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今回は、抖音のリコメンドアルゴリズムについてご紹介します。
前回の「vol.295:AIショッピングは機能性購入から始まる。商品に求められる感情価値とは何か」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2025/08/24/080000)について、メールではなく、SNSでご質問をいただきました。
それは、次の文についてです。
「TikTok中国版の抖音では、ムービーを投稿した瞬間にAIが内容を分析して、再生数やいいねの数を予測し、配信範囲を決定するようになっています。つまり、配信をしてみなくても、ほぼ正確にどの程度見られるかがわかってしまう、そういう世界になっています」。
コンテンツを投稿してすぐに解析が行われ、再生数などを予測するというのはどのような仕組みで行われているのかというご質問です。
抖音(ドウイン)のリコメンドアルゴリズムについては、「vol.094:機械学習によるリコメンドがトレンド。EC「京東」、音楽サービス、TikTokのリコメンドシステム(下)」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2021/10/17/080000)でご紹介していますが、かなり以前のもので、現在のリコメンドアルゴリズムは、当時よりもかなり進化をしています。当時は、AIといっても機械学習が主体で、画像や音声など多様なメディアを理解できるマルチモーダルAIは、規約違反の投稿(過度な露出や過激な内容)を検出するのに使われている程度でした。
そのため、この当時は、まずは小さく配信をしてみて、視聴者の反応を測定し、それに基づいて配信範囲を広げていくという手法が中心になっていました。
しかし、現在ではAIが全面的に適用され、リコメンドアルゴリズムも大きく変わっています。現在は、投稿されたコンテンツを配信してみなくても、かなり正確に再生数などの予測がつくようになっています。
では、これはどのような仕組みで予測をしているのでしょうか。そして、何のためにそこまでするのでしょうか、というのが今回のテーマです。
中国で商品やサービスを広めるには、SNSで発信することが必須になっています。日本から発信をするのであれば、抖音の他は、小紅書(シャオホンシュー、RED)、ビリビリあたりが中心になります。Xとよく似た微博(ウェイボー)、抖音とよく似た快手(クワイショウ)もよく使われますが、見ることはできるものの、投稿するには中国の身分証が必要になります(パスポートで登録する手段は用意されているようです)。
抖音と小紅書、ビリビリのリコメンドシステムとの違いについてもご紹介します。
最初に、抖音のリコメンドアルゴリズムについて簡単に復習しておきます。
抖音のリコメンドアルゴリズムの目的は、視聴者の視点では「自分にぴったりのムービーばかりが流れてくる」という状況をつくりだし、中毒性を持たせることです。
このために開発運営のバイトダンスが考案した手法が、トラフィックプールモデルです。

投稿されたムービーは、まずランダムに選ばれた300人程度に配信されます。ここで、最後まで見てもらえるか、繰り返し再生してもらえるか、いいねをつけてもらえるかなどの反応を計測します。
そして、ここが重要ですが、反応のいい上位10%程度だけが残り、残りの90%はそこで配信が停止されます。つまり、抖音に投稿されるコンテンツの90%は再生回数が1桁か2桁でしかないという厳しい世界です。
上位10%については、いい反応をした視聴者の特性が分析され、似たような特性を持った視聴者3000人程度を選び出し、そのトラフィックプールに配信します。
ここでも反応を測定して、やはり上位10%だけが次のプールに進むことができます。これを繰り返していくのです。
この手法の賢いところは、コンテンツの分析をしなくていいという点です。ムービーの特徴分析というのは、今でも手法が確立しているわけではなく、非常に難易度が高くなります。
例えば、米国のテレビドラマ「24」は世界中でたいへんな人気となりました。これを日本のテレビ局が、舞台を日本に置き換えたショットバイショット(カット割なども忠実に再現)したリメイクドラマを制作したことがあります。しかし、まったく面白くないのです。米国人がテロ捜査をしたり、過剰な捜査で拳銃を撃つことはそれなりのリアリティがありますが、日本の警察組織がテロ捜査をしたり、安易に拳銃を撃つのはリアリティがありません。2つのドラマは類似度で言えば非常に高くなるはずですが、視聴者に与える印象はまったく異なります。
コンテンツの分析は、このような視聴者の感情分析をしなければならないところが難しいのです。
ここをわかっていたバイトダンスは、コンテンツの分析をあきらめ、視聴者の反応だけでコンテンツを評価する方法を確立しました。
このトラフィックプールは、動的に変わっていきますが、通常は8段階あり、それぞれ上位10%しか次のプールに進むことができません。つまり、最終段階に到達して全員配信となるのは1億本に1つでしかありません。抖音では、1日あたり約6000万本のムービーが投稿されます。ですので、全員配信という大バズりの投稿は1日に1つあるかどうかなのです。
また、このプールの選び方にも賢い工夫があります。最初のプールは300名前後ですが、ファン(フォロワー)、それから投稿者と位置情報が近い視聴者が優先的に選ばれます。この特性により、チェーン店などでは店舗から発信することを集客に活用しました。店舗の発信力は弱くても、近くの人には届くわけですから、「今からxx%割引しまーす」などという発信をすれば集客効果が得られるわけです。
また、ファン数が多い有名配信者の場合は、1000万人のファンがいれば、自動的に1000万人には配信されますから、人気を獲得しているインフルエンサーはある程度の配信規模が確保できます。
ファンがほとんどいない新人は、トライフィックプールを下から登っていく必要がありますが、そのためには、インフルエンサーの真似ではなく、独創的なことをする必要があります。
このような仕組みで、1人の視聴者の視点からは、地域の投稿、フォローしている人の投稿、独創的な投稿が配信されてくることにより、次から次へと面白いムービーばかり配信されてくることになり、中毒性が生まれて、1日に何時間も抖音を見てしまうことになっています。DAU(1日平均アクティブユーザー数)は6億人を超え、しかも一人平均120分程度は見るということになっていて、多くの人にリーチできる可能性のあるメディアとしては類を見ないものになっています。
しかし、このリコメンドシステムも日々改良が加えられ、現在ではAIを駆使してコンテンツの評価をするようになっています。これにより、配信をする前に、かなり正確に再生数やいいねの数といった視聴者の反応が予測できるようになり、配信する前に、配信範囲を確定するようになっています。
この変化により、何が起きているのでしょうか。また、どのような仕組みでこの評価をしているのでしょうか。今回は、抖音の新しいリコメンドシステムについてご紹介し、それが視聴者と配信者にどのような影響をもたらしているかを考えます。
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