以下の内容はhttps://tamakino.hatenablog.com/entry/2025/12/07/080000より取得しました。


フィルターバブルを乗り越えることはできるのか。中国SNSが採用し始めた次世代リコメンドアルゴリズム

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 310が発行になります。

登録はこちらから。

https://www.mag2.com/m/0001690218.html

 

今回は、フィルターバブルと次世代利コメンドアルゴリズムについてご紹介します。

 

SNS疲れを感じている方は多いのではないでしょうか。

ひとつは、送られたメッセージに返事をすることが義務となり、それに追われて疲れてしまうというものです。最近では、退社後の業務メッセージは応答しなくてもいい「つながらない権利」も議論されるようになっています。

もうひとつは、SNSでは年がら年中、生贄を探して叩いているようなことが続いています。事実かどうかわからないあやふやなことを、あたかも事実であるかのように、度を超えた批判が展開されます。このようなことに嫌気が差し、SNSから距離を置くという方もいるでしょう。

 

特に問題だと感じられるのが、このような特定の考えを積極的に拡散しようとする人の多くが、対話をする余地もないと感じさせることです。特定の考え方に深入りをしている人には、どのような話をしても、自分の考えを再考するという様子がありません。批判をすると、次第に声量が大きくなり、威圧を感じさせる行動を取るようになります。

このような、特定の考え方に凝り固まってしまったり、幼稚な陰謀論を信じこんでしまう現象は、SNSのフィルターバブル効果が原因だと言われることがあります。また、同様の言葉でエコーチェンバー効果、インフォメーションコクーン(情報の繭)という言葉も使われます。

チェンバーにしろコクーンにしろバブルにしろ、そういうものをつくっているのはSNSなのだという考え方です。これはほんとうにそうでしょうか。

 

先日、ある中国人と面白い話になりました。中国人はSNSでは政治の話はまずしません。当局の規制が厳しいために、うかつなことは書けませんし、書けるのは中国政府の公式見解に沿った内容にならざるを得ないため、誰もがわざわざ投稿する価値を感じません。見かけるのは、極端な愛国心の表明、他国批判、専門家による真面目な政治分析ばかりです。

ところが、リアルでは意外に政治の話をするのだと言います。もちろん、不特定多数の人がいる場所ではなく、互いに理解し合えていると思える友人だけの場ですが、政府批判もするし、議論に熱くなることもあるそうです。特に、学生、若い世代では、仲間内では政治の話をすることが特段タブーにはなっていないそうです。

一方、彼は日本の社会もよく知っていて、SNSに政治の話題が溢れていることに驚いています。ところが、リアルの場では、政治の話をする日本人にほぼ出会ったことがないというのです。

どちらがどうというより、彼にとっては不思議な現象であり、日本と中国が対照的になっていることが興味深かったようです。

私たち日本人がリアルで政治の話をしなくなったのは、建設的な議論が期待できないからです。それどころか、人間関係を壊しかねません。日本では、政治は公共のものではなく、きわめてプライベート性の強いものになってしまいました。

ですので、政治の話をリアルでしたければ、同じ考え方を持つ集団に所属して、その中で語るしかありません。エコーチェンバー効果が起きやすくなっているのです。

 

エコーチェンバー効果は、米国ハーバード大学のキャス・サスティーン教授が2003年に命名したものです。この時代は、SNSはまだ発達してなく、掲示板やウェブサイト、ブログなどが主体でした。このようなメディアを選ぶ時に、自分の興味があるウェブや掲示板、さらにはリアルな団体を選ぶことになります。そこでは、自分に同意する意見が返ってくるためにものすごく居心地がいいことになります。これがエコーチェンバーです。ポイントは、自分が能動的に居心地のいい場所を発見し、そこの考え方に染まっていくというものです。

 

サスティーン教授は、SNSが登場し始めた2006年、この考え方をさらに発展させて、インフォメーションコクーン(情報の繭)という言葉を提唱しました。

これは、ツイッターFacebookのようなSNSを例に考えるとわかりやすくなります。このようなSNSでは、フォローする人を選ぶという方式であり、当然ながら自分の考えに合う人をフォローする傾向が生まれます。すると、自分の考えに合った情報ばかりが入ってくるようになり、居心地がよくなります。つまり、SNSという場で、自分の心地よい情報を選択し、その情報だけを見るようになるため、まるで情報の繭をつくっているかのような行動に見えます。

エコーチェンバーと似ていますが、本人が望む情報だけを選択することにより、特定の情報だけを摂取するようになることを指します。

 

2010年、ネット活動家のイーライ・パリサーがフィルターバブルという言葉を使い始めました。これはインフォメーションコクーンとはかなり違っています。

この時期には、グーグル検索は、ユーザーの行動分析をするようになっています。例えば、台湾旅行をするために台湾関係や旅行社のサイトを見ていると、グーグルアドセンス広告には台湾旅行の広告が表示されるなどです。また、YouTubeなどの動画共有サイトでは、視聴履歴を分析して、おすすめのコンテンツを表示してくるようになりました。

このようなアルゴリズムが推薦するコンテンツばかりを見ていると、その傾向がさらに強化され、次第に特定の情報ばかりを摂取するようになります。これがフィルターバブルで、アルゴリズムがフィルターの役割をする泡の中にいて居心地がいいという状態になります。本人にとっては、かなり偏った情報だけを摂取しているのに、「世界中がそう言っている」感覚になるのです。つまり、アルゴリズムがコンテンツを推薦し、受動的な摂取の中で特定の情報だけを見るようになることを指します。

