タイミーのプロダクトマネージャーの飯田です。
今回は、12/4に開催されたプロダクトマネージャーカンファレンス(以下pmconf)に参加してきました。このイベントを通じて非常に有意義な学びを得られたため、タイミーのプロダクトマネージャー(柿谷、小宮山、鈴木、小西、佐々木、楠本、飯田)から、各セッションから学んだ内容を、全3回の記事で紹介します。
(本記事は、全3回のうち、Part3です。)
▪️Part1・Part2はこちら
マルチプロダクトのカオスを制す。「プロダクトディシジョンレコード」で実現するチーム横断のアラインメント戦略
登壇者:
株式会社エス・エム・エス / プロダクト推進本部 アーキテクト プロダクトマネージャー
三浦 玄 氏
登壇資料:
株式会社エス・エム・エスで「カイポケ」のリニューアル責任者を務める三浦氏による、不確実性の高いマルチプロダクト開発における意思決定プロセス「プロダクトディシジョンレコード(PDR)」についてのセッションをレポートします。
■ マルチプロダクトにおける「不確実性」の正体
カイポケは40以上のサービス・プロダクトを展開する巨大なバーティカルSaaSで、業務×業態の掛け合わせによる複雑性(カオス)を抱えています。複数のプロダクト連携を前提とした「カイポケコネクト」の開発では、将来の予測の将来予測の困難さ(環境の不確実性)や、誰に何を聞けばよいか分からないこと(通信の不確実性)が課題となり、「誰が決めるのか?」「もう決まったのか?」といった混乱が生じていました。
■ 意思決定のプロトコル「プロダクトディシジョンレコード」
この不確実性の中で意思決定を機能させるプロトコルとして設計されたのが「プロダクトディシジョンレコード(PDR)」です。元々はエンジニアリングの文脈であるArchitecture Decision Record(ADR)をベースにしており、決定内容だけでなく、「なぜその決定に至ったのか」という背景や文脈(コンテキスト)を残すことを重視しています。
テンプレートには以下の項目が含まれます:
- イシューとコンテキスト: 白黒ついていない問題と、なぜ今それを解決するのか。
- クリティカルユーザージャーニー: 影響を受けるUX/CUJ。
- オプションと評価軸: 選択肢のメリット・デメリットと、判断のためのトレードオフ基準。
- 決定と理由: 最終的な結論と、その選択理由。
■ 運用と定着のポイント
PDRは単なるドキュメントではなく、会議体のアジェンダと連動させ、Slackへのプッシュやロードマップへの反映を行うサイクルで運用されています。特に「影響範囲が広く不可逆な決定」や「重要なリリース前の意思決定」において、WIP(書き途中)の段階から透明性を確保しながら合意形成を図る点が重要です。
■ 参加して感じたこと
「決定をデータベース化し、一覧性の高い形で見える化する」というアプローチは、シンプルながらも実行難易度が高い取り組みだと感じました。
しかし、不確実性が高い環境だからこそ、当時の意思決定の背景(コンテキスト)が資産として残ることの価値は計り知れません。小規模なチームから大規模・部署横断のプロジェクトまで、規模を問わず汎用的に活用できるフレームワークであり、自組織でも取り入れていきたいと感じました。
(執筆:楠元久貴)
元経営企画CSO(戦略責任者)のPMが語る「プロダクトが創る事業戦略」のリアル 〜PLに振り回されず、価値から逆算する事業貢献の最大化〜
登壇者:
キャディ株式会社 / VPoPS(Product Strategy)
岸本 裕史 氏
登壇資料:
いわゆる「ビジネス価値と顧客価値のトレードオフ」や「よりビジネス観点を持ちたい」という課題感からこちらのセッションに参加しました。
PMを苦しめる「PL責任論」
PMの現場では、往々にして以下の対立構造が生まれます。
- PMの想い: 「ユーザーのために価値あるプロダクトを作りたい(中長期視点)」
- 経営・事業側の要求: 「今月の売上はどうするんだ(短期視点)」
この板挟みになり、PL達成のために本質的でない機能開発に追われてしまうのが「PMあるある」です。岸本さんはこれを、単なるコミュニケーション不足ではなく、見ている指標と時間軸のズレによる構造的な問題だと指摘しました。
視点を変える3つのポイント
1. 売上は「遅効性指標」である
経営企画や経営陣にとって、売上などの財務数値はあくまで「結果(遅効性指標)」に過ぎません。 経営者が真に見極めたいのは、すでに起きた結果ではなく、「隠れた未来(先行指標)」です。プロダクトが本質的な価値を提供できているかどうかが、将来の売上を作る先行指標となり得ます。
2. 指標を見る「順序」を変える
「売上を作るためにプロダクトを作る」のではなく、「市場(TAM/SAM/SOM)という大きなポテンシャルから逆算し、価値提供の進捗を確認する」というアプローチへの転換が提案されました。
