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今回は、ハーゲンダッツについてご紹介します。
ハーゲンダッツの中国事業が追い込まれています。報道によると、売却先を探す事態になっているようです。
中国ではパーラー店舗の展開をしていて、2019年には557店舗となりましたが、現在、ミニプログラムで確認できるのは250店舗ほどで、SNSには「営業しているはずが、鍵が閉まっていて無人になっている」という投稿が見られることから、店舗数の減少はさらに進みそうです。
運営をしているのは米ゼネラル・ミルズ社ですが、巨大な食品企業であるため、財務報告書には「米国」「米国以外」という業績情報しかないため、中国のハーゲンダッツ事業がどの程度深刻な状況になっているのか、正確なことはわかりません。
しかし、財務報告書には、中国における消費者の課題(Consumer Challenge)が存在し、パーラーの来店客数が2桁%の減少をしていることに触れられています。ただし、欧州とオーストラリア市場が好調であるため、中国市場での減少分は相殺できたとしています。
ハーゲンダッツが中国に進出をしたのは1996年のことで、もうすぐ30年になります。この2000年前後に中国に進出をした外資の飲食チェーンは共通の課題を持っていました。それは、必然的に高級ブランドになってしまうということです。
例えば、KFCは1987年に中国に進出をし、チキン2個とマッシュポテト、コールスローサラダのセットが7.3元で販売されました。
もちろん、1987年と今では物価が違います。現在の物価感覚に直すとどのくらいの感覚なのでしょうか。
これを計算するために、国家統計局から「平均可処分所得」と「平均消費支出」のデータをとってきました。

恐ろしいほど伸びており、しかも所得が支出を上回っていることがわかります。この差が投資や貯蓄に回っているわけです。
現在(2024年)の可処分所得は4万1314元、消費支出は2万8227元です。所得は年間で約85万円ということになります。これは少なすぎるのではないかと思われる方もいるかと思いますが、この平均は赤ちゃんからお年寄りまで含めた平均です。家庭単位での経済状態を見るためにこのような方式の統計を出しているようです。一般的には、子ども1人、高齢者1人を夫婦2人で負担をしていますから、この2倍ぐらいが、いわゆる平均年間所得になります。
それでも少ないと思いますが、農民の場合は、食料がほぼ自給できますので、所得そのものは低いということを考慮する必要があります。この統計の読み方については、また別の機会に詳しくご紹介したいと思います。
今回は、この可処分所得と消費支出の平均を比較して、当時の価格が現在(2024年)の物価感覚でいくらぐらいに相当するのかを計算してみたいと思います。
KFCが進出をした1987年の平均値は560元、現在は34770.5元となり、62.1倍になっています。つまり、当時のチキンセット7.3元は、現在の453.3元に相当します。これは約9300円になります。現在の40代、50代の人に聞くと、多くの人が「子どもの頃は誕生日などの特別な日でなければKFCには連れていってもらえなかった」と言います。
現在のKFCのセットは30元前後ですので約600円という常識的な価格になっています。この時期に中国に進出をしたマクドナルド、ピザハット、吉野家、ハーゲンダッツなどはいずれも、中国では高級飲食店になってしまいました。
しかし、さまざまな価格調整を行い、KFCのように、本来あるべきポジション=庶民的ブランドに着地をしてきました。ハーゲンダッツは、このポジションを移動させることを怠ったのか、する必要はないと感じたのはわかりませんが、高いポジションのままきてしまいました。他のチェーンが次々と庶民的ブランドに着地をしていく中で、ハーゲンダッツは空中を旋回したまま燃料切れになりそうになっているのです。
同様のことは日本でも起きています。1971年7月に、マクドナルの1号店が東京銀座の三越百貨店の1階にオープンしました。当時の価格はハンバーガーが80円というものです。しかし、安くはありません。当時の大卒初任給は約4万円で、現在は5倍以上になっています。つまり、ハンバーガーは現在の物価感覚では1個400円に相当するのです。
最近のマクドナルドは値上げが続いて、SNSでは「もう普通の人はいけない」などと大袈裟なことを言う人がいますが、それでもハンバーガーは190円です。当時の方がずっと高かったのです。ですので、現在のシェイクシャックのようなポジションで、大学生がデートに使う店というイメージがありました。
しかし、90年代半ばに、マクドナルは、ブランドポジションを沈めていきます。バリューセットを400円で販売しました。ハンバーガー+ドリンク+ポテトのセットです。それぞれ単体で購入した場合は550円ほどになるので、だいぶお得になります。さらに、ビッグマック(380円)+ポテトM(240円)+ドリンクM(180円)の合計800円が、バリューセット600円で提供されました。量も十分であり、男子学生でもお腹がいっぱいになります。
このバリューセット戦略は非常に賢いものでした。メニューの価格を下げずに、高いブランドメージを維持したまま、実質的な値下げをすることになったからです。単体メニューが高いために、大きなお得感を感じることができます。これにより、高校生たちが学校帰りにマクドナルドに寄るようになりました。
さらに、2000年には大胆な値下げを行います。130円だったハンバーガーを平日に限り65円にしたのです。さらに2022年には59円まで下げ、販売数は4倍以上、売上高も増収が続き、2001年にジャスダック市場への上場を果たします。こうなると中年サラリーマンまでマクドナルドに行くようになります。お昼にお蕎麦やカツ丼を食べるより、マクドナルでハンバーガーを2個買った方がはるかに安上がりだったからです。新たな顧客層を獲得し、マクドナルドは完全に庶民的ブランド、ファミリーブランドになりました。
現在は、値上げトレンドになっていますが、それでも業績は成長しています。価格の操作に非常に長けた企業であるということが言えます。
では、中国に上陸をした外資飲食チェーンは、どのような手法でポジションを本来あるべき場所に着地させたのでしょうか。そして、ハーゲンダッツはなぜそれに失敗して高止まりをしたままになってしまったのでしょうか。
今回は、高級ブランドとなってしまった外資チェーンが、どのような手法で、本来のポジションに着地をさせたのかをご紹介します。
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