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今回は、中国が独占するレアアースについてご紹介します。
中国が唐突にレアアースの輸出規制を発表し、米トランプ大統領が報復関税100%で対抗するなど、再び関税戦争が始まるのかと思われましたが、結局、中国側はレアアース輸出規制を1年延期、米側は報復関税をキャンセルというところに落ち着きました。
しかし、このレアアース規制は、いつか行われるのではないかと前々から予想されていたことです。米国は半導体製造技術(特許などの知財)という他国が持っていないものを持っています。一方、中国はレアアースという他国が持っていないものを持っています。これは強い武器となり、米国は2019年にファーウェイなど数社をエンティティリストに入れ、このリストにある企業とその企業に製品を納入する企業には米国の半導体製造技術を使わせない(厳密には許可制)という措置に出ました。
これにより、ファーウェイはスマートフォンの心臓部であるSoC(システムオンチップ、CPU、GPU、センサーなどがパッケージ化された半導体チップ)「Kirin」が製造できなくなりました。
当時のKirinは、アップルのAシリーズと最先端を競い合っていたSoCです。この他、サムスンのExynosも優れていましたが、歩留まりが悪く限られたハイエンドモデルに搭載されるのみでした。また、クアルコムはSoCを製造して提供するビジネスであることから、超最先端はねらわず、追従する戦略をとっていました。
つまり、本当のハイエンドSoCはアップルのAシリーズだけになってしまったのです。これでiPhoneは世界最強のハイエンドスマホとなりました。中国市場でもファーウェイが消えたため、その空間をアップルが埋め、iPhoneがトップシェアを握る局面が増えました。
ファーウェイは小さくない打撃を受け、一時はスマホ事業から撤退をするのではないかとすら見られていました。しかし、ファーウェイは復活をしました。米国の技術を使わずに、中国の技術だけで、アップルからは2世代か3世代遅れになりますがKirinを再び製造し、Mate 60 Proでカムバックしたのです。このあたりの経緯は、「vol.195:ファーウェイがカムバック。影響を最も受ける米国企業、中国企業はどこなのか」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2023/09/24/080000)でご紹介しています。
つまり、米国はチップ封鎖をすることにより、中国の技術進化を促してしまったのです。このチップ封鎖策には米国内からも当初から批判は多くありました。例えば、マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏は「問題があるということだけ伝えておくべきだ」と発言しています。そして、台湾有事など、米国が絶対に許すことができない事態が起きた時にチップ封鎖を発動すべきだと主張しています。つまり、カードとして持っておいて、それを切るタイミングを考えるべきだという考え方です。
この頃から、報復として、中国はレアアース輸出規制をするのではないかという観測はありました。それが今年になって、いったん規制を発表し、延期をしました。これは「カードをチラ見せ」して、米国の反応を窺ったのかもしれません。そして、カードがあることを知らしめた状態でカードを持ち続け、今後、トランプ関税などが追加されるたびに、カードを切る仕草をしてくることになるでしょう。
そこで、今回はレアアースについてご紹介し、なぜ中国が独占をしているのかについてご紹介します。
レアアースというのはスカンジウムとイットリウム、それにランタノイド15元素の合計17元素のことを指します。磁石材料、蛍光体、触媒、光学ガラス、バッテリーなどを製造するときは主原料ではないものの必須の元素です。そのため、「製造材料のビタミン」などと言われることもあります。
レアアースとは「希少な土壌」の意味ですから、埋蔵量が極めて少ない希少元素ではないかと思い込みがちですが、埋蔵量は多く、銅や鉛とほぼ同じです。意外にたくさんあります。
では、なぜ「レア」なのでしょうか。ここが、レアアースにまつわる政治力学を理解する鍵になります。
元素周期表の中でレアアースをマークしてみると、次のようになります。

第3族(縦列)の3つのマス目の部分がレアアースです。ところで、周期表にははみ出し元素が下に描かれています。ランタノイドとアクチノイドです。このうちのランタノイドがレアアースです。
