以下の記事で紹介した内省支援ツールの開発プロセスについてふりかえります。
全体の流れ

AIと共創 : 前提整理
設計の検討は Gemini に相談しながら進めました。
まずはツールの目的を伝えた上で、手段として Gemini や NotebookLM などの標準機能でカバーし、短期間で実装したいという前提を共有しました。結果として、 Gemini からは Gemini の Gem で作成することを推奨されました。
そこで、NotebookLMで作成する場合との違いを説明してもらいました。
AIの出力
### 主な役割 * Gemini (Gems): 「コーチ・メンター」 (対話型) * NotebookLM: 「リサーチャー・分析官」 (資料型) ### 日々の壁打ち * Gemini (Gems): ◎ 非常に自然。人格(ペルソナ)を設定でき、過去の文脈を踏まえた人間らしい会話が得意。 * NotebookLM: △ 少し堅い。基本は「ソースに基づくQ&A」なので、悩み相談よりも情報検索のような挙動になりがち。 ### 評価基準の参照 * Gemini (Gems): ○ 可能。ただし、たまに一般論が混ざる可能性がある(ハルシネーションのリスク)。 * NotebookLM: ◎ 極めて正確。アップロードされた資料のみを根拠に回答し、「ソースのどこに書いてあるか」引用元を示せる。 ### 記憶の継続性 * Gemini (Gems): ◎ スレッドで管理。1つのチャットスレッドを使い続ければ、過去の経緯を覚えている。 * NotebookLM: △ セッション毎。チャット欄はリセットされやすい。情報を残すには「メモ」として保存する手間が必要。 ### レポート作成 * Gemini (Gems): ○ 要約が得意。「今までの会話をまとめて」と言えばすぐ作れる。 * NotebookLM: ◎ 統合が得意。「保存した1ヶ月分のメモ」を一気に読み込み、横断的な分析レポートを作るのが得意。 ### スマホ利用 * Gemini (Gems): ◎ アプリあり。通勤中などに気軽に音声入力で振り返りができる。 * NotebookLM: △ ブラウザのみ。PCでの利用が前提のUI/UX。 ### 今回の推奨構成:Gemini (Gems) メインの運用 今回の目的は「エンジニアの自律的な経験学習サイクル(内省の習慣化)」と「ソフトスキルの意識付け」ですので、対話のハードルが低い Gemini (Gems) をメインツールにすることを強くお勧めします。 NotebookLM は、もし「半期に一度、過去のログを全部流し込んでキャリア分析をする」ようなイベントがある場合に、補助ツールとして使うのが良いでしょう。
AIと共創 : 構成案
次に、元々自分の頭の中にあった生成AIに受け渡すソース情報の構成案をチェックしてもらいました。 構成自体は冒頭で紹介した Gemini を活用した内省支援ツール「ターボチャージャー」を導入した話 の記事を参照ください。
結果として Gemini から以下のフィードバックをもらいました。
- 拡張リソースとして個人プロファイルを利用すること。相談のたびに個人の前提を入力すると大変なので、ファイルとして外部化する形式にすること
- ふりかえりの中で文化への理解を促すようなやりとりができるような設定をプロンプトに指定すること
その他は大枠で素案の通りでよさそうでした。
AIと共創 : マイルストーンの確認
年末年始をまたいだ開発の想定を大枠で伝えたところ、全体スケジュールの素案を作ってくれました。
AIの出力
