はじめまして、newmo QAチームのfujiemonです。 2025年下半期、私たちQAチームは品質保証プロセスの抜本的な改革に取り組みました。 「限られたリソース(時間・人)で、品質を高めながら、いかに効率的にテストを実施するか」という課題に向き合い、4つの主要な施策を推進してきました。その取り組みと成果についてご紹介します。
1. QAのガイドラインを制定
まず着手したのは、QAプロセスの標準化です。これまで暗黙知として共有されていたテスト手法やベストプラクティスを明文化し、チーム全体で共有できる包括的なQAガイドラインを制定しました。
ガイドラインの全体構成
ガイドラインは、QAプロセス全体をカバーする体系的なドキュメントとして整備されています
全体方針
- QA優先度の方針 リソースを適切に配分するための優先度判断基準
- QAの対応表 各サービスやプロジェクトに対するQAアプローチの一覧
- QAのリグレッションテスト 既存機能の品質を保証するテスト方針
- 手動テストと自動テストの使い分け それぞれの特性を活かした効果的な使い分け指針
自動テストガイドライン
効率的な自動テストの実装と運用のための詳細な指針を整備
- テストケース作成ガイドライン ノーコード/ローコードテストツールの活用方法
- E2Eテストの構成 各サービス(タクシー配車、点呼など)の具体的なテスト構成
- Firebase Test Labの導入 Android向けテストインフラの整備
- Cloudflare認証への対応 セキュリティ機能を考慮したテスト実装
手動テストガイドライン
人の目による確認が必要な領域の体系化
- QAの事前準備: テスト実施前に確認すべき項目の標準化
- テストプラン・チェックリストの自動生成: 効率的なテスト準備の仕組み
- マニュアルQA: 探索的テストや例外ケースの対応方針
フィールドテストガイドライン
実環境でのテストを成功させるための指針
- ドライバー向けフィールドテストチェックリスト: 実車を使ったテストの標準手順
- フォーマットと議事録: テスト結果の記録と共有方法
ガイドライン制定による効果
このガイドラインの制定により、以下のような効果が得られました
新メンバーのオンボーディング時間の短縮
- 明文化されたプロセスにより、学習曲線を大幅に改善
- 実践的な知識を体系的に習得可能
テスト品質のばらつき低減
- 統一された基準により、誰が実施しても一定の品質を確保
- ベストプラクティスの共有により、チーム全体のスキル向上
QAプロセスの透明性向上
- 何を、なぜ、どのようにテストするかが明確に
- ステークホルダーへの説明責任を果たしやすく
開発チームとの認識のすり合わせが容易に
- 共通言語としてのガイドラインにより、コミュニケーションが円滑に
- セルフQAの推進にも貢献
生きたドキュメントとしての運用
ガイドラインは単なるルールブックではなく、チームの知見が集約された「生きたドキュメント」として運用しています。新しいツールの導入、テスト手法の改善、プロジェクトでの学びなどを継続的に反映し、常に最新の状態を保っています。
この包括的なガイドラインは、QAチームの活動の基盤となり、後述する自動化やセルフQA推進などの施策を支える重要な土台となりました。
2. リグレッションテストの効率化
リグレッションテストは品質保証において欠かせない一方で、時間とリソースを大きく消費する作業でもあります。そこで、テストプロセス全体を見直し、驚異的な効率化を実現しました。
具体的な改善実績
自動化と手動実行時の不要な項目削除により、以下のような大幅な工数削減を達成しました
主要サービスの改善例
- タクシー車載タブレット 5.0時間 → 0.5時間(90%削減)/ 自動化率80%
- 配車アプリ(iOS, Android) 10.0時間 → 1.5時間(85%削減)/ 自動化率90%
- ライドシェアドライバー向けアプリ(iOS) 3.0時間 → 0.5時間(83%削減)/ 自動化率90%
- ライドシェアドライバー応募・審査ツール 1.0時間 → 0.2時間(80%削減)/ 自動化率95%
新規プロジェクトでの取り組み
プロジェクト開始時から自動化を導入することで、初めから効率的なテスト体制を構築:
- 配車コンソール 自動化率80%で運用開始(2.0時間)
- 点呼 一部自動化実施中(0.5時間、自動化率10%)
今後の展開
現在手動で実施しているいくつかのサービスについても自動化を検討中です。
成果のポイント
- 平均80%以上の工数削減を実現
- 配車アプリ(iOS, Android)、ライドシェアドライバー向けアプリ(iOS)、ライドシェアドライバー応募・審査ツールは90%以上の自動化率を達成し、ほぼ完全自動化を実現
- 新規プロジェクトでは最初から高い自動化率で運用開始
この取り組みにより、リリースサイクルの高速化と品質維持の両立が可能になりました。
3. エンジニアによるセルフQAの推進
開発プロセスの早い段階で問題を発見することは、品質向上とコスト削減の両面で効果的です。そこで、エンジニアによるセルフQA※を推進する仕組みを構築しました。
※Self Quality Assurance, エンジニア自身が行うテスト工程を指した造語
セルフQAチェックリストの自動生成システム
特に注力したのは、「セルフQAの確認項目を自動生成する」仕組みの導入です。このシステムは、Claude CodeとPlaywright MCPを活用し、PRD(製品要求仕様書)、PDD(製品設計仕様書)、Figma、GitHub PRなどのドキュメントから、包括的なQAチェックリストを自動生成します。
詳細はkitasukeさんによる12月8日のエントリ、生成AIの入出力品質は「フォーマット」で決まる ― 中間表現とテンプレートの組み合わせ - newmo 技術ブログ
で詳しく書かれていますので、併せて読むことをおすすめします!
