
登場人物
長谷川 卓
株式会社fluct プロダクト開発本部 グロース部 CRE チームリーダー
大学院卒業後、金融系SIerに入社し、銀行間ネットワークのメンテナンスや銀行システムの共通基盤の企画・運用に携わる。2013年、アドテク企業でサプライサイドのバックエンドおよびフロントエンド開発に従事。2015年、VOYAGE GROUP(現CARTAHOLDINGS)に入社し、子会社fluctにてGoogle広告プロダクトのサポート業務に従事。2020年にfluct退社後、2023年に再入社しCREチームにジョイン。2024年より同チームリーダー。
fluctとCREについて
-- fluctのビジネスモデルとCREチームの存在意義について教えて下さい

fluctのビジネスを一言でいうと、新聞社や出版社といったWebサイト運営者様(以下、パブリッシャー様)に対し、広告を用いたマネタイズ方法のコンサルティングと、そのソリューションの提供を行っています。 かつてはネット広告自体が珍しかった時代もありましたが、今ではWeb広告にまつわるソリューションは徐々にコモディティ化しており、私たち以外の会社も同様のサービスを提供しています。そのため、競合との差別化を図る上で、信頼性の高い顧客サポートが不可欠です。特にお客様には広告運用に支援が必要な企業様も多く、システムに関する継続的なフォローへの需要が高いという背景があります。 そこで、 技術的な支援を通じてお客様との信頼関係を強化し、競合に対して優位性を発揮していく。これが私たちCRE(Customer Reliability Engineer)チームの存在意義 です。
-- なるほど。顧客との信頼関係を技術で強化し、ビジネスの優位性を築くことがCREチームの存在意義なのですね。改めて、そもそもCREとはどのような職種なのでしょうか?
CREは「Customer Reliability Engineer」の略で、主にソフトウェアやITサービスの領域で、顧客のシステムやサービスの信頼性・運用性を向上させるために活動する職種 です。
その役割は、まずお客様との強固な関係を築き、彼らのニーズや期待を深く理解することから始まります。そして、システムのパフォーマンスを常に監視し、問題を未然に防ぐための予防策を講じます。万が一トラブルが発生した際には、迅速に対応し、技術的なサポートを提供することも重要な務めです。
fluctにおけるCREの役割
-- CREが顧客の信頼性(Reliability)を支えるエンジニアであるという基本的な定義がよく分かりました。その中で、fluctのCREチームは具体的にどのような役割を担っているのでしょうか?
私たちの役割を端的に言えば「fluctを利用するパブリッシャー様の技術的な疑問や課題を解く部隊」です。

現在、CREチームは4名体制です。特定のプロダクト開発を担っているわけではありませんが、パブリッシャー様に合わせた広告タグのカスタマイズなど、コードを作成する業務も行っています。
パブリッシャー様のお客様からの実際の問い合わせは、お客様と直接向き合っている社内のコンサルタントを経由して、私たちCREチームにリレーされる形で届きます。まさに、 エンジニア部隊としてテクニカルな課題解決の最前線に立つイメージ です。
コンサルチームから依頼される作業は、大きく以下の2つに分けられます。
- 広告が表示されないなどのトラブルシューティング
- アイディアの実現可能性の検討
1つ目のトラブルシューティングについて。お客様に提供しているfluctの広告タグがうまく稼働しないといったご報告を受け、その原因を特定するために調査を行います。原因は、簡単な設置ミスから特定のブラウザの仕様に起因するバグまで実に多種多様です。
問題解決にあたっては、JavaScriptを中心としたWeb開発の知識を駆使して取り組みます。さらに、特定した原因や解決方法を社内の担当者はもちろん、その先にいるお客様にも正確かつ分かりやすく伝えるためのドキュメンテーション能力やコミュニケーションスキルも求められます。
2つ目の実現可能性の検討について。アドテク業界では、日々新しい商材やツールが社内外から生まれています。お客様にfluctをパートナーとして選んでいただき続けるためには、たとえ同じ商材を利用するにしても、私たちならではの付加価値を示さなくてはなりません。
そこでCREチームは、企画やアイデアに関する技術的な実行可能性の相談を受けたり、小規模なものであれば動作サンプルを作成してお客様に具体的なイメージを確認していただいたりと「技術サポート窓口」としての役割を担っています。社内に気軽に相談できるチームがあることで、お客様のご要望に対して迅速に検討を進めることが可能になっています。
– 取引先だけでなくfluct内部からも頼られる存在なんですね。最近チームとして特に力を入れている具体的な取り組みがあれば教えていただけますか?
