
はじめに
こんにちは、ユニファのPdMのイトウです。
同じ説明をしているはずなのに、すっと理解できる人と、途中で迷子になってしまう人がいます。
その背景には、「視覚優位/聴覚優位」 や 「同時処理/継次処理」 といった、情報の受け取り方・処理の仕方の違いがあります。
一方で、NotebookLM のようなAIツールは、「こういう使い方をしましょう」と一つの正解パターンだけが紹介されがちです。
でも本当は、その人の特性ごとに「見せ方」「聞かせ方」「分け方」を変えることで、学びや仕事のしやすさが大きく変わるはずです。
この記事では、
- 視覚優位・聴覚優位
- 同時処理・継次処理
- そして「自分にとっての"わかりやすい"は、相手にとっても同じとは限らない」という視点
を、右利き/左利きのような「誰にでもある偏り」として捉え直すところから始めます。
そのうえで、NotebookLM の具体的な使い分けのヒントを紹介していきます。
1. 視覚優位と聴覚優位
視覚優位 とされる人は、情報を「見る」ことで理解するのが得意だと言われます。
こんなときに力を発揮しやすい
- 図解・チャート・マインドマップを見ると、一気に全体像がつかめる
- カラーペンでノートを整理したり、付箋を並べて考えるのが好き
- ホワイトボードに書き出してもらうと、理解が一気に進む
逆に、こんな場面でつまずきやすい
- 会議で「口頭説明だけ」が長く続くと、途中で話の筋を見失いやすい
- 電話だけのやりとりだと、不安になったり、聞き漏らしが気になったりする
- 「あとで資料送りますね」と言われるとほっとする(資料がないと不安)
支援や工夫の方向性
- 文章だけの資料でも、「見出し」「箇条書き」「表」などで視覚的な区切りを増やす
- 口頭の説明には、かならず簡単なメモやスライドを添える
- NotebookLM に「この内容を図や表にしたときの項目だけ出して」と頼み、あとから自分で図に起こす
聴覚優位 とされる人は、情報を「聞く」ことで理解するのが得意だと言われます。
こんなときに力を発揮しやすい
- 誰かに口で説明してもらうと、一気にイメージがつかめる
- 講義音声やポッドキャストを聞きながらの勉強がはかどる
- 自分で声に出して読んだり、誰かに話してみると、内容が頭に残りやすい
逆に、こんな場面でつまずきやすい
- 文字ぎっしりの資料を黙読するだけでは、なかなか頭に入ってこない
- 長いメールや仕様書を前にして、どこから読めばいいか迷う
- 図や表だけ渡されても、「結局どういう話?」が掴みづらい
支援や工夫の方向性
- 文章を読む前に、「この資料は何についての話か」を口頭でざっくり説明してもらう
- NotebookLM に「この資料を、会話調で3分くらいで説明するスクリプトを作って」と頼み、それを声に出して読んでみる
- マイク入力が使える環境なら、自分の疑問を声で NotebookLM に投げて、返答を読み上げる/聞きやすい文体にしてもらう
ウェクスラー式知能検査との関係
視覚優位・聴覚優位については、ウェクスラー式知能検査(WISC・WAIS など)の結果からヒントを得ることができます。
ウェクスラー式は「言語理解」「知覚推理(視覚的・空間的な課題)」「ワーキングメモリ」「処理速度」といった複数の指標に分かれており、
どの指標が相対的に高いか・低いかを見ることで、「視覚情報を手がかりにするほうが得意そうか」「言語・聴覚情報から考えるほうが得意そうか」といった傾向をおおまかに推測できます。
ただし、検査結果に「あなたは視覚優位です/聴覚優位です」とハッキリ書かれるわけではありません。
あくまで プロフィールから読み取れる"傾向"の話であって、日常場面での困りごとや得意さのパターンと合わせて見ていくことが大切です。
子どもであれば WISC、大人であれば WAIS など、ウェクスラー式は年齢に応じた版がある、というイメージです。
2. 同時処理と継次処理
同時処理 は、情報を「全体の関係性ごと一気につかむ」スタイルと言われます。
特徴のイメージ
- 地図を見ると、方角・距離感・ランドマークの位置関係をなんとなく一度に把握できる
- 文章を読んでいても、「この話はさっきのあれとつながっているな」と関連づけながら理解する
- ゴールイメージが先に見えたほうが動きやすい(「最終的にこういう状態にしたい」)
つまずきやすいところ
- 細かい手順やチェックリストばかり提示されると、「結局、何のためにこれをやっているの?」と迷子になる
