狐の珠 (きつねのたま)
ある冬の夜、善左衛門という男が厠に行くと、窓越しに狐が見えた。
善左衛門が「コラ!」と一喝すると、狐は驚いて逃げ出したが、その時キラッと輝く珠を落とした。
その珠を拾って家の中に持ち帰ったところ、戸の向こうから「善左衛門さん、その珠を返して下さい。それは私たちの命の珠で、その珠がないと力を失って生きていけなくなります。小判を持って来たので珠と交換して下さい」という声が聞こえ、チャリンチャリンと小判を戸口に置く音がした。
善左衛門は可哀想に思い、戸を少し開けて珠を返すと、狐は礼を言って急いで姿を消した。
戸口を見ると、そこには蹄鉄が四、五枚転がっているだけだった。
善左衛門は「はてさて寝ぼけたかな。はたまた狐に騙されたのかな」と笑って床に就いた。
それから善左衛門の家は年々、代々栄えていったという。
『山本の風土記』「キツネのはなし」より
狐に騙されても怒ることなく笑って済ます善左衛門、器が大きい。
伝承地:亀岡市篠町山本




