はじめに
LayerX Ai Workforce事業部でR&Dチームマネージャーの澁井(しぶい)と申します。
今年10月から本格的にR&Dチームを立ち上げまして、マネージャーとしてチーム組成や成果を出すことに専任することになりました。R&Dチームの目的はAi WorkforceとLayerXの技術的に困難な課題を解決し、ソフトウェアプロダクトに組み込み、引いてはお客様により良いサービスを提供することです。Fundamentalな研究ではなくApplied R&Dとして、プロダクトやビジネス上の難しい技術課題を解くことにフォーカスしています。まだ立ち上げたばかりの小さなチームですが、今後はLayerXの技術的土台を底上げする基盤となるチームに成長していきたい所存です
R&Dチーム立ち上げ前夜
R&Dチームの立ち上げ自体は、社内では2025年4月くらいから話題に挙がっていました。
LayerXのAi Workforceでは、お客様の業務をLLMやAI Agentで代替するようなプラットフォームサービスの開発、提供を目指しています。当時のエンジニア組織はソフトウェア開発エンジニアとLLMエンジニア(今で言うFDE)で構成されていました。ソフトウェア開発エンジニアはAi Workforce自体の開発、LLMエンジニアはお客様へのワークフロー提供を担当していました。今でもこの役割分担はほぼ同じです。
新しい技術を使ったプロダクトを開発して頻繁に発生する大きな課題として、その組み込みの難しさ(ソフトウェア開発上のベストプラクティスが存在しない!)が挙げられます。新しい技術や変化、更には思いも寄らなかった課題が頻繁に発生しますが、新規事業だとそうした課題を解く役割やチームが存在しないことが多々あります。Ai Workforce開発で発生するLLM活用やAI Agent開発の多種多様な技術課題 — プロンプトエンジニアリング、エージェントメモリ、評価、マルチモーダルデータの取り扱い、高度な自動化等々 — に集中して検証し、(可能なら)解決するR&Dチームが必要でした。
Applied R&Dチームを立ち上げる
私がLayerXに入社したのは2025年3月です。ポジションはLLMエンジニアチームのエンジニアリングマネージャーの一人で、主にお客様向けの価値提供を担当していました。しかしお客様とのプロジェクトを進めてAi Workforceの仕組みや最新技術の方向性を理解していくうちに、多種多様なデータの検索システム運営や、LLM/AI Agentの利活用で研究開発する必要性を見出しました。結果としてR&Dチームとデータ検索基盤チームを立ち上げ、今に至ります。
(R&Dチームとデータ検索基盤チームを同時に立ち上げました。データ検索基盤チームの立ち上げ秘話については別の機会に書きます。)
R&Dチームを立ち上げるにあたり、チームの目的と構想を作成しました。内容は以下になります。
<2025年5月のR&Dチーム構想>
R&Dチーム設立の目的・概要
- AI・LLM事業部R&Dチームの目的はAI・LLM事業部のビジネス、技術課題のうち、既存技術だけで解決することが難しいものについて、その本質を見極め、合理的な時間、コスト、人的リソースの活用で応用的に解決する技術を開発することである。
- 主なビジネス課題には、AI・LLM事業部の提供するAi Workforceで解決しようとしているお客様課題がある。
- 主な技術課題には、上記ビジネス課題を解決するにあたり、現行技術だと不確実だが、AI等の技術を新規開発、応用することで解決可能または解決に近づけるものが含まれる。
- ビジネス課題、技術課題ともに、バクラク事業部等、LayerX全般に汎化できると尚良し。
- 課題の具体的な研究対象には以下が含まれる。
- AI agentの正確性を向上する手法や、AI agentの効率的なデータ検索手法
- 各種AI agentやツールを適切に組み合わせる最適化手法(強化学習等)や、ツールを自動探索し作成する手法
- ワークフロー自動生成
- AIプロセスマイニング