Gemini の Gems 機能を利用するスモールスタート戦略だからこそ、この「年内完成・1月リリース」は十分に実現可能です。 現在の 2025年12月16日 という日付を踏まえ、ゴールに向けたタスクを整理しました。 残りの2週間でやるべきこと、年始にやるべきことを明確にしておきましょう。 ### 今後のロードマップ案 #### Phase 1: 年内(プロトタイプ作成 & αテスト) 目標: 「ターボチャージャー」v1.0 を作成し、ご自身で挙動を確認・調整する。 1. リソースのPDF化 [今週中] * `経営理念`, `CLP`, `評価基準`, `コーチング/経験学習資料` を Gems に読み込ませやすい形式(PDF推奨)に変換します。 * *Tips:* テキスト情報以外の装飾が多いスライドなどは、テキストファイル(.txt)に落としてから読み込ませた方がAIの解釈精度が上がることがあります。 2. Gems の実装 (Setup) [今週中] * 前回提案したプロンプト(システム指示)と、上記リソースを設定します。 * ご自身の「プロファイル情報」を入力して、実際に壁打ちを行ってみてください。 3. チューニング (Tuning) [来週] * 「CLPの引用が強引すぎる」「もう少しフランクに話してほしい」などの違和感をシステム指示で微調整します。 #### Phase 2: 年始(社内検証・βテスト) 目標: 数名の協力者(エンジニア・マネージャー)に使ってもらい、運用フローを固める。 1. 協力者への展開 * URLを共有し、用意した「プロファイル・テンプレート」を使って開始してもらいます。 2. フィードバック収集 * 機能面だけでなく、「使ってみて、内省する気になれたか?(心理的ハードル)」を確認することが最重要です。 * *チェック項目例:* * テンプレートの入力は面倒ではなかったか? * AIの回答は「説教くさく」なかったか? * 週次レポートの出力結果はマネージャーに見せられる品質だったか? #### Phase 3: 1月中(リリース) 目標: 全社(または対象部署)へアナウンスし、利用を開始する。 * 利用ガイドの公開: Wikiなどに「使い方」「テンプレート」「このツールの目的(8:2の自走など)」をまとめたページを作成。 * 運用開始: マネージャー層にも「メンバーからこういう形式のレポートが来るようになる」と周知。 --- ### すぐに着手できるアクション まずは「お手元の資料(CLPや評価基準など)を1つのフォルダにまとめ、PDF化する」ところから始めてみてください。それさえあれば、Gemsの設定画面でプロンプトをコピペしてファイルをアップロードするだけですので、実作業は30分〜1時間程度で「ターボチャージャー v0.1」が動き出します。 作成中に「AIが評価基準をうまく読み込んでくれない」「こういう受け答えをしてしまう」といった課題が出れば、またいつでもご相談ください。プロンプトの微調整をお手伝いします。 良いお年を迎えられるよう、年内のプロトタイプ完成を応援しております!
なお、PDFを推奨されましたが、 Google ドキュメントや Google スプレッドシートをそのままソースに指定したほうが運用負荷として低くなりそうだったので、その方針でいいか確認し、問題ないことを把握しました。
AIと共創 : コーチング資料の要否を確認
コーチとしての動作に向けてコーチングのやりとりを補強するようなソース情報が必要か、 Gemini に確認しました。
出力
結論から申し上げますと、「一般的なコーチングの教科書」的な資料であれば、わざわざ作成して読み込ませる必要はありません。
とのことで、この部分は特にソース情報が不要であると確認できました。
AIと共創 : 自社特有のソフトスキル
現職はテックカンパニーであり、成長の相談となると技術的な内容になりがちですが、技術スキルは課題も伸ばし方も整理しやすい反面、実際はソフトスキルの強化が課題であるが、マネージャーもメンバーもそれを課題として認識しにくかったり、どのようにソフトスキルを強化すればよいか困ることになりやすい前提がありました。
そこで、ソフトスキルに関しては評価基準の情報やカルチャーの情報を Gemini に提供しつつ、それを踏まえて自社の前提の中で特に重要になるソフトスキルの情報を整理してもらいました。まとめてもらった情報はスプレッドシートにエクスポートし、人間目線で内容をチェックし、加筆修正をして仕上げました。この情報は最終的に内省支援 Gem のソース情報に設定しています。
