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「顧客理解」を仕組み化する。AIとの壁打ちが生む「腹落ち」した提案と、『UB仮説作るくん』開発の裏側

プレイヤーとして、イネーブルメントとして感じた「CSの課題」

まず簡単に自己紹介ができればと思います。ユーザベースの谷内(やち)と申します。

私は2020年にユーザベースに入社以来、インサイドセールスやフィールドセールスのプレイヤー、実務イネーブルメントを経て、現在はカスタマーサクセス(CS)本部のアカウントマネージャーとして大手企業の営業戦略支援や事業開発支援に従事しています。

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私たちの組織は今、大きな転換期にあります。 かつての事業部ごとの縦割り組織から、プロダクトを横断して一貫した顧客体験を提供する組織への統合を進めています。CSの役割も「特定のプロダクトの機能を説明する」ことから、顧客の経営課題に対し、グループの全アセットを組み合わせて応える支援へと進化する必要性がありました。

しかし、現場には大きな壁がありました。 経済情報プラットフォーム「Speeda」も複数のサービスラインアップ毎にCSが存在し、それに加え、エキスパートリサーチを活用したリサーチやイベント支援、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」による人材育成やブランディング支援、「グロースパートナー事業(BPO)」による実務支援 などなど。 さらには汎用AIとの併用活用および差別化まで、CS一人ひとりがカバーすべきソリューションの領域が、劇的に広がっていたのです。

私が担当している大手企業の皆様でも、場合によっては1,000を超える製品を保有する中で「顧客にカスタマイズした提案をすることが難しい、どうしても得意な商材の領域に偏ってしまう。」このような同様の課題を伺うことは多いです。

担当領域が広がるほど、「どの顧客に、どの解決策を、どの順番で提案すべきか」の判断は難しくなります。特に異動直後のメンバーや、知見のないニッチ業界を担当する際、顧客の組織構造や特有の力学を理解しきれず、CS支援の提案が「一般論」に終始してしまう。 この「組織の進化に伴う、個人の認知負荷の限界」という高い壁を乗り越えるためにGeminiのGemで開発したのが、商談準備AI『UB仮説作るくん』です。

このGemは、企業名と担当者の役割を入力するだけで、顧客の所属する業界や競合の課題と、顧客の経営層の課題と担当者レベルの課題を整理し、ユーザベースのどのソリューションが提案できそうかの仮説をセットで出力してくれます。

「真摯さ」の土台としての信頼できるデータ:Speeda AI Agent データフィードの活用

顧客と向き合う際、顧客を理解する前提となる、データが誤っていたり揺らいでいては信頼は得られません。 私自身、信頼できるデータは、いわば「顧客への真摯さ」を担保する保険の様なものだと最近考えるようになりました。

正直、営業担当はあまり調べものをしない生き物だと思います。(私も前職の営業時代はそうでした。) ただ、コロナ化以降で情報収集や商材比較がwebで完結することが増えてからは、一方的に商材の説明をするだけでは、顧客の期待値を超える示唆を届けることが難しいケースが増えたと思います。 となると顧客を理解せず、一方的に製品説明をするだけでは競合との差別化ポイントが作れない。BtoBの法人営業に関わる方だと、既に何度も聞いて飽き飽きしている話だと思います。

最近はこれに加え、AIで顧客のことを調査し理解したつもりでも、出力されたテキストが顧客のリアルな課題なのか、背景の落とし込みができていないので、商談で顧客と対等にディスカッションができず、ひとまず自社の商材の話を多くしてしまう。誤った情報や表面上の情報を元に顧客とコミュニケーションを取ってしまうことで「この営業はうちの会社や業界のことをわかってないな」と思われ信頼を失う。こういったケースが増えていると感じます。

特に弊社はデータを扱う会社であるからこそ、AIのハルシネーションリスクをできる限り抑え、顧客対応の質を上げたい。こういった狙いから、Geminiのデータソースであるwebのオープンデータのみでなく、Speeda AI Agent データフィード」のデータをGemの「知識」に組み込んで開発に取り組むことにしました。

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開発の壁:「ハルシネーションの抑制」と「出力の均一化」

実際に開発する中で、最も注力して改善を繰り返したのはデータフィードの有無による顧客課題のリアリティの差です。

特に、非上場企業への提案仮説を立てる際、通常のAIではWeb上の断片的な情報からIT情報システム担当者の関心ごとを「一般的なDXの必要性」といった抽象的な回答に終始しがちです。

そこで、Speedaが構造化した業界と企業課題データを最優先に参照させ、その課題の粒度に該当するデータをリサーチしてくる様にプロンプトを設計することで、業界特有の収益構造から逆算した、現場特有のオペレーション課題まで反映したアウトプットが可能になりました。

ただ、すぐに最もらしい内容が出力されたかというとそうではなく、AI特有の「もっともらしい嘘(ハルシネーション)」を徹底的に抑えつつ、誰が使っても「質の高いアウトプットが均一に出る」状態を作ることは、技術的に最も難易度が高かったです。