- 副次的な業務として、AI・LLM事業部R&Dチームが研究、開発した技術は適宜ブログ、カンファレンスやミートアップ、知財特許等で公開し、LayerXの名声向上等のマーケティングで活用する。
- AI・LLM事業部R&Dチームで研究開発対象とする課題と手法は、社会的かつ全社的なインパクトの大きいものを目指すが、同時に解決可能(または解決の糸口が見えるもの)な領域に限る。研究開発活動とそのアウトカムによって、お客様とLayerXのビジネスに貢献することを方針とする。
期待されるアウトカム
事業・プロダクト貢献
- 研究開発の成果をもとに既存プロダクトの高度化や新規プロダクト・事業の創出に貢献し、競合優位性を確立する。
- 特に、会社やプロダクトのミッション・ビジョンの実現に大きく近づけるための、不確実性の高い中長期目線の領域に注力する。
採用・育成
- 最先端技術に挑戦できる場を社内に用意することで、優秀なR&D人材の採用加速と現社員の技術モチベーション向上を促す。
- 優秀なR&D人材 = 高度な新規技術をソフトウェアプロダクトで実用化に繋げられる人材
- 研究開発組織の存在自体が魅力的な要素となり、R&D人材のリーチ拡大を狙う。インターンを通じた将来の人材発掘・育成効果も大きい。
知的財産の蓄積
- 開発したアルゴリズムや技術に関する特許ポートフォリオ構築により、将来の事業優位性を確保。他社参入障壁の構築やライセンス収益の可能性を生み出す。
- 蓄積した知見は社内に蓄財され、新規プロダクト開発や他部署展開の種技術として再利用可能。必要に応じ取得特許や技術を対外公開し業界標準への寄与やエコシステム構築にも繋げる。
広報・技術ブランディング
- 実績を対外発信することによるAI技術に強い会社としてのブランド向上。
- 社内R&D活動はより広い企業PRにも直結し、メディア露出や講演機会増加による知名度アップも期待できる。
チーム構成
- チームマネジメント1名、兼務 or 専任リサーチエンジニア1名、リサーチインターン数名
- サマーインターン等、特定のタイミングで数名のインターンを要することもある。
段階的なチーム構成
- 2025年7月:R&Dチーム組成
- 構成メンバーはマネジメントと兼務リサーチエンジニア
- R&Dリサーチエンジニアの募集開始
- サマーインターン募集
- 2025年8月or9月
- サマーインターン3, 4名
- 2025年12月
- マネジメント1名、兼務 + 専任リサーチエンジニア1名ずつ、リサーチインターン2名
- 以降は成果次第で拡張を検討
各ポジションに期待する業務
チームマネジメントに求める業務
- R&Dチームのメンバーをマネジメントし、チームとして成果を出すための活動。
- AI・LLM事業部でビジネス的、技術的優先度の高い課題を発見し、研究開発のスコープとアウトカムを定義してプロジェクト化すること。
- 研究開発対象でなくても、AI・LLM事業部のプロダクト開発において技術的フィージビリティをチェックし、可能な場合は実現に向けてアドバイスおよび開発支援する。
- R&Dチームメンバーを成長させ成果を出させるためにR&Dおよびチームの長期計画(ロードマップ)を整備し、次に必要となる技術やパラダイムを率先して選定、採用、または棄却する。
- AI・LLM事業部のエンジニア全般に新たな技術やパラダイムを広め、技術的ケイパビリティを広げ向上させること。
リサーチエンジニアに求める業務
- AI・LLM事業部でビジネス的、技術的優先度の高い課題を発見し、研究開発のスコープとアウトカム、解決に至る研究計画を定義し、プロジェクト化すること。
- AIやLLMの最新の研究をキャッチアップし、AI・LLM事業部R&Dで活かせる論文や手法を選定する。
- 研究課題を適切なタスクに分割し、タスクの実現方法と評価基準を定義して、課題解決に向けて推進すること。
- 研究開発対象でなくても、AI・LLM事業部のプロダクト開発において技術的フィージビリティをチェックし、可能な場合は実現に向けてアドバイスおよび開発支援する。
- リサーチインターンを指導し、成果を出すようにすること。