はい、最近では「Webリワード広告」の導入支援に力を入れています。まず前提として、これまでパブリッシャー様にfluctをご利用いただく際は、サイトページに私たちが提供する広告配信タグを埋め込んでいただくだけ、という比較的シンプルな仕組みで広告が配信されていました。
一方、今回の「Webリワード」は少し仕組みが異なります。皆さんも、スマートフォンのゲームなどで広告動画を見ることで、ゲーム内通貨やガチャが引けるといった報酬がもらえる「アプリリワード」を体験したことがあるかもしれません。Webリワードは、そのWebサイト版とイメージしていただくと分かりやすいです。「広告を見たら記事の続きが読めるようになる」とか「有料記事を特別に3件まで無料で読めますよ」といった報酬をユーザーに提供するモデルです。
このWebリワードを実装するためには、パブリッシャー様側でもこれまでとは異なる動きが必要になります。通常の広告は、ユーザーが見てくれることでパブリッシャー様へ広告収益が発生しますが、Webリワードはそれに加えてユーザーへの報酬が発生します。その挙動は個々のパブリッシャー様のサービスごとに異なり、技術的な要件もそれぞれに依存します。
具体例でいえば、報酬を受け取ったユーザーの状態をどう管理するか、などパブリッシャー様が持つユーザーデータにも影響が出てきます。また、私たちが提供するタグの中に「ここにパブリッシャー様側での実装を書いてください」という穴埋め部分を設けており、そこもパブリッシャー様側の実装が必要です。また、「広告を見たら報酬がもらえますよ」と案内するダイアログなどもサイトのデザイン、つまりトーン&マナーに合わせる必要があるので、パブリッシャー様ご自身でUIを作っていただく必要があります。
-- なるほど、Webリワードは単にタグを設置するだけでなく、メディア側での開発作業も必要になるのですね。その上で、CREチームは具体的にどのように関わり、なぜそこでのサポートが重要になるのでしょうか?

おっしゃる通り、 パブリッシャー様によって技術力はさまざまですので、自社単独でUIを組んだり、複雑な実装をしたりするのが難しいケースも少なくありません。そこで私たちCREチームが技術的なサポート役として入り込むことが重要になります。
ただ、一つひとつのパブリッシャー様に対して毎回ゼロから丁寧にご説明やご対応していくと、どうしても量的に厳しくなってしまいます。また、社内のコンサルタントが都度CREに技術的な確認をすることもコミュニケーションコストになってしまいます。
そのため、この新しい取り組みをいかに効率的にかつ多くのパブリッシャー様に「横展開できる仕組み」であるかがキモとなってきます。例えば誰が見ても分かりやすい導入マニュアルや標準的な手順をコンサルタントと一緒に固めてパブリッシャー様にご提供していく。そうやって ビジネスサイドと二人三脚でfluctとしての仕組みを創り上げることが、CREチームがこのプロジェクトに関わる大きな意義 だと考えています。
fluct CREにおけるやりがい
-- 技術的な観点からお客様への提案を後押し・サポートする重要な役割を担っているのですね。そんなCREチームの仕事のやりがいは、どのような点にありますか?
