ショッピング時の商品選びにAIを利用する人が増え、各ECでは顧客をAIに取られるのではないかと戦々恐々になっている。その中で、アリババの淘宝網は、いち早く、検索、推薦、広告の機能にAIを搭載し、大きな成果をあげていると極客公園が報じた。
AI対応を完了したタオバオ
アリババのECプラットフォーム「淘宝網」(タオバオ)がAI対応を完了した。今年2025年10月16日に上海で開催された「ダブルイレブン(独身の日セール)スタートイベント」で、アリババ捜推智能プロダクト事業部の凱夫総裁が登壇し、「AIによるECの再構築」という講演を行い、その中で、タオバオが完全にAI対応を済ませていることを明らかにした。すでに、購入コンバージョンは20%向上し、広告の投資効果は12%向上しているという。タオバオのような巨大プラットフォームでのこの数字は、莫大な金額を生み出していることになる。

見た目は従来と同じ、背後にAIが隠されている
ECで必要とされる3大機能は「検索」「推薦」「広告」の3つだ。多くの人が検索して商品を探し、マイページなどに推薦される商品の中から選び、パーソナライズされた広告から商品を選ぶ。
この3つの機能にAIが搭載されたが、タオバオのうまいところは「AIに聞く」ボタンなどをつけるのではなく、これらの機能の背後に大規模言語モデルをベースにしたAIを組み込んだことだ。そのため、見た目は「AIボタン」のようなものはなく、利用者は以前と何も変わらず、検索をし、推薦や広告で表示される商品を見ることになる。しかし、そのすべてがAIによりエンパワーされているのだ。
キーワードで検索するのではなく、文章で問い合わせる
商品検索はこれまでキーワード検索の域を出ることはなかった。そのため、多くの人が文章で問い合わせるのではなく「フケ かゆみ シャンプー」などのキーワードを入れて商品を検索する。
しかし、これには限界がある。例えば、乾燥フケに悩まされている人が「フケ かゆみ シャンプー」と検索すると、保湿系シャンプーだけでなく、脂漏性フケに対応したシャンプーも検索されてきてしまう。検索結果の中から、最後は利用者が判断をして、必要な商品を選ばなければならない。
しかし、AIが組み込まれたことで「乾燥 フケ シャンプー」というキーワードが入れられた場合、それがどのような意図でこのキーワードが選ばれたかをAIが推測をして、商品情報のテキストも理解して、適切な商品を選び出すことができる。つまり、ねらった商品が検索されてくる。
さらに、このAI対応に気がついた利用者は「頭皮が乾燥してフケが多いので困っている」と、AIに尋ねるようになっていく。すると、保湿系シャンプーだけでなく、適切なドライヤーやビタミンBや亜鉛などのサプリメント、食品なども検索結果に表示してくれるようになる。
タオバオではすでに検索によるコンバージョンが20%改善されたという。
文脈を理解して推薦と広告を行う
「あなたにおすすめ」などの推薦商品も精度が向上した。例えば、灯油ストーブを買った人にはどのような商品を推薦すればいいだろうか。その人は、冬がくる前に暖房器具を買ったのだろうか、それとも冬のキャンプをするために買ったのだろうか。
AIは隠れた文脈を推論するセマンティック推論を行い、その商品がどのような文脈で購入されたのかを推論する。灯油ストーブの前にテントを購入していたら、キャンプの文脈であるということがわかる。
このような推論に基づいて「あなたにおすすめ」商品を提示する。推薦商品のクリック率は10%増加した。
同様に広告も、セマンティック推論によって、購入履歴を分析し、適切な広告を適切な人に提示するようにした。これにより、広告の投資効果(ROI)は12%向上した。
AIは見えないところで利便性を向上させる
このアリババの試みは、人間とAIの関係性を再定義するものとしても注目されている。AIが独立したアプリケーションとして提供され、人間はそれを使いこなすというのはひとつの方法だが、そのような利用法は一部の人にとどまることになる。しかし、私たちがすでにあたりまえに使っているECやメールアプリやゲームなどにAIが組み込まれることで、利便性は大きく向上する。このような組み込み型AIの方が普及の範囲は広くなる。タオバオの試みは、AIが次の普及段階に入るためのさきがけとしても注目されている。
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