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今回は、中国の文房具市場についてご紹介します。
昔から中国と行き来をしている方はよくご存知だと思いますが、中国へのお土産として日本の文房具は大変喜ばれます。今では、越境ECなどで簡単に買うことができるので、喜ばれ度はかなり小さくなってしまいましたが、以前は、ジェルインクボールペンなどを持っていくと、まるで魔法のペンをもらったかのように喜んでいただけます。その人だけではなく、周りの人まで集まってきて、試し書きをしてはそのサラサラな書き味に歓声を上げるほど喜んでくれます。
では、中国で日本の文房具がものすごく売れているのかというとそうでもありません。「中国文具業界発展報告」(中国制筆協会)によると、中国文具市場の販売額シェアランキングは次のようになっています。

中国の文具業界での最大手は「晨光文具」(チェングワン、M&G)で、大都市でも地方でも文房具店に入ると、どの店にもほぼ確実に置いてあるブランドです。日本のコクヨのような存在です。
日本企業も三菱鉛筆が頑張っていますが、それでもシェアは3.8%でしかありません。その他、ゼブラ、パイロットなどは1%前後になります。
中国の文具業界は群雄割拠の状態で、圧倒的な大手がいません。その中で、日本企業は健闘しているということができます。
しかも、健闘どころではありません。中国の文房具市場は約3兆円市場で、なおかつ成長率は6%以上をキープしています。一方、日本の文房具市場は約1.2兆円で成長はほぼ止まっています。つまり、わずかとは言え、中国市場でシェアを握っていることは、日本企業にとって非常に有望な成長エンジンとなるのです。
昨年の9月、日経にゼブラの石川太郎社長のインタビューが掲載されました。「ゼブラの石川太郎社長「中国現地メーカーからシェア奪取」」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC210YK0R20C25A8000000/)です。
この中で、石川社長は、中国市場について「たとえ0.1%のシェアを獲得するだけでも、非常に大きな市場になる」と述べています。
ゼブラは残念ながら非上場企業であるため、正確な国内外売上比率は分かりませんが、三菱鉛筆では、アジアの売上が日本の半分弱にまでなっています。

パイロットでもアジア市場は重要なセグメントになっています。

日本の文房具市場は、横ばいというより微減が続いています。それはそうです。もはや企業でも、以前ようなファイルや書類ばさみ、ステープラー、付箋といったものを使う機会は激減をしています。そもそも紙書類が消えようとしています。
しかし、高機能筆記具は伸びているのです。手で文字を書く機会が少なくなるとともに、書き味や体験にこだわる人が増えているからです。そして、日本の文房具の最大の強みが、インクやペン先素材に高い技術を注ぎ込んだ高機能筆記具なのです。
また、中国市場でのシェアは決して大きくありませんが、単価50元(約1100円)以上の高級文房具市場では日本企業が60%を占め、残りはドイツなどになります。中国企業が入ってこれない市場を日独で独占している状況です。
日本でも高機能筆記具が受け、中国でも高機能筆記具が日本企業の強みとなっています。この路線を追求することで、日本企業は国内企業でも成長することができ、さらには高度成長する中国やアジア市場で大きく成長することが期待できます。
中国市場は巨大ですから、そこに真っ向から参入して中国企業と競争をするのではなく、中国企業が不得意で、日本企業が得意な分野で勝負をして、ささやかなシェアを握る。でも、それは日本企業にとって決して小さくない市場となり、企業成長の原動力となります。
この文房具業界の戦略は、他の業種にも応用できそうです。日中の企業を比較した場合、日本企業は高品質という強みを持っているのですから、これを武器に中国市場にささやかな地位を確立する。それが日本企業にとっては大きな成長市場になります。
ただし、今回のメルマガの裏テーマとも言えるものですが、この日本の高い技術力を過信してはいけません。「日本の高い技術力」という単語を出すと、反射的に「中国企業が真似したくても真似できない」と胸を張りたくなりますが、実はそうではありません。真似をする気になれば真似はできるのです。実際、米国が半導体封鎖を行い、はしごを外されたファーウェイは、わずか3年程度で国内技術により最先端半導体の製造に成功し、巻き返しています。
つまり、文房具の高い技術も、中国企業は真似をしようと思えば真似できると考えておくべきです。実際、2016年に、太原鋼鉄集団が、日本のボールペンと同じ品質水準のペン先材料の開発に成功しています。非常に興味深いエピソードで、「日本の技術のほんとうの強みはどこにあるのか」を理解するための優れたケーススタディになっていますので、後ほど、詳しくご紹介します。
今回は、中国市場で一定のシェアを握ることで成長しようとする日本の文房具企業の戦略と、高い技術力がなぜ強みになるのかについてご紹介します。
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