データフィードについては、これまでSpeedaのアナリストチームが17年間かけて構造化してきた我々独自の約580種類の業界分類が軸となり構造化されていることから、このデータをリアリティあるアウトプットが主力されるように修正する工数が0で助かりましたが、 「Speedaならこの課題」「NewsPicksならこの便益」「グロースパートナーならこの実行支援」という商材側のマッピングが曖昧であったり抽象度が高いままでは、AIはすぐに存在しない機能を捏造したりしたので困りました。

よって、この精度を極限まで高めるため、大枠でまとめると以下のプロセスを何度も繰り返しました。

  • マッピングの徹底的な整理:各ソリューションが解決できる課題と便益を、各プロダクトの営業やCSを担当しているプロフェッショナルと連携し、Geminiがより具体的なアウトプットを出力できるように構造化し、Gemで引用。

  • プロンプトの微調整と検証:「いつ、誰が使っても同じ粒度の仮説が出るか」を検証するため、複数の業界・企業パターンでテストを実施。出力のブレを許容せず、プロンプトを数行単位で研磨し続けるような、地道な検証作業をユーザーのFBを踏まえて実行。

116名の活用と、現場から届いた「手応え」

リリースから約1ヶ月。当初はCS向けを想定していましたが、蓋を開けてみると営業担当やインサイドセールス担当も含め、116名が活用してくれる様になり、驚きました。 活用したユーザーからのフィードバックには、単なる効率化を超えて、「顧客との対話の質」そのものが変わったというコメントがあったことは、当初解決したかった課題への手助けになった感覚もあり、手応えを感じて嬉しかったです。 参考までにいくつかフィードバックを抜粋すると下記の様な内容でした。

* 「自分でもイメージできていなかった、上位レイヤーの課題感に届く」

事業責任者などの上位レイヤーで調べた時に、自分だけでは解像度が上がりきらなかった課題感が把握できた。データフィードに基づいた課題抽出により、これまでは想像の域を出なかった経営層の視点を、商談準備の段階で自分の武器にできるようになった。

  • 「商談相手の『階層』に合わせた、柔軟な切り替え」

初期回答は部長クラスのレベル感だったが、対面に合わせて『一般社員クラスの目線で教えて』と追加で打つと、まさに欲しかった粒度の情報が出てきた」 現場担当者から決裁者まで、商談相手に応じて瞬時に仮説のピントを合わせられる点は、マルチプロダクト提案において大きな強みとなった。

* 「ゼロベースからのストーリー構築が、圧倒的に早くなった」

特に土地勘のない業界や顧客との商談において、デモで強調すべきキーワードを推奨してくれるので、ストーリー準備の時間が大幅に短縮された。リサーチに費やしていた時間を、「どう伝えるか」というクリエイティブな思考へ転換することができた。

また、このGemの仕組みを公開したところ、NewsPicks側のメンバーからも「自分たちの提案にも転用したい」と声がかかり、独自の提案支援ツールが誕生したり、より複数の商材を掛け合わせソリューション販売するパッケージを検討しているメンバーが独自の提案支援ツールを作成することにも繋がったのは思わぬ副産物でした。 部署を跨いで「顧客理解」に向き合うメンバー同士が繋がり、組織全体の提案レベルを底上げしていくナレッジの越境が生まれるいいきっかけにもなったと思っています。

私がこのGemを作成したのは25年10月頃ですが、現在はGeminiのインターフェイスのみでなく、Claudeのインターフェイスでの活用や、Slackのインターフェイスで商談準備や商談後の振り返りができるAI Agentが作成されるなど、さらにAI×Speedaデータを活用したユースケースが生まれてきています。 これからお客様にもAI Agentの提供も開始することになり、これからも取り組みが加速していくことが想定されます。

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理想を支えるのは、地道な「構造化」

最後に、今回、多くのメンバーに活用されたのは、AIの性能が凄かったからではないと思っています。 SpeedaNewsPicks、エキスパートリサーチ、グロースパートナーといった多岐にわたるソリューションの便益を泥臭くマッピングし、構造化されたデータと繋ぎ合わせるという、地味な「土台作り」を妥協しなかった結果だと思っています。

私もやってみてわかりましたが、AIを活用し効率化できていなかったら途方もなかったので絶対にできなかったと思います。 ただ、AIだけではデータをリアルに構造化することまでは絶対にできず一定工数はどうしてもかかる。私はこの作業をCS活動が終わった後や合間の時間で行いましたが、もし商材が1000を超えていたらと思うとゾッとします。

最後に、読書の皆様の中で、もし何かしらのツールを導入したり開発しても現場の動きが変わらない、結局成果が出たのかどうかわからない、といった悩みがあれば、ぜひお話しさせて欲しいです。 ツールをどう作るかだけでなく、「現場がいかにして仮説を自分の言葉に変換するか」という泥臭いプロセスについて、私でよければいつでも壁打ち相手になりたいと思います。 最後まで読んでいただきありがとうございました。




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