- AI・LLM事業部のエンジニア全般に新たな技術やパラダイムを広め、技術的ケイパビリティを広げ向上させること。
リサーチインターンに求める業務
- 多様な研究課題について多方面から手法を提案して検証し、実験を記録して有望な手法をレポートする。
- AIやLLMの最新の研究をキャッチアップし、AI・LLM事業部R&Dで活かせる論文や手法を選定する。
- 調べた論文や方法論、ライブラリをAI・LLM事業部エンジニアに共有する。
</2025年5月のR&Dチーム構想>
LayerXは事業会社でありスタートアップです。常に事業に貢献する姿勢で仕事に取り組むことが重要です。そこがLayerXの魅力かつ働く面白さだと思っています。R&Dのテーマもお客様や事業課題をベースに選定し深堀りしていく方針です。
私はこれまで機械学習や生成AIの実用化を通して、事業に深く広く貢献することを目指してきました。常に重要視してきたスタンスは、価値のある難しい新技術(特にソフトウェアへの組み込み方がまだ確立されていない技術)から、新しい事業を創生し成長させることです。このスタンスは私の技術的興味を満たしつつ、会社の成長と方向を一致させることができ、しかも自分の強みを発揮できるやりがいのある仕事だと思っています。LayerXのR&Dチームも同様に、基礎的な要素技術を研究するより、実用上必要な技術やその実用化を目指す方針にしました。
新しいチームを作るに当たって重要なことは、ミッションに沿って成果を出すことはもちろんですが、メンバーを増やしてチームワークを組成していくことも同じくらい重要です。
Applied R&Dでサマーインターンを始める
R&Dチームでサマーインターンを募集開始したのは5月後半です。JSAI 2025に参加した際、出展したLayerXのブースで、作ったばかりのチラシを配って宣伝したのは良い思い出です。
なぜR&Dチームを立ち上げて間もない中でサマーインターンを募集したのか — R&Dチームは多様なタスクや技術に挑戦することが求められます。当初のR&Dチームを立ち上げるにあたり、マネジメントとして個人目標にしたのは、将来を担うメンバーを育成し、成果と成長を生み出せるチームに育て上げることです。私はこれまで大企業からメガベンチャー、小規模スタートアップ、外資と様々な環境で働いてきて、相応に能力が高く経験のあるメンバーと働く機会に恵まれてきました。その中で成果を出すエンジニアやマネジメント人材に共通しているのは、チームワークを疎かにしないこと、スポーツチームのコーチのようなメンタリティでした。そうした方々とのコラボレーションによって自分も鍛えられてきたと思っています。R&Dチームも人材が育つ環境にしたいと思っていますし、だからこそサマーインターンを募集して、ジュニアメンバーとチームが成長する環境を作る施策を打ちました。
・・・などと偉そうなことを書きつつも、実は私が自分のチームでサマーインターンを募集するのは初めてでした。さらに言うと私はインターンに参加した経験もありません。インターン採用の右も左もわからない中で、アドバイスやサポートをいただいたLayerX新卒採用チームの皆様には感謝しかありません。
まずは募集人数と条件を決めて、募集要項を書きつつ選考フローを整備し、宣伝することにしました。もう公開は終わりましたが、当時公開した募集要項は以下のようなものになります。
<2025年リサーチインターン R&D>
募集背景
- AI・LLM事業部では日本を代表する大手企業に対して、生成AIプラットフォーム「Ai Workforce」の導入を推進し、企業の生産性向上に貢献しています。各企業では様々なビジネスドキュメント(契約書、決算書、発注書、請求書、提案書、その他)を用いて日々の業務を行っています。Ai Workforceでは、LLMを活用したワークフローエンジンやAI agentを開発し、お客様の複雑な業務を自動化することを目指しています。
