「まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。
明日、vol. 283が発行になります。
登録はこちらから。
https://www.mag2.com/m/0001690218.html
今回は、小米が開発した最先端チップ「XRING O1」についてご紹介します。
小米(シャオミ)が、自社開発のSoC「玄戒O1」(シュエンジエ、XRINGオーワン)を発表しました。そのSoC(System on Chip)が世界最高レベルの3nm(ナノメートル)のものであり、これが大きな話題となりました。SoCというのはCPUやGPUなどをまとめたスマートフォンの頭脳です。
ここで大きな疑問がいろいろ湧いてきます。
ひとつは、どうやってつくったのかという問題です。3nmのSoCを量産する技術は中国国内にはありません。世界でも、韓国のサムスン、台湾の積体電路(TSMC)しかありません。サムスンは、自社用のチップ「Exynos」を製造するのに手一杯で、他企業のSoCを製造する余裕はありません。そのため、TSMCが製造したのだと推測されました。小米は公式には何も発表していませんが、TSMC製造という情報は、専門家の間ですでに確定情報になっています。
2つ目の問題は、米国政府による規制の中でどうして製造できたのかということです。「vol.195:ファーウェイがカムバック。影響を最も受ける米国企業、中国企業はどこなのか」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2023/09/24/080000)、「vol.232:中国市場でiPhoneのシェアが急減。2世代遅れのファーウェイが性能でiPhoneと肩を並べることができている秘密」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2024/06/09/080000)などでもご紹介したように、米国政府は中国メーカーが先端半導体をつくれないようにしています。俗にチップ封鎖と呼ばれています。
ファーウェイは、このチップ封鎖の被害をもろに受けました。米商務省の産業安全保障局(BIS)は、米国市民の情報セキュリティを脅かす企業をエンティティリストとして発表をしました。半導体をつくるには、米国の技術、知的財産がどうしても必要となります。しかし、このリストに載っている企業に半導体を提供する企業には、米国の技術や知的財産を使わなせないという処置に出たのです。
当時、ファーウェイのメインチップ「麒麟」(Kirin)は、子会社の「海思」(ハイシリコン)が設計をし、台湾のTSMCが製造をしていました。しかし、ファーウェイがリストに載ってしまったため、TSMCがこれまでどおり、半導体を製造してファーウェイに納品すると、米国の技術、知的財産が使えなくなります。これは実質的に半導体がつくれないということですから、TSMCはファーウェイ向けの半導体製造をやめざるを得なくなります。
中国国内にも半導体製造企業はありますが、24nmが精一杯で、世界の最先端からは2周か3周遅れでした。そこで、ファーウェイは中芯国際(SMIC)と提携をして、7nm相当の技術を開発します。これでファーウェイはスマホ市場にカムバックできました。つまり、ファーウェイは米国の技術に頼らず、中国国産技術でSoCを製造しています。
実は、小米もこのエンティティリストに載せられました。立場としてはファーウェイと同じですが、ここをどう突破したのでしょうか。
3つ目は、そもそもなぜ小米は自社開発のSoCを開発しなければならないのかということです。小米はこれまで米クアルコムや台湾メディアテックのSoCの供給を受け、スマホを製造してきました。それなのに、なぜたいへんな苦労をして、自社開発チップをつくらなければならないのでしょうか。
今回は、この3つの疑問に答える形で、小米のXRINGについてご紹介します。
まず、最後の、なぜ自社開発のSoCが必要なのかというところから始めます。答えはシンプルで、20年近く、各スマホメーカーは激しい競争を行ってきましたが、それが最終決戦に入ろうとしているということなのです。
ハイエンドモデルと呼ばれるアップル、サムスン、ファーウェイが中心になり、この3社は生き残っていけるかもしれませんが、その他のメーカーは生存空間があるかどうかわかりません。それどころか、スマホそのものが終わるかもしれません。
アップルのエディー・キュー副社長が「2035年までにiPhoneは不要になるかもしれない」と発言をして話題になっています。
https://reinforz.co.jp/bizmedia/82452/?utm_source=chatgpt.com
▲「Apple上級副社長エディ・キューが語る2035年の展望 AI進化がもたらす「iPhone不要」時代の可能性」(Reinforz Insight)
この副社長は、iPhoneという製品が終わるということを言ったのではなく、Vision Proなどの空間コンピューティング、Apple Watchの進化などがあり、10年後にはiPhoneは使わなくても済むようになっているのではないかという文脈で語っています。
スマートフォンは非常によくできたデバイスですが、成熟もし、限界も見えてきています。インターネットのデバイスとしては、1995年から2010年までの15年間がPC、2010年から2025年までの15年間がスマホだとすれば、そろそろ次のデバイスが登場してもおかしくない時期になっています。
主な次世代デバイスとしては次のようなものが考えられています。
