医療データスペース的なものを考える上で、日本の医療に関するレギュレーションの基本的な仕組みが分かる資料があればよいなと思ったのですが、すぐには見当たらなかったので、書いてみました。
- 医師法は、医師個人に関する法律である。
- 免許制(2条)、行政処分(7条)、非医師の医業の禁止(17条)、応召義務(19条)、無診察治療の禁止(20条)などが定められている。
- 医療法は、医療機関を含む医療提供体制に関する法律である。
- 医療情報提供制度・医療広告規制(第2章)、医療安全(第3章)、医療機関の開設・管理・監督(第4章)、医療計画その他の医療提供体制確保に関する制度(第5章)、医療法人制度(第6章)などが定められている。
- 医療法上の監督権限は、主として都道府県知事に割り当てられている。例えば、医療機関開設の届出先・許可権者は都道府県知事であり、医療計画を定めるのは都道府県であり、医療法人の設立を認可するのも都道府県知事である。
- 医療法は、自由診療と保険診療の区別なく適用される。健康保険法は、保険診療にしか適用されないので、自由診療のみを行う医療機関(美容外科のような)に対しては、本法が主たる規制法となる。
- 健康保険法は、保険診療に関する法律である。
- 健康保険上の健康保険は、健康保険組合などが保険者となり、労働者が被保険者となり、被保険者が保険者に保険料を支払い、保険者が被保険者に現物給付として「療養の給付」を行う、というのが基本的な仕組みである。
- もっとも、保険者は健康保険組合などであり、彼ら自身が「療養の給付」を行うことは必ずしも現実的でない。そこで、厚生労働大臣の指定を受けた保険医療機関(65条1項)が、「療養の給付」を「担当」する。彼らは保険者と「公法上の契約関係」にあり、厚生労働大臣が定める「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(療担規則。70条1項)に従って「療養の給付」を行い、保険者から厚生労働大臣が定める診療報酬(76条2項)を受け取る。
- 「公法上の契約関係」は保険者と保険医療機関の間に存するにもかかわらず、彼らの間での相対での交渉は行われず、厚生労働大臣が決定した内容・条件で診療が行われることが特徴である。
- 保険医療機関に対する監督権限は、主として厚生労働大臣に割り当てられ、その一部はそこから各地方の厚生局長に委任されている。厚生局の監査では、医療法などの関連法令の遵守状況も監査対象とされている。
- なお、保険診療に関する法律としては、他に国民健康保険法などもあるが、基本的には健康保険法とパラレルな仕組みなので、省略する。
- 審査支払について。
- 健康保険法上、保険者は、診療報酬請求の審査・支払に関する事務を社会保険診療報酬支払基金(支払基金)に委託できるとされており(同法76条5項)、実際上、ほとんど必ず委託が行われている。支払基金による審査は、厚生局の監査と並んで、厚生労働大臣が決定した内容・条件で診療が行われることを担保する手段となっている。
- 社会保険診療報酬支払基金は、社会保険診療報酬支払基金法に基づき設立され、統治される法人である。その監督は厚生労働大臣が行い、その定款変更(同法4条2項)、役員の選解任(同法11条1項)は厚生労働大臣の認可が必要とされている。
リピーター医師問題、オンライン診療の法制化、一般社団法人の診療所開設問題、外来医師過多地域での開業制限、美容医療の契約締結ルール(法制化しない理由が謎ですが…)、マイナ保険証・オンライン資格確認、医療DXと支払基金改革などはいずれも、これらのどこかに位置づけられます。
医療法制について詳しく知りたい場合、最近改訂されたを参照されるのがよいと思います。