中学や高校で、元素周期表を見て、欄外にはみ出し元素があるのを不思議に感じていた人も多いのではないでしょうか。ランタノイドは、イットリウムの下のマス目に入るもので、ここはマス目は1つであるのに、そこに15もの元素が入らないと辻褄が合わなくなるのです。本来は「※1」のマスに15の元素が入るのですが、とても書ききれないために欄外に表記しています。
では、なんで、この1マスに15もの元素を入れなければならないのでしょうか。そのひとつ手前のマスはバリウムで原子番号は56です。右隣はハフニウムで原子番号は72です。つまり、このランタノイドのマスには原子番号57から71までの元素が入ることになります。
原子番号というのはその原子が持っている陽子の数です。原子番号11のナトリウムは陽子11個を持つ原子核を持っています。陽子は+の電荷を持っているので、そのままでは原子全体が安定をしません。そこでマイナスの電荷を持っている電子を11個引き付けて、電子は原子核の周りを回ることになります。全体では電荷が打ち消しあって+ーゼロになり安定します。
ここで、ナトリウムの陽子の数を12個に増やしてみます(現実には簡単にはできません)。すると、電子をもうひとつ引きつけて、原子番号12のマグネシウムになります。この時、電子は原子の最も内側の軌道に入ります。そこが最も落ち着きがいいからです。このように原子番号を増やし(陽子を増やす)ていくと、追加される電子は落ち着きのいい内側の軌道に入ろうとします。
ところが第4軌道、第5軌道、第6軌道は、電子の落ち着きやすさ(エネルギー準位)が非常に僅差になっています。そのため、内側の第4軌道ではなく、最も外側の第6軌道に先に電子が入ってしまうということが起こります。そのため、レアアースと呼ばれる元素は、最も外側の軌道の電子は常に2個で、第4、第5の内側の軌道の電子数が異なるということになります。
そして、元素の性質というのは最も外側の電子の数で決まります。第1族の水素、リチウム、ナトリウム、カルシウムなどは、いずれも最も外側の電子の数が1つで、塩素と結びついてHCl、LiCl、NaClなどの化合物になります。
レアアースはどれも最も外側の電子の数が2であり、17もの元素の性質が非常によく似ています。よく似ているということは分離精製が非常に難しいということです。
例えば、砂糖と塩をうっかり混ぜてしまったとします。分離する方法はいくらでもあります。アルコールに入れてみると、砂糖は溶けますが塩は溶けません。沈澱したものをろ紙で漉して乾燥させると塩が得られます。残ったアルコール溶液を蒸発させて残ったものが砂糖です。普通の物質は、性質の違いを利用して分離精製する方法があります。
しかし、レアアースというのは、17もの元素の性質が似ているため、分離精製が簡単ではありません。いちばん外側の軌道の電子の数が同じであるため性質が似ていることにより、多くの鉱山ではさまざまなレアアースが混ざったものが取れます。しかし、例えば強力磁石に使われるネオジムだけ欲しいという場合は分離精製をしなければなりません。ところがこれが簡単ではないのです。性質が似ている元素を分離するというのは至難の業です。
そして、中国の強みはこの分離精製技術に長けているのです。他国を大きくリードしています。
レアアースにより政治や産業がどう動くかを考える時に、押さえておかなければならないポイントはここです。中国はレアアース資源がたくさんあるから独占できているのではなく、レアアース精製技術があるから独占できているのです。
ですので、今後、「中国以外のxx国で大規模なレアアース鉱床を発見」「xx国でレアアース鉱床の開発プロジェクト始動」というニュースが出てくるかと思いますが、レアアース鉱床が発見されても生産量は増えません。分離精製ができないからです。レアアース生産量シェアには大きな影響はありません。
ですので、「xx国でレアアース精製工場が始動」とか「xx国がレアアース分離技術を開発」というニュースに注目をしてください。こちらであればレアアース地図に大きな影響を及ぼし、中国一強の状況を変える可能性があります。
分離精製技術は、技術なのですから模倣をしたり改良をしたり突破的発見をすることが可能です。中国にできて日本にできない理由はありません。では、追いつくための難易度はどのくらい高いのでしょうか。これは専門家でないと正確にはわからないところですが、ざっくりとどのくらいの難易度なのかが感覚的に理解できる情報をご紹介しようと思います。
今回は、中国がレアアースの分野で独占と言われるほど強い理由についてご紹介します。
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