中国では記録破りのヒット映画が続いているが、その一方で、映画館の閉館が続いている。中国にとって映画は産業ではなく、国家のプロパガンダツールであるため、最低価格制度という規制があるからだと品牌観察官が報じた。
ヒット映画が連続する中国
中国では映画のヒットが続いている。一昨年の2023年には日本の「スラムダンク」がヒットし興行収入が6億元を突破、今年2025年になっては「哪吒2」が過去例を見ないヒットとなり、興行収入が160億元を突破するという新記録を打ち立てた。
さらに、この夏には日本との戦争を題材にしたフィクション映画「南京写真館」「731」が異例のヒットとなっている。

それでも消えていく映画館
さぞかし映画業界は潤っているのではないかと思えるが、実は映画館の閉館が続いている。2025年上半期の映画1回上映あたりの観客数のデータは惨憺たるものだ。観客10人以上の映画はわずか19%で、観客0人という上映が40%もある。
つまり、ごく一部の映画には人が押し寄せ満員になるが、その他の映画はほとんど見られていないということになる。

ビジネスになっていない映画産業
映画館の閉館が続いているのは、そもそも中国では映画館というビジネスが成立していないからだ。
仮に映画のチケットが50元(約1000円)だとすると、そこには5%の国家映画基金と3.3%の税金が含まれている。残りが粗利となり、これを映画館、配給元、製作で分け合う。一般的には50%が映画館のものとなるため、映画館には24元程度が手元に残る。
しかし、映画館はここから従業員の給料や光熱費、映画館の賃料などを支払わなければならない。残る利益はごくわずかにすぎない。

中国独特の最低価格制度
ごくわずかであっても利益が出れば、映画館のビジネスは維持をしていける。しかし、それでも映画館が閉館をしていくのは、中国独特の最低価格制度があるためだ。
中国では映画製作産業を保護するために、映画の価格には最低価格が決められている。映画によって異なるが50元前後になり、映画館はこの価格より安くチケットを売ることはできない。
しかし、現在は、大作映画であっても、最初からネット公開されることが増えていて、映画館は集客が難しくなっている。そのため、映画館はクーポンや会員価格という口実で、50元のチケットを20元程度で販売しないと集客ができない。
ところが、最低価格制度があるため、映画館がいくらで売ろうとも最低価格の50元で販売した前提で、製作と配給元に配分をしなければならない。
つまり、最低価格が50元の場合は、20元でチケットを販売したとしても24元を製作と配給元に配分しなければならないのだ。映画館は4元の赤字となり、さらに経費もかかるため、大赤字となる。これで映画館は立ち行かなくなっている。
映画館はポップコーンとコーラを売る商売
これはもうビジネスとして成立していない。それでも映画館がやってこれたのは、ポップコーンとコーラの売上があったからだ。
2025年上半期の映画館チェーン「万達映画」(ワンダ)の財務報告書によると、映画鑑賞収入は41.77億元だったが粗利率は4.91%にすぎない。一方、飲食品販売は8.63億元しかないが粗利率は73.42%にもなる。つまり、映画館というのは映画上映では利益はまったくでず、ポップコーンとコーラを販売することでようやく利益を出す仕組みになっている。
このため、映画館はつい最近まで、飲料や食べ物を持ち込むのは禁止だった。映画館側は「においが強い食品は他のお客様の迷惑になる」と説明していたが、においがしないものでも持ち込むことはできない。実際の理由は、飲食品を買ってくれないと映画館が立ち行かなくなるからなのだ。
ところが、一部の消費者から「飲食品の持ち込みを禁止するのは個人の権利を侵害している」という声があがり始め、多くの映画館ではペット飲料の持ち込みは認めるようになり、さらにキャンディーなどのバッグに入るような食品は黙認をするようになっている。
ポップコーンとコーラの映画館価格は高く、多くの人が購入を避け始めているため、映画館の経営は厳しくなり、閉館をするところが相次いでいる。

ヒットの寿命はますます短くなる
さらに、ヒット映画も生まれているものの、ヒット期間が短くなっている。「哪吒2」も「話題になっているから見に行く」という人が多く、満員状態が続いたが、それも2ヶ月間のことだった。それ以降は観客数は急落をし、多くの映画館が上映を取りやめている。「南京写真館」「731」も異例のヒットにはなっているものの、短期間で終息をする可能性が高い。
以前は、ヒット映画が出れば、1年か場合によっては数年間は客入りがいいロングヒット上映ができたが、現代はそれもなくなっている。
そのため、生き残りをかけて、映画館はスクリーンビジネス、会場ビジネスを手掛け始めている。コンサートやスポーツイベントのライブ中継あるいは録画中継をし、大きなスクリーンで、みんなで思い切り歓声をあげられるイベントを開催したり、さらには静かな音楽と風景を上映し昼寝OK、アイマスクや枕を貸し出す上映回を入れるなどの工夫を始めている。
しかし、それでも若い世代の集客に苦労をしている。若い世代にすれば、映画は「好きな時に見られないし、長いし、一時停止ができない」映像コンテンツになっているからだ。映画館の将来は非常に暗く、今のところ、逆転の決め手となる策は誰も思いつけていない。
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