どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。
100m。10秒の距離に全てを詰め込んでいる人たちの物語。『チ。-地球の運動について-』の魚豊さん原作、『音楽』の岩井澤健治監督がメジャーにはばたく号砲はなるのでしょうか。

WATCHA4.0点
Filmakrs3.8点
(以下ネタバレ有)
単純に、平塚、K's、長居とサッカー観戦に訪れたことのあるスタジアムが大量に出てくるので嬉しさと切なさが同居しながら観てた。レモンガススタジアム平塚(BMWスタジアムのイメージなんだけどね)の予選終わって話し合ってるあそこ!ゴール裏の観客席の下ですよ、ええ見覚えしかありません。でも、陸上競技の映画にサッカー見た場所が出てくるということはですよ、そこはサッカーが見辛いってことなんですよ、ええ。実際、セレッソ大阪はヤンマースタジアム長居の隣の球技場をヨドコウ桜スタジアムとして大改装しました。長居の空撮でちゃんと隣にあったね。あと、ベルマーレとセレッソはエンブレムも映ってた。陸連入ってる映画でオミットせずにくれて嬉しいけど、新国立の球技場化はそもそも五輪の後には陸上トラックのところに客席を増設して行うのが既定路線だったのに陸連がゴネてお釈迦になった、という理解がサッカーファンの間では通説となっている。というのも、(陸上畑ではないから完全には理解していないとはいえ)世界大会を開催するにあたっては、サブトラックという競技を行うとはまた別の調整用のトラックが近隣に必要であり、新国立に関しては五輪時は仮設で対応し、撤去したから大会が開催できないはずなのである。実際本作でも長居のサブトラックがスタジアムの外景と共にアップする風景で描かれていた。なんかしれっとオリンピック開催してればサブトラックなくてもOK!みたいな変更を陸連がしてるせいで国立はサッカーの聖地になり損ねているのだ。ザハ案が潰されて屋根がなくなったせいでライブ稼働もしづらくなって、いやはや本当に難儀な建物である。
こんなクソどうでもいいスタジアム談義をしてるのも、そういう側面を完全に漂白した作品だからだ。陸上競技、もっというと国体とスタジアム、そしてそれをめぐる政治とお金の話は今回は社会人アスリートとして契約を続行してくれるか否かにのみ言及され、部活の存続と同じ程度の扱いでしかない。でも、映画を作るにあたって元陸上の選手がバンバン監修し、それによってロトスコープで捉えたゆらぎと走りが画面に顕現してることと、競技性のみにフォーカスを当てられたことがどこか無関係でないように思えた。変にいい人しかいないような感じで、スポ根のやなところを不自然に消している。その結果、原初の喜びにフォーカスする日本選手権決勝がすごくピュアなものになっている。森川くんとかなんなんだろう。トガシさんに憧れて陸上を始めたとか言ってるけど、走り方がどうとか小宮に言われてた件も含めて凋落していった彼に対してああいう声をかけることがどういう意味を持つのか疑りそうなもんだが、トガシもシンプルに嬉しそうだし、森川くんも単にいい人だった。うん、うまい具合に現実から逃げている。漫画から映画になったことで、そういうことを気にする人間に見つかった、それもまた現実。ただまあ、この映画は強いていうならそういう現実を目をかっぴらいて認識した上で全力で逃げてる。そう考えるとツダケン同様、勝ったのかもしれん。
ロトスコープになったことで、人物の動きに揺らぎがあるのだが、全然質のいいロトスコープアニメだったので楽しく観れたし、仁神加入後の帰り道とか、そういうところでの楽しそうな3人の歩き方とかはすごく良かった。
ただまあどうしても引っかかるのは社会人編。世界陸上に合わせた公開で陸上への熱量や関心が高まっており、興行の動向を見ても正解だったと言っていいだろう。反面、あまりにも現実、それもこの映画が目をかっぴらいて無視した現実が横たわる。トガシはまだいいが、海棠も樺木も小宮も、偉そう極まりない財津も所詮日本人最速を決める大会で速めなだけなのである。Wikiで見ただけで申し訳ないが、サニブラウンが2022.2023の世界陸上で7位、6位を連続で取っているがその前の入賞はロサンゼルスオリンピック(1932)の吉岡隆徳なのだ。何が加速すればするほど誰もついてこれねえだよ、偉そうに講釈を垂れるな、日本陸上は敗北の歴史だろ。そう思うと、なんだかいい人になっていくと途端に牙を抜かれたようになり、財津や小宮のような狂気性が無いと勝てなそうに描写している中で、ノア・ライルズがリレーの前のアナウンスパフォーマンスではしゃぎまくり、その他アニメや漫画のポーズを取る選手たちが話題になったこの大阪世界陸上の後に見る本作は、なんだか浅いスポ根にも見えるのだ。現代スポーツは高度に科学や医療が発展し、メンタルがものをいうと同時に、公人とての振る舞いが求められる。そもそも怪我を押して一瞬のために選手生命を犠牲にするのもそんなに好きでは無い(どんなスポーツより人名が大事な時代だ)し、どこか現代とアニメーションを近接させるロトスコープによる作品のはずが、却って差が浮き彫りになったような。お前ら、この話をするほどの境地か?エリートの話してるようで君らエリートか?だから、陸上に殺されることを宣告した経田くんとか、体との折り合いをつけていこうとする仁神の物語の方が情が動く。エリートじゃ無いから。
声優はマジで良かった。というか、当て書きだろ、ってレベルで染谷将太がやるに決まってるキャラだったな小宮は。松坂桃李も人の良さが完全に声と演技で出来てる。故に達観もまた出来てる。ツダケンや内山昂輝の方がむしろやりすぎてるぐらいに感じました。