- TAM/SAM/SOMを見据える: まず自分たちが戦っている市場の全体像とポテンシャルを定義する。
- 価値の開拓スピードを確認する: その巨大な市場に対して、プロダクトがどの程度のスピードで価値を届けられているかを測定する。
- 結果として売上を見る: 上記の結果としてついてくる数字として売上を捉える。
この順序でロジックを組むことで、「短期的な売上」という小さな枠組みではなく、「巨大な市場を取りに行くための投資」という文脈でプロダクト開発を語れるようになります。
3. 事業戦略とは「価値から逆算すること」
キャディ社の事例(製造業2,000兆円市場への挑戦)を挙げながら、産業全体の課題(Issue)からTAMを規定し、そこから逆算して現在のプロダクト戦略を描く重要性が語られました。 PLに振り回されるのではなく、PL(結果)をコントロールするための変数が「プロダクト価値」であると定義し直すことが、戦略的PMへの第一歩とのことです。
感想
「売上は遅効指標でプロダクト価値がその土台である」というのは、言われてみれば当たり前のことです。一方で、実務でその考え方に基づいた判断ができていたかというと、そうではなかったと感じました。
PLを意識して小手先の取り組みに終始したことがある反省があります。
それを踏まえて今後は市場と顧客を深く理解し、価値をベースにプロダクトの展望を大きくかつ根拠を持って語れるようにしていかねばと思いました。
(執筆:小西 裕真)
「PMが未来に挑む、って何?──変化の時代に“対話”で未来を描く」
登壇者(インナーサークル):
株式会社TVer / サービスプロダクト本部プロダクト推進部部長
松岡 綾乃
BASE株式会社 / 執行役員 BASE BANK 事業 事業責任者
柳川 慶太
PM Jam / プロダクトマネージャー
飯沼 亜紀
ファシリテーター:
Product People Inc. / 提携プロダクトコーチ
広瀬 丈 氏
「PdMの未来」を問う、熱気ある1時間45分
〜フィッシュボウル形式で議論された「PM不要論」と「本質的な役割」〜
OSTの裏側では、「PMの未来」をテーマに、参加者同士が対話を行う「フィッシュボウル」形式でのディスカッションを実施していました。
■ 議論のテーマと形式 当初のテーマは「PMの未来」でしたが、議論は「そもそもPMはいらないのでは?」という、より根源的かつ挑発的な問いからスタートしました。フィッシュボウルという発散型の大規模対話手法を用いることで、予定されていた1時間45分は、フェーズや立場の異なる参加者たちによる濃密な議論の場となりました。
■ さまざまなトピック 議論の中では、プロダクトマネジメントの役割の曖昧さや多面性について、以下のような視点が飛び交いました。
- 事業フェーズによるPMの役割変遷
- 経営層と現場をつなぐ「結節点」としての機能
- 「なぜビジネスサイドでは代替できないのか?」という問い
- 経営者・事業責任者とPdMの境界線
■ 印象的な議論:「ロードマップを書いて捨てる!」 その中でも印象に残ったトピックの一つが、「ロードマップは書いて捨てる!」という一言から始まった、不確実性の高い現代におけるロードマップのあり方です。
議論の中では、不確実性の高い時代において「固定化はリスクである」という認識のもと、状況に合わせて適切にロードマップを書き換え、何が最善かを考え抜くことの重要性が語られました。
しかし、単に書き換えるだけでは短期的な施策に終始してしまう懸念もあります。そのため、2-3年後を意識し現在地を把握しながら、今の状況に必要な意思決定をしていく視座が求められます。
これには、PMには計画策定能力だけでなく、状況に応じた意思決定力や、ステークホルダーへの説明責任、適切なコミュニケーションなどの総合的なスキルが求められると気付きました。
単に「PMとは何か」を定義するのではなく、変化の激しい時代において「どのような視座でプロダクトや組織に向き合うべきか」を再考させられる、非常に示唆に富んだセッションとなりました。
(執筆:飯田 咲紀)
おわりに
全3回にわたり、pmconf2025のセッションレポートをお届けしました。 計7名のPMで参加した今回のカンファレンス。各セッションを通じてさまざまな学びが得られました。
「売上はプロダクト価値の遅効指標である」という言葉の通り、私たちが向き合うべきは常に「ユーザーのペイン」と、その先にある「市場への価値提供」です。
今回得た熱量と知見を日々の開発に還元し、タイミーはこれからも「はたらく」のインフラとして、ユーザーの皆様に驚きと信頼を届けるプロダクトをつくり続けていきます。
さいごに、pmconfではブースも出展していましたが、タイミーでは、共に「はたらく」の未来をつくる仲間も募集しています。興味を持っていただいた方は、ぜひカジュアルにお話ししましょう!
(執筆:飯田 咲紀・タイミーPM一同)