
こんにちは、プロダクト部 部長の稲垣です。(自己紹介やこれまでのキャリアについて↓をご覧ください。) tech-blog.rakus.co.jp
お客様を知らないといけないので、「もっと深く考えて」と言われた瞬間に、急に手が止まることがあります。 フレームワークや知識は増えているのに、いざ実務だと「機能の足し算」しか出てこない——。
これ、能力の問題というより “鍛え方の種類” の問題だと思っています。 今日提案したいのは、名作を使った超シンプルな思考トレーニングです。
同じ作品を「読む→聴く→観る」の3回、メディア違いで摂取する。 それだけで、ユーザー理解に必要な「論理/情緒/直感」を行き来できるようになります。
- この記事で得られること
- なぜ「同じ作品を3回」なのか
- 深掘り:強いプロダクトは「80%で止める」
- このトレーニングを「ユーザー理解」に接続するコツ(仕事への落とし込み)
- もう一段伸ばす:あえて「アウェイ」に行く
- AIで“振り返り”を加速する(※安全に)
- 結び:日常のすべては、思考の実験場
- 参考:このトレーニングをする時のおすすめ作品
この記事で得られること
ユーザーが 言語化できる情報 と 言語化できない感情 を分けて捉えるコツ
- 画面を「足す」よりも、価値を「残す」ための 引き算の設計
- 思考が詰まった時に、発想を動かす 具体的な手順
なぜ「同じ作品を3回」なのか
脳はラクをしたがるので、つい “慣れた窓” から世界を見ます。 ビジネス書ばかり読んでいると、何でもビジネスロジックの窓で解釈してしまう。 すると、ユーザーの温度感や迷い、言葉にならない「違和感」を取りこぼしやすくなります。
そこで効くのが、同一題材のメディア切り替えです。
同じ物語でも、活字・音・映像で、脳に届く情報の種類が変わる。 =思考の筋肉を、強制的に“別の角度”から使えるようになります。
実践:3メディア分解(所要:合計2〜4時間)
題材は何でもOKですが、最初はメディア展開が豊富な作品がやりやすいです(例:『星の王子さま』)。
※作品名・サービス名はあくまで例です。特定の企業やサービスを推奨する意図はありません。入手しやすい方法(紙・電子・図書館・音声・配信など)でOKです。
1回目:読む(活字)—「構造」を立ち上げる
狙い:論理構築力/情報設計(IA)寄りの筋肉
読みながら、次のメモだけ取ります(全部書かなくてOK)。
- 登場人物(または要素)の関係は?
- 物語の転換点はどこ?
- “作者が言ってないこと”は何?(空白はどこ?)
ここでやっているのは、文章から「骨格」を立てる練習です。 プロダクトで言えば、ユーザー行動の前後関係や、要件の構造化に近い。
2回目:聴く(音声)—「温度」を拾う
狙い:共感/リズム感/体験設計(UX)寄りの筋肉
オーディオブックや朗読、ラジオドラマなどで聴きます。 ポイントは「意味」ではなく「揺れ」を拾うこと。
- どこで声が強くなる? どこで間が空く?
- 自分の感情が動いたのはどの場面?
- “言葉にできない”けど残った余韻は?
ユーザーインタビューでも、言葉より 間・言い淀み・声のトーン に価値が乗ることがあります。 聴く練習は、そこを拾う感度を上げます。
3回目:観る(映像)—「引き算」を学ぶ
狙い:直感/審美眼/表現の取捨選択(UI)寄りの筋肉
映像は情報量が多いぶん、作り手の“選択”が見えます。
- 何を見せ、何を見せなかった?
- 1秒で伝えるために、何を捨てた?
- 「正解」を提示しすぎていない?
