
こんにちは、SmartHRのアジャイルコーチ、@wassanです。
今回は、先日社内向けに開催したウェビナーの内容をシェアします。登壇いただいたのは、スクラムの共同考案者であり、Scrum@Scaleの提唱者でもあるジェフ・サザーランド博士です。
ウェビナーの録画はこちらからご覧いただけます(約1時間)。 博士の考え方や、AI時代のアジャイル組織のあり方についてのヒントが詰まった貴重な内容です。 www.youtube.com
SmartHRでは現在、AIによるプロダクト開発の変革を推進しつつ、組織全体の適応力を高めることを重要なミッションとしています。 その取り組みの一環として、アジャイル開発の第一人者であるサザーランド博士を招き、ウェビナーを開催しました。
ウェビナー開催の背景・目的
今回のウェビナーには、大きく2つの目的がありました。
AIとアジャイルの親和性を再認識し、今後の変化へスピーディに適応するため
AIはプロダクト開発のあり方を大きく変えつつあります。SmartHRでは、AIを活用した新たなチームや組織の働き方をいち早く実現し、組織能力を飛躍的に高めたいと考えています。
大規模システムにおけるアジャイル実践のヒントを得るため
SmartHRのプロダクト機能の拡大やユーザー数の増加にともない、開発組織も大規模化が進んでいます。スクラム共同考案者である博士の知見を直接学ぶことで、スケールしながらもスピード感を維持する方法を探りたいという狙いがありました。
ウェビナーで語られた主要なトピック
このウェビナーで博士が伝えたかった、特に大切な3つのメッセージをわかりやすくまとめました。
AI時代にアジャイル組織運営が必要とされる理由
サザーランド博士は、人間だけのチームよりも、AIと人間が協働するチームでは生産性が30倍以上向上するという研究結果に触れつつ、以下のポイントを強調しました。
- AIをチームに組み込めば、新たなエンジニア採用なしでも少人数で大きな成果が期待できる
- しかし、少人数のチームが増えた場合、組織全体の優先度が曖昧だと、小さなチームが新たなボトルネックになりかねない
- 技術的負債やチーム間の連携課題を恒常的に改善し、いくらチームが増えてもスピードが落ちない体制を作ることが重要
上記の仕組みを実現するための枠組みこそ、博士が提唱するScrum@Scale*1です。
経営層がリーダーシップを取り、組織の優先順位を決めきる
Scrum@Scaleの大きな特徴は、経営層を含む組織全体が「プロダクトや事業価値」に集中できる仕組みを設計する点にあります。博士はこう述べています。
- 経営層こそが、組織レベルのバックログ(エンタープライズバックログ)の優先順位付けの重要性を理解し、主導すべき
- AIは人類史上最大の技術革新であり、優先度を柔軟に組み替えられる運営モデルの必要性が急激に高まっている
- 優先順位付けのプロセス自体にもAIを活用し、経営陣がAIからのインプットを取り入れながら戦略を更新できる体制が望ましい
博士は「Scrum@Scaleを導入すれば、たった1スプリントで会社の全優先順位を見直すことも可能」と語り、大きな戦略変更が不可欠なAI時代には必須の考え方だと強調していました。
大規模システムでも短期間で価値を届けるための仕組み
多くの大規模開発組織が抱える課題に、「技術的負債の増大」や「リリースサイクルの延び」があります。これは、チームやシステムが増えるほど変更に時間がかかり、開発のスピードが落ちてしまうという問題です。こうした課題に対して、すでに大規模環境でアジリティを維持している企業の成功事例が参考になります。ウェビナーでは、博士から以下のような具体例の紹介やSmartHRへの提言がありました。
- Amazonは、マイクロサービスアーキテクチャとテスト自動化を徹底して守り、3000以上のチームがあっても毎日デリバリーを実現
- SmartHRも、アーキテクチャの見直しとテスト自動化への継続的な投資によって、毎日のデリバリーを目指すべき
- Scrum@Scaleは、スクラムマスターの連携を通じて、技術的負債やデリバリーの仕組みの改善を組織として継続的に取り組める仕組みが備わっている