- 現在、ご導入いただくお客様及びプロジェクト数が増えるとともに、ワークフローやAI agentをより高い品質や効率性で開発、実行、評価することが求められています。AI・LLM事業部R&Dインターンでは、AIやLLMをプロダクトやビジネスで有効活用するため、ワークフロー自動生成、LLMのRFT、AI agentの正確性改善、ビジネスドキュメントの合成データ、AI agentのツール選択最適化と自動作成等、我々が直面する課題を実用的に解決することを目指します。
業務内容
- AIやLLMのプロダクトに組み込むための応用技術を研究、実験、ツール化します。主に以下のテーマから一つ選んでフォーカスし、先行研究の調査、課題解決方法の提案、実験計画、検証、成果レポートを実施します。
- ワークフロー自動生成のためのLLMのRFT
- AI agentの精度評価と正確性改善
- LLMによるビジネスドキュメントのデータ合成とツール開発
- AI agentのツール選択最適化と自動作成
- LLMを実用的に活用するプロダクトのためのR&Dとなります。最新技術からビジネス価値を生む経験を得ることができます。
ポジションの魅力
- 実際に直面しているビジネス課題、技術課題について、AIやLLMを実用的に活用して解決する経験を得られます。
- AIやLLMを実践的に応用します。
- AI・LLM事業部で初のR&Dサマーインターン卒業生になれます。
必要な条件/経験
- Pythonを用いた基本的かつリーダブルなコーディング能力
- PyTorchなど深層学習フレームワークを利用した機械学習モデルの構築経験(実務・研究、個人開発等問いません)
- LLM-as-a-Judgeの開発、AI agentの構築、プロンプトエンジニアリング、強化学習、いずれかの経験
- 本インターンを通して成果を出そうとする熱量と、新しい技術をすぐに実践するモチベーション
- 日本語にてコミュニケーションが可能なこと / Native-like fluency in Japanese
望ましい経験/スキル
- LLMの研究開発経験
- 機械学習やAIをアプリケーションに組み込んだ経験
- カンファレンス及びイベント等への登壇・寄稿(行動指針『徳』を体現する行動やアウトプット)
- OSSや技術コミュニティへの貢献活動の経験
</2025年リサーチインターン R&D>
正直、この内容で応募がくるのか1ミリも自信はなかったです。見様見真似かつ自分の想いだけで書きました。
しかしJDをオープンして1週間目から多数のお応募をいただきました。JSAI 2025だけでなく、自分のLinkedInやFacebook等のSNS、技術コミュニティのSlack等でも宣伝しました。(なお、私のSNSは学生の繋がりがほぼ皆無のため、ターゲッティング施策としてたぶん間違っています。)同僚や知人にも宣伝をお願いし、LayerXのSNSでも宣伝していただきました。その結果か、立ち上げて間もないR&Dチームのインターンとしては多数のご応募をいただきました。
R&Dチームの正社員は私だけです(加えて、1名業務委託の方がいます)。そのため、選考フローも全て私のみで実施します。以下のような選考フローを設計しました。
- コーディング課題:AI Agentを開発テーマで1週間程度(延長可能)でプログラムを書き、提出してもらう。
- 面接:技術選考を通過した方は私と1時間で面接する
- 合否判定
選考過程の基準は以下のようになります。
- LLM/AI Agentのような新技術をソフトウェアに組み込むことができる技術力
- 論文やソフトウェア設計を口頭で説明できる技術理解と、ドキュメンテーション能力
- 技術に対して誠実であること
コーディング課題ではAIコーディングツール(Cursor、Claude Code等)の利用を推奨しました。狙いは2つです。(1) 新しく便利なツールを使う能力を見ること、(2) AIコーディングが犯す間違いを自分で調べて直せること、です。特に(2)は重要です。コーディングにせよドキュメンテーションにせよ、AIを使って書くことが一般的になっていますが、AIのアウトプットを鵜呑みにするのでは困ります。自分で調べて理解し、修正できる能力と誠実さは見過ごすわけにはいきません。コーディング課題と面接ではスキルセットと同時に、技術と真実に対して誠実に取り組める姿勢を見ました。
