で規制の対象とする必要はないであろう。その場合でも、誤認防止措置(情報提供義務)を課すべきかは問題となりうるが、例えばLLMの回答に毎回注意喚起文言を入れることは、ユーザー体験を損ない、サービス提供コストを引き上げること(全ての業法が同種の注意喚起を要求する事態を考えれば明らかであろう。)を考慮すれば、適切ではなく(EUのAI法50条がどうなっているかはよく考えるべきである。)、現時点では自主的取組に委ねることでもよいかもしれない。



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