「肖像と声のパブリシティ価値に係る現行の不正競争防止法における考え方の整理について」について、気になった点のメモです。
商品等表示関係
- 資料の記載
- 「<事例①>生成AIを用いて、ある人物の肖像を使用した写真を作成し、それを販売した場合/当該人物が周知な人物であれば、不競法第2条第1項第1号によって対処し得る。」
- 「<事例③>ある人物と同一の声を出力することができる生成AIを用いて、当該生成AIに当該人物の持ち歌ではない曲を歌わせ、それを動画投稿プラットフォームに投稿した場合/当該人物の声が周知であれば、不競法第2条第1項第1号によって対処し得る。/ただし、打ち消し表示(例:「AI○○に歌わせてみた」)が付されている場合には、不競法第2条第1項第1号では対処が難しいが、理論上は、著名性が認められれば、不競法第2条第1項第2号にて対処可能。」
- 「<事例④>ある人物と同一の声を出力することができる生成AIを用いて、当該人物の声を使用した目覚まし時計を作成し、それを販売する場合/当該人物の声が周知であれば、不競法第2条第1項第1号によって対処し得る。/声だけでなく、声と特徴的な台詞とがセットになって使用されている場合は、より広く不競法第2条第1項第1号において対処し得る。」
- メモ
- 「ある人物の肖像を…」とあるが、実際に訴訟になれば、本当にその人物なのかがまず争われるのだと思われる。
- 「周知(な人物)であれば」とあるが、正確には、周知である必要があるのは商品等表示であり、かつ、周知性の中身としては、当該人物の営業を表示するものとしてのそれが求められている(例えば、当該人物が演じている特定のキャラクターの表示としての周知性を立証しても、当該人物の商品等表示としての周知性の立証にはならない。)。このことを考えたとき、肖像はともかく、声の周知性の立証は相当に困難なのではないか。
- 通常商品等表示とはいえないものが商品等表示となるためには、特別顕著性が要求されてきた。資料においては、そのことへの言及はないが、肖像はともかく、声についてそれは不要なのか。
誤認惹起・信用毀損
- 資料の記載
- 「<事例②>生成AIを用いて、ある人物の肖像を使用した広告を作成し、それを広告として使用した場合/当該人物が広告対象の商品・役務と関連する分野において信用のある人物であれば、不競法第2条第1項第20号・第21号によって対処し得る。」
- コメント
- 誤認惹起における表示は「その商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示」でなければならない(不競法2条1項20号)。誰が広告に出演しているかが商品役務の品質となったり、(需要者において)商品・役務の品質を誤認させるような判断要素となるのだろうか。
- 信用毀損は「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」である(不競法2条1項21号)。競争関係が必要であるから、例えば俳優の肖像であれば、他の俳優がそれを使用した場合にしか同号は適用されないことになるが、そのようなケースがどれほど想定されるのか。また、その点を措くとしても、当該商品役務の出演が「営業上の信用を害する」こととなるような商品役務というのが、どれほど想定されるのか。