誰もが知っているような有名なパブリッシャー様のサポートを裏側で担っていることも多く、「実はこのサイト、自分たちが支えているんだ」という誇りは大きいですね。縁の下の力持ちとしてのやりがいを感じられます。
また、アドテクの仕組み自体が非常に面白く、複雑なシステムの知識を身につけられるのは知的好奇心が満たされます。さきほどのWebリワードに関しても業界的にも非常にホットな技術である、という点が挙げられます。アドテクの最先端を追えているという実感は大きなやりがいです。
とはいえ、業界知識は未経験からでも学習して身につけていくことが可能です。実際に広告領域が未経験な方もチームメンバーにいて、今ではチームに欠かせない価値を発揮してくれています。

日々の問い合わせ対応は、まるで脱出ゲームや謎解きを解いている感覚に近い んです。「この事実があるから、こうなっているはずだ」と事実と仮説を積み上げて問題を解き明かしていく。解決できた瞬間の達成感は格別で、こういうのが好きな人にはたまらなく楽しい仕事だと思います。毎日が謎解き、と言ってもいいかもしれません。
そして何より、社内のコンサルタントから直接「ありがとう」と感謝される機会が多いんです。表舞台に立つわけではありませんが、誰かの役に立っているという貢献実感を得やすい。それが好きな人には、きっと向いている仕事だと思います。
こうした日々の業務に加えて、私たちが顧客との最前線で得た知見を活かして、fluctという組織全体をより良くしていく活動にも、大きなやりがいを感じています。
CREによるfluct全社への貢献
-- お客様への貢献だけでなく、組織全体を強化する視点もお持ちなのですね。その「組織をより良くしていく」という点で、何か具体的に取り組んでいる施策があれば教えていただけますか?
fluctと顧客との境界線にいる私たちだからこそ見える課題があります。それを個別対応で終わらせず、組織全体の知識向上や根本的な課題解決に繋げる活動を意識しています。
例えば、デバッグ手法や特徴的な事例を共有する社内勉強会を定期的に開催し、チーム内だけでなくfluct全体にパブリッシャー様のニーズが浸透するような仕掛けを作っています。
また最近では、問い合わせの生産性を上げるため、AIチャットボットのPoC(概念実証)も進めています。過去の問い合わせナレッジを学習させたAIボットを、Difyというツールで内製しました。コンサルタントが私たちに相談する前に、まずAIと壁打ちして論点を整理できる仕組みを整えることで、fluct内部でのコミュニケーションコスト削減と組織全体の生産性向上を目指しています。
– 知的好奇心、組織成長への貢献など、日々の業務に多くのやりがいを感じていらっしゃるのですね。CREを経験した後のキャリア展望には、どのような可能性があるのでしょうか?
はい、実際にCREチームからfluct社内の別の役割へステップアップしていくキャリアパスも事例としてあります。 例えば、私自身がそうですが、CREチームをまとめるマネージャとしてのキャリアパスがあります。また、CREとしてお客様の課題解決に深く携わった経験を活かし、プロダクトの開発チームへ異動したメンバーがいます。
これもCREの特徴的な部分ですが、社内からエンジニア未経験でビジネスサイドからCREになった人も数人います。顧客が直面する課題やプロダクトへの深い理解を元に、よりユーザーに寄り添った開発ができる人材になれる環境だと思います。
-- CREからキャリアを広げる人もいるんですね。最後に、CREチームとして今後どのような未来を創っていきたいですか?
一番分かりやすい未来は、fluctのサービス内での問い合わせ担当領域を増やしていく形です。現状は一部サービスの対応をしていますが、今後どんどんとfluct全体に手を伸ばしていき、パブリッシャー様のサポート最前線は一手に引き受けるような組織を考えています。
別の未来としては、例えば他社ベンダーが便利なツールを停止した際に、その代替を私たちが担うといった動きも考えられます。その場合、自分たちで開発まで行うのではなく、設計だけして開発チームに作ってもらう流れになるかもしれません。
このあたりは、これから私が舵を取り、チームとして最適な形を創っていくフェーズだと感じています。
-- お時間いただきありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