ですので、X(元ツイッター)のような自分が明示的にフォローする人を決め、摂取する情報を能動的に選択している場合は、正しくはインフォメーションコクーンという言葉を使うべきで、フィルターバブルはややずれる使い方になります。

エコーチェンバーは自分で場を選ぶ、インフォメーションコクーンは自分で情報を選ぶ、フィルターバブルはアルゴリズムが情報を選ぶという違いがあります。とはいえ、どの言葉も同じ傾向のことを言おうとしていることは確かで、この3つの言葉は混同されて使われるようになり、研究者も一般の人が使う分にはうるさく指摘をするようなことはしなくなっています。

 

面白いのは、日本では人をフォローするタイプのSNSに人気があり、中国ではアルゴリズムがコンテンツを推薦するSNSに人気があることです。ですので、日本で起きている現象はインフォメーションコクーンであり、中国で起きている現象はフィルターバブルということになります。

中国の微博(ウェイボー)は、Xとまったく同じ構造のSNSですが、企業の公式アカウントや有名人をフォローし、その投稿を読むという一方通行の使い方が多くなっています。SNSというよりは情報告知ツールになっています。

微信(ウェイシン、WeChat)は広く使われていますが、リアルな知人同士を結ぶ使い方が多く、SNSというよりはメッセンジャーの側面が強くなっています。

一方、多くの人が情報源とする抖音(ドウイン、中国版TikTok)、小紅書(シャオホンシュー、Rednote)、快手(クワイショウ)などは、リコメンドされたコンテンツを見るのが基本で、なぜか、日本ではこのタイプのSNSが流行りません(ただし、Xやインスタグラムではおすすめなどのタブで、アルゴリズムによるリコメンドを行っています)。

 

日中の利用者の好みが違うということもあるかと思いますが、中国の場合は、運営のしやすさという面もあるのではないかと思います。ご承知のように、中国の場合はコンテンツ内容にさまざまな制限があります。中国政府を批判するような内容はほぼNGですが、それ以外にも誤情報、低俗、未成年に悪影響を与えるコンテンツは投稿できません。

人のソーシャルマップに基づいたSNSでは、このような問題コンテンツが流通してしまうことは避けられませんが、アルゴリズムによる配信では、一部のユーザーから通報があった時点で、まずはリコメンドを全面的に停止するということで、事実上の配信停止にできます。

中国のSNSでは、このパターンが非常に多く、配信者のページ上では投稿したコンテンツが存在しているのに、再生数が1桁とか0というものが出てきます。私自身もこのような事実上の配信停止になったコンテンツがいくつかあります。例えば、ニルバーナの有名なアルバム「Nevermind」のジャケットを投稿したものが配信数0となりました。ご存知の方も多いかと思いますが、このアルバムのジャケットはプールの中で赤ちゃんが泳いでいるというものです。写真には赤ちゃんのおちんちんが写っています。これが性的表現の規制に触れるのだそうです。

もうひとつは、ガンジーの話をする時に、AIで生成したガンジーのイラストを添付しました。背後にはインドの地図が描かれています。ところが、このインドの地図が、中国が自国の領土だと主張する地域がインド領土になっていたため、配信が止まり、審査の後、問題コンテンツだとして運営によって削除されました。

多くのSNSが誰かが「問題だ」と通報をすると、すぐにアルゴリズムがリコメンドを停止して、その後人間による審査が行われて、削除するか残すかを決めるという手順を踏んでいるようです。

 

日本のソーシャルマップ型のSNSであっても、中国のリコメンド型のSNSであっても、バズるコンテンツというのは再生数が多く、いいね評価の多いコンテンツです。

しかし、この評価方法は、迷惑コンテンツを生み出すことになります。なんでもいいからたくさん再生されればいい、「いいね」評価が多くするには賛否両論が激しく対立するほどいい。こうして、炎上マーケティングをする迷惑ユーチューバーのような配信者が登場してきます。

これは、SNSの特性上避けられない問題と言われますが、そんなことはありません。中国のSNS各社は、この問題に取り組んでいます。

この分野で最先端を走っているのが、ショートムービープラットフォームの「快手」が開発したEMERアルゴリズムです。2021年から開発が始まり、2023年7月に実装されました。後ほど内容に関しては詳しくご紹介しますが、簡単に言えば、再生数と評価だけでなく、多様な指標でコンテンツの評価を行い、それに基づいてリコメンドを行うというものです。

迷惑コンテンツなどを排除できるだけでなく、利用者が多様なコンテンツに触れることができるようになり、長期的な満足度を上げることができます。リコメンドアルゴリズの次世代版です。

同様のことはバイトダンスの抖音やビリビリも進めており、再生数だけをとりにくる迷惑コンテンツが減っていることは体感でもわかるほどになっています。

では、EMERアルゴリズムとはどのようなものでしょうか。そして、運営にとってどんなメリットがあるのでしょうか。今回は、EMERアルゴリズムについてご紹介します。

 

続きはメルマガでお読みいただけます。

毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。

 

今月、発行したのは、以下のメルマガです。

vol.309:クイックコマースは黒字化ができるのか。イオン、ディンドン、サムズクラブ、フーマの挑戦

 

バックナンバーポッドキャスト放送中!

apple.co

 

ビデオ版バックナンバーも放送中!

www.youtube.com

 

  • マックス

 




以上の内容はhttps://tamakino.hatenablog.com/entry/2025/12/07/080000より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14