結果として3名のサマーインターンと、2025年夏に一緒に働くことになりました。
- 京都大学大学院修士1年 松井さん
- 早稲田大学修士1年 堀田さん
- 東京科学大学学部4年 知念さん
サマーインターンの成果
R&Dにはテーマとプロジェクト設計が必要です。特にサマーインターンは短期間(2週間または3週間)の業務となるため、具体的なテーマと業務内容が決まっている必要があります。インターンの方にせよR&Dチームにせよ、成果を出すことが成長のキッカケになると思っています。技術調査や論文読解だけで終わらせるのではなく、会社にとって価値のあるアウトカムを出すことを目指しました。そのためには挑戦的で実用性の高いテーマに対する、明確なプロジェクト設計が必要です。
テーマはサマーインターンの募集要項に書いているものをベースに作りました。Ai Workforce事業ではマルチモーダルなドキュメント処理や評価、さらにはAI Agentの活用に取り組んでいますが、いずれも多様な技術課題があります。その中で、インターンとの面接の中で興味のあるテーマをヒアリングし、サマーインターン開始前にプロジェクトのアサインと設計を実施しました。
プロジェクト設計には以下を記載しました。
- Why:なぜこのプロジェクトに取り組む必要があるのか。
- What:プロジェクトの結果としてどういうアウトカムを出すことを目指すか、評価指標とともに明記する。
- How:既存の論文で有望そうなものと、活用方法案。
どんなプロジェクトも無料ではありません。必ず人件費や施設費用が発生します。R&Dがそれに見合うチャレンジであることをステークホルダーに説明するためには、常にプロジェクトのWhyを明記し、Whatとして期待される成果を示し、各ステークホルダーが納得可能である必要があると考えます。研究や開発をしていると、どうしても課題の解き方(How)に目が行きがちです。しかしHowに興味があるのは(多くの場合)エンジニアだけです。Howよりもアウトカムが重要です。そのスタンスを崩さないためにも、WhyとWhatをプロジェクトの根幹に据えます。
なお、各プロジェクトの事前調査や設計には業務委託の矢野目さんに多大な尽力をいただきました。本当にありがとうございました。
閑話休題として、サマーインターンの3名にはそれぞれ以下に取り組んでいただきました。
松井さん:日本式スライド資料の合成データ作成
課題設定:ビジネスパーソンの重要な仕事として各種ドキュメントの作成がある。ドキュメント作成は知的作業であり、かつとても時間のかかるタスクである。情報や論理の忠実性と、ドキュメントレイアウトの多様性を保ちつつ、AIを活用してドキュメント作成を自動化する。
課題の難しさ
- 忠実性:生成されたドキュメントの内容やダイアグラムが論理的に正しく、かつ文法的な一貫性を持っている必要がある。
- 多様性:内容やレイアウトがワンパターンにならないよう、様々なバリエーションで生成できるようにする
関連研究:AI-Generated Lecture Slides for Improving Slide Element Detection and Retrieval
手法
- 関連研究では大学の講義スライドを生成しているが、スライドの品質は一定程度高いものと言える。

- 関連研究をベースに、日本式のビジネススライドを生成する。関連研究の手法をそのまま使う課題として、講義スライドと日本式ビジネススライドの「一般的な構成」や「良いスライド要素」が違うことが挙げられる。関連研究のロジックやパラメータをチューニングし、日本式ビジネススライドに合うように生成する。
- 典型的な日本式ビジネススライド

- 実際に生成できるようになったスライド

堀田さん:マルチモーダル複数ページドキュメントのVQA
課題設定:ビジネスで扱われるドキュメントの多くはマルチモーダルで複数ページで構成されている。複数ページをまたいで適切に情報を抽出し、課題を解くことを自動化する


