はじめに
newmo Engineering として、はじめて Advent Calendar を実施する運びになりました。
いままでも一部のエンジニアは各々カンファレンスなどで発表しておりますが、普段発信しないメンバーも含めて newmo に所属のエンジニアがどのようなことを行っているのか、技術的にどういう分野を探索しているのかなど幅広く発信していければと思います。
このエントリでは newmo として、どのような活動を1年間行ってきたのかをエンジニアリング観点を含めて振り返ればと思います。
前半戦(2025.01〜2025.06)
大阪万博の開催とライドシェア事業へのチャレンジ
大阪・関西万博に向けて移動需要が高まる中、newmo はライドシェアに正面から取り組みました。ライドシェアドライバー向けのアプリ開発、運行管理業務を行う遠隔点呼管理ツールの開発や、ライドシェアドライバーへのキャンペーン施策の実施などをしました。また、ライドシェアの認知向上を目指し大阪で親和性の高いタレントを起用したCMを投下し、ライドシェア利用側の心理的ハードルを下げる取り組みを実施しました。
マップナビゲーションの磨き込み
タクシー/ライドシェアにおいて、位置/経路/ETA(到着予測時間)など地図情報を元にしたオペレーションが不可欠です。レイテンシー、到着予測の安定性、運用コストのバランスをプロダクト要件として重視し、要件を明確化しました。ルート案内品質とETAの一貫性、催し物などのイベント時の規制吸収、需要ピーク帯のタイル戦略など、運用まで含めた最適点を模索しました。これらの内容は Google Cloud のブログにて導入事例を公開し、社外にも発信しています。
自動運転タクシー事業の社内キックオフ
公式発表に先立ち、情報設計など準備フェーズに着手。運行管理/配車フロー/顧客体験を先行して模索し、ODD(運行設計領域)を限定した段階導入を基本方針に据えました。エンジニアリング観点では、安全性を最重視しフェイルオペレーション/フェイルセーフの設計、遠隔監視の要件整理、既存配車体系との想定される状態遷移の整合が主要論点として取り組み始めました。
後半戦(2025.07〜2025.12)
自動運転タクシー事業へ参入を公表
シリーズAの調達ラウンドは累計179億円でクローズし、2024年1月の創業以来の累計調達額は199億円到達したことを発表しました。新たな投資家の参画により地域課題解決を実地で進める体制が強化されました。同時に大阪における自動運転タクシーの事業化に向けた本格参入を発表し、PoCから事業運用への橋渡しを見据え、法規/広報/オペレーションを包含した多職種連携を目指すことを前提に事業推進を目指しています。
タクシープロダクトの現場導入
タクシー運行業務の DX 化推進
自社開発の点呼アプリ「newmo点呼」を中核に、始業の対面点呼と終業の自動点呼を一体運用を段階的に導入し、記録精度と監査性、現場負荷のバランスを最適化しました。また、監査要件を満たす記録管理と障害時の復旧手順を整備し、安定運用を図りました。リリース後も、UI/UXを重視した使いやすさや、異常時フローの明確化など、小刻みな改善を重ねています。
タクシー配車オペレーションの連続的改善
お客さまの入電から受付、配車確定までの一連の体験を「受付の見落とし」と「二重対応」が起きにくい設計に刷新。自社開発のタクシー配車サービスでは、着信履歴詳細から対象の配車依頼へ素早く到達できる検索性や、オペレーターが気付きやすい優先度調整などコンソール UI/UX を改善し、平均処理時間や誤配リスクの低減を図りました。
タクシー経営業務の効率化
タクシー業界ならではの勤務体系や、運行記録、法令で定められている台帳などを一気通貫で取り組むことで、現場の手戻りと差戻しを減らすシステムを開発。点呼/乗務/配車の業務イベントを基に業務フローを定義しました。タクシーメーターからの運行記録や、乗車料金の未収処理などエビデンスをイベントごとに処理。また、タクシー業務で不可欠な台帳群を自社開発のタクシー基幹システムに寄せることで履歴管理の標準化を実施。既存の紙やエクセルの運用を優先しつつも、段階的な置き換えを計画しています。
人材事業「newジョブ」サービスのリリース
エッセンシャルワーカー市場に特化した人材紹介事業「newジョブ」を正式ローンチ。第1弾としてタクシードライバー職の就業/転職支援を開始し、キャリアアドバイザー業務のプレイブック化と支援ツールを内製。集客→面談→推薦→定着までのフルファネルをデータ駆動で最適化し、精度とスループットの両立を推進。立ち上げメンバーのインタビュー記事も公開され、エッセンシャルワーカーの重要性の温度感を発信しました。
エンジニアリングとして注力したポイント
地図情報品質のブラッシュアップ
タクシーの配車品質の土台は、到着予測の一貫性と応答レイテンシー、可用性、運用コストをバランスよく担保することです。これらのトレードオフを最初に要件として設定し、運用ルールと UI/UX を駆使することで揺らぎを吸収する設計を目指しました。具体的には、コンサートなどの規制による経路が変動しやすい局面では「瞬間的最短」より「地理的一貫性」を優先し、誤案内の修正コストを下げます。ピーク帯は、タイルとクエリの2層キャッシュでスループットを担保し、運用で設定した閾値を超えたら ETA 精度を段階的に降格させても応答を落とさない案内へ切り替えます。さらに、目的地付近では詳細なランドマークや進入可否のヒントを UI/UX に積極的に活用し、地図の細かな誤差を体験側で吸収するなどの対策を行いました。

