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ルンバのジレンマと中国メーカーの葛藤。イノベーターのジレンマに陥ったiRobot

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今回は、iRobotのルンバなどのお掃除ロボットについてご紹介します。

 

日本でもよく知られているお掃除ロボット「ルンバ」が存続の危機を迎えています。iRobot社の2024年第4四半期の決算が公開されると、株価が40%も急落をしました。

iRobotの株価の推移。コロナ禍で自宅ですごす人が多く、お掃除ロボットが売れたため、2021年に最高値をつけたが、その後急落をしている。Google Financeより引用。

 

それもそのはずです。有価証券報告書には普通は書かないようなiRobotの悲痛な叫びが記載されているのです。ルンバはいよいよLiDAR(ライダー=レーザーレーダー)を搭載した新モデルを発売しました。しかし、「there can be no assurance that the new product launches will be successful」(新製品の販売が成功するとは保証できません)と自ら述べているのです。

さらに、会社としての存続に関しても悲観的すぎる文言が記載されています。「Given these uncertainties and the implication they may have on the Company's financials, there is substantial doubt about the Company's ability to continue as a going concern for a period of at least 12 months from the date of the issuance of its consolidated 2024 financial statements」(これらの不確実性が当社の財務に及ぼす影響を考慮すると、2024年連結財務諸表の発行日から少なくとも12か月間、企業として継続する能力について、重大な疑義があります)。

つまり、12ヶ月持たないかも…と言っているわけです。こんな正直というか、率直な文章を、有価証券報告書という公式書類では初めて見ました。

 

なぜ、ルンバは危機に陥っているのでしょうか。もう、みなさんお察しのとおり、中国企業に激しく猛追され、市場を失っていったからです。2024年Q4のグローバルシェアでは、中国Roborock(石頭科技、https://cn.roborock.com/)に抜かれ、世界第2位に転落をしてしまいました。

▲24年Q4のお掃除ロボットのグローバルシェア。1位をずっと保ってきたiRobotが初めてRoborockに抜かれた。IDC Quarterly Smart Home Device Tracker 24Q4より作成。

 

しかし、それだけではありません。iRobotにも悪手があったのです。それはイノベーターのジレンマの実例として教科書に載せるべき事例です。これは「イノベーションのジレンマ」(クレイトン・M・クリステンセン)が提示した、優良企業がダメになる典型例です。

イノベーションには2つの種類があり、ひとつは破壊的イノベーションで、もうひとつは持続的イノベーションです。破壊的イノベーションとは、業界や社会の構造を変えてしまうような影響力を持ったイノベーションです。一方、持続的なイノベーションは業界や社会の構造を変えずに新しいテクノロジーを導入しようとするイノベーションです。個人的には、改善や改良と呼ぶべきで、これを「イノベーション」と呼んでしまうと混乱が起きるような気がしますが、この本の中ではこう定義されて議論されています。

この実例として、中国ではキャッシュレス決済があります。持続的イノベーションの実例は「銀聯カード」です。銀聯は各銀行が出資し合った企業で、各銀行が発行するデビットカードに「銀聯」統一規格を提供しています。クレジットカードそっくりですが、即時に口座から引き落としが行われるデビットカードです。この銀聯カードが海外にも対応店舗を広げたため、2015年ぐらいまでは、海外旅行をする中国人の必須カードになっていました。ところが、本質的にはプラスティックカードですから、対面決済にしか使えません(後にオンライン決済やスマホ決済にも対応)。

銀聯カードとは、銀行のキャッシュカードに銀聯規格のデビット機能がついたものですから、銀行のビジネスは安泰です。銀行に口座を持ち、カードを発行してもらうわけですから、銀行のビジネスは大筋では変わりません。仕組みを変えずに新しいテクノロジーだけを導入する。これが持続的イノベーションです。

一方、破壊的イノベーションは、アリババのアリペイやテンセントのWeChatペイです。決済に使う仕組みはQRコードというローテクでしたが、ローテクだけに全国津々浦々にまで急速に普及をしました。店舗側は客数が少ないのであれば、スマートフォンだけ用意すれば決済に対応することができます。客数が多くて、いちいちQRコードをスキャンしていられないというスーパーなどでも、レジにバーコードスキャナーや二次元コードスキャナーを接続するだけで対応できます(銀聯に対応するには専用のカードリーダーが必要になります)。

また、消費者側に大きなイノベーションが起きたのは、みなさんよくご存知だと思います。ミニプログラムなどを利用して、モバイルオーダーなど多彩な応用がされ、小売業のオンラインとオフラインの融合が急速に進みました。さらには鉄道や飛行機などのチケットも購入ができ、電子チケットがスマホに格納されるというところまで一気に進みました。

 

アリペイ、WeChatペイも、チャージは銀行口座から行いますが、次第に銀行口座をスルーする人たちが登場してきます。コンテンツ創業者として、SNSやショートムービーで稼いだお金は、そのプラットフォームのポイントとして支給されますが、これを使ってアリペイやWeChatペイにチャージすることができます。

つまり、インフルエンサーとして生活をするのにじゅうぶんな稼ぎがある人は、いちいち銀行口座にお金を入れておかなくてもいいのです。これが、銀行のビジネスをじわじわと圧迫しています。

面白いのは、銀聯は銀行のキャッシュレス決済ですから金融法関連の規制を受け、銀行業界のガイドラインに従わなければなりません。しかし、QRコード決済はそれまでなかった分野であるために、規制を受けることなく(現在は法律が整備されている)伸び伸びと成長することができました。