- 全体像が見えないままタスクを渡されると、モチベーションが上がりづらい
- 同時に複数の情報を扱う分、一部を取りこぼしてしまうこともある
支援や工夫の方向性
- NotebookLM に「このプロジェクトのゴールと、主要な要素を図解するなら、どんな箱や矢印が必要?」と聞いて、全体マップ的な整理をしてもらう
- まず「全体の概要→主な論点→細かい手順」と、上から下へズームインしていく構成を作ってもらう
- 関連資料を NotebookLM にまとめて読み込ませ、「共通するキーワード」「よく出てくるテーマ」を抜き出してもらう
継次処理 は、情報を「順番にたどりながら理解する」スタイルと言われます。
特徴のイメージ
- 料理レシピのように「1. 2. 3. …」と手順が書いてあると、とても動きやすい
- フローチャートやタイムラインに沿って説明してもらうと理解しやすい
- ひとつのステップに集中してから、終わって次に進むほうが安心できる
つまずきやすいところ
- いきなりマインドマップや概念図だけを見せられると、「まず何をすればいいのか」が分かりにくい
- 話があちこちに飛ぶ会議やブレストが疲れやすい
- ゴールイメージだけ示されて、途中の道筋が示されていないと、不安になりやすい
支援や工夫の方向性
- NotebookLM に「この作業を、今日やるべき最初の3ステップだけに分解して」と依頼する
- 「まずAができたか確認して、できていたらBへ進む。できていなければCをする」というような条件付きフローをテキストで作成してもらう
- 長い資料を読むときは、「最初に読むべき章だけ教えて」「その章を読む前に押さえておくべきポイントを3つにまとめて」と頼んで、入り口を絞る
KABC-II との関係
同時処理・継次処理という言葉は、KABC-II(Kaufman Assessment Battery for Children-II) という知能検査の下位尺度としても知られています。
KABC-II では、「同時処理」「継次処理」といった認知のスタイルを客観的なテストとして測定できますが、対象年齢は 2歳6ヶ月〜18歳11ヶ月 です。
つまり、理論としては大人にも当てはまる概念なのに、KABC-II 自体は大人が受けられる検査ではないという前提があります。
そのため大人の場合は、「検査で数値化された結果」よりも、
- 日常生活での得意・不得意のパターン
- 仕事や学習の場面で「わかりやすい」「しんどい」と感じる場面の傾向
といったものから、自分の情報処理スタイルをゆるく言語化していくことが現実的です。
この記事でも、KABC-II の理論を土台にしつつ、「検査結果」ではなく自分の実感ベースで使えるヒントとして扱っていきたいと思います。
3. 「自分のわかりやすさ」は、必ずしも相手の「わかりやすさ」ではない
ここまで見てきたように、
- 視覚優位/聴覚優位
- 同時処理/継次処理
といったスタイルは、人によってかなり違います。
ポイントは、「自分にとっての"わかりやすさ"が、そのまま相手の"わかりやすさ"にはならないことが多い、という点です。
- 自分が視覚優位だと、つい「図にすればみんな分かりやすいよね」と思いがち
- 自分が継次処理だと、「手順書を作って渡せば安心だろう」と考えがち
でも、相手が聴覚優位だったり、同時処理寄りだったりすると、こちらの善意の工夫がかえって分かりにくさにつながることもあります。
私の息子は聴覚優位で、言語理解力が高い子です。ある日、空中アスレチックに挑戦したときのことが印象に残っています。

まず父親がやって見せ、次に息子が挑戦しました。「怖くないよ」「大丈夫」「お父さんのマネをしてカニさん歩きだよ」といった声掛けをしても、息子はなかなか動くことができませんでした。1本のロープに両手でしがみついたまま、手を離すことができない様子でした。
そこで、声掛けの方法を変えてみました。「いきなりパッと離さなくていいから、左手の力をちょっと緩めて。右手で持てたなっていう感じになったら、左手を動かして次のロープを掴む」──そう、順番を追った具体的な言葉で伝えたところ、スッと理解できたようで、次に進むことができました。聴覚優位の子にとっては、励ましや「マネして」よりも、「何を、どの順番でするか」を言葉で細かく伝えることが、動きにつながることがあるのだと実感したエピソードです。
だからこそ、
- 自分自身の特性を理解すること(自分は何がラクで、何がしんどいタイプなのか)
