
プロジェクト開発において、予期せぬ技術的制約が致命的な課題として顕在化することがあります。
本記事では、実際に進行中のプロジェクトで発覚した深刻な問題に対し、
生成AI「Claude Code」を活用することで、わずか2日間という短期間で技術検証(PoC)を完了させた事例をご紹介します。
課題の特定:iOS WebKitにおけるデータ永続化の制約
問題が発覚したのは、半年間にわたり安定稼働していたハイブリッドアプリケーション(Web技術をネイティブアプリに内包)でした。
具体的には、iOSアプリ内のWebViewにおいて、JavaScriptを介して保存されたデータが特定の条件下で削除されるという仕様です。
調査の結果、以下の事実が判明しました。
- データの保存場所: WebViewからJavaScript経由で保存されたデータ(IndexedDB、Webキャッシュ等)は、iOSの ~/Library/WebKit ディレクトリ配下に格納される。
- データの削除ポリシー: ~/Library/WebKit 配下のデータは、7日間以上アクセスがない場合、または端末のストレージ容量が逼迫した場合に、OSによって自動的に削除される対象となる。
この仕様は、ユーザーが不定期に利用するアプリケーションにおいて、データの永続性を保証できないという致命的な欠陥を意味していました。
AIを活用した高速な技術検証プロセス
この課題に対し、私たちには迅速な技術検証が求められました。
限られた時間の中で、WebViewのJavaScriptからアプリケーション内の永続領域へデータを保存する代替手段を確立する必要がありました。
事前調査により、ElectricSQL および RxDB というライブラリが解決策の候補として浮上しました。
しかし、私たちのチームにはこれらの技術に関する知見がありませんでした。ここで、生成AIである Claude Code を技術検証のパートナーとして活用する決断をしました。
検証1日目:原因の切り分けと代替案の迅速な検証
- ElectricSQL による初期検証:
まず Claude Code を用い、ElectricSQL を組み込んだWeb/iOSのサンプルアプリケーションを生成。
迅速にビルドと検証を行った結果、データは ~/Library/WebKit 配下に保存され、課題を解決できないことが早期に判明しました。 - RxDB と Capacitor による再検証:
次に、Webアプリケーションをネイティブ化するフレームワーク Capacitor と RxDB を組み合わせるアプローチに切り替えました。再び Claude Code にサンプルアプリケーションの生成を指示。
検証の結果、この構成ではデータがアプリケーションの永続領域 ~/Library/Application Support に正しく保存されることを確認し、解決の目処が立ちました。 - 成果物

検証2日目:Androidでのクロスプラットフォーム検証
検証の最終段階として、Androidプラットフォームでも同様の検証を実施。
Claude Code が生成したサンプルアプリケーションを用いて動作確認を行い、iOSと同様にデータが永続化されることを確認しました。
以上のプロセスを経て、木曜の夕方に発覚した致命的な問題に対し、翌週月曜日にはiOS/Android両プラットフォームでの技術的な解決策を実証することができました。
AIとの協業を最大化したワークフロー
今回の高速な技術検証を実現できた背景には、Claude Code を体系的に活用するためのワークフローがありました。
- 要件定義と調査:
まず、対象ライブラリに関する基本情報を Claude Code に調査させ、前提知識を共有します。 - 実装計画書の生成:
直接的なコード生成を指示する前に、「指定したライブラリとフレームワークを用いて、要件を満たすアプリケーションの実装計画書を作成せよ」と指示します。
これには、アーキテクチャ、主要なコンポーネント、データフローなどが含まれます。 - プロンプト
「RxDB」を用いたサンプルアプリを作ってほしいです。 実行計画書を作ってください。 ## RxDBのクイックスタート https://rxdb.info/quickstart.html
▼成果物は以下をクリック▼
3.人間による計画書のレビュー:
生成された計画書をシニアエンジニアがレビューします。設計の妥当性を評価し、アーキテクチャ上の懸念点や不明点を Claude Code にフィードバックし、計画を修正・改善させます。
この人間によるレビュー工程が、後工程の品質と速度を決定づける上で極めて重要です。
4.計画書に基づくコード生成:
レビューが完了した実装計画書に基づき、具体的なコード生成を指示します。
5.テストとデバッグの反復:
生成されたコードをビルドし、動作を検証します。発生したエラーメッセージや問題点を Claude Code に入力し、対話的にデバッグと修正を進めます。
6.第三者によるコードレビュー:
最終的な成果物として生成されたWebアプリケーションのコードは、他チームのWeb専門エンジニアによるレビューを受けました。
これにより、検証対象のライブラリのみが意図通りに使用されていること、予期せぬ依存関係や不要なコードが含まれていないことを確認し、AIが生成したコードの信頼性と安全性を担保しました。
このワークフローにより、手戻りを最小限に抑え、高品質な成果物を短時間で得ることが可能になりました。
結論:生成AIはエンジニアの能力を拡張する
Claude Code がなければ、未知の技術スタックの学習に多大な時間を要し、2日間での検証完了は不可能だったでしょう。
今回の事例から得られた最も重要な知見は、生成AIがプログラミングという「作業」を代替することで、エンジニアは課題の本質的な分析や、技術選定の妥当性評価といった、より高度で創造的な業務に集中できるという点です。
今後も私たちは、こうした先進技術を適切に活用し、開発プロセスの高度化と生産性向上に努めてまいります。
本記事が、同様の課題に直面する開発者の方々の一助となれば幸いです。
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