課題の難しさ
- AIを使ってテキストと画像から正確に情報を抽出し、かつ複数ページに渡ってロジックを理解する必要がある。特に複数の根拠によって質問回答する課題や、図表読み取りで精度が出ない傾向にある。
- また、精度は日本語OCRの品質に左右されるため、OCRの選定が必要。品質の良いOCRは処理が重く、推論スピードが遅いため、限られた時間内で効率的に検証することが難しい。
手法
- OCRとしてPaddleOCR(Baidu)を活用し、日本語読み取りの課題を解決する。また、BGE-M3というテキスト事前学習モデルでEmbedding取得の改善や、スライド認識・回答生成プロンプトのチューニングによって情報抽出精度を向上。加えて、LLMへのリクエストではStructured Output(構造化出力)を使うことで出力形式と情報の安定性を確保。
- これらの改善施策により、SlideVQAの課題ではRecallで約0.09ポイントの改善、ドキュメントQAの課題ではF1スコアで約0.13ポイントの改善を実現。
知念さん:動的手法によるAI Agent自動生成
課題設定:AI Agentの開発では個々にAI Agentを作り、プロンプトやワークフロー等を設定する必要があり、開発と検証に多くの工数がかかる。多様な課題を解くためには、個々にAI Agentを開発する必要があるため、高速に大量生産して課題解決することが難しい。サマーインターンでは多様なタスクを解くAI Agentを動的に生成するメタエージェントの開発に取り組む。

課題の難しさ - AI Agentを自動生成するメタエージェントを作ることを目指す。AI Agentはプロンプトとワークフローの組み合わせであり最適化手法で解きたいが、プロンプトやワークフローは直接微分できない。他方でAI Agentの成否や品質は実際のデータでAI Agentを利用した結果との比較が必要であり、評価をフィードバックしてAI Agentを修正する手法が必要。
関連研究
- AdaptFlow: Adaptive Workflow Optimization via Meta-Learning
- AFlow: Automating Agentic Workflow Generation
- Multi-agent Architecture Search via Agentic Supernet
手法
- 関連研究を参考に、木探索ベースでAI Agentを自動生成する手法を検証する。
- ベースラインとして、QAデータセットに対してLLM単体で評価を作り、AI Agent自動生成ではその評価を越えることを目指す。
- 研究の過程で、数量形式QAタスクでは自動生成されたAI Agentの精度が上がらないことを発見した。その原因を分析するため、仮説検証としてLLM-as-a-Judgeの品質評価やサンプル数のチューニング、QA種別分類等を行い、課題の根本原因を分析した。
- 合計5点の根本原因分析と仮説検証を行い、結果としてベースラインと比較して+3.5~+25.0ポイントの改善に成功。

サマーインターン3名の取り組みは以上になります。結果として3名とも成果を出し、R&DチームひいてはAi Workforce事業部としても新たな知見を得ることができました。
結び
サマーインターンに参加いただいた松井さん、堀田さん、知念さん、宣伝から採用から受け入れまで全般的にサポートいただいたLayerX新卒採用チームの皆様、インターンメンターを引き受けてくれたR&Dチーム業務委託の矢野目さん、各種サポートいただいたAi Workforce事業部の皆様に深く感謝を申し上げます。ありがとうございました。
また来年もサマーインターンをやりますので、そのときは改めてよろしくお願いします。
宣伝
R&Dチームではリサーチエンジニアを募集しています。また、検索エンジニアやデータエンジニア、MLOpsエンジニアも募集しています。一緒にR&Dチームおよびデータ検索基盤チームを0→1で立ち上げたい方はぜひ気軽にお話できると幸いです。