どうも、抹茶マラカス(@tea_rwB)です。
今回はオスカーウィーナー!『野生の島のロズ』を相手に見事勝利して見せた『Flow』の感想です。いやあ、勝つと思わなかったですなぁ。

WATCHA4.0点
Filmarks3.8点
(以下ネタバレあり)
ギンツ・ジルバロディス監督最新作。まさかアカデミー賞を取ってしまうとは。ちなみに数年前の記憶なら余裕ですっ飛ぶ私、前作にしてデビュー作『Away』をなんかオシャレな会場での試写会で見たことは覚えていましたが、ブログを読んだら数土さんと監督がトークしてたそうです。記憶がねえ…数土さんの話を生で聞いていた…?
覚えてないついでだと、本作の重要な前振りにもなりうる短編『Aqua』も当時鑑賞していた、というかジルバロディス監督の短編は大体見てたっぽいんですがびっくりするほど覚えていません。2021年の記憶が無い状態でそれを発掘するの、これだからブログはやめられないという感覚です。
さて、全然どうでもいい話に文字数を費やしてしまいましたが本作は『Away』に引き続いてセリフのない作品。なんか逃げ続けてた前作でしたが、本作もまた逃げる。明らかに人の手があった世界で、しかも飼い猫だったっぽい主人公の黒猫が急に訪れた海面上昇でただただ逃げるしかなくなる。そのうち、カピバラの乗る船に辿り着き、途中途中ワオキツネザルだ犬だを拾いながら旅をするというか、漂流するという感じ。
しっかり前振りとして魚を取ろうとしていた犬同士の隙を見て魚を取ったら追われるし、なんならソイツらはウサギにターゲットを切り替える、というのを見せているのでしっかり呉越同舟感は出ていて、『野生の島のロズ』との接近は非常に感じる。ロボットこそいないが、明確に人工物の中を旅していく様子はやはり監督の持ち味であるゲーム的なビジュアルを持ちつつ、自然と文明の対比をしているし、やはりロズでも海面上昇は起こっていた。
ロズが冬を越えるために説得して同じ空間で過ごさせたのに対して、抗いようのない大海原に対して仕方なく同じ船に乗っていた本作は、擬人化の度合いも低いし、言葉のやり取りもなければ、分かりあうはずもないので最後のカピバラのピンチもあっさり犬たちは置いていってしまう。絆や言葉の強さの前に生存本能が立ちはだかる訳だが、綺麗事を言う事が好きなはずのわたしには本作の描き方の方がなぜか好みになった。
さて、ロズが人類の話だったことはかなり自明だったが本作はどうか。鳥さんを筆頭に船の舵をとるとこなんかは、めちゃめちゃ人間的ではあるのだが、船に異なる種類の動物が乗る、という絵からしてもかなり神話的であるのは間違いない。特段説明もなく(いや、この作品において説明という概念はなんなんだかよく分からんが)昇天する鳥と猫、しかしなんか地上に戻された猫。この猫がいっぺんここで死んでいる可能性も念頭には置きつつも、そこから復帰した先で起きるのは水が引いていき生まれ変わった大地、で命の芽吹きを感じる緑の世界。船に乗ってそこに辿り着くのは約束の地っぽさがすごい。神話的であると同時に人類史でもある訳だが、それがハリウッドばりばりの場所で描かれたロズと、ラトビアのアートアニメとして描かれた本作とではまた意味合いが異なる、という考え方もできよう。また、鯨…なのか?あの水棲生物の存在はとても大きい。旅路の要所要所で遭遇した訳だが、あの生き物にとっては海面上昇によって行動範囲が広がって我が世の春となった。だが、また海面が引いていって約束の地の状態になった時に鯨は打ち上げられて動けない。誰かにとっての約束の地は誰かにとっては安住ではない、というのはとても良い相対性を見せているように思える。
いやはやしかし、驚きなのはこの作品も全編Blenderで作られているということだ。昨年の『数分間のエールを』もそうだったが、ディズニーが作品ごとに莫大な金銭を投じてテクノロジーを開発してリッチな絵を作っている一方で、こうした既存のソフトで個人に近いクリエイターもまた結果を出せる。両輪で化学変化を双方にもたらしていく事ができれば、世界的なアニメーションの爆発が加速していく可能性は極めて高いように思える。いや正直、水の描写がここまでBlenderで出来るんだったらみんな使ったほうがええって、という次元だ。