Gemの実装
ここまでで整理したツール全体の構成や、AIと相談して整理したソース情報を設定することを前提に、 Gem の実装をしました。
プロンプトの基本的な構成は、以前から繰り返し作ってきた型があるので、それを踏まえて内容をまとめつつ、具体的な命令内容は今回の設計に合わせて記述しました。 主に使っているテクニックは以下です。
さらに内省支援については、会社の前提を含まない汎用版は個人の趣味で開発済みだったので、ベースはこれを利用できました。
- 個人のふりかえりを促す Gemini の 🐸ふりカエル🐸 Gem を作ってみたよ - Tbpgr Blog
- 個人のふりかえりを促す Gemini Gem の共有バージョンを作ってみました - Tbpgr Blog
Gem の動作確認
スプレッドシートにテストケースをまとめてテストを実施しました。 なんとなく作ってなんとなく動かすのではなく、ユースケースを想定し、それを踏まえて期待される結果になるか確認することが大切です。
今回の主要な機能は定期的な内省のための『ふりかえり』機能と、必要なタイミングで利用する『相談』機能の2つです。汎用的な相談をカバーする『相談』機能は多様な使い方が想定されるため、特にテストケースを充実させました。
一通りのテストケースを確認し、概ね想定通り動きました。想定と異なる結果になった部分は、プロンプトを調整して想定の出力になるようにチューニングしました。
Gem のリファレンスを作成
Gemini に Gem のプロンプト、ソース情報、全体の設計資料を提供しながらユーザー向けのリファレンスを作成しました。Gemini にベースを作ってもらい、出力結果を手動で微調整し、必要な図解を差し込んで30分程度で完成しました。
Gem のユースケース資料を作成
『相談』機能は汎用性が高いため、ユーザーが活用方法に迷う可能性を考慮しました。そこで、テストケースを参考にしつつ、ユースケースをリファレンスに追加することにしました。
以下のようなユースケースをまとめ、ケースごとに実際に Gem に相談するやりとりの実行結果を記載しました。
- キャリア・昇格に関する相談
- スキル・成長課題に関する相談
- 自身の成長課題の特定と克服方法
- ソフトスキルの向上と定着
- 強み優先型の成長戦略の検討
- 組織理念・行動指針の体現に関する相談
- カルチャーの実践
- 経営理念や評価基準との整合性確認
- 経験学習・実践に関する相談
- 経験学習モデルに基づいた内省の深化
動作検証の依頼
自分自身による動作検証が完了したら、次は一部の関係者に先行リリースをして実際に試してもらいました。
検証依頼の内容を文書にまとめ、普段から定例や個別介入でやりとりすることが多い部門のマネージャーたちと、人事内の他チームのメンバーに検証協力を依頼しました。快く協力してくださった皆さんに感謝です!
フィードバックの反映
動作検証の結果、いくつかの改善要望が上がってきたので、修正を反映し、フィードバックをくださった方に感謝を添えて提案内容を反映した結果を報告しました。
ツールのアーキテクチャ資料の作成
今回作成したツール全体のアーキテクチャを資料にまとめました。 社内の人たちがツールの設計やテクニックを参考にして他の用途に役立ててもらうためです。 生成AIの活用は試行錯誤の段階ですし、一つ一つの取り組みが参考になるはずです。 自分だけ作成して終えるのではなく、その効果を全社に広げるのがよいでしょう。
周知
全社に向けた周知に先立って、トップマネージャーのミーティングでこのツールを全社に周知する旨を頭出しし、周知資料を整備してその翌週に全社に周知しました。
適用範囲の拡大
このツールは自社の資料、前提を踏まえて作ったものです。
周知した結果、グループ会社の関係者からも利用したいとの声をもらったので、ツールの作成方法とグループ会社固有の情報に差し替える部分に関してツールの作成に関わる資料を作成しました。
また、事前に作成しておいたアーキテクチャの資料がここでも役立つことになりました。