1)ゴーグル:Apple Vision ProやMeta Questなど
2)グラス:Ray-Ban MetaやSolos、Rokidなど。グーグルも発売を予定しています。
3)スマートウオッチ:Apple Watchなど。
4)スマートイヤホン:Nothing Earなど。
5)ウェラブル:Humane AI Pinなど。OpenAIと元Appleのチーフデザイナー、ジョナサン・アイブのコラボ開発も話題になっています。
どのようなものが次世代デバイスになるのかはわかりません。おそらく、複数のデバイスを組み合わせたり、場合によって使い分けるような形になるのかもしれません。
どのような形になるのかはわかりませんが、共通しているのはSoC(演算力)、マルチデバイスOS(操作性)、AI(思考力)の3つです。デバイスがどのような形になろうとも、この3つが必須であることは変わりありません。
つまり、スマホメーカーは今後デバイスメーカーになり、この3要素でいかに差別化をするかが重要になってきています。そのため、各社とも、この3つの自社開発に力を入れているのです。
現在、自社開発が手掛けられているメーカーは5社に絞られます。

この5社は、SoCとAIに関しては自社開発を進めています。しかし、OSに関してはまだまだ問題があります。ファーウェイのHarmonyOSは、さまざまな機器に対応できるマルチデバイス設計になっているため、どのようなデバイスを開発しても、同じ操作性を提供することができ、デバイス間の連携もとることができます。しかし、他社はオープンソース版のAndroidやDarwin(UNIX系)をベースにして、デバイスごとにOSを新たに開発している状況です。
スマホメーカーは、これからデバイスメーカーになっていかなければなりませんから、この3つを自社開発することが必須になっています。逆の言い方をすれば、この3つを自社開発できないメーカーは、新たなデバイスに対応ができないか、できたとしても平凡なありきたりの製品となり、他者との価格競争に巻き込まれるということです。そのため、生き残りをかけて自社開発をしているということになります。
小米は他の4社と比べて、この点で立ち遅れていました。SoCは米クアルコム社のSnapdragonを使い、OSはAndroidベースのMIUI(ミーユーアイ)でした。独自のAIも持っていませんでした。
それが、独自の大規模言語モデルMiMoを開発し、OSもAndroidベースですがコア部分にまで手を入れた大幅な改良モデルHyperOSになっており、さらには独自のSoCを発表したということになります。
2021年1月15日、小米の雷軍(レイ・ジュン)CEOは、出勤する車の中で、友人からの電話を受けました。「雷社長、小米が米国政府の制裁対象になりました」という知らせでした。
つまり、小米には最先端SoCが提供されなくなり、スマホが製造できなくなります。実際、ファーウェイはSoCであるKirinが製造できなくなり、すでに在庫していたKirin、性能を落としたSnapdragonで細々としか生産できなくなり、シェアを大きく落としました。
この時、雷軍氏は小米を守るために電気自動車EVの開発を決意します。そして、もうひとつ決意をしたことがあります。それは独自技術でSoCを開発することです。スマホがつくれなくなるのであれば自動車をつくる、スマホをつくれるようにSoCを自社で開発をする。この2つの対策を立てました。
その成果が、2024年にEVのSU7、そして2025年のXRING O1となったのです。
しかし、小米はどのようにしてSoCを開発したのでしょうか。SoCをつくるには設計と製造の2つの技術が必要になります。また、米国のチップ封鎖をどう潜り抜けたのでしょうか。
世間が驚いているのは、XRING O1が3nmだということです。ファーウェイは、独自設計、中国国内製造でKrinを復活させましたが、中国国内の技術では7nm相当が限界でした(現在では5nm相当にまで進化)。この辺りの事情については、「vol.195:ファーウェイがカムバック。影響を最も受ける米国企業、中国企業はどこなのか」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2023/09/24/080000)でご紹介しています。
また、ファーウェイのKirinが製造プロセスでは1世代またh2世代遅れながら、最先端チップと肩を並べられている事情については「vol.232:中国市場でiPhoneのシェアが急減。2世代遅れのファーウェイが性能でiPhoneと肩を並べることができている秘密」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2024/06/09/080000)でご紹介しています。
今回は、小米の独自開発のSoC「XRING O1」と、どうやって米国の制裁を切り抜け製造をしたのかについてご紹介します。
続きはメルマガでお読みいただけます。
毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。
先月、発行したのは、以下のメルマガです。
vol.279:人型ロボットの開発はどこまで進んでいるのか。自動車メーカーとロボットの親密な関係
vol.280:中国人の7割は所得税を支払っていない。中国政府はどこからお金を持ってきているのか
vol.281:AIスマートフォンの現在。アップル、グーグル、サムスン、中国メーカーの動向
vol.282:AIをAIと見分けるAIはつくれるのか。混乱する卒業論文AI代筆問題
バックナンバーポッドキャスト放送中!