- そして、世の中には「自分とは違うパターン」がいくつもあると知っておくこと
この二つが、とても大事になります。
NotebookLM のようなツールは、「提示の仕方」や「説明の順番」をかなり柔軟に変えられます。
自分用には自分のスタイルに合わせてカスタマイズしつつ、
相手と話すとき・教えるときには、相手のスタイルを想像しながらプロンプトや出力の形を変えてみる──
そんなふうに使い分けられると、「みんな同じやり方に合わせさせる」ツールではなく、
「それぞれの特性に寄り添うためのツール」として活かしていけるはずです。
4. 多様な学び手に寄り添うために
発達障害は、おおよそ10人に1人はいるのではないかと推測されています。
「本人が当事者かどうか」という視点だけで見ると少数に見えるかもしれませんが、
「発達障害の人と関わっているかどうか」という視点で見ると、ほとんどの大人が何らかの形で関わっていると考えられます。
たとえば保育現場であれば、クラスの中に発達の凸凹があるお子さんがいることは珍しくありません。
「合理的配慮」など特別な対応を求められることも多く、
その子のために時間やエネルギーを多く割いているケースも現場ではよく見聞きします。
一方で、特性は人それぞれです。
同じ「自閉スペクトラム症」「ADHD」といった診断名がついていても、得意・不得意、刺激への感度、安心しやすいパターンは、本当に一人ひとり違います。
この違いにすべて個別対応しようとすると、どれだけ時間があっても足りないのが現実です。
だからこそ、「一人ひとりにゼロからオーダーメイドで対応を考える」のではなく、
- 1つのことを教えるときに、いくつかのバリエーション(見せ方・伝え方)をあらかじめ用意しておく
- 子どもごとに、「この子にはこの型がハマりやすそう」とパターンで当てはめていく
という発想が、現実的な落としどころになりえます。
NotebookLM のようなツールは、この「バリエーションづくり」を助けてくれます。
同じ内容について、
- 図や箇条書き中心の説明(視覚優位寄り)
- 会話文・スクリプト形式の説明(聴覚優位寄り)
- 全体マップ重視の説明(同時処理寄り)
- 手順書・チェックリスト重視の説明(継次処理寄り)
といったパターンを、ひとつの元資料から複数パターン生成しておくことで、
保育現場では「この子には今日はこの型を使ってみよう」と選ぶだけに近づけることができます。

すべてを個別最適にするのは難しいですが、
「いくつかの型を用意しておき、そこから選べるようにする」ことで、個別対応のハードルを少し下げることはできる。
視覚・聴覚の優位性や、同時処理・継次処理のスタイルは、その「型」を考えるときのひとつのヒントになります。
5. 発達特性とAI、これからの学び方
ここまで「発達障害」という枠組みで例を挙げてきましたが、
発達特性そのものは、発達障害のあるお子さんにだけ特別に現れるものではなく、誰もが少なからず偏りを持っているものだと感じています。
- 図で見たほうが圧倒的に楽な人
- 文字を読むより話を聞いたほうが理解しやすい人
- 全体像がないと動きにくい人
- 逆に、細かい手順から積み上げていくほうが安心な人
こうした違いは診断の有無に関わらず存在していて、
たまたま困りごととして強く表面に出ているかどうか、という差にすぎない面もあります。
そう考えると、本来は誰もが「自分にとって学びやすい・仕事をしやすいスタイル」を選べる状態が望ましいはずです。
しかし現実には、学校や職場の仕組み、教材の作り方はまだまだ「標準的な一つの型」に寄っています。
AI、とくに NotebookLM のようなツールは、
この「標準形」を少しずつほぐして、個別対応のバリエーションを増やすためのインフラになりうると感じています。
- ひとつの教材から、視覚優位向け/聴覚優位向け/同時処理向け/継次処理向けの説明を自動で生成する
- 学び手が自分で「今日はこの説明の仕方が楽そう」と選び直せるようにする
- 現場の先生や支援者が、「型」をゼロから考える負担を減らす
こうした方向に少しずつ進んでいけば、
「発達障害のある子に特別な配慮をする」という発想から、「誰もが自分に合う学び方を選べるようにする」発想へと、
ゆっくり軸足を移していけるのではないかと思います。
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