
こんにちは、プロダクト部 部長の稲垣です。(自己紹介やこれまでのキャリアについて↓をご覧ください。) tech-blog.rakus.co.jp
マネージャーの役割を一言で言うなら、私は「管理」ではなく “支援” だと思っています。 現場の専門性を信じ、意思決定の質を上げ、チームが成果を出しやすい状態をつくること。
この記事では、そのために私が意識している2つの視点を紹介します。
- コト(成果・意思決定)には解像度を上げる支援
- 人(成長・キャリア)には未来を描く支援
※前提として、最適な距離感はチームの成熟度・状況・業務特性で変わります。ここでは「私の経験ではこうすると機能しやすかった」という一例として読んでください
- うまくいっている“ように見えた”チームで、手戻りが起きた話
- コトの解像度を上げる=「詰める」ではなく「迷いを減らす」
- 「現場を分かれ」ではなく「現場が強くなる」ための関わり方
- 人には「未来」を:日々のフィードバックを“支援”に変える
- 情報の流れを整える:支援が届きやすいチームにする
- AIで解像度を上げる(ただし守るべきものは守る)
- まとめ:解像度は、現場への敬意を形にする手段
うまくいっている“ように見えた”チームで、手戻りが起きた話
以前、関係性が良く、議論も穏やかで、進捗も「順調」と共有されているチームを見て、私は安心していました。 「信じて任せよう。口を挟みすぎないようにしよう」と。ただ、あるタイミングで出来上がったものを見て、違和感が残りました。
- 仕様は満たしている。でも「なぜこの形なのか」の説明が弱い
- トレードオフが曖昧で、「誰の課題をどう解いたか」が語れない
- 結果として、手戻りの議論が後ろ倒しになる
原因は、メンバーの能力不足ではありませんでした。 “支援の仕組み” が足りていなかったのだと思います。 私は、任せることに意識が向きすぎて、 「何を事実として見て、どこで意思決定し、何を残すか」という “解像度を上げる支援” を設計できていませんでした。
そこから考え方を変えました。 現場を疑うのではなく、現場が強くなるために “解像度を上げる支援” をする。 その支援があると、任せることがむしろ加速します。
コトの解像度を上げる=「詰める」ではなく「迷いを減らす」
解像度を上げるというと、「細かく口を出す」「監視する」と誤解されがちです。 私がやりたいのは真逆で、チームの迷い・手戻り・不毛な摩擦を減らすことです。
そのために、私がよく使うのは次の3つの支援です。
1) “目的” をそろえる支援(何のためにやるのか)
プロダクト開発では、判断が割れた時に「どっちが正しいか」になりがちです。 でも本質は「目的に照らすとどっちが良いか」です。
だから私は、最初にここを揃える支援をします。
- 今回の変更で、ユーザーの何が楽になる?(誰のどんな負担が減る?)
- それを “良くなった” と判断する指標は何?(完了率、離脱、問い合わせ等)
- 今回は “何をやらない” と決める?(守る範囲を明確にする)
目的が揃うと、現場の議論は速くなり、任せやすくなります。
2) “事実” を共有しやすくする支援(いま何が起きているのか)
「順調です」という共有自体は悪くありません。 ただ、意思決定を強くするには、順調の“根拠”が必要です。
ここでも私は「見せてください」ではなく、“一緒に見よう” のスタンスを取ります。
- 今回の仮説を裏付けるログや数値はどれ?
- 逆の可能性(失敗パターン)を疑うなら、何を見れば早く気づける?
- 定量だけで見えないなら、ユーザーの声・問い合わせ・営業/CSの肌感も合わせてみよう
ポイントは、現場の専門性を奪わないことです。 私は答えを決めにいくのではなく、判断材料が揃う状態をつくることに集中します。
3) “意思決定” を軽くする支援(決めるのが怖くない状態)
現場が抱えがちなストレスは、「決めたあとに責められること」だったりします。 ここを放置すると、合意形成が過剰に重くなり、前に進まなくなります。
だから私は、意思決定の仕組みをできるだけシンプルにします。
- 決める人(Decision owner)を明確にする
- 迷ったときの判断軸(優先順位)を先に置く
- 決めた理由を短く残す(後で責めるためではなく、学ぶため)
こういう “支援の設計” があると、現場は安心して攻められるようになります。
「現場を分かれ」ではなく「現場が強くなる」ための関わり方
ここまでの話は、現場の仕事に介入したいからではありません。 むしろ逆で、現場が自分たちで決めて進められる状態を増やしたいからです。
私が自戒しているのは次の2つです。
- マネージャーが「正解」を持っている前提で話さない
- 現場の専門性に敬意を払い、判断に必要な材料を揃える側に回る
解像度を上げる支援は、現場を縛るためではなく、現場の裁量を増やすためにあります。
人には「未来」を:日々のフィードバックを“支援”に変える
コトの解像度だけを上げると、どうしても「厳しい人」に見えやすいです。 だから私は、必ず “人の未来” とセットで扱うようにしています。
月1回、進捗ではなく「未来の話だけ」をする
私は、業務の進捗とは別に、月に1回はキャリアの話だけをする時間を取ります。 ここでは「今のタスクが遅い/早い」みたいな話はしません。
代わりに、次の3つをゆっくり話します。
- いま気になっていること(興味・違和感でもOK)
- できるようになりたいこと(3ヶ月〜1年くらいの距離感でもOK)
- そのために、次に経験したいこと(挑戦したい役割・場面)
未来は固定しません。変わっていい。 ただ、言語化の回数が増えるほど、本人も周囲も支援しやすくなります。
未来が共有できると、指摘が「評価」ではなく「投資」になる
たとえば設計の議論で深掘りする時も、 「詰める」ではなく「あなたの未来にとって重要だから一緒に考えたい」という形に変わります。
- 将来こういう領域をやりたいなら、今この視点は武器になる
- そのために、この判断のトレードオフを言語化してみよう
- 私も責任を持って一緒に腹落ちさせたい
こうなると、コトの解像度を上げる関わりは、監視ではなく 伴走 に近づきます。
情報の流れを整える:支援が届きやすいチームにする
最後に、やり方の話です。 支援のつもりでも、マネージャーが“都度呼び出す”形だと、結局重たくなります。 だから私は、情報の流れをこう整えるようにしています。
- 「私への報告」ではなく「チームに共有」する(事実が溜まる場所を作る)
- 早めに共有すると得をする(手戻りが減る/調整が早い/判断が速い)体験を作る
報告を義務にしない。 支援が早く届く “仕組み” として設計する。これだけで、現場のストレスはかなり減ります。
AIで解像度を上げる(ただし守るべきものは守る)
最近はAIで、情報整理のコストを下げられるようになりました。たとえば、
- 議事録や議論ログの要約(論点・未決・次アクション)
- 問い合わせ/不具合の一次分類(まず「何が起きているか」を掴む)
- 判断材料の洗い出し(見るべきログ・指標候補の列挙)
一方で、個人情報やセンシティブな情報は扱いに注意が必要です。 AIを使う場合は、社内ルールに沿った範囲で、秘匿情報を投入しない前提で運用します。
まとめ:解像度は、現場への敬意を形にする手段
- コトには、迷いを減らすために解像度を上げる支援をする
- 人には、未来を言語化して支援が届く状態をつくる
この2つが揃うと、マネージャーの関わりは「管理」ではなく「支援」になります。 現場の専門性を信じることと、解像度を上げることは両立できます。 むしろ、支援の設計があるほど、現場はより自由に、より強く動けるようになります。
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