ここで得たいのは、足し算ではなく“残し方”の感覚です。
深掘り:強いプロダクトは「80%で止める」
私も経験が浅い頃ほど、不安から「全部説明したくなる」瞬間がありました。でも、体験が強いプロダクトほど、実は 余白 があります。
余白設計のコツ
- 説明を 80%で止める
- 残り20%を、ユーザーが「自分の言葉/自分の意味」で埋められるようにする
ユーザーが“自分でわかった”瞬間、プロダクトは「誰かのもの」から「自分のもの」になります。 この手触りが、継続利用や愛着(ブランド)につながります。
このトレーニングを「ユーザー理解」に接続するコツ(仕事への落とし込み)
3回やったら、最後にメモを1枚にまとめて、次の3つだけ作ります。
- ユーザーの“言語化された要望”(読むで拾った骨格)
- ユーザーの“温度・揺れ”(聴くで拾った違和感)
- 体験としての“残し方”(観るで見えた取捨選択)
そして、プロダクト改善の形に変換します。
- 「ユーザーは何に迷っている?(迷いの正体)」
- 「その迷いを減らす“最初の一歩”は何?(オンボーディングの1手目)」
- 「説明を増やす代わりに、何を消せる?(余白設計)」
この3つが揃うと、「機能の足し算」ではなく 価値の設計 に思考が寄ります。
もう一段伸ばす:あえて「アウェイ」に行く
3メディア分解に慣れたら、次は 自分が避けがちなジャンルで同じ実験をします。違和感が強いほど、思考の回路が増えます。
- ロジック派なら:感情や熱量が主役の作品(例:『火花』)
- リアリストなら:抽象度が高い作品(例:『銀河鉄道の夜』)
AIで“振り返り”を加速する(※安全に)
AIは答えを出す道具というより、思考の壁打ち相手にすると効きます。 各回のあと、メモを短く貼って以下を聞くだけでもOKです。
- 「この作品の論点を3つに要約して。根拠になった描写も添えて」
- 「反対意見(別解釈)を2つ出して」
- 「プロダクト改善に置き換えるなら、どんな仮説と検証案になる?」
結び:日常のすべては、思考の実験場
「思考力が弱い」と落ち込む必要はありません。 鍛え方を少し変えるだけで、視点はちゃんと増えます。 まずは手元の作品を、これまでと違うメディアで1回だけ。思考のOSは、そこから静かに更新され始めます。
参考:このトレーニングをする時のおすすめ作品
※「音声化/映像化されているとやりやすい」という観点の例です(特定サービス推奨ではありません)。
海外の作品
- 『ハリー・ポッターと賢者の石』(J.K.ローリング)— Audibleあり/映画化(2001)
- 『指輪物語 旅の仲間』(J.R.R.トールキン)— Audibleあり/映画化(2001)
- 『アルジャーノンに花束を』(ダニエル・キイス)— Audibleあり/映画化『まごころを君に』(1968)
- 『三体』(劉慈欣)— Audibleあり/Netflixドラマ化(2024)
- 『ダ・ヴィンチ・コード(上)』(ダン・ブラウン)— Audibleあり/映画化(2006)
- 『そして誰もいなくなった』(アガサ・クリスティ)— Audibleあり/ドラマ化(2015)
- 『サピエンス全史(上)』(ユヴァル・ノア・ハラリ)— Audibleあり/ドキュメンタリー化(制作進行中)
日本の作品
- 『こころ』(夏目漱石)— Audibleあり/映画化(1955)
- 『人間失格』(太宰治)— Audibleあり/映画化(2010)
- 『雪国』(川端康成)— Audibleあり/映画化(1957)
- 『沈黙』(遠藤周作)— Audibleあり/映画化『沈黙 -サイレンス-』(2016)
- 『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治)— Audibleあり/映画化(1985)
- 『ノルウェイの森(上)』(村上春樹)— Audibleあり/映画化(2010)
- 『白夜行』(東野圭吾)— Audibleあり/映画化(2011)
- 『告白』(湊かなえ)— Audibleあり/映画化(2010)
- 『嫌われる勇気』(岸見一郎、古賀史健)— Audibleあり/ドラマ化(2017)
- 『火花』(又吉直樹)— Audibleあり/Netflixドラマ化(2016)
- 『屍人荘の殺人』(今村昌弘)— Audibleあり/映画化(2019)
- 『かがみの孤城』(辻村深月)— Audibleあり/アニメ映画化(2022)
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※プロダクトマネージャーのカジュアル面談は、基本的に私(稲垣)が担当します!
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