- 現在のAIは、新規開発よりも「アップグレードやメンテナンス」に強みを発揮するため、AIは技術的負債の返済にも大いに活用できる
博士は、Rocket MortageがScrum@Scaleを導入して、四半期ごとのリリースサイクルを日次レベルに短縮した例を挙げ、SmartHRも「同じような改善は十分に可能」と励ましてくれました。
SmartHR CEO芹澤さんとジェフ・サザーランド博士の心に残る対話
ウェビナーの最後に、CEOの芹澤さんとサザーランド博士の間で、心に残る深い会話がありました。そのやり取りをご紹介します。
芹澤さんは博士に、こんな質問をしました。
「AIの力で生産性がどんどん上がって、エンジニアがもっと多くの仕事ができるようになる。でも、それって本当に幸せなことなんでしょうか?AIの時代における“幸せ”って、どう考えたらいいんでしょう?」
それに対して、サザーランド博士はこう答えました。
「どんな時代でも、一番大切なのは“チームワーク”です。人は仲間と協力し、リスペクトし合いながら働くことで、やりがいや自分の価値を感じ、幸せを見つけていきます。」
そして博士は、AIの時代にもその本質は変わらないと続けました。
「これからは、人とAIが一緒に働く時代になります。人間同士と同じように、AIに対してもリスペクトを持ち、お互いを活かし合うことが大切です。そうすれば、仕事もよりスムーズになり、成果も上がって、人はもっと幸せに働けるようになるはずです。」
この対話は、AIがもたらす可能性に期待しつつも、その向き合い方に迷う私たちスクラム・アジャイル実践者にとって、大きなヒントとなる言葉でした。
SmartHRとしての今後の取り組み
今回のウェビナーを踏まえ、SmartHRでは以下のような取り組みを強化していきます。
スクラムチーム × AI導入の加速
- 少人数のチームで大きな成果を生み出せるよう、積極的にAIを活用した開発環境を整備
- AIを「メンバーの一人」として捉え、自然にコラボレーションできるワークフローを試行錯誤
Scrum@Scaleアプローチの本格的な導入検討
- 経営陣・各開発チームが共通のバックログを見据え、一貫した優先度設定ができる体制づくり
- スクラムマスターの連携を通じ、技術的負債の解消やリリースプロセス改善を組織的に推進
アーキテクチャ改善&テスト自動化投資の継続
- システムのアーキテクチャを最適化し、毎日のデリバリーを目指す
- テスト自動化を促進し、リリースサイクルの短縮と品質向上を両立
人間とAIの「リスペクト」を意識した働き方の探求
- 開発プロセスにおける人とAIの役割分担を整理し、人間の創造性がより活きる環境を構築
- AIとの対話・フィードバックサイクルを円滑に行うための仕組みづくり
おわりに
これからもSmartHRは、AIとアジャイルの融合による新しい開発スタイルを追求し続け、組織やプロダクトをより良く変革していきます。変化の大きい時代だからこそ、リリースサイクルを短く保ち、スピーディに学びを実装するアジャイル開発の価値はさらに高まるはずです。
引き続き私たちの取り組みをウォッチいただき、コミュニティの皆さんとも情報・意見交換をしながら、共に未来の働き方を築いていきましょう!
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「AI時代のアジャイル開発」を一緒に作っていきたい、そんな意欲ある方のご応募をお待ちしています。
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*1:スクラムを1つのチームだけでなく、複数チームや組織全体に広げて活用するための組織運営フレームワーク。アジャイルの原理原則を守りつつ、最小限のルールで構成されているため、会社の規模や状況に合わせて柔軟に取り入れられるのが特徴。各チームの自律的な活動を保ちながらも、全体として戦略的な方向性が揃うように設計されている。AIのような最新テクノロジーを取り入れていく場面で力を発揮しやすく、組織とプロダクトの進化を加速させたい企業にとって、非常に役立つ。