タクシー配車への AI 導入と配車業務の連続的改善
タクシーの電話配車の受付時に AI による対応にチャレンジしています。AI 音声での受付は、「賢い対話」も然ることながら「正しいデータ」を生むことを重視し、1次受付の出力を配車系の単一スキーマへ正規化して、タクシー配車サービスに流し込む設計にしています。この流し込まれた配車情報を基にオペレーターは差分確定に専念できるよう、画面構成とデータモデルを合わせるなど工夫を実施。入電が重なる実務では、業務リスクと即時性に基づく優先度を自動付与し、オペレーターへの入電と配車システムでの対応を切り替えています。さらに、着信履歴から対象依頼への到達距離を短縮し、重要操作には説明的 UI を用いた再確認を置くことで見落としや、二重対応、誤配の芽を UI/UX 側で先に摘みます。こうした小さな変更を毎週のリリースで積み上げ、平均処理時間と誤配率に効く更新を優先しています。また、現場からのフィードバックを次スプリントに還流するサイクルを導入し、現場を中心とした開発を重視しています。

タクシー経営/運行管理/行政監査のトライアド
この三位一体を成立させるために重視しているのは「監査要件の先置き」と「台帳中心設計」です。運行側では、「newmo 点呼」による不可逆ログと訂正履歴分離、時刻同期、再送、エクスポート粒度の標準化を実施。自社開発の点呼システムが国交省認定を取得したことで、始業対面と終業自動を一体運用しながら記録精度と現場負荷、監査性の三立を実現します。従業員/車両/教育/事故の4台帳をロールアップ可能な形で整備し、監査証跡と経営データを同じ真実の単一源泉に揃えます。この順序で整えると、各所で二重入力や照合作業が減り、SOP(標準作業手順書)を整えやすくなります。

まとめ
2025年の newmo Engineering は、タクシー運行の現場課題とプロダクト開発を地続きに結び、配車品質と運用信頼性、そして開発生産性の向上を推進してきました。地図技術の一貫性と応答性の最適化、AI を活用した電話配車の正確性向上、点呼や台帳を中心とした設計による監査性強化により、現場オペレーションの改善を継続的に実現。また、おおきな出来事として新たに自動運転タクシー事業への参入を表明しました。開発現場では、実直に小さな改善を積み重ね、現場の声を迅速に反映する開発文化が、サービスの安定と拡張に繋がっていく確かな手応えを掴めた一年間でした。
明日の newmo Engineering Advent Calendar は、「newmoでのAlloyDBの最適化の日々」です。こちらもぜひ、楽しみにしていてください。
書いた人: Notion AI and osamingo