導入による効果
- コード変更に応じた適切なテスト項目を自動提案
- エンジニアが何をテストすべきか明確になり、テスト漏れを防止
- QAチームへのエスカレーション前の品質向上
- フィードバックサイクルの短縮により、手戻りを削減
- QAエンジニアの工数を、チェックリスト作成からレビューにシフト
セルフQAは開発者の負担を増やすものではなく、むしろ手戻りを減らし、開発効率を高めるための投資です。自動生成により、エンジニアは「何をテストするか考える時間」ではなく「実際にテストする時間」に集中できるようになりました。
4. テストプランの自動生成によるマニュアルQA作業の負荷軽減
マニュアルQAにおいて最も時間を要する作業の一つが、包括的なテストプランの作成です。従来、QAエンジニアは仕様書を読み込み、テストすべき観点を洗い出し、優先度を付けてテストケースを設計する必要がありました。この作業は経験と専門知識を要し、数時間から数日かかることも珍しくありません。
そこで私たちは、テストプランを自動生成する仕組みを構築し、QAエンジニアの負荷を大幅に軽減しました。
テストプラン自動生成の仕組み
テストプラン自動生成は、セルフQAチェックリスト生成と同じ統合パイプラインの一部として実装されています: (詳しくは上述のエントリを参照ください)
Claude Codeによる継続的な改善
このシステムの特筆すべき点は、Claude Codeを活用することで、テストプラン生成の品質が継続的に向上していることです
- 過去のテスト結果から学習: 過去に見逃された不具合パターンを学習し、類似ケースで検出
- プロジェクト固有の文脈理解: 各サービスの特性や制約を理解した上でテストケースを生成
- 自然言語での柔軟な対応: 仕様書の表現が曖昧でも、文脈から意図を汲み取って解釈
(※注 12月11日のエントリ、 プロダクトチーム全員でAIエージェント縛りの開発を一週間試しました - newmo 技術ブログ でレポートされている時点では生成AIを充分に活用できていない状況でしたが、、その後あらためて習得する機会を設け、今ではそこそこ使いこなせる様になったと感じています)
QAエンジニアの役割の変化
テストプラン自動生成の導入により、QAエンジニアの役割は以下のように進化しました
Before(従来)
- 仕様書の読み込み 40%
- テストケース設計 30%
- テスト実行 20%
- バグレポート・改善提案 10%
After(自動生成導入後)
- 自動生成プランのレビュー 15%
- 探索的テストの設計・実行 25%
- テスト実行 20%
- バグレポート・改善提案 30%
- テスト戦略・プロセス改善 10%
QAエンジニアは単純作業から解放され、より戦略的で付加価値の高い業務に時間を使えるようになりました。
導入による具体的な効果
- テストプラン作成時間を平均70%削減
- テストカバレッジの向上(自動生成により見落としが減少)
- QAエンジニアの工数を、探索的テストや品質分析にシフト
- 新人QAエンジニアでも、経験者と同等の網羅性を持つテストプランを作成可能
- ドキュメントとテストケースの一貫性が向上
今後の展開
現在、このテストプラン自動生成システムをさらに進化させる取り組みを進めています
- 不具合データベースとの連携 過去の不具合傾向から、リスクの高い領域を重点的にテスト
- 自動テストスクリプトの生成 Test Plan IRから直接E2Eテストコードを生成
- テスト実行結果の自動分析 テスト結果からボトルネックや品質リスクを自動抽出
まとめ〜次のステージへ
2025年下半期の取り組みを通じて、QAチームは大きく進化しました。包括的なガイドラインの制定によって強固な基盤を構築し、効率化と自動化によって生産性を向上させ、セルフQAの推進によって開発プロセス全体の品質意識を高めることができました。
特にリグレッションテストの自動化では、平均80%以上の工数削減という目覚ましい成果を上げることができました。また、セルフQAチェックリストとテストプランの自動生成により、エンジニアが自律的に品質を担保できる環境を整備し、QAエンジニアはより戦略的な業務に集中できるようになりました。
これらの取り組みにより、QAチームはより付加価値の高い業務に集中できる環境が整いました。しかし、これはゴールではなくスタートです。テクノロジーの進化と共に、QAのあり方も常に変化していきます。私たちは引き続き、「より速く、より確実に、より高い品質を届ける」ことを目指し、改善を続けていきます。
書いた人: fujiemon