当時、ある銀聯関係者はものすごく怒っていました。「我々は新しいサービスを始めるときに、金融関連法の制限を受け、消費者の保全対策をしなければならない。それには膨大な時間と手間がかかる。しかし、QRコード決済はそのような規制がなく、何でも自由に始められる。まったく勝負にならない。不公平だ」というものです。

しかし、現在では、アリババやテンセントもすっかり大企業になり、守りに入っているため持続的イノベーションしかできなくなっています。破壊的イノベーションで成長したイノベーターもいずれ持続的イノベーションしかできなくなる。これがイノベーターのジレンマです。

 

優良企業はすでに稼げる仕組みを構築していますから、その仕組みを壊してまでイノベーションを起こすということはしづらい社内力学が働きます。また、破壊的イノベーションというのは最初はとても小さな市場に見えます。アリペイ、WeChatペイも、最初はごく先進的な人たちと店舗の間で使われていただけです。優良企業は、このような小さな市場にリソースを注ぎ込むことに消極的です。

結果、破壊的イノベーションが成長しだすと、技術や機能で大きな遅れをとっているために、もはや追いつくことができず、次第に衰退をしていくということになります。

2024年の決済シェアは次のようになっています。

▲2024年のスマートフォン決済額シェア。銀聯のQuickPassは存在感を失っている。「2024年中国スマホ決済市場規模、競争状況及び将来予測」(前瞻産業研究院)より作成。

 

つまり、企業というのは、持続的イノベーションだけを続けていたら、いつかどこからか破壊的イノベーションを起こす他者に、その地位を奪われてしまう運命なのです。成長した企業が、どのようにして自ら破壊的イノベーションを起こしていくか、これがあらゆる企業に課せられた課題です。

 

この課題に挑んだ企業もあります。ゼロックスです。ゼロックスコピー機で一世を風靡した企業ですが、ネットワーク技術が生まれてくると、大きな不安に陥りました。将来のオフィスというのは、紙ではなく電子書類になって、コピーをして配布するのではなく、通信ネットワークを使って配布するようになるのではないか。そうなると、ゼロックスのビジネスは完全に終わります。

ゼロックスは、守勢に立つのではなく、自分たちが率先して将来のデジタルオフィスの技術を開発しようと考えました。つまり、自分たちの事業ドメインを「コピー機」ではなく「オフィステクノロジー」と再定義したのです。

こうして、1970年にパロアルト研究所を設立し、研究者を集め、未来のオフィス技術の研究開発を始めました。そこからはイーサネットレーザープリンターなど今日でも使われている技術が生まれています。

そして、オフィスコンピューターAltoを開発します。それはマウスで書類を操作するという今日と同じ発想のものです。しかし、見学にやってきた小さなパソコンメーカーAppleが、Altoを見て感激し、独自に今日のMacOSにつながるものを開発します。

トンビに油揚げをさらわれてしまったような結果になりましたが、ゼロックスは今日のインターネット技術に大きな貢献をしています。

ゼロックスの本社はニューヨークにあり、パロアルト研究所は西海岸にあります。遠く離れた場所に研究所を設立したというのも、社内で余計なハレーションが起きるのを防ぐ工夫だとも言われています。

 

iRobotは、MIT(マサチューセッツ工科大学)のAIラボの研究者3人が1990年に起業した会社です。お掃除ロボットという、それまでになかった製品を生み出したイノベーター企業です。それ以来30年、製品名「ルンバ」はお掃除ロボットの代名詞であり続けました。

研究者による起業であるため、vSLAM(visual Simultaneous Localization and Mapping、視覚的同時自己位置推定と地図作成)という月面探査機や自動運転車、ドローンなどで使われる最先端技術を家電製品に応用しました。

iRobotは、イノベーター企業ならではのエピソードが豊富に存在します。例えば、ルンバは当初、ペットの排泄物にうまく対応ができませんでした。ペットが粗相をしたことに気がつかずに、ルンバを作動させて外出してしまうと、ルンバが床中に排泄物をなすりつけてしまうという大惨事が起こります。

この問題をどうするか。iRobotは前方カメラを取りつけ、機械学習で排泄物を認識し、それを避けて走行するようにルンバのアルゴリズムを変えることを考えました。しかし、問題になるのは、排泄物を学習するための学習素材です。そこで、スタッフは粘土を使って、さまざまな形状、色の排泄物をつくり、これで学習を進めました。さらには、他の従業員やユーザーにも協力してもらい、ペットの排泄物の画像を収集し、学習素材にしていったのです。

こうして、2022年にルンバj7/j7+にPOOP(Pet Owner Official Promise)保証をつけました。万が一、回避に失敗して大惨事となった場合は、本体を無償交換するというものです。

もし、iRobot社の起業物語が映画化されるとなると、間違いなく、笑いがあって感動があって、心が温まる素敵な場面になることは間違いありません。

 

こんな素敵な企業であるiRobotは何を間違えたのでしょうか。そして、猛追をして追い抜いた中国メーカーも現在は苦しむようになっています。iRobotを抜いて業界のリーダーになった中国メーカーは何に苦しんでいるのでしょうか。

今回は、ルンバのイノベーターのジレンマについてご紹介し、追い抜いたフォロワーが苦しんでいる原因についてご紹介します。

 

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