技術イベント・カンファレンス運営のノウハウ(2枚目) Advent Calendar 2025 - Adventar 15日目の記事です。
YAPC::Japanシリーズのコアスタッフやオーガナイザーをしています。
技術イベント・カンファレンス運営のノウハウということで、段取りについて書いてみようと思います。
自戒のような話ですし、こんなこと当たり前だと感じる人ももしかしたら多いかもしれませんが、きっと技術カンファレンスを運営する他の人にとっても活きる内容であるとおもいます。
段取り八分、仕事二分
「段取り八分、仕事二分」という言葉があります。要は仕事の大半は段取りであるということです。
たとえば、本番環境オペレーションを無計画でやる人はいないでしょう(いないと願っています)。 ほとんどの場合は手順書を作り、読み合わせをして理解を深め、場合によっては開発環境でリハーサルを行ってから本番に望むでしょう。
カンファレンス運営も同じです。 本番に向けて準備を進め、当日に残りの二分の仕事をこなすのが理想です。
当たり前なはずだけど忘れがちなのが、カンファレンス運営の準備にまつわるほとんどの作業は当日のための段取りであるということです。
何を当たり前のことを、と思うかもしれませんがこれを徹底することは意外と簡単ではありません。
たとえば、Tシャツを発注するということは決めたけど当日どのように配るのかは曖昧な状態で当日を迎えてしまい慌てて決める、 複数の企画を計画したものの実は時間帯が他のものと重複しててスタッフが足りなくて困った、といったことは経験ありませんでしょうか。
ちゃんと準備したつもりが、ツメが甘くて当日に苦労してしまうというものです。実際のところ、自分はそのような経験があります。*1
準備は進めてきたものの、当日どうすれば良いのか、どのように実現できるのかなどが曖昧なまま当日を迎えてしまったということだと捉えられます。 当日のための段取りとして不十分だったが故に当日に苦労することになったのです。
このように、普段の業務でももちろんのこと、カンファレンス運営においても段取りは非常に大切です。
ゴールから逆算する
では、どのようにすればこのような問題を減らすことができるのでしょうか。
1つのプラクティスとして、ゴールから逆算することを提案します。当日もし自分がやるとしたらどうするのか、から逆算して考えるのです。
たとえば、Tシャツを当日に配ってほしいと言われたと想像しましょう。 いったいどうすれば良いのか具体的に想像できますでしょうか?
想像を具体化すればするほど、誰に配ったらいいのか、もし2枚ほしいと言われたとき渡していいのか、もし別のサイズに変えたいと言われたとき交換していいのか、いつどのように配れば良いのか。といった疑問が湧いてくるはずです。
それらの疑問に答えを出すためにはどうすればよいか、ということを突き詰めていけば何をすれば良いのかが見えてくるはずです。
とはいえ、一定の経験がないとその想像は具体性を欠くことが多いでしょう。具体性を欠くと現実味がない想定をしてしまったり、あるいは当日になってそれまで想像もしていなかった疑問が湧いてきて慌てることになりかねません。
できれば経験のある方のレビューをもらったり、他の人とディスカッションしてみて具体的なイメージを強固にしてそれを共有することが重要になってくると思います。
具体的かつ現実的なゴールを描き、その現場を想像して具体的にどのようにするかを決めて、それに必要な準備を進めるのです。
5W1Hを具体化する
では、ゴールを具体化するための問いを出す取っ掛かりとしてなにか良い方法はないのかということを考えてみると、5W1Hのフォーマットから考えてみるのがいいかもしれません。
たとえば、Tシャツを配るとして、Where: どこで配るのか, When: いつ配る/管理するのか, Who: どの役割のスタッフが配るのか, What: 具体的にどのTシャツを配るのか、Why: なぜ配りたいのか, How: どのように配るのかといったことを明らかにします。
- Where: 受付
- When: 受付完了時
- Who: 受付スタッフ
- What: スピーカー向けTシャツ
- Why: スピーカーが一目でわかるようにしたい
- How: 受付スタッフがチケット情報を見てサイズを確認し手渡しする
このようなことを具体化しておきます。 すると、疑問が生まれます。
- 受付スタッフがチケット情報を見てサイズを確認できるか→チケット購入時にサイズを選択してもらうようにすればできる→スピーカーもチケット購入が必要かつチケット設定時に注意が必要
- 発注はいつできるのか→発注するべきTシャツサイズがおおよそわかっている必要がある→チケット販売終了のタイミングで確定してから、あるいはその少しまえで概算値で発注するか
- 受付スタッフのオペレーションはどのようにするべきか→他のチケットと対応が大きく変わるのか、Tシャツのみ注意すればいいのか
- 受付にそもそもTシャツを置けるだけのスペースの余剰は作れるのか→前回までの経験から概算する必要がある
たとえばこのように、実はチケットの設定に絡みそうであるとか、スケジュールに制約が生まれるといったことを明らかにすることができます。
あるいはその時点で困りそうなことが分かれば、当日に他の手段でTシャツを配るという想定もできるでしょう。
こういった疑問をベースに詳細を詰めていき具体化することでゴールを明確にしやすくなりますし、準備としてなにをいつまでにすればよいのかも具体化する助けになるでしょう。
締め
いろいろ書いてみましたが、どこまでやっても漏れはどうしても出ます。時間は有限だし、完璧を求めれば求めるほど時間は足りなくなるため、ある程度は割り切りも必要です。
しかし、現実的に可能な限り備えておくことで、当日は当日にしか判断できないことに集中することができますし、なにより自分自身がカンファレンスを楽しむ余裕を作ることができます。 当日にやらなくても良い仕事は絶対に当日までに済ませておく。というところからでも心がけてみると良いかもしれません。
「段取り八分、仕事二分」を胸に、良いカンファレンスを作っていきましょう。
*1:あんまり大声では言えませんが、たくさんあります……。